LIVE SHUTTLE  vol. 256

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SPYAIR  バンドの内なる進化を表わしたツアーファイナル。SPYAIRのこれまでとこれからを感じさせたステージを振り返る

SPYAIR  バンドの内なる進化を表わしたツアーファイナル。SPYAIRのこれまでとこれからを感じさせたステージを振り返る

SPYAIR TOUR 2018 KINGDOM
2018年4月18日 日本武道館

SPYAIRの“TOUR 2018 KINGDOM”のファイナルは、音楽に集中した緊張感のあるライブだった。音楽以外の要素をできるだけ削り落したセットリストは、彼らのストロング・ポイントである“楽曲の良さ”を改めて感じさせてくれて、単なる“ツアー・ファイナル”以上の感動があった。それはSPYAIRの内なる進化を表わしてもいた。

アリーナはSPYAIRのホールツアーでは初のオールスタンディング仕様になっていて、多くのオーディエンスが詰めかけている。1階席も2階席もぱんぱんの満員。オーディエンスはみんな、期待に満ちた表情でざわざわしている。定刻を少し過ぎたところで暗転になり、オープニング・ムービーが始まった。それが終わると、スクリーンの向こうにKENTA、MOMIKEN、UZ、IKEの順にスポットライトに浮かび上がる。スクリーンが切って落とされ、いよいよライブのスタートだ。

UZがエッジの効いた音色のギターで、思い切りよくコードをカッティングする。アルバム『KINGDOM』のオープニング・ナンバー「THE WORLD IS MINE」だ。KENTAのドラムとMOMIKENのベースが刻むパワフルなリズムを背中に受けて、IKEが♪繋がれた自由を~解き放て♪と客席を挑発すると、それを受けてオーディエンスたちがのっけから歌い出す。待ち焦がれた気持ちを、そのままぶつけるように、オーディエンスたちの声がとにかくデカい。

曲が終わると、IKEが「よーーこそ、SPYAIRのライブへ!」と思いをこめて会場に呼びかける。すぐにKENTAがハイハットでカウントを取って「RAGE OF DUST」へ。『KINGDOM』と同じ曲順だ。ガツンとくる「THE WORLD IS MINE」とは対照的なメロディアスなロックで、左側のMOMIKEN、右側のUZがそれぞれの前にセットされているステップに上って、ビジュアル的にもIKEをサポートする。応えてIKEは♪この時代に叩きつけてやれ♪というフレーズを、文字通り叩きつけるように歌ったのだった。

SPYAIRが武道館のステージに立つのは、5年4カ月ぶりのこと。最初の武道館は、DJのENZEL☆の脱退ライブというドラマティックなものだった。しかし、今回の武道館ではメンバーそれぞれが強い思いを持っていて、前回以上にドラマティックになりそうな予感を抱かせる鋭い立ち上がりとなった。

「久しぶりー! 楽しむ準備はできてますか? 1階席~! 2階席~!あれ?? 2階席ってどこ?」と、いきなりIKEがボケる。するとUZが助け舟を出して、IKEは「やり直します(笑)。アリーナ!! 1階席~!! 2階席~!! 全力の武道館!! もっとアゲていきましょう!」

IKEのボケがいい感じに作用したのか、サウンドが落ち着いたようで、「アイム・ア・ビリーバー」あたりからIKEの歌うリリックがはっきり伝わってくる。そうなると、もうすっかりSPYAIRのペースだ。「0 GAME」で、僕の見ていた2階席が揺れ始めた。

『KINGDOM』の曲が中心だが、以前の曲を効果的に配したライブジェニックなセットリストが快い。『KINGDOM』からの「THIS IS HOW WE ROCK」ではIKEの歌とUZのラップががっちり噛み合って、SPYAIRならではのエンターテイメントをプレゼンテーションする。さらにはUZが、KENTAとMOMIKENの激しいバトルにギター・ソロで切り込んでいく。この曲はSPYAIRの夏の恒例野外イベント“JUST LIKE THIS”の2016年のテーマソングで、もともと壮大な楽曲を、大きく膨らませるバンドの意志が力強い。「THIS IS HOW WE ROCK」は中盤のハイライトとなった。

IKE 久しぶりの武道館なんで、しゃべりますか。5年ぶり? 6年ぶり?の武道館です。みんな、元気だった? このツアーは名古屋がファイナルで、今日は追加公演なんだけど、実質のファイナルは今日だよね。盛り上がろうぜ!

KENTA 初めての武道館は、みんなの声援が上から降ってくるような感じで、そういう思い出は美化されるものなのかなと思ってたんですが、今日は幕が下りた瞬間、頭上からっていうより、もう後頭部から降ってきて、凄かった。

MOMIKEN アリーナ!! 1階席~!! 2階席~!! 全力の武道館~!! やばいね、ビリビリくる。

UZ Twitterが復活したんだけど、4年前の状態で止まってたから、IKEが「SPYAIRを辞めます」って言って、俺が「絶対に諦めないから。」ってつぶやいてた。4年の時を経て、あきらめないでよかったぁ。

IKE あんときは・・・・みんな、ホントにありがとう! 僕らが返せるのは、言葉じゃない。歌を、曲を、しっかり届けていきたいと思います。『KINGDOM』の中からバラードを歌います。

壮大な「THIS IS HOW WE ROCK」の後、この生々しくて率直なMCをはさんでの「Be with」が凄かった。座ってMCをしていたIKEは、そのまま歌い始めた。サポートメンバーのtasukuのアコースティック・ギターが、美しく輪郭を彩る中、IKEの中域の声を活かしたボーカルが武道館の隅々まで到達する。やがてIKEは立ち上がって歌い出した。僕の隣の女性オーディエンスが泣いている。おそらくかなりの数のオーディエンスが、涙を流しながらIKEの歌を聴いていただろう。

昨年の“JUST LIKE THIS”で聴いたのより、数段アンサンブルが高度になった「MIDNIGHT」の後、MOMIKENとKENTAがソロを披露するセッションを経て、「BRING IT ON ~Battle of Rap~」に入る。IKEとUZが左右に分かれてアリーナに降りてラップ・バトルを展開。オールスタンディングのアリーナは大いにエキサイトする。SPYAIRはこうしたドラスティックな演出が得意だが、この日はそうした演出を封印して演奏と歌に集中してきたから、このパフォーマンスにオーディエンスの熱量が余計に上がる。バンドとしての王道を、SPYAIRが歩み始めたことが如実にわかる1曲となった。

ここからライブは一直線に盛り上がっていく。レーザーが乱舞する「Someday, Somewhere」、タオルを会場中が回す「サムライハート(Some Like It Hot!!)」ではMOMIKENもタオルを回して武道館全員が笑顔になる。UZもステージ中央でギター・ソロを取り、火に油を注ぐ。と思ったら、次の「現状ディストラクション」では本物の炎がステージのあちこちから上がって、ライブの温度は上がる一方だ。

「楽しいね。みんなはライブが好き? 俺らもそうなんだよ。だからここまでやってこれた。本気で辞めようと思ったよ。だけどあの時、みんな、助けてくれたよね。俺はその気持ちが忘れられなくて、メンバーも俺を引っ張ってくれて、今日また武道館に帰ってくることができました。いろいろあったけど、今もSPYAIRをやれていて幸せです。これからも俺たちはライブして生きて行こうと思ってます。今まであったことを話すことはできないけど、曲の中に閉じ込めていきます。聴いてくれますか? じゃ、歌うね」とIKEが言って最後の曲「スクランブル」が始まった。♪見えない明日を 探していた♪という歌詞は、SPYAIRのストリート時代も、存続の危機も含んだバンドの歴史の歌として聴こえてくる。ただそれは湿っぽくはならず、かえって明るい光を感じさせてくれるあたりは、前向きなバンドの姿勢がそのまま出ているのだろう。「Be with」とは違った意味で感動を呼ぶ、いい締めくくりの曲となった。

アンコールを求める声が、「Happy Birthday To You」の歌に変わっていく。そう、この日はIKEの誕生日なのだ。

張本人のIKEと、UZの2人がステージに入ってくる。

IKE どうすか? スタンディングの武道館は楽しいですか? 

UZ このツアーを回りながら、新曲を作りました。楽しみにしていてください。でも、そのお陰で、打ち上げに行ってない。つらかったぁ(笑)

IKE そうだった、そうだった(笑)。UZと2人で1曲やっていいですか?

新曲の報告をしたUZがアコースティック・ギターを持って、2人で「My World」を歌う。♪愛せるかな My World♪という歌詞の“My World”は、きっとこの武道館を指している。追加公演が武道館になったことは、SPYAIRの人間くさいドラマが、まだまだ続くことを暗示しているようだった。

そしてKENTAとMOMIKENがバースデーケーキを運びながらステージに登場。会場は再び「Happy Birthday To You」の大合唱になる。IKEは「こんなたくさんの人に祝ってもらったのは、初めてかも」と感激。そしてこのツアーのアンコールではお馴染みとなった“大抽選大会”では、この日のために特別に用意された「OVER」をオーディエンスの“リクエスト”に応えて披露。「やりたかった曲を、久しぶりに歌えました。選んでくれてありがとう」とIKE。一体感がますます高まったところで、「俺はステージで生の歌を届けたい。SPYAIRで歌えて幸せです」と、改めて決意を語る。「ラストは一緒に歌ってくれますか? 大好きな曲です」と、『KINGDOM』から「Goldship」を歌った。

名残りを惜しむオーディエンスに、IKEが生声で「また一緒にライブしようぜ!」と叫ぶ。いい意味でバンドの原点に戻った、見応えのある素晴らしいファイナルだった。

文 / 平山雄一 撮影 / 鳥居洋介、中島未来

SPYAIR TOUR 2018 KINGDOM
2018年4月18日 日本武道館

セットリスト

01.THE WORLD IS MINE
02.RAGE OF DUST
03.イマジネーション
04.アイム・ア・ビリーバー
05.C!RCUS
06.君がいた夏
07.0 GAME
08.Don’t Look Back
09.THIS IS HOW WE ROCK
10.Be with
11.MIDNIGHT
12.BRING IT ON ~Battle of Rap~
13.Someday, Somewhere
14.Brand New Days
15.サムライハート(Some Like It Hot!!)
16.現状ディストラクション
17.スクランブル
– Encore –
en1.My World
en2.OVER
en3.Goldship

SPYAIR

IKE (Vocal) / UZ (Guitar & Programming) / MOMIKEN(Bass) / KENTA (Drums)の4人から成る愛知県出身4人組ロックバンド。
2005年結成。2010年メジャーデビュー。デビュー以降、積極的なリリースと圧倒的なライブパフォーマンスで人気を博す。
東京ドームでのステージをバンドの次なる目標に掲げ、2016 年は富士急ハイランドでの野外単独ライブに13,000 人を動員、さらにはバンド史上最大規模のアリーナツアーを成功させるなど、夢の実現に向けて邁進中!
2017年8月30日にはニューシングル「MIDNIGHT」を、10月11日には2年ぶりとなる5thアルバム『KINGDOM』を発売。
この作品を携え、2018年1月26日東京・中野サンプラザを皮切りに全国ホールツアー『SPYAIR TOUR 2018 -KINGDOM-』を開催(全国21都市22公演)した。また国内だけではなく海外でのリリースはもちろん、韓国、台湾、中国、フランスでの単独公演を成功に収めるなど世界での活躍にも期待が高まる。

オフィシャルサイト
http://www.spyair.net

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