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赤澤遼太郎、大原優乃らが観客の体も心も丸裸に……!? ――舞台『クレスト☆シザーズ』上演中

赤澤遼太郎、大原優乃らが観客の体も心も丸裸に……!? ――舞台『クレスト☆シザーズ』上演中

舞台『クレスト☆シザーズ』が、5月10日(木)よりサンシャイン劇場にて上演中だ。原作は、累計950万DLを突破するマンガ配信サービスのコミックスマート「GANMA!」で連載されている同名マンガ。金も希望もない元ホストの主人公・新田勇希は、伝説の美容師・白波高正に出会い、自分の人生を取り戻すため、店のトップスタイリスト(クレスト)を目指す物語。そのゲネプロレポートと初日前挨拶をお届けする。

取材・文・撮影 / 竹下力

「綺麗になるまで帰さない……」は嘘じゃない

開演前。劇場の外は5月にしては寒くて雨だった。耳をすませば雨だれの音が聞こえてくる。開演のブザーとともに暗転し、舞台中央にスポットライトが当たると、金髪のボサボサの髪、ヨレヨレの赤と黒のチェックのシャツ、まさにボロボロの新田勇希(赤澤遼太郎)が立っている。彼は大きな2重の目を閉じて、再び開けると、自分の人生について、モノローグを始める。両親もいない、希望もない、居場所もなければやることなんて見当たらない。おまけに、売れないホスト上がりで金もなく、明日さえろくすっぽ期待できない。淡々と紡いでいく言葉がとても“現代”を感じさせる。我々にとってそんな日常が当たり前だからだ。

そして独白は続く――今日も最低・最悪、今日でなければ明日が最低、つまり昨日だって最悪ということ。未来永劫の不幸の連鎖。やることなすことうまく行かない。おまけに、やくざ者の女性に手を出して、手下に追われて命を狙われている始末。

そんな時、救いの手があればいい、と誰しもが願う。光が差し込む居場所が欲しい。そんな彼に手を差し出したのは、泣く子も黙る美容室、『ハイクレスト』の伝説の美容師・白波高正(吉岡 佑)。彼はヤクザ者の髪を“ささ”と音を立てるシザーを使い、器用に切ってしまう。そして、店長の真季エミリアン(井深克彦)が、『ハイクレスト』は、その手下の組長と通じているらしいことを告げ、やくざ者を追い払う。

おまけに新田の髪も丁寧にカットしてくれる。鏡をみると見違えた自分がいる。新しい自分を前に、新田は思う。「ひょっとしたらここが自分の居場所になるかも?」と。そして白波に入店させてくれと頭を下げる。店長は、美容師免許も持っていない元・ホストを雇うのは認めないと断言するものの……。

そこで働いていたのは、『ハイクレスト』でしのぎを削っている若き美容師たち。紫色の髪が特徴の咲野 翠(松本ひなた)、今時の茶色い髪の岡 昭彦(川村玲央)、銀髪の長い髪の中嶋 基(佐藤信長)。彼らは先輩、いわゆるリース(台座)でカットをするトップランカーの後輩(サポーター)だ。

そして、颯爽と登場するのは、明日も今日も競馬が大好き、なびくロングヘアーがかっこいい松原洋平(小南光司)。占い大好きで、おまけにそれが当たってしまう魔法の持ち主・吉田ケイ(櫻井圭登)、店のNO.2に甘んじているのが許せない美堂 律(金井成大)、そしてNO.1に君臨することが当たり前、それ以外のことは考えられない戸川那智(松田 岳)。一癖も二癖もあるトップランカーが店を占めている。

この世界は、平気で嘘をついたりしながら、お互いがお互いを牽制し合い、騙し合いも辞さない。そして、客取りの悪い成績が良くない者は去る。たった1つの失敗が命取りのアブナイ世界だ。

白波に入店を許可された新田は、そんな世界に入るものの、どこか夢見心地のまま。ある時、店の出資者の1人で、莫大な金を持つ企業の社長の一葉 蘭(蒼乃夕妃)が持ちかける対決。ピンク色の髪がたなびくアイドルの花谷 夢(大原優乃)と凛とした黒髪・長髪のモデルの水桐アサ(出口亜梨沙)が、雑誌のトップページをかけたヘアースタイル&スタイリング対決をするというのだ。

美しさを競いあう。一番であることを競争し合う。そのための悪意や嘘がある。それが当たり前の厳しい世界。あるいは現実。ここでもまだ、登場人物たちの心は、自分だけを守るべく固く閉ざされている。今度は新田が彼らの光になろうとするのだが……。運よく、NO.1の後輩(サポーター)となった新田に、とある悪意のある仕打ちが向けられ窮地に立たされる。彼は、再び根無し草になるかと思いきや、月日は流れ2年半後、なんと美容師免許を手にしていた。そんな彼に再び、『ハイクレスト』から新たな挑戦状が叩きつけられるのだった。

彼らはみな心が硬い殻で覆われている。自分の素顔を見せず、他人の顔色を伺っている。しかし、物語が進むにつれ、痛んだ髪がトリートメントされ優しくほぐすように、心がほどけていく。みんなが笑顔になっていく。誰かと仲間になりたいと願うようになる。そんな周りを引っ張るのは、新田の赤澤遼太郎だろう。エンタメステーションのインタビューで「(新田勇希は)失敗して落ち込んだりするけれど、底抜けに明るいキャラクターで、人が好きだと思います。勇希は人のことが大切で裏切らないし、人懐っこいです」と語ったように、誰しもが彼に寄り添っていくようになる。

他のだれかに蹴落とされたくない、自分が成功していたい。そのために自分を防御して、心を固く閉ざして、それが当たり前になってしまえば、いつの間にか大人になるのだろうか。だからこそ、底抜けに明るい新田は、少年のようなイノセンスでみんなの心を溶かしていく。新田が太陽のように登場人物たちの中心となって惑星たちが周り出す。『クレスト☆シザーズ』という宇宙が出来上がる。

戸川那智の松田 岳は、NO.1としてのプライドが捨てられないし、どこか新田の才能に惚れてしまっている自分が許せない。そんなプライドの高い人物を好演していた。

松原洋平の小南光司は、「縁の下の力持ちになったかと思えば、TPOに合わせて自分の性格を、良い意味でも悪い意味でも使い分けているキャラクターですね。」と語っていたが、彼は新田とは違い、すれっからしになってしまったサポーターたちを救いたいと願っているが、うまく救うことができないもどかしさを身悶えんばかりの仕草。

美堂 律の金井成大は、2番手に甘んじているのを嫌がっているが、戸川那智のことを友達でありライバルだと認め合っている存在。そこが次第に浮き彫りになって、心変わりして行く様が感動を呼ぶのだが、コメディアンとしての匂いを漂わせているところに思わず笑ってしまう。

吉田ケイの櫻井圭登は、占いという鎧で自分を守っているが、新田によって、その鎧が剥がれ落ちていく。トップランカー4人の母として、母性を感じさせる優しい演技が、それを表現するキャラクターが少ない中で舞台に花を添えていた。

咲野 翠の松本ひなた(Candy Boy)は、新田との出会いで、夢見ることの大切さという舞台に流れるテーマをしっかりとわかりやすく表現する。

岡 昭彦の川村玲央は、リースの座を狙ってあらゆる悪い手を実行するキャラクターなのだが、結果常に空回りしてしまう役どころを演じて可哀想になって涙がこぼれる。

中嶋 基の佐藤信長は、仲間を蹴落とそうと、客を綺麗にするという美容師の本質さえもわからなくなる演技で、自分を見失う怖さを教えてくれた。

オーナーの白波高正役の吉岡 佑は、半パン・綿のワイシャツという出で立ちの格好通りの飄々としたキャラクターで、店の伝説を生きているのだが、重要なところで、父のように存在してくれるどっしりとした演技を見せてくれる。

真季エミリアンの井深克彦は、店の成功、個人の成功がすべてだと思っていたが、新田によって次第に変化する心模様のグラデーションがセリフに活き活きと現れていたし、所々のギャグも最高にハマっていた。

花谷 夢役の大原優乃は、ピンクの巻き髪にシースルーのトップス、ショートパンツ、膝上の黒タイツという眩しいぐらいのアイドル。それを可能にしているのが特徴的な声と歌や踊りなのだが、どこからどう見ても純100%の国民的アイドルになっていた。だから時に、我々に垣間見せない悪女の顔が勇ましく見えてしまう。

水桐アサ役の出口亜梨沙は、花谷 夢とは地味で、彼女にコンプレックスを抱えているが、彼女は新田によって心機一転、美しく変わっていく役柄を演じる。その美貌が弾けた時の仕草や表情は、ため息が漏れる美しさだった。

一葉 蘭役の蒼乃夕妃は、元宝塚歌劇団月組トップ娘役だけあって、女性としてではなく、次第に女の子に変わる一種の幼児退行さえしてしまう圧巻の演技力を見せるが、その凛とした姿にも魅せられる。多くの観客は、女性・男性問わず、一線を超えないプライドを持った人間として、強く生きている様に憧れてしまうだろう。

脚本・演出の山本こうきは、登場人物の心の奥底のモノローグと口先だけのダイアローグの対比を面白くテンポよく使い分けながら、スリリングにストーリーを進め、キャラクターの心理を徐々に暴き出していく。刀による殺陣があるわけではないが、まさに心の中の、思惑、希望、願い、優しさ、絶望といった殺陣が繰り広げられ、それらの摩擦が物語の後半になると炎となる。彼らにまとっていた悪意や憎悪がポロポロと剥がれ落ちていく。ノリがいいようにみえて奥深く、人間という存在の本質を暴き出していく。

凝り固まってしまった体や心が、少しずつむき出しのヌードになっていくような開放感のある舞台。最後は身も心もリフレッシュして綺麗になって帰ることができる。まさに「綺麗になるまで帰さない……」という彼らが掲げた宣言は嘘じゃないのだ。

公演は、5月10日(木)~13日(日)までサンシャイン劇場にて。大阪は17(木)~19日(土)までサンケイホールブリーゼにて。一部日程では、ハイタッチ会やアフタートーク、名刺お渡し会といったイベントが終演後に開催される。上演後も綺麗でいてくれるように観客に心配りをしてくれるはずだ。

稽古で積み上げてきたものを、万全の状態で出せるように

ゲネプロの前に初日前挨拶が行われ、赤澤遼太郎、松田 岳、小南光司、金井成大、松本ひなた(Candy Boy)、櫻井圭登、川村玲央、佐藤信長、大原優乃、出口亜梨沙、吉岡 佑、井深克彦、蒼乃夕妃が登壇した。

赤澤遼太郎
美容師という新たなモチーフを演じているので、いろいろな方に観ていただきたいです。

松田 岳
一生懸命、稽古をしました。お客様が楽しんでいただけたらなによりです。

小南光司
1カ月間、みんなが精一杯、積み上げてきたものを楽しく観ていただけるように頑張ります。

金井成大
初日が来て嬉しいですし緊張もしています。

松本ひなた(Candy Boy)
サポーターとして、みんなをサポートしていけたらいいと思います。綺麗になるまで帰さないと言っていますが、身も心も綺麗にしようと思っています。

櫻井圭登
美容室の話というみなさんに新しい世界観を提示できたらと思っています。自分自身も楽しみにしています。応援よろしくお願いいたします。

川村玲央
この稽古で積み上げてきたものを、万全の状態で出せるように頑張ります。

佐藤信長
みんなで試行錯誤しながら頑張ってきましたので、最高の舞台をみせたいと思います。

大原優乃
このような素敵な舞台に出演させていただく機会を得て、大変嬉しく思います。

出口亜梨沙
座長はとても若くてエネルギッシュですが、みんな食らいついてきたので、千秋楽まで頑張ります。

吉岡 佑
この格好は私服じゃありません。『ハイクレスト』の勇士と葛藤をみてください。

井深克彦
美容師と同じく、役者は、お客様を笑顔にするのは一緒だと思っていますのでその気持ちを大切にしたいです。

蒼乃夕妃
hekiyuさんの原作は、女性ならでは作品だと思いました。稽古も山本こうきさんから気持ちを大切にとおっしゃっていただきました。ポップな髪の毛の色でファンタジーの世界かなと思わせますけど、とても熱い芝居になっています。ですので、いい意味でお客様を裏切ることができると思います。美容師役の方は、プロから学んで、一生懸命レッスンをしたので、お客様がご覧になってもどれだけ彼らが頑張ったのか伝わると思います。すべてのキャラクターのどこかしらに共感できる人間臭い作品になっています。

舞台『クレスト☆シザーズ』

東京公演:5月10日(木)~13日(日) サンシャイン劇場
大阪公演:5月17日(木)~19日(土) サンケイホールブリーゼ

原作:hekiyu
監修:GANMA!
脚本・演出:山本こうき
出演
新田勇希 役:赤澤遼太郎

戸川那智 役:松田 岳
松原洋平 役:小南光司
美堂 律 役:金井成大
咲野 翠 役:松本ひなた(Candy Boy)
吉田ケイ 役:櫻井圭登
岡 昭彦 役:川村玲央
中嶋 基 役:佐藤信長

花谷 夢 役:大原優乃
水桐アサ 役:出口亜梨沙

白波高正 役:吉岡 佑
真季エミリアン 役:井深克彦
一葉 蘭 役:蒼乃夕妃ほか

■STORY
人生に負け続け、金も希望もない元ホストの主人公・新田勇希(にったゆうき)。
命を狙われているところを、伝説の美容師、白波高正(しらなみこうせい)に助けられ、白波がオーナーの美容室で働くことになるのだが、入店した美容室『ハイクレスト』は競争が激しい超有名店だった。モデルやタレントが多く来店し、雑誌でも数多く取り上げられる。
その華やかな世界の裏側では深いダークサイドがあり、 そこはまさに昼間のホストクラブ。台座(リース)No.1をめぐり、美容師達は生き残りをかけた熱い戦いを日々繰り広げていた。
勇希は自分の人生を取り戻すため、店のトップの証である紋章を持つ、ハイフロアの王“クレスター”になりたいと決意する。その前に立ちふさがる、店のトップランカー達…
そんな厳しい環境の中、主人公、新田勇希がトップスタイリストを目指していく青春ドラマ!!

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