モリコメンド 一本釣り  vol. 63

Column

SOLEIL ネオGSと渋谷系を繋ぐ作家陣が作品に参加。“14歳の歌姫”擁するバンドの魅力とは?

SOLEIL ネオGSと渋谷系を繋ぐ作家陣が作品に参加。“14歳の歌姫”擁するバンドの魅力とは?

1980年代の終わり頃、東京には“ネオGS・ムーブメント”と呼ばれるシーンが局地的に盛り上がっていた。その中心的存在だったのが、ザ・ファントムギフト、ヒッピーヒッピー・シェイクス。1960年代のグループ・サウンズ(ザ・タイガース、ザ・スパイダース、ザ・ゴールデン・カップス、オックスなど)を下敷きにしていた音楽性を持った二つのバンドは、やがて同じようなルーツを持ったバンドと共鳴しはじめる。その代表がモッズをルーツに持つザ・コレクターズ、60年代リバプール・サウンドを体現するザ・ストライクスだ。ここからいきなり思い出話になるが、当時東京に来たばかりで「とにかくライブを観たい!」新しいカルチャーに触れたい!お上りさん状態の筆者は当然のようにネオGS系のバンドをチェックしてはイベントに足を運んでいたのだが、モッズ・スーツの男の子たち、サイケな色合いのワンピースの女の子たちが踊る姿を目の当たりにして「これが今の東京の音楽シーンか!」と盛り上がったのだった(その女の子のなかに漫画家の安野モヨコさんがいたという情報を聞いたのは、それから10年以上経った後でした)。ちなみにこの4バンドを中心にしたネオGS・ムーブメントは、60~70年代のルーツミュージックを再解釈するという文脈において90年代前半の渋谷系へつながるのだが、その説明をすると長くなるのでまたどこかの機会に。

14歳のボーリスト“それいゆ”を擁するSOLEILは、約30年前のネオGSムーブメントの系譜を継ぐバンドだ。“女子中学生のせつない気持ちを歌うガールズポップデュオ”たんきゅんデモクラシーのメンバーとして活動していた彼女が、元ザ・ファントムギフト、les 5-4-3-2-1の中心メンバーだったサリー久保田(B)、ヒックスヴィル、ましまろなどで活躍する中森泰弘(G)とともに結成したSOLEILは、2017年9月に1stシングル「Pinky Fluffy」でデビュー。フィル・スペクター風のウォール・オブ・サウンド直系のアレンジ、モノラル録音によるサウンドメイク、キュートすぎるボーカルがひとつになった楽曲、そして、1960年代のロンドンを想起させる“それいゆ”のファッションは、世界的に流行の兆しを見せているレトロ・ポップともリンクし、好事家のポップス・ファンから大きな注目を集めた。

SOLEILは2018年3月、1stフルアルバム「My Name is SOLEIL」を発表。サリー久保田、中森泰弘に加え、真島昌利(ザ・クロマニヨンズ、ましまろ)、近田春夫、カジヒデキ、かせきさいだぁ、高浪慶太郎(ex.ピチカート・ファイヴ)、イリア(ジューシィ・フルーツ)といった豪華な作家陣——まさにネオGSと渋谷系を繋ぐアーティストばかりだ——が参加した本作は、ポップスの黄金時代である60年代のサウンドをベースしながら、まさに“懐かしくて新しい”レトロ・フューチャー・ポップを見事に描き出している。

モータウン・サウンド(もしくはザ・ジャムの「Town Called Malice」)を彷彿とさせるベースラインを軸にした「魔法を信じる?」(詞・曲/サリー久保田)から始まる「My Name is SOLEIL」。このアルバムには、ルーツミュージックを完全に血肉化している作家陣による、優れたポップソングがたっぷりと詰まっている。 初期ビートルズ風のアンサンブル、ギターに対するトキメキを描いた歌詞がひとつになった「恋するギター」(詞・曲:真島昌利)、1960年代のゴーゴー・サウンドを現代に蘇らせる「姫林檎 GO GO!」(詞・曲:近田春夫)、キュートなメロディが印象的なガレージ系ロックンロール「夢見るフルーツ」(詞:イリア 曲:白根賢一& Nicky Bambino)、古き良き時代に憧れ、恋に恋する女の子を主人公にしたサーフロック「夏のウインク」(詞:サリー久保田 曲:高浪慶太郎)、軽快なスカビートに乗せて「さよなら昨日までのわたし お別れです/すぐ会えます 大人じみたわたしに!」という歌詞が響く「さよなら14才」(詞:かせきさいだぁ 曲:中森泰弘)。ポップスがいちばん輝いていた時代への憧憬をベースにしつつ、郷愁感と軽やかさを併せ持った楽曲は、単なる懐古趣味ではなく、すべての事象が並列になった現代における“本当に豊かなポップミュージック”の在り方を提示していると思う。もちろん、フランス語で太陽を意味する“それいゆ”の解放的なキュートネスをたたえたボーカルも本作の魅力。このアルバムのクオリティは、レトロポップ・ミューズとしての彼女の資質に導かれたと言っていいだろう。

文 / 森朋之

オフィシャルサイト
http://www.jvcmusic.co.jp/-/Artist/A026051.html

vol.62
vol.63
vol.64