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小田和正からツアー直前に届けてくれた!ドラマ『ブラックペアン』主題歌含む新作が見せてくれる色とりどりの世界

小田和正からツアー直前に届けてくれた!ドラマ『ブラックペアン』主題歌含む新作が見せてくれる色とりどりの世界

小田和正のニュー・シングルは、表題曲+カップリングというわけではなく、“両A面”ならぬ、4曲すべてが“総A面”な作品集だ。実際、どの曲を聴いても、言葉とメロディが在るべき場所に在るべき形で響いていて、説得力バツグンである。そもそも優秀なポップスは、初めて聴いたその日から、そんな印象を与えるものが多いのだ。
ジャケットは、ツアー中、香川を訪れた際、コンサートの成功を祈願し、金比羅宮へ向かう道すがら、である。でもこの絵柄、「この道を」も「会いに行く」も「坂道を上って」も「小さな風景」も、どこかしら何らかの形で、これら楽曲タイトルともイメージが繋がっていく気がする。ちなみに、アーティストが後ろ姿っていうジャケは、非常に珍しい。ではさっそく、曲順どおりに聴いていこう。

1曲目の「この道を」は、ドラマ『ブラックペアン』主題歌である。小田は依頼を受けた時点で「音楽的にはこういう風にしようと決めていました」とコメントしている。具体的には“バラードを書こう”ということだったようで、しかし制作中、バラードはバラードでも、どんなテンポにしようかと、あれこれ試行錯誤もあったそうである。でも聴いたところでは、しみじみというより、前を向いてく気高さが伝わる仕上がりに思う。
歌詞に関しては、ドラマの制作スタッフの熱い想いを聞き、でもそれが、そもそも自分が歌いたい事にも近いことに気づいてからは、作業も加速していったという。とはいえ小田は、こうもコメントしている。「ドラマが書かせてくれた曲です」。さて、どういう意味だろう? もともと己に備わり、価値観の根幹となっているようなことに、再び気付かされた、ということかもしれない。
歌にピアノ、ストリングス、コーラスと、ごく限られた要素で構成されているが、そうは思えない表現領域が広がり、味わい深い。音楽を知り尽くした人が、さらに貪欲に、表現を研ぎ澄まさないと辿り着けないような、そんな音源が,ここに誕生した。個人的には総ての小田作品のなかでも上位に入るくらい、大好きだ。

「会いに行く」は、毎朝『めざましテレビ』で流れている番組のテーマ曲である。朝の曲なので、4時55分、この番組を放送開始から観てみたが、いきなり小田の歌声が流れてきた。それは若葉の表面で遊ぶ水滴のように透明感でもって、部屋に響いてきた。まさに朝の空気感に似合う声のボーカリストだ。
さらにこの曲は、5月4日にスタートする、自身のコンサート・ツアーにおいても、テーマ曲となりうる作品だろう。前回のツアーでいえば「君住む街へ」が果たした役割を、新たに担うかもしれないのがこの作品である。 イントロから多色なイメージの、キラキラした雰囲気で、しなやかな疾走感を伴ったバンド・サウンドが心地良く、ぜひコンサート会場で体を揺らしながら聴きたい。歌詞の中の“信じようとするひとの 力になる”というフレーズは、もう、素敵過ぎる! 自分もそんな“ひと”になりたいと、切に願う。

「坂道を上って」は、映画『坂道のアポロン』の主題歌だ。この映画は友情あり、恋愛あり、さらにはジャズの演奏に青春をかける、そんな主人公達のドラマだ。坂道、坂道と、この言葉が続いたけど、主人公達が通う高校は、けっこうな坂の上にあるのだ。そして偶然にも小田が中・高6年間通った学校も、「海を見下ろす高台にあった」といい、まさに歌のタイトルのように、坂道を上って通学したそうだ。なのでこの歌は、自分を重ね合わせて書いた部分もあったのだろう。映画の時代背景は60年代中頃である。小田の高校時代は、それより少し早かったけど、60年代には変わりない。
映画を観た。エンド・ロールとともに、曲が流れる。まるで手品のように、映画の総てのシーンが、この楽曲のなかに収斂されていった。大人になる手前に味わう、ほろ苦さや甘酸っぱさが、瑞々しく描かれている。もちろん小田の歌声も、この上なく、瑞々しい。

ドラマ『遺留捜査』といえば、2011年にスタートした際、小田は「やさしい風が吹いたら」を書き下ろしている。そして今回、同じドラマの続編に、新たに書かれたのが「小さな風景」だ。メディアに出されたコメントのなかに、「出来るだけ言葉数を少なくと初めから考えていました。短く印象的な歌にしたかった」とあるが、この言葉どおり、無駄な表現が一切無い楽曲である。それでいて、心の奥にまで届き、ずっと余韻が続くような、そんな聴き心地なのである。
歌詞全体をみれば、過去へと想いを馳せる部分が多いが、後ろ向きなわけではなく,演奏やメロディからは、薄日が差すかのような温かさも感じられ、明日を生きようとする主人公の、確かな息づかいが伝わってくる。行間こそを読み取る歌かもしれない。“小さな風景”とは、いったいどんなものなのか…。想像しながら聴くのもいい。

以上である。この4曲を、ぜひじっくり聴いて欲しい。この文章の冒頭で、“総A面”などと書いたけど、けして大袈裟じゃないことが、分かってもらえるはずである。

文 / 小貫信昭

ライブ情報

明治安田生命 Presents
ENCORE!!
KAZUMASA ODA TOUR 2018

5/4(金・祝)/5(土) グランメッセ熊本
5/12(土)13(日) 静岡エコパアリーナ
5/19(土)20(日) 函館アリーナ
5/26(土)27(日) ビックパレットふくしま
6/5(火)6(水) 神戸・ワールド記念ホール
6/13(水)14(木) 名古屋・日本ガイシホール
6/20(水)21(木) 大阪城ホール
6/26(火)27(水) さいたまスーパーアリーナ
7/3(火)4(水) 横浜アリーナ
7/14(土)15(日) 宜野湾海浜公園屋外劇場
7/21(土)22(日) 松江市総合体育館
7/28(土)29(日) さぬき市野外音楽広場テアトロン
8/8(水)9(木) 武蔵野の森総合スポーツプラザ・メインアリーナ
8/18(土)19(日) いしかわ総合スポーツセンター
8/28(火)29(水) 日本武道館
9/6(木)7(金) 盛岡タカヤアリーナ
9/12(木)13(水) 大阪城ホール
9/22(土)23(日) マリンメッセ福岡
9/29(土)30(日) 朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター
10/5(金)6(土)宮城セキスイハイムスーパーアリーナ
10/12(金)13(土)真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
10/18(木)19(金)広島グリーンアリーナ
10/24(水)25(木)名古屋・日本ガイシホール
10/30(火)31(水)横浜アリーナ

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小田 和正 (おだ かずまさ)

1947年9月20日生 神奈川県横浜市出身
東北大学工学部、早稲田大学理工学部建築科修士課程卒業

1969年オフコース結成。
翌70年、プロとして音楽活動を開始、「愛を止めないで」「さよなら」「言葉にできない」などのヒット曲を発表。82年には日本武道館連続10日間公演を実施。日本の音楽シーンに様々な記録を残しつつ、89年2月、東京ドーム公演を最後にオフコース解散。
その後、プロデュース活動を経てソロとしてアーティスト活動を再開。
91年に発表したシングル「ラブ・ストーリーは突然に」は270万枚を超える大ヒット作となった。
映画やテレビ特番などの映像監督としても活躍し、これまでに「いつか どこかで」(92年)、「緑の街」(98年)の2本の映画監督作品を発表している。
2001年からは毎年12月に「クリスマスの約束」(TBS)と題した音楽特番を放映し好評を博している。
2002年に発表したベストアルバム「自己ベスト」は、出荷数300万枚を越え、発売から足掛け11年で500週のランクイン(=TOP300入り)を果たす史上初の快挙を成し遂げている。
2011年4月20日、オリジナル・アルバム『どーも』発表。業界紙オリコンにてチャート1位を獲得。
2016年4月20日、オールタイムベスト「あの日 あの時」を発表。アルバム1位を獲得し最年⻑記録を更新した。
2018年、40万人動員全国アリーナ古希ツアー「KAZUMASA ODA TOUR2018」(全国21会場 48公演)の開催が決定しており、古希を迎え今も尚制作、ライブとますます精力的に活動を続けている。

オフィシャルサイトhttp://www.fareastcafe.co.jp