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【放送は終了したけど…】今からでも観るべきおすすめ&隠れた良作アニメ3選(2018年1~3月編)

【放送は終了したけど…】今からでも観るべきおすすめ&隠れた良作アニメ3選(2018年1~3月編)

業界の常識を打ち破る野心作『ポプテピピック』、キャンプ場の動員増に貢献中の究極の癒しアニメ『ゆるキャン△』など話題作を多数輩出し、“豊作”と呼ばれた2018年冬アニメシーズン。それら話題作の陰には、ひっそりと光を放つ良作が眠っている。そこで、本誌ライターが個人的に心惹かれた「見逃しておくには、もったいないなさすぎる」名作・良作を、全話放送済みにつきイッキ見可能となった今あらためて紹介したい。ゴールデンウィークにぜひ!!

文 / 阿部美香


ヴァイオレット・エヴァーガーデン(全13話)

熾烈な大陸戦争のなかで、感情を持たない“武器”として戦うことしか知らなかった少女、ヴァイオレット・エヴァーガーデン。戦列を離れ、ひとりの人間として生きることになった彼女は、戦火のなかで離れ離れになった大切な人=ギルベルト・ブーゲンビリア少佐から告げられた、ある言葉の意味を知るため、手紙の代筆をする“自動手記人形”として働き始める――。

本作は、『涼宮ハルヒの憂鬱』『けいおん!』『Free!』『響け! ユーフォニアム』、映画『聲の形』など綺羅星のような名作を作り続ける京都アニメーションが手がけた、暁佳奈著の第5回京都アニメーション大賞受賞小説のアニメ化。美しく丁寧に描き込まれた作画、魅力的なキャラクター造形、映像作品だからこその緩急巧みな大胆な演出で知られる“京アニ”の実力の高さはよく知っていたつもりだったが、観る前は、「冷血な戦闘マシンが人の心を取り戻す話? ちょっとありがちじゃない?」と正直、軽んじていたことをここに告白したい。その上、「京アニなんだもの、どうせ画もキレイで、めちゃいい話なんでしょ?」と、相当ひねくれた態度で観始めたのだが……第1話ですっかり虜になってしまった。京アニさん、本当に申し訳ありません!

観ている感覚は、アニメというより、まさに映画、洋画だ。物語は、様々な人の“想い”を受け取り、それを手紙にすることで、人の温かみや様々な感情に触れていくヴァイオレットの成長を描きながら、彼女が殺人機械として少佐の命令で動いていた戦場での回想を挟み込みながら進んでいく。次第に人間らしさを取り戻していくヴァイオレット……と書いてしまうと、ありきたりなドラマと思われてしまいそうだが、本作の魅力はヴァイオレットの心の成長を、いちいち「ほら、こんなに人間らしくなったんですよ」とさらけ出すことはせず、彼女と仲間たちの会話の端々、行動の端々によって上品に仄めかしていく演出が巧みだ。

だからこそ、観る側は最初から最後まで鼻白むことなく、実直で素直でひたむきで、己の信じるもの(=少佐)に向かって無垢な想いを寄せるヴァイオレットに、どんどん感情移入できていく。だからこそ、後半で明らかになる、ヴァイオレットの心を唯一支えていた少佐のその後についての事実に直面したときの心の叫びが、より大きく胸を打つのだ。

その感情移入度を、より高めていくのが映画的アニメーションの力だ。細部まで描き込まれた作画そのもの巧みさはもちろんだが、空間性や奥行きを実感させる丁寧なレイアウトとカメラワークも秀逸。なかでも注目して欲しいのは、色彩表現と音響だ。人物はもとより、室内や戦場、街の様子などは落ち着いたトーンの中間色を重ね合わせて構成される本作の色彩。そのベースがあってこそ、ヴァイオレットや彼女が触れ合う人々の心が解き放たれるとき、鮮やかな自然=緑の草木や晴れやかな空がビビッドな色合いで目に飛び込んできて、観る人の心をキレイに浄化してくれる。

そして音響。映画音楽を彷彿とさせる、流れるようなストリングスを中心とした劇伴の良さだけでなく、台詞を語るキャラクターがいる環境にマッチした音響演出が、丁寧に施されていることにも驚かされる。例えば第1話。少佐と別れ別れになった戦場で傷つき、隔離されていたヴァイオレットを、少佐の親友であるクラウディア・ホッジンズが引き取りにいくシーン。ふたりは馬車で街に戻るのだが、馬車内のふたりの会話には、屋外での会話とは違うかすかなエフェクト(残響)がかけられ、ここが狭い馬車の中であることをリアルに感じさせてくれる。そういった丁寧な音響、作画処理の積み重ねが、本作の映画的演出の重厚さを際立たせている。

過酷な戦場で、少佐から命令される「戦うこと」以外、何も経験してこなかったヴァイオレットは、戦いを離れて彼女が生き続ける意味を、「“愛してる。”を知りたいのです」と言う。それは、少佐がヴァイオレットに最後に告げ、彼女がこれまでの人生の中で一度も触れてこなかった言葉だ。そして全13話中、最後まで彼女は“愛してる。”が理解できたと明言することはない。だが観る者は、ヴァイオレットが「“愛してる。”がどういうことかを知った」ことを知っている。心に残る名作とは、そういうものなのだと思う。

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』オフィシャルサイト

Netflixで『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を観る

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