LIVE SHUTTLE  vol. 260

Report

GLIM SPANKY バンド結成11年目、初の日本武道館公演。そのメモリアルな一夜を振り返る。

GLIM SPANKY バンド結成11年目、初の日本武道館公演。そのメモリアルな一夜を振り返る。

GLIM SPANKY LIVE AT 日本武道館
2018年5月12日 日本武道館

ついにその日がやって来た。バンドを結成してから11年。GLIM SPANKYが武道館のステージに立つ。松尾レミ(vo&g)と亀本寛貴(g)の2人は、武道館を目指して活動してきたわけではない。彼らは自分たちの信じる音楽を、ひたすら追求してきた。60~70年代のロックをルーツに持つGLIM SPANKYは、決して時流に乗っているバンドとはいえない。それゆえデビュー以来、一種の“変わり者”として音楽シーンで扱われてきた。しかし2人は、逆風をものともせず、ひたすら音楽を作り、発表し、ライブを行ない、主張し続けた。その先に、武道館が現われた。GLIM SPANKYはそこに、どんな思いで立つのか。

一方で武道館を埋めたオーディエンスたちは、とても嬉しそうな表情を浮かべている。彼らはGLIM SPANKYの音楽のファンであることはもちろんだが、GLIM SPANKYの孤高な姿勢にも共感している人々だ。今の音楽シーンに満足できず、聴く音楽がないと嘆いていた人が、ようやく見つけたバンドがGLIM SPANKYだった。なので、初の武道館ライブを、自分たちのことのように喜んでいる。この“孤高のオーディエンス”たちは、実に広い年齢層にわたっている。僕はこれまでたくさんの“初武道館”を観てきたが、これだけさまざまな世代が集う“初武道館”は珍しい。さて、どんなライブになるのだろうか。

場内が暗くなり、いつものSteeleye Spanの曲が流れると、客席からいつも以上の大歓声が上がる。ドラムス、ベース、キーボードが先に位置に着き、亀本がステージに入ってくると、拍手が起こった。亀本はそれにガッツポーズで応える。続いて松尾が登場。歓声がさらに高まる。2人が笑顔なのか、緊張した表情なのかはよく見えない。演奏が始まり、松尾の弾くギターの堂々としたストロークが聴こえてきた。照明が当たって浮かび上がった松尾の姿は、ギターのストロークと同じく堂々としている。まるでエルフの姫のようなオーラを放っている。亀本のギターの太い音が聴こえてきて、いよいよGLIM SPANKYの初武道館が始まった。

ステージ上にはアンプが並んでいるだけで、セットは何もない。背後はプリーツの入ったカーテンが降ろされ、非常にシンプルで潔い。1曲目の「アイスタンドアローン」が終わると、松尾が「こんばんは、GLIM SPANKYです!」と少し上気した声でひと言だけ叫んだのだった。

序盤の8曲中3曲は、「アイスタンドアローン」をはじめ最新アルバム『BIZARRE CARNIVAL』からの曲が占めるシブい選曲だ。松尾も亀本も堂々とはしているものの、ド派手なオープニングにしなかったことで、武道館から緊張感が消えない。この挑戦的なセットリストは、ある意味、不屈のバンド、GLIM SPANKYらしいと言えるだろう。

ところが、ここで興味深い現象が起こる。メンバーの緊張を察したのか、オーディエンスが積極的にバンドを支える。「褒めろよ」ではイントロのドラムが始まった途端にハンドクラップが起こり、オーディエンスはさらにコーラスで後押しする。また8曲のほとんどはエンディングがギター・ソロになっているが、亀本のソロが終わるたびに大声援が飛び、曲が終わって松尾が「ありがと!」と言うたびに、熱い拍手を浴びせる。これはこの日に限ったことではないのだが、今までのGLIM SPANKYのライブの中でも特別な気がした。拍手も歓声も“GLIM SPANKYの初武道館”を応援しているように感じた。そう、このライブは“GLIM SPANKYとその仲間たちの初武道館”なのだ。

4曲目の「MIDNIGHT CIRCUS」から、カーテンに70年代を彷彿とさせるサイケデリックな映像が映し出され、ライブを彩る。序盤の締めくくりは亀本がアコギを弾くファンタジックなナンバー「お月様の歌」だった。ようやく落ち着いてきたP.A.のサウンドの中で、松尾と亀本は息を吹き返していく。

松尾 ようこそ、GLIM SPANKYの武道館へ! 嬉しいよね。こんなにロックが好きな友達が集まったから、楽しい夜にしましょう。

亀本 ここで何を言ったらいいんだろうって考えたんだけど、来てくれた人の愛に(感謝を言う他)、言うことなんかない! 

松尾 ところで、日の丸はどこ?

亀本 真上だよ。

いつも武道館の天井から下がっている日の丸の旗を探す松尾が初々しい。MCをはさんで、徐々に緊張感が解けていく。ここからはハードなロック・セクションだ。インディーズ時代のミニアルバム『MUSIC FREAK』から、ブルージーなギター・リフを持つ「ダミーロックとブルース」と「ミュージック・フリーク」を立て続けに演奏する。初期のナンバーとは、いいものだ。歴史が古いだけに何度も演奏されてきた曲たちは、メンバーにとって一つの基準になる。武道館に立つ自分たちが、今、どんな状態なのかを測るには適している。MCでやや解けた緊張が、音楽にも反映されていく。スムーズな流れになったところで、アッパーチューン「怒りをくれよ」が会場に火をつける。…と、思ったら、アクシデントが発生。途中で歌詞が飛んでしまい、松尾はしばし呆然と立ち尽くす。そんな彼女をすぐにオーディエンスが、歓声で励ます。それで一気に盛り上がるのだから、ライブというものは面白い。

松尾 ありがと! 武道館に魔物がいましたよ。いきなりパッと来るもんなんだね(笑)。ここは大学の入学式で来たことがある。確か、2階席の真ん中あたりに私はいました。途中で抜けちゃったけどね。入学式をやった場所でライブやるって、不思議。でもここはロックの聖地で、ビートルズもボブ・ディランもレッド・ツェッペリンもやってる。彼らがこういう反響音を聞いてたかと思うと、感慨深いです。

亀本 武道館でライブやろうぜっていう活動はしてこなかった。とにかくカッコいいことをやると思ってやってきて、こんな素敵な景色を見せてもらって、嬉しい気持ちです。

松尾 いつもどおりのダラダラMCですが・・・(笑)。

亀本 思いのたけですよ!

松尾 次の曲、行こうよ!!

アクシデントを味方につけるのも、バンドの力量だ。すっかりマイペースに持ち込んだ2人は、次の「吹き抜く風のように」で本来のGLIM SPANKYになった。亀本の歪んだ音色のギター・リフが、武道館の隅々までを熱くする。松尾は得意のハイトーン・ボーカルを炸裂させる。それにオーディエンスはハンドクラップで応える。ここまでの12曲は、やはり肩に力が入っていたようだ。もぞもぞと武道館の大きさを手探りしていた。その試行錯誤がようやく実って、手探りが手応えに変わり、バンドのスケールが武道館にアジャストしていく。それは武道館のステージにただ立っていたGLIM SPANKYが、本当の意味で“武道館サイズ”のバンドになる瞬間だった。僕はこれを見に来たのだ。

しかもその瞬間には、オーディエンスのパワーが大きく貢献していた。古くは80年代のバービーボーイズが、新しくは毛皮のマリーズが、やはり初武道館のライブの最中に“武道館サイズ”に変身したのを、僕は目撃している。どちらもその変身には、オーディエンスが力を貸していた。

こうなるとサイズアップが止まらない。次の「美しい棘」ではビッグスケールの8ビートを披露。松尾の歌に、これまで以上の説得力が増す。「The Flowers」では亀本のサイケデリックなギター・ソロが、この日いちばんの冴えを見せる。リリースされたばかりの新曲「All Of Us」では、高い音程の続く新たなメロディ構成で、ひと味違うバンドの一面をアピールしたのだった。

「愚か者たち」から最終盤に差しかかる。力強い「NEXT ONE」、クールなサウンドの底に豊富なアイデアを盛り込んだ「In the air」、牧歌的な曲想で幅広く支持されている「サンライズジャーニー」と、いよいよ絶好調で5人が一丸となる。今までで最多曲数のセットリストが、残り少なくなっていく。あと1曲と告げると、客席から「えーっ!!」と声が上がった。

松尾 武道館に初めて来た人、いる? けっこういるなあ。

亀本 ずっと立ってて、しんどくないですか? 今回、セットリストで迷った。節目なんで昔の曲から今の曲まで厳選してきたのに、みんなが「えーっ!!」っていうから、もっとやればよかった(笑)。

松尾 みんながしんどくないのが、よくわかったよ。また見に来て下さい!

最後の曲は「大人になったら」だった。長野を後にしたときから、GLIM SPANKYにずっと寄り添ってきた曲だ。この孤立を恐れない決意の歌を、やっと武道館で聴くことができた。松尾は「みんなと一緒にいてくれる歌になればいいなと思います」とこの曲を紹介して、ギターの弾き語りで歌い始める。渋谷エッグマンで、赤坂ブリッツで、その他いろんな場所で、何度も何度もこの歌を聴いてきたが、この歌は武道館にもとても似合う。そこにいる一人一人に、この歌の魂が確かに伝わっていったのが実感できた。

アンコールに現われた亀本は「次は一人で弾き語りをやります・・・ウソだよ~(笑)。松尾さんと二人でやります。松尾さんは今、可愛い服装に着替えていて、その間にみんなが帰っちゃわないように、僕が先に出てきました」。呼び込まれた松尾は「これ、私服です。今日、これを来て武道館に来たら、スタッフがアンコールはそれで出ればって(笑)」。すっかりリラックスした二人は、高校時代の最後に作ったという「さよなら僕の町」をオーディエンスに届ける。ただの励ましや夢の歌は歌えないと告げる、これもまた孤高の歌だ。だからこそ次の「リアル鬼ごっこ」で松尾が♪私たちは いま輝きの中♪と歌ったとき、武道館が“聖地”であることを僕は思い知った。さんざん遠回りしてたどり着いた武道館で、今、GLIM SPANKYは輝きを放つ。自分たちの音楽を誠実に追求し、オーディエンスにフェアに接してきたGLIM SPANKYだからこそ、この歌を聖地・武道館で歌うことができた。こうして2018年5月12日は、そこにいる誰にとっても、忘れられない“GLIM SPANKYの初武道館”になったのだった。

文 / 平山雄一 撮影 / HAJIME KAMIIISAKA


GLIM SPANKY LIVE AT 日本武道館
2018年5月12日 日本武道館

【セットリスト】

1.アイスタンドアローン
2.焦燥
3.褒めろよ
4.MIDNIGHT CIRCUS
5.闇に目を凝らせば
6.BIZARRE CARNIVAL
7.The Trip
8.お月様の歌
9.ダミーロックとブルース
10.ミュージック・フリーク
11.いざメキシコへ
12.怒りをくれよ
13.吹き抜く風のように
14.美しい棘
15.The Flowers
16.All Of Us
17.愚か者たち
18.NEXT ONE
19.END ROLL
20.In the air
21.サンライズジャーニー
22.大人になったら
~アンコール~
23.さよなら僕の町
24.リアル鬼ごっこ
25.Gypsy

GLIM SPANKY

60~70年代のロックとブルースを基調にしながらも、新しい時代を感じさせるサウンドを鳴らす、松尾レミ(Vo/Gt)&亀本寛貴(Gt)からなる男女二人組新世代ロックユニット。アートや文学やファッション等、カルチャーと共にロックはあることを提示している。2014年に1st ミニアルバム『焦燥』でメジャーデビュー。松尾レミの日本人離れしたハスキーな歌声が、多くのクリエイターを夢中にさせ、既に10つものCMで歌唱を担当。最新3rd フルアルバム『BIZARRE CARNIVAL』はオリコンデイリーアルバムランキングで堂々2位、iTunesロックアルバムチャートでも1位を獲得する等大注目を集める。昨年公開映画『ONE PIECE FILM GOLD』主題歌「怒りをくれよ」、映画『少女』主題歌「闇に目を凝らせば」等を、新人では異例の大抜擢での担当。2018年5月12日には初の日本武道館でのワンマンライブも行なった。

オフィシャルサイト
http://www.glimspanky.com/

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