Interview

『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』圧倒的メカ描写、“宇宙でロケをしたかのような艦隊戦”はこうして完成した─CGプロデューサーが明かす3年間の舞台裏

『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』圧倒的メカ描写、“宇宙でロケをしたかのような艦隊戦”はこうして完成した─CGプロデューサーが明かす3年間の舞台裏

2015年より、OVAシリーズというかたちで展開してきたアニメ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』が、5月5日(土)より劇場上映中の最新作(第6話)『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 誕生 赤い彗星』にて完結する。今回は『THE ORIGIN』のCG制作を当初より引き受けてきたサンライズ D.I.D.スタジオの井上喜一郎プロデューサーに話を聞いた。最前線のクリエイターが、『THE ORIGIN』におけるCG映像表現の進化と、その3年間に渡る苦難の道のりを語る。

取材・文 / 山下達也(ジアスワークス)


サンライズのCG技術を牽引するD.I.D.スタジオとは?

井上さんが所属している「サンライズ D.I.D.スタジオ」とは、どんなところなのでしょうか。

サンライズは社内に14~15のスタジオを抱えており、D.I.D.スタジオはその一つとなります。最大の特徴はCG映像に特化していることで、『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』のようなOVAから、『アイカツフレンズ!』のようなTVシリーズまで、サンライズ制作アニメで使われるCG映像のおよそ7~8割を制作しています。

サンライズではいつ頃から、そうした取り組みに力を入れ始めたのですか?

D.I.D.スタジオの歴史は意外に古く、その前身はサンライズ社内の「デジタル映像推進室」という開発部署になります。当初は3Dではない、2Dの撮影 処理を中心に手がけており、『勇者王ガオガイガー』(1997年)の各種エフェクトなどを手がけていたのですが、その流れの中で、3D CGもやってみようということになったのです。

当初は『カウボーイビバップ』(1998年)第1話冒頭の火星や、『∀(ターンエー)ガンダム』(1999年)の地球が∀ガンダムの顔に変形するアイキャッチだとか、作画でやると大変なパートなどで使っていただいたのですが、気がついたらいつの間にかこんな規模になってしまっていました(笑)。

そのおよそ20年の歴史の中で、特に印象に残っている作品はありますか?

やはり、何と言ってもガンダム初のフル3D CG作品であるOVA『機動戦士ガンダム MS IGLOO』(2004年)です。当時は「まだ早すぎるのではないか」などとも言われていましたが、サンライズの3D CG制作においては第一の転換になった作品でした。この作品ではモデリングなどもD.I.D.スタジオ内でやっており、相当なノウハウを社内に蓄積することができました。

以後、そこで煮詰めたエフェクトを、TVアニメ『古代王者 恐竜キング Dキッズ・アドベンチャー』(2007年)で使ったりもしたんですよ。そして実は、この作品は私が初めてCGディレクターをつとめた作品でもあります。

「第一の転換」ということは、その後も大きな転換があったということですか?

わずかな期間でガラッと変わったというわけではないのですが、2008年から2015年まで放送された『バトルスピリッツ』シリーズが「第二の転換」だったと思います。それまではラフ原画から3D CGを起こしていたのですが、この作品では絵コンテから3D CGを起こしていこうというやり方に変えています。

動きの表現などがCGクリエイターに委ねられるという難しさはあったのですが、次のステップに進むためにはここを越えなければなりません。結果、当初は思い通りにいかない面もあったものの、終盤にはTVシリーズではやり過ぎと言われるほどのフルCGバトルを毎週実現できるほどになりました。年間50本、1本あたり60カットとすると、7年間で21000カット。これによって、社内での信頼も得ることができ、『アイカツスターズ!』(2016年放送)、『アイカツフレンズ!』(2018年放送)などの作品にも繋がっていきました。

話数を重ねるごとに進化していった『THE ORIGIN』の3D CG

『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、モビルスーツなどのメカ描写を原則として3D CGで行っていますが、これにはどのような理由があるのですか?

第1話(『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 青い瞳のキャスバル』)から第3話(『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 暁の蜂起』)まで監督をつとめた今西隆志さんが、D.I.D.スタジオの部長だったということもありますが、カトキハジメさんが描かれるハイディテールなメカデザインを、細部まで再現するのが手描きでは難しそうだったというのが最大の理由ですね。数々の作品でノウハウを積み上げ、技術的にそれが可能な水準に達したこと、3D CG制作に以前ほどの予算や時間がかからなくなったことなども、それを後押ししました。

それまで手書きにこだわっていたメカ描写を3D CGに置き換えることには賛否両論あったと思うのですが、話数が進むごとにクオリティがアップしていき、第5話(『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 激突 ルウム会戦』)の頃には、全く違和感のないレベルにまで到達していますよね。

約半年に1本のペースで上映されるOVA作品の場合、制作環境の改善やノウハウの蓄積などによって、同じように全力で取り組んでいくだけで、自動的にクオリティが上がっていくという面がありますが、それぞれの作品が終わるごとにスタジオ内で反省会を行い、上手くできなかったところを改善し、良かったところをより伸ばしていくということもやっています。特に第3話が終わった後には、メインスタッフ全員を集めて、今後、3D CGをどのように改善していくかを徹底的に話し合いました。

それはなぜですか?

第3話が終わった時点で、3D CGのクオリティに対して、「このままではまずい」という共通認識があったんです。メカのルックが弱い、動きが軽い、エフェクトに迫力がない、さまざまな不満が噴出していました。続く第4話(『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 運命の前夜』)では、いよいよザクが完成し、月面での大規模なモビルスーツ戦が予定されていましたから、CGの重要度はより一層大きくなります。なにより、当時はまだ第5話以降の制作が決まっていなかったので、これが最後のチャンスだったわけです。大きな立て直しが必要だろうと考えました。

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