Interview

ポルカドットスティングレイ 快進撃を続けるバンドが新作の先に見通す、大いなる野望を訊く

ポルカドットスティングレイ 快進撃を続けるバンドが新作の先に見通す、大いなる野望を訊く

快進撃を続けるポルカドットスティングレイ。昨年11月にリリースした初めてのフルアルバム『全知全能』を携えての全国ツアーは全14公演とも即完。各地で大興奮のステージを展開してきたばかりだが、早くも新しいミニアルバム『一大事』が完成。多彩なサウンドに乗せて様々な恋愛局面を描いた楽曲たちがラインナップされたその内容が彼らの活動をさらに加速させていきそうだが、そのフロントに立つ雫のスタンスはあくまでも揺るぎなく、冷静にバンドの未来を見通している。

取材・文 / 兼田達矢

我々のライブは初めてという人がこれからどんどん増えていくわけだから、そういう人とも最初から一緒に楽しめるやり方を考えないといけないなあと思いました。

まずは、先のツアーの感想から聞かせてください。

 ウチは今、インディーズの規模からメジャーの規模にすごいスピードでグイと上がろうとしてて、今回はツアーも規模が急激に大きくなろうとしている過渡期だったので、公演によって環境がガラッと変わったんですね。ある公演はお客さんもすごく近くて人数もそんなに多くないけど、別の公演はすごく広くて音の跳ね返りもすごくてお客さんも遠いから我々のことをあまり見えていない、っていう感じで。ウチはそもそも大きいハコのほうが得意なバンドなんですけど、小さいところでワンマンをやる感覚というのを最近ちょっと忘れてたんで、今回やって小さいところの難しさを思い出した感じでした。ただ、そのおかげで公演ごとに新鮮な気持ちでやれたということもあって、それは楽しかったですよ。

その思い出した感じというのは?

持ち味である2.5次元感とでも言えばいいでしょうか、ウチは基本的にはバーチャルでの活動が多いし、ライブをそんなにたくさんやるバンドでもないから、お客さんの感覚としては“いるのか、いないのかわからないけど、わあ、いた!”みたいな感じがあるみたいなんですけど、小さいところでやると、距離が近いとかステージが低いとかで、それが減る感じがあるんですよね。

リアル過ぎるっていう感じですか。

そうですね。逆に、去年の年末にフェスとかすごく大きなところでやって、そこでは本領が発揮できるから面白くやれたんですけど。今回はお客さんのほうも近くてちょっとびっくりしてみたいです。

お客さんのほうも、ポルカドットスティングレイというバンドとの程よい距離感を探っている時期なのかもしれないですね。

雫(Vo.& Gt.)

今回は、メジャー・デビュー1st フルアルバムをリリースしてのツアーだったし、会場のキャパも大きくなったし、初めてのところもたくさんあったし、だから初めてのお客さんがすごくいっぱい来てたんですよ。いままでチケット取れなかったのが今回初めて取れたとか、いままで地元でやってなかったのが初めて来たとか、そういう人も多かったみたいで、だから最初ちょっと我々を前にしてどうするのがいいのか戸惑ってる感じの人もいました。でも、これからそういう人がどんどん増えていくわけだから、そういう人とも最初から一緒に楽しめるやり方を考えないといけないなあと思いましたね。

私が出したいと思ったキャラ付けをファンの人たちがナチュラルに受け入れてくれてるのをライブで実感して、すごくうまくいってるなと思いました。

僕はZepp Diver Cityでの追加公演を見たんですが、「フレミング」と「ジェットラグ」をつなぐMCで「本当はここは自然な感じでつなぐシナリオなんだけど、そういうMCが最後までできなかったね」という話をしてましたよね。

してました、してました(笑)。

ポルカドットスティングレイのライブはしっかり作り込まれていると思いますが、ああいうさりげないMCも演出だったりするんですか。

確かに、しっかり作り込んでいて、ああいうMCも実は全公演で言ってたりするんですけど、ただあそこのMCだけは本当に毎回何も考えずにやってたんです。ウチは、ライブだけじゃなくて普段から私のシナリオに沿ってガチガチに作り込んで活動してるから、ライブで1カ所くらいお客さんと対話して、ゆるい雰囲気で進む数分間があっても、それはそれでありだろうと思って。というか、逆にそれはお客さんもおいしいのではないかと思ったんで、あそこだけは敢えて何も決めずにしゃべってました。

敢えて隙間を作った、と?

ツアーの最初のほうは“本当にこんな感じで大丈夫かな?”と思いながらやったんですけど、お客さんが意外と楽しそうで、「何も話すこと、決めてないんだよねえ。ここの地方はおいしいものは何ですか?」とかテキトーなことを話すと、すごい勢いでみんながいろんなことを言ってくれて、それで“あっ、こういうのも好きなのね”と思って。

エジマハルシ(Gt.)

もうひとつ印象に残ったのは、ハルシさんに「カワイイ!」と声がかかったりして、彼のそういうキャラクターが確立しつつある一方で、ミツヤスさんはメガネに半ズボンとボウタイでちょっとぽっちゃりしてるっていう。それもそのままゲームのキャラクターになりそうな存在感でしたが、そのあたりはどの程度意識していたことなんですか。

それはすごく意識していて、最初の頃のMVは完全に私が主役で他のメンバーは脇役だったんですけど、「レム」以降のMVは4人全員が同じように出るという構成を心がけてるんです。特にいちばん新しい「ICHIDAIJI」のMVはそこががんばったところで、だからユウくんがゴリラ・キャラをアピールするためにバナナを食べまくったり、ミツヤスはセグウェイに乗ってはいるけどただスティックを振ってるだけで最後にインド人にセグウェイを取られちゃったりしてるんですよ。そういうふうに私が出したいと思ったキャラ付けをファンの人たちがナチュラルに受け入れてくれてるのをライブで実感して、すごくうまくいってるなと思いました。

ミツヤスカズマ(Dr.)

今のシティ・ポップ流行りというのは無視できないと思うので、ウチなりの聴きやすいシティ・ポップを作ろうというコンセプトで「リスミー」を作りました。

さて、今回の新作ですが、約半年のインターバルでのリリースで、サイズはミニアルバムということについては、どういう判断だったんでしょうか。

今は勢いを保つ時期だと思うので、なるべく短いスパンで楽曲をお届けしたいなと思ってるんです。ただウチは、基本的にシングルは出さない主義なのでミニアルバムかフルアルバムということでやっていきたいと思っていたのですが、今回はちょっと大変でした。完全な新曲ばかり6曲で、この時期に出すということも先に決めてしまっていたので。しかも年末から年明けにかけて、みんな東京への引っ越しがあったんで、すごくバタバタしてて。でも、リリース予定の5月から逆算したら、“もうヤバクない?”という話になって、それで1月下旬に私一人でスタジオに入って曲を一斉に作りました。で、できたらすぐにLINEでメンバーに送るというパワープレイを展開して(笑)、本当に大変でした。

ウエムラユウキ(Ba.)

でも、曲はどれもいい曲ですよね。勢いだけじゃなくクオリティも、出すたびに高めていかないといけないという意志を感じます。

ウチは、いろんなジャンルの表現をきちっとできるという能力はちゃんと持っておきたいと思ってて、今回もいろんなジャンルの曲が入ってるじゃないですか。こういうふうに「ウチはいろんなことができるんですよね」と言ってバーンと出した1曲1曲が中途半端なことしかやれてなかったらすごくダさいと思うので、そこは余計にみんなですごく慎重に練ってやりました。

例えば「リスミー」にキーボードの高野(勲)さんが入っているのはサウンドをしっかり仕上げるという意志の表れだと思いますが、とは言えサポートを入れないといけない曲ができてしまったという感じだったんですか。それとも、サポートに入ってもらうことになっても、バリエーションを広げるためにこういうサウンドを狙って作ったんですか。

狙って作りました。4人の音にプラスしてこういう音色のキーボードが入りますって、最初から参考音源を用意してみんなにバンバン送ったんです。その上で、今のシティ・ポップ流行りというのは無視できないと思うので、ウチなりの聴きやすいシティ・ポップを作ろうというコンセプトでこの曲を作りました。ハルシにも「キーボードが入る前提でリフを作って」と送ったら、「キーボードが間を埋めてくれるんだったら、オレのリフはこれくらいスカスカなほうがいいと思います」って、すぐにこのリフを送り返してきたんです。確かにそうだな、というあたりまでざっくり決めて、それからみんなで一緒にスタジオに入って作りあげました。

サポート・キーボードを前提にした楽曲を狙って作ることができるのは、“4人で作るアンサンブルはもう大丈夫”という自信があるからでしょうね。

どうなんでしょうね。私は、そういうことはあまり考えなくて、考えるのは“こういうジャンルをやりたいということだけなんですよ。今こういうジャンルをウチがやったら面白いし、お客さんにウケそうだなと思うことを考えて、それを実現するためにはどんな楽器が必要か考えるっていう順番ですね。だから、将来的には“この曲はドラム打ち込みだな”とか“この曲はハルシ弾かなくていいから、アレンジだけ担当して”とか、そういうことも起こってくると思います。ポルカドットスティングレイの中で、「この人はこの楽器を担当する人」という肩書きに縛られないアレンジの形ができてくるでしょうね。

狭い意味でのバンドから、そうしたプロジェクト感がより強い方向に展開していくバンドは世界中にたくさんいますが、その展開をどういうタイミングでどういうふうに進めるかというのは考えどころではないですか。

そうですね。ウチも、それはすごく考えるんですけど、現段階ですでにライブでは同期の音もステージ上にいない人の音もガンガン出してたりするので、お客さんにはいまから慣れておいてもらいたいなということもありつつ、次に出すアルバムくらいからその試みは始めたいですね。そういうプロジェクト感のあるバンドのあり方というものを作っていかなきゃいけないかと思っているので。今後は、あまりバンドとは言われたくなくて、音楽グループみたいな言われ方のほうがいいというか、「いろんなことができる面白い人たちが集まっているのね」みたいな感じの、いい見え方がされるようなことを来年に向けて考えていかないといけないなとは思っています。

去年4月のインタビューでポルカドットスティングレイのいちばんの魅力は変幻自在感だと言われましたが、その変幻自在な有り様を追求していくと、誰が何の楽器の担当かみたいなことは二の次になりますよね。

そうですね。

今後は、音楽や有り様の変幻自在感をより打ち出していくことにフォーカスしていくことになるんでしょうか。

ウチのいちばんの目的はお客さんが欲しいものや今流行っているものをしっかり提供するということで、メンバーの立ち位置がわかりやすいとかメンバーのことを好きになってもらうというのは、我々のことに興味を持ってくれた人がさらに好きになるかというところで初めて意味が出てくることだと思うんです。でも、今のウチはその前の間口を広げている段階なので、とすると最初に言った一番の目的を果たすためには変幻自在でないと、という話ですね。

今の我々は、普通だったら立ち止まるところを、私の気合いで慎重に考えることと勢いをキープすることの両取りをしてる、という感じだと思います。

楽曲のタイプが変幻自在ではあるものの、前作あたりから恋愛局面や青春局面の設定になっている歌詞が増えてきたなとなんとなく感じていたんですが、今回はそういう楽曲が中心と言っていい内容になりました。

そうなんですよね。ちょっとがんばったんですよ(笑)。恋愛ソングが売れるということを無視できないなと思って。今回は恋愛ドラマと恋愛映画がタイアップについてしまったということもあり(笑)、自動的にその2曲は恋愛ソングになるし、これまでポジティブな恋愛ソングを書いたことがなかったんですけど、お客さんから「ポジティブな恋愛ソングはまだですか?」と言われ続けてたのに応えて「煌めく」ができ、それでももう1曲恋愛ソングをブチ込むくらいでないとダメだろうと思って、もう1曲いままで書いたことがないタイプの恋愛ソングをがんばって作りました。それが「リスミー」なんですけど、Twitter見てると、付き合ってる相手の愚痴をつぶやいてて、“そんなんやったら別れたらいいやん”と思うんだけど、でも別れないっていう(笑)。なんで別れないのかな?と思ってさらに探ると、「なんだかんだ言ってもやっぱり好き」とか「付き合ってる時間が長くて、好きなのか依存なのかわからなくなってるけど、とにかく必要」とか、そういう人が多く見受けられたので(笑)、その人の共感を得られるような曲にしようと思って書きました。

そういう恋愛ソング中心の内容だから余計に印象的だったのは、どの曲にもベースには「後悔しようが、どうしようが時間は進んで行くんだから、今このときにどうするかでしょ」という考え方がしっかりあるなということなんです。端的なのは♪生きてるってさぁ、後悔したってさぁ、進んでいくんだよ♪という「パンドラボックス」の一節なんですが。

この「パンドラボックス」は最初、全編悪口みたいな歌詞だったんですけど、それだと曲が始まって終わるまでまったく気持ちの進展がないから、さすがに聴いてて辛いかなと思って、最後をちょっと前向きな内容に変えたっていう曲です(笑)。

(笑)。ただ、今どうするか?という課題に対して♪止まってしまっては意味が無い/蛇足なシンキングタイムを与えられる♪という対応は、まさに現在のポルカドットスティングレイの有り様を言い当てているようにも感じたんです。

そうかもしれないですね。お客さんのTwitterを見ながら、まったく無自覚に書いてしまいましたが(笑)、若いというのはそういうことなのかなというふうには思います。我々も若いし、お客さんも若いじゃないですか。で、若いと、状況がめまぐるしく変わっていって、そのなかでぶつかる壁もたくさんあって、イライラして、みたいなことになりますけど、ウチも今結成から3年でまだまだ成長している時期だから、そういう意味ではお客さんがおかれている状況と一緒なのかもしれないですね。なので、そういう若いお客さんがつぶやいてる内容を見て「わかる、わかるよ」と思って書いたら、ウチのバンドみたい、と思われるような歌詞になったということなんじゃないですか(笑)。

さっきの話の繰り返しになるかもしれないですが、初めてのフルアルバムを出して、手応えのあるツアーもやりきった後には、そこでできたこととできなかったことをしっかり分析検討して、その先にまたいい曲を10曲くらい収めたフルアルバムを作るという選択肢も有り得たと思うんです。でも、ポルカドットスティングレイは自分たちが今まとっているスピード感を優先して、この時期にミニアルバムをリリースすることにした、と。そこには、下手に立ち止まって考えるのはよくない、みたいな考え方があるんですか。

やっぱり慎重に行くべきところと大胆に行くべきところがあると思うんです。特に今の我々のように、すごくめまぐるしく状況が変わっていくなかに置かれている者にとっては。で、とりあえず私は、慎重というか、すごく考えていますよね。周りから見て、すごく勢いがあるように見えることを演出するのも大事なことだし、今の我々には絶えずニュースを作り続けることもすごく大事だから、そういう見せ方をできるようにずっと心がけてるんです。だから、そこで私が気をつけているのは、制作のスパンが短いからとか、そもそも作らなきゃいけないものが多いから、みたいなことで出来上がるものがテキトーにならないように、とにかく寝ないでがんばる、ということですかね(笑)。だから、普通だったら立ち止まるところを、私の気合いで慎重に考えることと勢いをキープすることの両取りをしてる、という感じだと思います。

その作品のタイトルを『一大事』にしたのはどうしてですか。

これは、毎度のことながら、“言葉のパンチ力選手権”でこれが一番でしょってことで(笑)。前作の『全知全能』が他の追随を許さないくらいのパンチ力なので、その次に出すとなるとハプニング感を出すというか、ちょっとひっくり返した感じがいいかなということもあり、これにしました。

最後に、この後の展開としては6月にリリース記念ライブをやって、それから夏フェス・シーズンに突入、という感じですか。

そうですね。直近の話題としては、この『一大事』のなかから“これっ!?”という曲のMVを作りますので、それをどうぞ楽しみにしててください。

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ライブ情報

“ポルフェス29 #一大事ワンマン”

6月26日(火)東京・EX THEATER ROPPONGI

ポルカドットスティングレイ

雫(Vo.& Gt.)、エジマハルシ(Gt.)、ウエムラユウキ(Ba.)、ミツヤスカズマ(Dr.)。福岡出身の4人組ギターロックバンド。2015年活動開始。
活動歴が他アーティストと比較しても短い中、それを感じさせないバンド・アンサンブル、教祖的存在感、早耳のリスナー、メディアの投稿から引火し、現在までバズりあげる。代表曲は、YouTubeの視聴回数1,000万回を超えた「テレキャスター・ストライプ」。特にYouTubeでは全公開作品総再生回数3,000万回を誇る。Vo.&Gt.の雫が生み出すリスナー心理を考えたソングライティングとセルフプロデュースに対する認識と表現の仕方から、「何かを企む超常ハイカラギターロックバンド」と称される。

オフィシャルサイト
https://polkadotstingray-official.jimdo.com