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Mr.Children 全シングル&アルバム配信スタート!(後編)~改めて彼らの“今更ヒトに訊けない代表曲”を独自解説してみた

Mr.Children 全シングル&アルバム配信スタート!(後編)~改めて彼らの“今更ヒトに訊けない代表曲”を独自解説してみた

5月10日から、Mr.Childrenの全シングルと全アルバムがダウンロード配信、および、サブスクでも楽しめるようになった。この絶好のタンミングに、改めて彼らに入門したいという方のために、10作品ほどの仮想プレイリストを作成してみた。
もちろん、すでに世の中には彼らを題材にした様々なリストが存在する(例えばSpotifyには90曲のボリュームのものも公開されている)。これはあくまで入門用、というか、入門しようか迷ってらっしゃる方に対しての“お誘いのチラシ”のようなリストなのである。

「君がいた夏」

スライド・ギターの印象的な響きが、火照った肌を秋へと誘うこの曲は、彼らのデビュー曲にして、いきなりの名曲だ。50年代や60年代のポップやロックにまで知識量を広げ、自分にぴったりの音楽を見つけようとしている人にも、自信もってお奨めできる聴きどころが満載だ。しかし、何度聴いても切ない切ない…。夏の恋って、どうして秋まで続かないの? 誰か教えて!?

「innocent world」

表題は“無垢なる世界”だけど、歌の内容は“無垢なる世界からの決別”でしょうね。ポップなラブ・ソングを書くことの極意を感じ始めた桜井和寿が、その極意を捨て、己と格闘しつつ書き上げた感動の日々に関しては、『【es】Mr.Children in 370 DAYS』(角川書店)という本を探してお読みください(僕とメンバーとの共著です)。

「名もなき詩」

オードリー・ヘプバーンの『ティファニーで朝食を』のラストに、“自分らしさの檻の中”に似た台詞が出てくる。でもこういうことはミッシェル・フーコーも言っいた、と、ある本に書いてあった。Mr.Children史上、“深い”といえばこの歌だ。でも根強い人気を保つのは、詞や曲もそうだけど、Mr.Childrenという4人の演奏者の在り方が、わかりやすく、赤裸々に響いているサウンドだからでしょう。まさに“バンドを感じる”1曲なのです。

「終わりなき旅」 

しばらくお休みしていた後に出たシングルで、サウンド的にはUKロックの影響を感じさせた時期だけど、僕たちこーゆーのが好きなんです、には終わらず、咀嚼する力があるからこそ、日本語の歌としてリッパに成立させることが出来たのでしょう。一人の人間の歩みを歌うようでいて、遙かなるDNAの遺伝的連鎖の歌にも聞こえてしまうのは、後半へ向う、音の広がりがハンパないからです。

「優しい歌」

キャリアを積みノウハウも得た彼らが、いったんそれをご破算にして生みだしたシンプルな作品。世の中に氾濫してた“励まし歌”へのMr.Childrenからの回答が、この“優しい歌”かもしれません。個人的にも大好きな歌なのですが、ここで“小さな火をくべる”(歌詞より)ことの大事さを再認識したことが、彼らのさらなる躍進へとつながったのではないでしょうか。とかくロック・スターは、PAシステムのお陰であるのに勘違いして、自分には凄い影響力があると勘違いしがちですけど、そりゃ違うんですよねぇ。“小さな火をくべ”ないと…。

「蘇生」

ある日、桜井がテレビを観ていると、リチャード・ギアが出演していて、ダライ・ラマの教えである、「一日、一日、自分は生まれ変われる」という言葉を紹介していたそうなのです。これはかつて、彼らのベスト盤に書いたエピソ−ドです。でも、「そうか、だからこういう歌なのか」と早合点しないでください。そのあと、彼は他の芸術にはない、音楽ならではの特性に気付くのです。この歌が流れている数分間だけでも、そんな気分になってもらえたら…。彼の音楽家としての矜持が、この作品を書かせたわけです。“何度でも”。これは賞味期限のない言葉です。

「くるみ」

本来はバンド・サウンドに対して“サブ”の位置づけであるアンプラグド・スタイルを、“メイン”に仕立てつつ成功している曲なのです。ワン・コーラス目の役割(聴き手の心を掴む)とツー・コーラス目の役割(言いたいことをより深く伝える)を、ハッキリ意識した構成が光ってます。“想い出”として仕舞い込むにはまだ早い、生乾きの感情を扱っているからこそ、聴いててついついウルッとしちゃう(いや、聴いてないのに原稿書いてるだけで、ウルッ…)。

「しるし」

かつて「Over」で“風邪がうつるといけないからキスは…”と書いた桜井の恋愛リアリズムが、時を経て、さらに大人になって発揮されてる。いくら近似値にはなれても、まったく同じに重なることはない男女の心を、丹念に描いている。一世一代の名バラ−ド。歌手・桜井としての負担も大きいが、名唱だ。あとは聴くのみ。

「HANABI」

Mr.Childrenの歌は“蒼い”と解説する人は、この歌のことなどを指しているのだろう。でも「実存」に想いを馳せることは、死ぬまで続く。歌詞のなかの「君」が、そこに程良く“客観”を加える構成である。非の打ち所がない名曲は、余韻でわかる。その場の空気のツブツブまでが、ドラマチックに変わっているので。とはいえ、それでも認めない人っている。日本人なのに、“J-POPに感動したことはない”と言い切るヒトだっている。でも、そんな人だって、きっとおそらく、この曲は…。

「足音 ~Be Strong」

この歌によって、さらにMr.Childrenはバンドの歴史を更新して今に至るのだが、この作品のなかで桜井・田原・中川・鈴木がバンド内グラフにおいて正四角形を描いていることが、その時点で意味のあることだったと思う。しかし完成するまでは紆余曲折。そのエピソードだけで映画が1本撮れる(詳しくは『REFLECTION』ライナーを)。この歌はまさに現代社会を照射していて、「今という時代」の先の「未来」へと、“新しい靴”で歩み出す姿を気高く描いている。そして、昨日よりちょっと広い歩幅で歩いている自分に気付くのでした。

さて、Mr.Childrenに入門しようか迷ってらっしゃる方に対しての“お誘いのチラシ”、如何だったでしょうか。もしやもしや、「なんであの曲は入ってないの?」と、そう思った方もいらっしゃるかもしれません。実はこの仮想のプレイリストの容量は、100曲なのでした(最初に書くの忘れてごめんなさい!)。残りの90曲は、みなさんで選んでください。大変ですよ、90曲。でも楽しいと思う。頑張ってください。

文 / 小貫信昭

前編はこちら
Mr.Children 全シングルとアルバム配信スタート(前編)〜丁寧に時代と向き合い、歩んできたバンドの新たな一歩

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2018.05.17

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