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マンガ『そのオムツ、俺が換えます』が指南!「イクメン」の先にある男の育児の葛藤、そして夫婦円満の秘訣

マンガ『そのオムツ、俺が換えます』が指南!「イクメン」の先にある男の育児の葛藤、そして夫婦円満の秘訣

共働き世代が増え続けている昨今。「夫は仕事に励み、妻は家庭を守る」といった価値観は崩壊し、家事はもちろん、育児もいまや女性だけのものではなくなった。一時期もてはやされた「イクメン」も隔世の感のある今だからこその育児マンガが『そのオムツ、俺が換えます』だ。
帯に「妻に見せる育児を実践する夫の本音満載育児エッセイ」とあるように、本書はいわゆる育児エッセイというよりは「育児してる俺」を妻にアピールしたい男の苦悩と成長の記録とでもいうべきものだ。

朝、慌ただしく出勤の支度をしている妻の背後で娘のオムツを手際よく替えながら「こんな俺を見てくれーっ」と念を送り、妻の感謝の言葉を「いやいやこんなの別に普通でしょ~」と軽く受け流しながらも、心の中で「よっしゃ~!!」とガッツポーズをとる。仕事を徹夜で終わらせて参加した保育園のイベントでは、率先して娘をデジイチで激写。無言でシャッターを切りながら「プレイスレスな瞬間を見逃さない俺を感じてくれー!!」と背中でアピールする。

そんな姿だけ見れば、男性とはつくづく褒めてもらいたい生き物よのぉ…と失笑せずにいられないのだが、そんな彼のイクメン承認欲求を掘り下げてゆくと、自身は妊娠・出産できるわけでもなければ、母乳を与えらるわけでもない男という性、育児における存在の希薄さや疎外感のようなものがジワジワと浮かび上がってくるのが興味深い。
まだ娘が生まれる前、妊娠してお腹が大きくなるにつれて、それまで一緒に海外ドラマを見たり、ゲームをして夜更かししていた妻が早寝するようになり、長かった髪も邪魔だからとバッサリ切るなど、どんどん変わってゆく。そのスピードに著者が付いてゆけず「そんなにひとりだけ大人にならないでくれ…」と焦燥する下りには、女は女で激変する自分の身体に戸惑いや不安を抱えてるのに、何を身勝手な!とツッコミたくなるが、同時に、男は男なりの悩みがあるのだなあ…と目からウロコが落ちる。

「そんなひとりだけ大人にならないでくれ」と夫の願いは…  ©宮川サトシ/講談社

結局、子供ができても男がすぐに父親になれないように、女も子供を生んだからといってすぐに母親になれるわけではない。本作の「試されている」ネタのように、日々子供によって試されながら成長させてもらっている、というのが実際のところだろう。

傑作なのが、著者が妻に内緒で貯めている「育児ポイントカード」のエピソードだ。己の育児ぶりを己のさじ加減で日々数値化して記録、貯まったポイントに応じて「リビングでプレステやっても良い」「飲みに行っても良い」などのご褒美が与えられるというもので、要は実際には存在しない妄想上のカードなのだが、これには「私も持ってる!」と女性の立場で私も心から共感してしまった。

育児というものは仕事とは違い、いくらやってもゴールはないし、誰からも評価されない虚しさが常につきまとう。もちろん、我が子の笑顔や成長は他の何にも換えられないプライスレスなご褒美ではあるのだが…。女性の場合は特に、まだまだ「やって当たり前」「足りてなければ毒母扱い」の世の中だからこそ、せめて家庭内では家事を休めたり、ひとりで飲みに行ったりできる「育児ポイントカード」の保持を推進すべし!と主張したい。
子供のいる夫婦は 育児という共通のミッションに立ち向かう相棒であり戦友だ。だからこそ、足りないところを非難するのではなく、がんばりを認め、ご褒美を与えあうことが夫婦円満の秘訣だと思うのだが、さて…?

文 / 井口啓子

漫画『そのオムツ、俺が換えます』

宮川サトシ(著)

モーニング
講談社

あえて言おう。全ての夫は妻に褒められたくて育児をしている…と! (諸説あり)世の中のお父さんたちがずっと思ってたけど、ずっと言えなかったこと。本音満載の新感覚育児エッセイ

©宮川サトシ/講談社