モリコメンド 一本釣り  vol. 66

Column

LUCKY TAPES 奥深いブラックネスを軽やかな日本語のポップスへと導く3人がメジャーデビュー

LUCKY TAPES 奥深いブラックネスを軽やかな日本語のポップスへと導く3人がメジャーデビュー

テン年代の新世代シーンにおける最重要バンド“cero”(3年ぶりの新作「POLY LIFE MULTI SOUL」、傑作です!)、6月20日にメジャーデビューアルバム「Digital Analog Translation System」をリリースするDATSから、月9ドラマ「コンフィデンスマンJP」の主題歌「ノーダウト」をきっかけにブレイクしたOfficial髭男dismまで、いま注目すべきバンドの共通点は“ブラックミュージックをルーツに持っていること”と言っていいだろう。この流れが始まったきっかけは、2013年にリリースされたダフト・パンクの「ゲット・ラッキー」。フレンチ・エレクトロの代表的存在であるダフト・パンクがファレル・ウィリアムス、ナイル・ロジャースをフィーチャー、80’sディスコをアップデートさせたこの曲は全世界にネオソウル、ディスコ・リバイバルの機運を生み出した。さらにマーク・ロンソンの「Uptown Funk ft.Bruno Mars」の驚異的大ヒット(YoutubeのMV再生数は30億超え!)、ブルーノ・マーズが世界的スターになり、ザ・ウィークエンド、フランク・オーシャンに代表されるオルタナR&Bのシーンの盛り上がりも加わったことで、現在のポップミュージックは“ブラックミュージックをどう解釈し、再構築するか”が大きなポイントになっているのだ。

今回紹介するLUCKY TAPESもブラックミュージックを現代的なポップスにアップデートし続けているグループの一つ。2018年5月23日リリースの新作EP「22」でメジャーデビューを果たす3人組だ。メンバーは高橋海(Vo,Key)、田口恵人(Ba)、高橋健介(Gt)。2014年あたりから東京のインディーシーンで注目を集めた彼らは、2015年にデビューアルバム「The SHOW」をリリース。翌2016年にシングル「MOON」を発表、同年全国公開された映画「オオカミ少女と黒王子」(主演/二階堂ふみ)には挿入歌として新曲2曲を提供するなど、活動の幅を大きく広げてきた。

さらに2017年7月には共同プロデューサーにtoeの美濃隆章を迎えた2ndアルバム「Cigarette & Alcohol」をリリース。ホーン・セクション、女性コーラス、パーカッションなどを加えた大編成によるライブ・パフォーマンスも高い支持を集めた。音楽性の高さ、エンターテインメント性に溢れたステージを含め、活動を重ねるにつれて評価を高めてきたLUCKY TAPES。今回のメジャー進出はまさに“満を持して”という言葉がピッタリだろう。

グループの中心である高橋海は、幼少の頃から両親の影響でマイケル・ジャクソン、アース・ウィンド&ファイヤー、プリンスなどを聴いて育ったという。さらにビヨンセ、ブリトニー・スピアーズなどのR&B経由のポップ・アーティスト、Mr.Children、コブクロ、秦 基博、ASIAN KUNG−FU GENRATION、the HIATUSといった日本のバンドにも触れるなかで、徐々にオリジナル楽曲の制作に移行。ブラックミュージック特有のグルーヴ感と日本語の叙情性を活かした歌を融合させた音楽性は、もちろん、メジャーデビュー作「22」にもしっかりと表現されている。

EP「22」はタイトルトラック「22」からスタートする。LUCKY TAPES本来の特徴である高揚感溢れるファンク・サウンドのなかで、キラキラした光を話すメロディライン、“幻想だらけのこの狭い世界で/You can find yourself?”という現代社会で生きる人たちの本質をズバリと射抜く歌詞が心地よく広がるこの曲は、ディープな音楽性、軽やかなポップネス、シリアスなメッセージ性が共存しているという意味において、いまの彼らのモードを端的に示している。

2曲目にはバウンシーで生々しいバンドサウンド、洗練されたコード進行がナチュラルに融合した「NUDE」、3曲目には軽やかなワウギターを軸にしたミニマムなループのうえで煌びやかなボーカル/ハーモニーが響く「EASY」を収録。そして4曲目の「MOOD」は(「22」と並び)本作のもう一つの軸と呼ぶべきナンバーだ。ブラックミュージック経由のグルーヴ、ソフィスティケイトされた旋律はまさにLUCKY TAPES節だが、この曲の中心を担っているのは高橋海の歌と言葉。“ここまでは上手く生きてきたんだし/金も名誉もないけどさ/好きなことばっか追い掛け回して死にたい”という(字面にするとシリアスな意味を感じてしまう)フレーズをどこまでもナチュラルに描き出すボーカルとフロウは、いまのシーンのなかでも際立った個性を有していると思う。

今年に入ってからタイ、台湾、北京、上海、韓国のイベントに出演するなど、アジア全域にまで活動範囲を広げているLUCKY TAPESは、メジャーデビューをきっかけに一気に知名度を上げることになるだろう。奥深いブラックネスを軽やかな日本語のポップスへと導く彼らの音楽にぜひ注目してほしい。

文 / 森朋之

【ライブ情報】

「LUCKY TAPES “22” Release One Man Tour」

5月25日(金) 愛知・池下CLUB UPSET
6月3日(日) 大阪・梅田Shangri-La
6月23日(土) 東京・キネマ倶楽部

オフィシャルサイト
http://luckytapes.com

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