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北村 諒らが“たった1つだけ叶えられる願い”をかけた壮絶なバトルロイヤルを繰り広げる――舞台『十二大戦』上演中!

北村 諒らが“たった1つだけ叶えられる願い”をかけた壮絶なバトルロイヤルを繰り広げる――舞台『十二大戦』上演中!

舞台『十二大戦』は、小説家の西尾維新と、イラストレーションの中村 光の初タッグ作品である小説『十二大戦』(集英社)を原作とした、干支の名を宿す12人の戦士たちのバトルロイヤル物語。彼らは、優勝者に与えられる“たった1つだけ叶えられる願い”を賭けて戦う。その果てには何があるのか……。欲望の果てに垣間見えるのは……。どうして人は争いをしなくてはならないのか……。そんな人間の尊厳に訴えかけてくるような舞台だった。そのゲネプロの模様をレポートしたい。

取材・文 / 竹下力

世界の崩れかけた価値観を告発する唯一無二の舞台

舞台『十二大戦』の終演後、心のざわつきが止まらなかったのは、おそらく、これが2018年を決定づける、傑作舞台だということだった。

物語は、2018年という今の時代を射抜いている内容。何が正義で、何が悪なのか、誰が正しくて、誰が間違っているのか、どうしてそんな争いが起きるのか、あるいは起こさないといけないのか、100%の真実はどこにあるのか――そういったテーマが骨子となり観客に問いかける。

それぞれ異なった価値観をぎゅっと濃縮し、“子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥”を名前の冠にした12人の舞台上の人間に宿し、集結させたとき、提示される“たった1つだけ叶えられる願い”をかけた戦いは、醜い争い“十二大戦”になってしまうのだ。それは必然なのか、はたまたそういう仕掛けなのか、答えはわからない、まさにディストピアな世界。西尾維新の原作は、異国情緒たっぷりでありつつ、しっかりと日本を感じさせる読者にわかりやすい仕掛けを作っていて、シンプルで卓抜なアイデアが燦然と輝いている。

ストーリーはとてもシンプルだ。それぞれの出自が異なった12名の戦士、寝住(北村 諒)、失井(滝川広大)、妬良(今村美歩)、憂城(才川コージ)、断罪兄弟・兄(橋本祥平)、断罪兄弟・弟(長谷川慎也)、迂々真(横山真史)、必爺(原 勇弥)、砂粒(竹内 夢)、庭取(梅村結衣)、怒突(伊阪達也)、異能肉(護あさな)は、とあるビルに集う。審判員のドゥデキャプル(和泉宗兵)が、12年に1度開催されるバトルロイヤルの勝者には、“たった1つだけ叶えられる願い”の栄冠が与えられることを伝える。そして、12時間後に確実に死に至る“獣石”(じゅうせき)を飲ませられ、生死をかけた戦いをスタートさせられる。追い詰められた彼らから、野放図に放たれる野望、欲望、羨望、希望、絶望、生きたい願い、ピュアな想い、平和への願い、それらが入り乱れる結末は……。

松本わかこの舞台美術もアイデア満載だ。階段が上手と下手にあり、2段舞台の上で基本的には物語が進行していくが、さらに階段があり、3段の登り舞台にもなる。入口は色々な場所にあり、役者たちはそこから出入りする。プロレスのバトルロイヤルで見るリングの誕生だ。さらに、絶妙なタイミングで紗幕が降り、色とりどりの映像が映し出され、役者たちの演技やアクションは、まばゆいほどリアルになる。

彼らは、干支にちなんだ武器や必殺技を使い、時には数人が入り乱れ、派手なアクションを起こす。一方、1対1で、スローモーション、パントマイムといった手法をふんだんに使い、役者たちの演技の粋を集めたアクションは、神戸公演を経て、筆舌にし難いほど重厚な域まで達している。

そして、舞台『刀剣乱舞』など2.5次元舞台で知られる、恵藤高清らの手がける衣装は、イラストレーションの中村 光の世界を余すことなく体現していた。

寝住(ねずみ)役の北村 諒は、東京公演にあたり「神戸で積み上げた戦歴を東京でうじゃうじゃぶつけたいと思います」と座長らしく思い切ったコメントをしていたが、13名の個性的な役者の中で、クールで、悩みを抱えた今時の高校生を演じていた。そして彼は、近未来的な衣装を纏いつつ、どこか未来への不安を語る語り部となって、物語のすべてを背中で牽引していく姿がかっこいい。

失井(うしい)役の滝川広大は「神戸公演を終えて、自分に足りないものや、一番大切なものが何なのかを肌で感じる事が出来ました」と感想を述べ、中世の衣装をまとった剣の達人らしく、殺陣の応酬を美しく見事に決めていた。

妬良(とら)役の今村美歩は「皆様に“本当に妬良は存在していたんだ”と思って頂けるよう、更に上を目指して、深みの増した妬良の生き様を魂込めて演じ切りたいと思います」と東京公演への抱負を口にしていた通り、お酒を飲むと凄まじく強くなるという設定は、彼女の個性的な衣装にマッチして、どこかの場末な酒場にいるリアルな姉御のようだった。

憂城(うさぎ)役の才川コージは「東京でも卯の戦士としての異常ぶりを魅せていきます」と語る。エンタメステーションのインタビューでは、ネクロマンティストであると言っていたように、彼が演じるキャラクターは舞台を引っ掻き回す。つまり、死んでしまった戦士たちを生き返らせて、自分の仲間にしてしまうというピカレスクな役割は、露出度の高い衣装に負けることなく、しっかりした体躯に活き活きして見えた。彼の培ったパルクールは、アクションをかっこよくみせたし、クレイジーなキャラクターの造形作りに一役買っていた。

断罪(たつみ)兄弟・兄役の橋本祥平は「劇場に入って場当たりし、全ての歯車が噛み合った感覚がありました。精密に計算された舞台」という言葉通り、彼は精密な計算をしながら漁夫の利を狙う、高みの見物を決め込んでいるずるがしこさを全開に発揮する。さらに、叶えたい願いは“金”という即物的な願望と絡まり、人間のグロテスクな存在感をひときわ際立たせていた。

断罪兄弟・弟役の長谷川慎也は「東京公演でも舞台でしか観られない断罪兄弟のコンビネーションをみせます。そして動き回る首なし弟をお楽しみに」と彼は、憂城に首を切られ、首なしで動き回るという屍人の演技を十全にこなしていた。

迂々真(ううま)役の横山真史は「1ミリでも迀々真に近づけるよう、東京公演でもストイックにやっていきたいと思います!」とガタイはでかいのだが、どうも臆病な役どころを真摯に演じていた。人間は、ひょっとしたら臆病だから争いごとをしてしまうのではないか、そんな錯覚をしてしまった。

必爺(ひつじい)役の原 勇弥は「必爺も随所で大戦を制するための細かな策略をしくんでいます」と述べ、武器商人で老獪でずる賢い役どころは、セリフ回しから所作までハマっていて、まさに彼の当たり役だ。

砂粒(しゃりゅう)役の竹内 夢は「不安混じりの緊張感で挑んだ初日を含め、他の公演も沢山のお客様のお顔が舞台上から見え、ひと安心しました」と彼女は和平を望んでみんなと交渉する役どころ。しかし、それが叶わないという現実にぶち当たり砕け散る。悲しい性を持った演技を遺憾なく発揮しながら、勇気を持って最後まで交渉する諦めない様が涙を誘ってくれる。明らかに彼女はこの舞台のミューズになっていた。

庭取(にわとり)役の梅村結衣は「毎公演全力で庭取を演じたいと思います」と意気込む彼女は、子供の頃に虐待を受け、15歳までの記憶がなく、どこかおどおどしている役。おまけに武器として持っているのは、“鋤”で鳥の声がわかるという特殊能力がある変わり種。衣装の見栄え以上に可愛らしい仕草と淀みないセリフで自由に演じてみせた。

怒突(どつく)役の伊阪達也は「たくさん噛み付いていきます」との言葉通り、体に毒を中和する能力、あるいは牙にさまざまな効果をもたらす毒を持った犬。それを利用した戦略で勝ち残ろうとするのだが、一匹狼の彼には居場所がなく、右往左往するばかりのコメディーの要素を含んだ演技が、この舞台で唯一の明るい光を放っていた。

異能肉(いのうのしし)役の護あさなは「東京公演ではそこから更に進化し、洗練されたものをお届けできればと思っています」と、金髪で豊満な肉体に2丁拳銃を操る姿は、まるでどこかの大国のカリカチュアのように見えてしまう感覚を覚えるほど。

ドゥデキャプル役の和泉宗兵は「今宵お集まりの観劇者の皆さま。神戸公演からのエネルギーを東京でお届けいたします。エブリバディ! クラップ・ユア・ハンズ」と東京公演へ向けて意気込んでいた。英国紳士風の謎めいた審判員は、すべてを掌握したまま、世界を思うように動かす、悪のフィクサーに見える。そして、彼の堂に行った演技は、現実の世界を裏で操っている人間が本当にいるのではないか、そんな気さえする。

脚本・演出の伊勢直弘の描き方は、正義の味方がバッタバッタと悪をやっつけるという手法ではなく、あらゆるキャラクターを主役として平等に扱っている。だから、12人の戦士の誰が何を言っても正しいように思えてしまい、時に悪に聞こえるその言葉が、見方によっては善にも見える。善と悪のねじれや歪み。伊勢は、そこから生まれる不公平を不公平とも思わず享受している我々への警鐘を鳴らしていた。映像と役者の演技を巧みに操りながら、時代を雄弁に語っているそこに、もちろん答えはない。観客が考え、自分で答えを導き出すのだ。

2.5次元の舞台らしく個性的なキャラクターを魅せながら、我々の倫理観や世界観に一石を投じ魂を揺るがせる舞台は、そうそうないのではないだろうか。そんな、スタッフ・キャスト一丸となって作り上げた素晴らしい舞台を観劇した人に“クラップ・ユア・ハンズ”と言いたい。

公演は、5月9日(水)~13日(日)まで、シアター1010にて上演中。なお、チケット完売続出につき、5月11日(金)には、マチネ(14時の会)の追加公演が決まった。そして、Do As Infinityの『化身の獣』スペシャルライブが行われる予定だ。

舞台『十二大戦』

兵庫公演:5月4日(金・祝)・5日(土・祝) 新神戸オリエンタル劇場
東京公演:5月9日(水)~13日(日) シアター1010
東京5月11日14:00~Do As Infinity『化身の獣』スペシャルライブ付追加公演決定!

原作:西尾維新「十二大戦」(集英社)
脚本・演出:伊勢直弘
音楽:椎名 豪

出演
寝住:北村 諒
失井:滝川広大
妬良:今村美歩
憂城:才川コージ
断罪兄弟・兄:橋本祥平
断罪兄弟・弟:長谷川慎也
迂々真:横山真史
必爺:原 勇弥
砂粒:竹内 夢
庭取:梅村結衣
怒突:伊阪達也
異能肉:護あさな
ドゥデキャプル:和泉宗兵

オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter

©西尾維新・中村光/集英社 ©エイベックス・ピチャーズ株式会社

原作本 『十二大戦』

小説:西尾維新
イラストレーション:中村 光
出版社:集英社

衝撃の大戦小説!! 十二年に一度行われる、十二支の名を冠した戦士達の戦い――その名は『十二大戦』。その死闘に勝利した者は、どんな願いでもたったひとつだけ叶えることができる。殺し殺される戦士達の物語。