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慈しみの“愛”が観客の心を癒す舞台――植田圭輔ら出演「ミュージカル『しゃばけ』参〜ねこのばば〜」絶賛上演中!

慈しみの“愛”が観客の心を癒す舞台――植田圭輔ら出演「ミュージカル『しゃばけ』参〜ねこのばば〜」絶賛上演中!

4月28日(土)より、新宿のシアターサンモールにて、「ミュージカル『しゃばけ』参〜ねこのばば〜」が上演中だ。原作は、畠中 恵の人気小説『しゃばけ』(新潮文庫刊)。人間と妖(あやかし)が織りなす幻想的なミステリーだ。シリーズの刊行15周年を記念し、シリーズ1作目をミュージカル化した「ミュージカル『しゃばけ』」は、2017年に上演されるや大ヒット。同年9月には2作目となる、「ミュージカル『しゃばけ』弐~空のビードロ・畳紙~」が早くも上演された。3作目となる本作では、多くのファンに愛される「ねこのばば」の物語を下敷きに、歌と踊りを魅せて楽しませつつ、人間の存在について深く考えさせられる内容で、おまけに最後には“ほんわか”した気分に。そんな貴重な体験ができた観劇レポートをお届けしたい。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 鏡田伸幸

“ありのまま”の自分を見つめることの大切さ

休憩を含め、約2時間の舞台の終演後に訪れた“ほんわか”した慈愛の空気。思わず笑顔になってしまうほど、色彩豊かで幸せな感覚が心に宿ってくる。明転しカーテンコールが終わった役者のいない舞台上には、“しゃばけ”という小宇宙が誕生していた。そんな1回しか味わえない奇跡を経験できた喜びと、劇場に屹立した“愛”を作り上げた座組みに惜しみない拍手が続く。人を愛し愛されることの大切さをひしひしと感じる。そう、この作品の世界は、すべてが優しい。

物語は、廻船問屋兼薬種問屋・長崎屋の病弱な若だんなの一太郎(植田圭輔)が、大切にしていた“桃色の雲”を失くすところから始まる。落ち込む一太郎だったが、ねこまたたちに「妖封じで有名な広徳寺の寛朝和尚(石坂 勇)に仲間が捕まってしまった」と助けを求められ、久しぶりに外出することに。過保護な手代の仁吉(中村誠治郎)、屏風のぞき(藤原祐規)、守狐(福井将太)と連れ立って広徳寺を訪れると、そこで彼らは僧侶の死体を発見してしまう。長崎屋一行が犯人を捜そうとすると、寛朝が一太郎に取引を持ちかけてきて……。

原作はミステリーということで、当然ジェットコースター的な緊迫する展開はあるが、どこか気を許せる妖たちが、明るく舞台上で生きているため、彼らと手を取り合って切り抜けられるような気持ちになる。過保護な仁吉(中村誠治郎)は、一太郎が気になってしょうがないその様子が可愛らしい。世話焼きだけど、どこか抜けている屏風のぞき(藤原祐規)と、彼のツッコミ役の守狐(福井将太)は、可愛らしい漫才コンビを結成していて、客席を大いに笑わせる。妖という人間でない存在が人間を慈しみ、人種を超え、性差を超え、国境を超える普遍的な愛。どこかいまの殺伐とした時代に必要な感覚を覚えさせてくれる。

そして、全編を通じて優しい“笑い”が通奏低音で流れているので、心はついつい踊ってしまうのだが、だからこそ、今作のテーマである人間の“業”が余計に際立ってくる。脚本・作詞の神楽澤小虎は、原作に忠実でありつつも、心の“ありのまま”を見つめて、生きることの大切さを訴えてくれる脚本を丁寧に書き上げた。そして、ジャズ・ベーシストのように小気味好く言葉と歌詞を刻む。演出・音楽の浅井さやかは、その辺りをよく理解した上で、わかりやすくて可愛いい、おまけに誰にでも口ずさめる音楽を書き、歌やダンスを軽やかに演出して歌って応える。

観劇した日の日替わり「ねこまた」の廣野凌大は、クスッと笑わせる仕掛けを作っていて、違うねこまたを観に何回も足しげく通いたくなる。その前提には、物語の主軸を担う一太郎という存在があるからではないか。

一太郎を演じる植田圭輔は、柔らかい物腰でありながら、鋭い推理を見せる観察眼、その演技のオン/オフのスイッチの切り替えの素早さと、歌とセリフのキレ味に思わずため息が出る。まさに完成度の高い演技とはこのことなのだろう。彼は、“植田圭輔だけの一太郎”として舞台上生きていた。

囲み取材では「大切なもの、きれいなものを独り占めしたいと思う気持ちがいつかすすけてしまわないように」と作中のセリフを引用し、「お芝居が好き、この作品が好きだという気持ちが私欲にならないよう、あくまでもお金を払ってきてくださるお客様に届けるものであるということを自覚し、今まで紡いできてくれた人たちの気持ちを積んで、『しゃばけ』を届けていけたら」と律儀に語っていた。彼の役者として、座長としての気持ちは、十分に客席に届いただろう。

中村誠治郎は真面目に、それでいて力強く仁吉を演じていた。藤原祐規はお笑い係として舞台を動き回り、福井将太はツッコミをいれつつ時にお茶目にポーズを決める。広徳寺の御坊である秋英は、人間の“業”を露わにする役所だが、それを歌い上げる法月康平の歌の上手さときたら! まさに絶品で、彼のむせび泣くようなファルセットを聴くとついついこちらも泣いてしまう。

寛朝役の石坂 勇は、「世の中は金だ」というふてぶてしい態度で、綺麗事にそっぽを向いた御坊を演じているのだが、どこか嘘ぶいたそぶりに見える強情っぱりな演技やダンスと歌がかっこいい。そして、時折みせる可愛らしい仕草で、絶対に忘れられない役者になるはずだ。

この舞台から滲み出るテーマの説得力は、やはり座長の植田圭輔が生み出した部分が大きいだろう。彼の意気を感じた座組みが作り上げたといっても過言ではない。それらを支えたスタッフにも大きな賛辞を送りたくなる。完成された座組みが生み出した“しゃばけ”という小宇宙は、とてつもなく明るくて綺麗だ。観客は、ただ空を見上げて“ほんわか”美しいと嘆息を漏らすだけでいい。多くの人の持つ“心のわだかまり”がすべて洗い流されるだろう。そんな奇跡の体験を約束してくれる舞台だ。

公演は4月28日から5月7日まで東京・シアターサンモールにて。5月19・20日は大阪・大阪ビジネスパーク円形ホールで上演される。

公演を見逃した人にも朗報!

本公演のDVDとライブ録音のCDがリリースされることが決定した。発売は10月31日の予定。もちろん、観劇した人も改めて楽しめるように、5月20日までの公演期間中に通販サイト・CLIE TOWNでDVDを予約すると、日替わりゲストによるねこまた出演シーンを収録したDVDがもれなくプレゼントされる。さらに同サイトで、公演期間中にDVDとCDを同時に予約購入したユーザーには、メインキャスト6名の舞台写真6枚セットが贈られる。さて、第4作はいつになるだろう。そんな想像を膨らませながら、いつまでも舞台の余韻に浸っていよう。

ミュージカル「しゃばけ」参~ねこのばば~

東京公演:4月28日(土)~5月7日(月) シアターサンモール
大阪公演:5月19日(土)・20日(日) 大阪ビジネスパーク円形ホール

■STORY
大切にしていた珍かな“桃色の雲”を失くしてしまい落ち込んでいた長崎屋の若だんな(一太郎)だったが、猫又たちに助けを求められ、久しぶりに外出することになった。
なんでも、妖封じで有名な広徳寺の寛朝和尚に仲間が捕まり、いつ退治されてもおかしくない状況なのだと言う。急ぎ、過保護な手代・仁吉(白沢)と、長崎屋の妖たち屏風のぞき・守狐と共に、広徳寺を訪れた一太郎だったが、なんとそこで、僧侶の死体を発見してしまう。
「下手人は、必ずこの寺にいる」
一太郎に取引を持ちかける寛朝と、怪しい動きをする若い僧・秋英。それぞれの思惑が交錯し、思いもよらぬ秘密が暴かれることとなり……。

原作:畠中 恵「しゃばけ」シリーズ(新潮社刊)より『ねこのばば』所収「ねこのばば」
脚本・作詞:神楽澤小虎
演出・音楽:浅井さやか

出演
一太郎(若だんな) 役:植田圭輔
仁吉 役:中村誠治郎
屏風のぞき 役:藤原祐規
守狐 役:福井将太
秋英 役:法月康平
寛朝 役:石坂 勇
あきつ来野良
市川真也
田中大地
松山祐樹

日替わりねこまた(五十音順)
阿澄佳奈
加藤良輔
川隅美慎
桑野晃輔
椎名鯛造
鈴木裕斗
芹沢尚哉
廣野凌大
深澤大河
古谷大和
松村龍之介

オフィシャルサイト
https://www.clie.asia/shabamu/

Twitter
@clie_seisaku

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