Interview

アニメ『ゆるキャン△』名シーンの数々をサントラで振り返ろう。あのキャンプ場の思い出にはすべてテーマ曲があった─劇伴担当・立山秋航インタビュー

アニメ『ゆるキャン△』名シーンの数々をサントラで振り返ろう。あのキャンプ場の思い出にはすべてテーマ曲があった─劇伴担当・立山秋航インタビュー

美麗な風景描写と、ほのぼのとしていながらも大きな自然を感じる音楽。ていねいな画作り&演出で大きな人気となったTVアニメ『ゆるキャン△』の放送が終了した今、作品を彩った音楽について、サントラを担当した立山秋航氏に改めて振り返ってもらった。各務原なでしこ(花守ゆみり)と志摩リン(東山奈央)のボイスドラマを挟みながら進んでいく「TVアニメ『ゆるキャン△』オリジナル・サウンドトラック」。間違いなく名盤なので、ぜひ多くの人に聴いてもらいたい。

取材・文 / 塚越淳一


<立山 秋航 (たてやま あきゆき)プロフィール>
小学校からピアノ、中学からドラムを始め、 音楽大学卒業後プロ活動をスタート。THE LINDA!のドラマーとしてCDデビュー。ドラマーとしても数多くのステージで演奏経験を積む。
「生演奏の躍動感」を大切に、生命力のあるサウンド作りを信念としており、『けものフレンズ』『アイドル事変』『くまみこ』『下ネタという概念が存在しない退屈な世界』『ヒーローバンク』等のアニメ作品の劇伴を担当している。

デモとして作った楽曲が、「ゆるキャン△のテーマ」

TVアニメ『ゆるキャン△』の放送は終わってしまいましたが、作品自体の人気も非常に高かったと思います。音楽に関しても、やはり反響は大きかったですか?

こうやって取材の依頼をいただいたり、サントラの発売記念イベントに呼んでいただいたりすると、具体的な手応えを感じることができるので、やはりうれしいですね。発売記念イベントに作曲家として呼ばれたのも初めてのことでしたし。

アニメを観ていかがでしたか?

思ったとおり、しめしめと言ったところは少しあったんです。というのは、シーンに合わせて、場面に当てて曲を書いているところが多かったので、それを監督や音響監督が汲み取ってくれて、おいしい感じに絵に曲をつけてくれていたんです。多分それが、曲が作品にマッチしていると言われた要因だと思うんですけど、そうやってシーンに当てて書いた曲が3~4割くらいあったんです。

映画みたいですね。

そうですね。原作漫画があったので、脚本と漫画の両方を読み合わせながら曲を書きました。マンガの中で大ゴマで描かれているシーンはアニメになった際も盛り上がりのシーンになると予想したので、そこには曲のいちばん印象的なメロディが当たるように作りました。イメージはすごく湧きましたね。

それは漫画原作のいいところなのかもしれません。

もちろん脚本や絵コンテはいただくし、脚本だけ見てもわかりはするんですけど、絵があるほうが、よりイメージはしやすいですよね。

今回『ゆるキャン△』音楽を担当することになった経緯を教えてください。

BGMを担当する作曲家を探しているということだったので、デモをまず作ったんです。漫画を読んで自分でイメージを膨らませて作ったものを監督に聴いていただいたんですけど、それを監督も気に入っていただけたみたいで、正式にお話をいただきました。そのとき書いたのが「ゆるキャン△のテーマ」なんですけど。

サントラにも1曲目に収録されていますが、口笛がすごく印象的な曲ですよね。どのように作っていったのですか?

まずアコギのフレーズから思いついたんです。このフレーズがいいなと思ってアコギを弾いていたら、そのあとに口笛も思いついて。どの楽器でメロディを取るのかって、作曲家だったら常に考えていると思うんですけど、そのときは口笛に行き着いたんです。

そこがすごいですよね。この口笛だけでもいいのに、その後にハーモニカが入ってくるところも素晴らしくて。

ありがとうございます(笑)。このハーモニカが入ってくる部分はいわゆるサビの部分なんです。ちゃんと曲として盛り上げなきゃダメだなと思って。この曲を書いたときは監督ともお会いしていなかったので、こういう曲を書く人間ですよとわかってもらいたかったというか。淡々とした曲だと最初に聴いてもらうにしては弱いと思ったので、シングル曲っぽく、しっかり曲として盛り上がるように書いた感じです。

ちなみに『ゆるキャン△』の楽曲を作るうえで、何を大事にしていましたか?

最初に曲を作る前に「自然を感じさせるような音楽を付けたい。ケルティックとか民族音楽のようなアプローチもありです」というオーダーだけはいただいていたんです。でも、あまり民族民族しちゃうと、ファンタジーのような感じになってしまうし、1曲目からそれは押し出さないほうがいいと思ったので、ライトなアコースティック・サウンドにしようと思いました。「ゆるキャン△のテーマ」はそうやって書いたんですが、結局その軸は最後まで貫きつつ作業をしていましたね。

たしかに、アイリッシュの楽器は使ってますけど、そこまで北欧な感じはしませんでしたし、日本の冬に合っている気がしました。サントラを担当することになってからの監督や音響監督の要望はどんなものでしたか?

打ち合わせのときに音楽のメニューがガッと35曲分くらいあったんですけど、全体としては自然を感じさせるようなサウンドの曲が欲しいということでした。それと、キャンプ場ごとにテーマを作りたいというのも、そのときに言われましたね。

それぞれの場面に合わせた各キャンプ場のテーマ

そこがシーンに当てて作ったというところだと思うのですが、結構尺も5分以上あるんですよね。それがキャンプ場での時間の流れにすごくマッチしているなぁと思いました。せっかくなのでそのキャンプ場のテーマの解説をしていただこうかと思うのですが。まず「キャンプ場のテーマ ~本栖湖~」です。

これはいちばん最初に作りました。打ち合わせのとき、キャンプ場の代表的な旋律を考えて、それをいろいろな形でアレンジしてほしいということだったんです。「本栖湖」は楽器としてはティンホイッスルという細い笛を使っています。アイルランドの音楽といえばこれ!という感じなんですけど、それをわかりやすく使いました。

本栖湖はアニメ序盤の1~2話なので、『ゆるキャン△』はこういう音楽をやっていきますよというのが伝わればいいなと思って、ケルティックな要素とアコースティック・サウンドをいちばんわかりやすく出した曲ではあります。本栖湖はなでしことリンのふたりしか出てこないので、そこであまり音楽がガンガン来ちゃうと雰囲気と合わなくなってしまう。なので、音楽もギアを入れすぎず、空間を大事にして、ゆったりとした曲を付けました。

「キャンプ場のテーマ ~麓~」は開放感のある曲でしたね。

麓ではリンが「開放感すげー」って言うんですよね。それは原作でも大ゴマになっていて、キャンプ場の雰囲気を表していると思ったので、楽曲も開放感があるんです。聴いてて爽快感があるというか。夜はなでしことふたりで担々鍋を食べるんですけど、そういった静かなシーンにも合うようにアレンジしています。昼と夜ではだいぶテンションも違うし、普通のインストミュージックだったらここまで展開はつけないんでしょうけど、それは話の展開に合わせているから、ということなんです。

アイリッシュブズーキという弦楽器も使っていますが、これはどういう楽器なんですか?

例えば一般的なアコギは弦が6本ですが、対してアイリッシュブズーキは弦が8弦(※2本ずつ4コースの8弦)あるんです。これはマンドリンと同じです。弦が2本の復弦だと微妙にチューニングが合わなくて、音程が完全には同じにならないんです。それが揺れている感じになって、民族音楽っぽい感じになるんです。

でも僕、アイリッシュブズーキは弾いたことがなかったので、『ゆるキャン△』の音楽制作の為に買ったんです。オークションで買ったら、なかなかダメダメな個体で(笑)。結局それを近くの楽器屋さんで、購入額と同じくらいの値段をかけて修理したんですけど、結果高くつきました(笑)。

今回のサントラは、立山さん自身がかなりの楽器を自分で弾いてますけど、そういう苦労もあったんですね。「キャンプ場のテーマ ~高ボッチ、イーストウッド~」はいかがですか?ここは感動的な回でした。

夜景を見せ合うシーンは、物語の中でとても重要なシーンですよね。デモを聴いてもらったときに、“ここをもう少しこうしたい”っていうオーダーが入ったのはこの曲くらいでした。「夜景交換はアニメの前半でいちばん印象的なシーンにしたいから音楽もそれに合わせて盛り上げてほしい」ということでした。

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