Interview

鈴木このみ、田村ゆかりのふたりの歌姫による幻奏叙事詩(ファンタジーオペラ)を描く、アニメ初監督・森田と純平に聞く『LOST SONG』の壮大な世界

鈴木このみ、田村ゆかりのふたりの歌姫による幻奏叙事詩(ファンタジーオペラ)を描く、アニメ初監督・森田と純平に聞く『LOST SONG』の壮大な世界

主演声優初挑戦となるアーティストである鈴木このみと、演技はもちろん、歌唱力にも定評がある声優の田村ゆかりという、ふたりの女性が歌姫を演じる『LOST SONG』。その『LOST SONG』の監督を務めるのは、実写畑から入ってきたという森田と純平監督だ。森田と純平監督は、本作において監督だけでなく、原作、脚本、音響監督など作品の様々な部分に関わってきた。そこで森田と純平監督に、本作における歌姫役のふたりの声優について、そして初監督作品においてどのような物語を描こうとしたのか聞いてみた。

取材・文 / 加藤和弘(クリエンタ)


星の運命をも左右する“歌”を歌う
ふたりの歌姫による幻奏叙事詩

『LOST SONG』作品概要
『LOST SONG』は、架空の大陸・ヌーナシアを舞台に、歌を歌うことが大好きな田舎育ちの少女・リン、王都で民衆から愛される歌姫・フィーニスのふたりの歌姫の活躍を描いた壮大な幻奏叙事詩だ。傷を癒やし、水を生み出すなど不思議な力を持った歌を歌うことができるリンとフィーニスは、戦争へと突き進むヌーナシアにとって、救いにも滅びにもなる存在。そんなふたりの力を利用しようする多くの思惑が絡み、ふたりに過酷な運命が迫るのだった。

森田と純平 プロフィール
本作で監督を務めるのは、MAGES.所属の映像演出家である森田と純平。これまでに『Occultic;Nine -オカルティック・ナイン-』ではシリーズ構成を、『信長協奏曲』(アニメーション版)では各話監督を務め、本作で初めて監督を務めた。ドラマやドキュメンタリーなどの実写映像作品や舞台演出なども手がけており、実写畑からアニメーション作品へのフィードバックも楽しみな監督だ。

“歌”をテーマにしながらあえて狙った王道ファンタジー

本作の重要なテーマに“歌”が挙げられる。歌ものといえば、最近ではやはり真っ先にアイドルものかバンドものが頭に浮かぶが、本作で森田と純平監督が描こうとしたのは、王道ファンタジーだと言う。また、ビジュアル面に関しても今風のアニメーションとは一線を画していると感じたが、そこには森田と純平監督ならではの理由があった。

森田と純平「まずこの企画がスタートした際、「壮大な作品にしてほしい」「広く世界に拡散できるような作品にしてほしい」というリクエストがありました。そしてもうひとつのリクエストが歌を入れ込んでほしいというものでした。そのふたつの要素を入れて作品を作ってほしいということでしたので、まずはふたつの要素を軸に作品を考えていったのですが、実は現在の『LOST SONG』の形は当初の企画からあまり変わっていません。

歌と言えば“アイドルもの”が真っ先に浮かぶと思うのですが、僕はあまりそういうものはやらなくていいなと思ったんですよ。僕よりももっと得意な方がいるでしょうし、それよりは僕が好きな要素を入れていった方がいいなと思ったんです。

僕はハリウッド的な王道作品が好きで、わかりやすい伏線と回収があって、オチが気持ちいい作品が好きなんです。ゲームも好きで、ゲームだったら『ドラゴンクエスト』のような王道のファンタジーが好きだったんです。それもあって、伝記物というか神話物にすることで壮大な物語を作れるんじゃないかと。そこに歌という要素を入れてみたら面白いんじゃないかなと思って生まれたのが『LOST SONG』なんです」

森田と純平「ビジュアルに関しても企画当初から頭の中にあって、最終的な形とそれほど差はないですね。僕が萌えなキャラクターにあまり興味がなくて(笑)、もちろんそういったキャラクターをうまく活かせる方もいると思うのですが、僕がやっても面白く作れないだろうなと思ったんです。

もちろんキャラクターとしての個性は立てなければいけないのですが、作り方としては、ビジュアルでどーんと前面に出てくるキャラクターを作って物語を作るのではなく、見た目ではなくキャラクターの内面を活かした物語を作りたかったんです。そうなるとあまり派手な格好や色使いはハマらないかなと。今時の作品からするとふんわりとした印象のキャラクターになっているかと思います」

フルオーケストラにより劇伴が彩る王道ファンタジー

歌をテーマにした壮大な物語を描くとなると、当然劇伴が重要になってくるだろう。そんな音楽についてと、歌からどのように物語が生まれたのかについて聞いた。

森田と純平「まず始めにプロットをいきなり書き始めたんですが、物語を書いているうちに、壮大な楽曲が欲しいなと思ったんです。打ち込み系の音楽ではなく、バンドものでもなく、世界観に合わせていわゆるフルオーケストラの音楽が欲しいなと思ったんですよ。この作品にも「宮廷楽団」というのが出てくるのですが、お城でコンサートをしているようなイメージですね。オペラのような壮大な合唱曲をやってみたいなと。そこから“幻奏叙事詩(ファンタジーオペラ)”というテーマが生まれてきました。

ただ僕はイメージしているフルオーケストラを再現するのにどのくらいの予算がかかるのか見当も付かなかったので、プロデューサーの顔はずっと引きつっていましたね(笑)。収録も音楽用のホールを借り切って、そこにフルオーケストラの人たちをお呼びして行ったんです。今回エンジニアは浜田純伸さんにお願いしたのですが、スタジオジブリ作品や北野武監督作品にも参加されている方で、その方にホールでのマイクの置く位置や向きなど全てを見ていただいて、ホールで録るということにこだわりました。それもあって音楽に関しては凄くゴージャスなものになっていると思います」

森田と純平「僕の中では「ふたりの歌姫」というよりは、「ふたつの歌」として物語を作っていったんです。そこから膨らませていったら自然にふたりの主人公になったという感じです。物語に深く関係する歌がふたつあって、それぞれをキャラクターに当てはめていったというイメージです。その時、なんとなく歌う少女というイメージがあって、ふたりの歌姫になりました。

このふたりが“誰かのために歌う”というのが作品のテーマになっています。彼女たちが誰かのために歌うことで物語が展開していくし、誰かの人生を変えてしまうこともある。世界観を壮大なものにしているので、テーマに関しても人の気持ちを動かしていくという大きなものを掲げています」

森田と純平「実際、1話ではリンが歌うことで物語が大きく動き始めます。王道と言いますか、主人公が凄く大きな運命を背負い、そこから旅立つというのは、昔の神話やおとぎ話でも同様ですよね。だから1話という導入部分としては、凄く王道的な内容になっているかと思います。そこから僕なりの違った展開を見せていければと」

実写畑を経験した監督ならではのこだわりと設定好きな一面

本作では監督以外にも原作、脚本、音響監督と様々なパートも担当した。もちろん複数のパートを担当することで大変な苦労もあったと思うが、自分が想像した世界を描くのにこれ以上適した仕事の仕方はないのではないだろうか? はたしてその関わり方は、作品作りにどのように影響したのだろうか?

森田と純平「僕は元々実写畑の出身で、映画やドラマ、ドキュメンタリーと様々な映像作品に関わってきたのですが、アニメーションほど大変な仕事はないなと思いました(苦笑)。すべてがゼロの世界で、すべてを作らなければならないというのが非常に大変でしたね。

実写だと、打ち合わせのシーンを撮るとなった場合、カメラを置いて、キャストの方を配置して小道具を置けばそのシーンが成立しますが、アニメーションの場合は、その小道具の素材から描き込まなければいけないんです。例えば、木だったらどんな木目なのか、光源によってどう描かれるかなど。とにかく関わる方が多く、その方たちに指示を出すために膨大なものを決めるというのが実写に比べて大変でした」

森田と純平「しかもオリジナルでファンタジーですからね、初監督作品としてはやり過ぎてしまいましたね(笑)。でも架空の世界のお話ではあるのですが、リアリティを持たせたいというのもあり、地球の歴史を勉強して、この世界でもこのくらいの時代にはこんなものがあっただろうという設定を作っています。ただそれをあまり突き詰めていくと自由度がなくつまらないものになってしまうので、ある程度は幅を持たせています。イメージ的には中世ヨーロッパの11世紀から17世紀くらいで、そこからいいとこ取りをしている感じですね。

資料を作るのが好きなので、みんなと共有できるように設定書も作りました。作品には登場しない部分もかなり作っていますよ。アニメーションの場合、海外の方に発注する場合もありますし、その時に自分が何を描いているかわからないまま進められるのは避けたいなと思って、そのための設定書でもありますね。ちなみに1話から絵そのものに伏線を仕込んでいるので、ある程度観たあとにまた最初から観ていただくと「おおっ!」と気付くことがあると思います」

森田と純平「今回は原作、脚本、音響監督と色々なことをさせてもらっているのですが、色々なセクションに関われるので自分のイメージを表現しやすいとは思っています。原作を考えて、それに従って脚本を書いて、脚本を書いている時にここではこんな音楽が鳴っているなとか考えるのですが、それを作詞・作曲の方に伝えてイメージした音楽を作ってもらえますし、そういった意味ではもの凄く大変でしたが結果的には色々なことに関われてよかったなと思っています。

アフレコ現場でもキャストの皆さんが積極的に世界観について質問してくれるんですよ。今回、収録の前に「顔合わせ」と「本読み」を行ったんです。アニメーション業界で言う本読みは脚本の打ち合わせを指すのですが、今回はキャストの皆さんに一回集まっていただいて、そこで先ほどの僕が作った資料をモニターに映しながら世界観について説明して、そのあと脚本からいくつか抜粋したシーンをキャストの皆さんに演じてもらったんです。そこで僕もキャラクターと声優さんのイメージが掴めて、このキャラクターはこんな感じでという風に話をして、それから収録に入ってもらいました」

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