Report

ロマンチックな恋模様。渡辺麻友&太田基裕が好演するミュージカル『アメリ』開幕。

ロマンチックな恋模様。渡辺麻友&太田基裕が好演するミュージカル『アメリ』開幕。

ミュージカル『アメリ』が開幕した。2001年公開の大ヒット同名映画を原作に、2017年にブロードウェイミュージカルとして上演。その日本版が、いよいよ日本の観客の前にお目見えとなる。主人公・アメリを演じるのは、ミュージカル初挑戦の渡辺麻友。相手役のニノは太田基裕が扮する。話題づくしの本作の魅力を、初日に先駆けて行われたゲネプロをもとに紹介しよう。

取材・文・撮影 / 横川良明

恋のときめきと幸福感を思い出すThe“デートミュージカル”

映画『アメリ』と言えば、日本でもブームを巻き起こしたフランスの国民的映画。シュールなセンス。ビビットながら調和のとれた色彩感覚。CGを駆使したメルヘンでポップな映像マジック。後のアート系映画に多大な影響をもたらした金字塔的作品だ。

その独特の映像美が肝だけに、生の舞台でどう『アメリ』ワールドが表現されるのか、開幕前からあれこれ想像が巡ったが、結論から言うと、舞台の上で繰り広げられたのは、映画のエッセンスを継承しながらも、ミュージカルならではの魅力がふんだんに詰め込まれた、もうひとつの『アメリ』。ストーリーラインは映画を忠実に踏襲しつつ、その表現手法はオリジナル要素満載の“デートムービー”ならぬ、一級品の“デートミュージカル”に仕上がっていた。

まずうっとりさせられるのが、カラフルな衣裳。原色を大胆に組み合わせた70年代風レトロファッションが、観客を別世界へと連れ出してくれる。全女子が憧れたフランスの街並みは、あえて色は使わず、全面白の舞台装置にシンプルな線画で再現。ここにあのシンボリックな赤のワンピースを着た渡辺麻友が降り立てば、もうそれだけで『アメリ』の世界に。ちょっと浮き世離れしたファンタジックな空気感が、観客の心に小さな羽根をつけてくれる。

そして実際に楽曲を聴いてみると、『アメリ』とミュージカルの相性の良さに思わず膝を打ってしまう。もともと映画『アメリ』の魅力と言えば、オシャレな世界観もさることながら、ブラックユーモアも交えつつ最後は心が軽やかになる不思議な幸福感。ミュージカルの持つ祝祭性は、そんな『アメリ』のキュートさを表現するのにぴったり。原作の持つ毒っ気も適度に孕みつつ、全体的な印象としてはとってもラブリー。観る人を選ばないカジュアルさは、ミュージカル『アメリ』の特色と言えそう。

ダンスシーンも随所に挟み込まれ、目で見て楽しく、心も踊る高揚感がいっぱい。愛らしくステップを踏んだり、軽やかにターンを決めたり、決して生きるのが上手とは言えないけれど、人を幸せにすることに喜びを感じるアメリのキャラクターを渡辺がしっかりと踊りで表現する。脇を固める俳優たちも舞台ではお馴染みの芸達者揃い。舞台から今にもはみ出してきそうな強烈な個性で物語を賑わせる。

純度200パーセント! 渡辺麻友&太田基裕が織りなすメルヘンでロマンチックな恋

そして何と言っても、このミュージカル『アメリ』の最大の魅力は、アメリ役の渡辺麻友とニノ役の太田基裕の2人。こんなにも初々しくてもどかしい恋を、生身の舞台でピュアに表現できたのも、この2人がアメリとニノを演じたからと言っていいだろう。

まずは渡辺麻友の華に驚かされる。これが、国民的アイドルグループの頂点に立った人間だけが持つ輝きなのだと、思わず口をあけて見とれてしまった。どの瞬間を切り取っても愛らしさと清潔感がまったく損なわれないのが、“渡辺麻友アメリ”のすごいところ。だから、気づけばアメリを目で追ってしまうし、ニノに恋したアメリを応援したくなる。特に何度か登場する電話シーンの表情がいい。恋のドキドキ感、アメリの不器用さが表情から伝わってきて、何だか昔の自分を見ているような気持ちに。

透明感をたたえた歌声も印象的。アイドル・渡辺麻友しか知らない観客も、渡辺麻友ってこんな歌声なんだと驚かされることだろう。もともと大の宝塚ファンとしても有名で、プライベートでもよく劇場に足を運んでいる彼女だが、このミュージカルのためにしっかりと準備をしてきたことがわかる。高音部の伸びも安定感があり、歌声全体が澄み切っていて耳心地が良い。ミュージカル界では、アイドル出身の先輩女優が数多く活躍しているが、その系譜に渡辺麻友も堂々名乗りを上げた。

また、ニノ役の太田基裕も、いい意味で“ファンタジーの世界の男の子”をきちんと体現した。地面に這うようにして他人の証明写真を収集する姿も、大事にしていたアルバムをなくして落ち込む泣きっ面も、アメリを追いかけて街中を奔走する背中も、母性本能を刺激しまくり。こんな愛らしい男の子が世の中にいるのかと、“太田基裕ニノ”の無垢さにめまいを覚えてしまう。

アメリのフィルターを通して見たときのちょっととぼけた可愛さもさることながら、自身の内面を歌うときの艶っぽい顔つきもたまらなく魅力的。すでに数々のミュージカル作品に出演しており、ミュージカル俳優としての評価もうなぎ登り。ちょっと高めの甘い歌声にキュンとさせられる女性ファンは多いだろう。

そんな純度200パーセントの2人の恋模様。好きという気持ちを言い出せない臆病さもわかるし、ちょっと待ち合わせ時刻に遅れただけで何か事故にでも遭ったのではとパニックになってしまう盲目さも、恋を経験したことのある人たちなら頷けるところだらけ。ともするとエキセントリックにも見えるアメリだけれど、意外とアメリ的な部分は誰しも持ち合わせているのかもしれないと思わされた。

ずっと部屋に閉じこもって自分の妄想の世界に浸っていれば傷つくことは少ないだろう。だけど、幸せを掴むためには、人と向き合うためには、そのドアを開けて一歩外に出なければ。クライマックスは「アメリ頑張れ」「ニノ行け!」と拳をつい握りしめてしまう。アメリがくれた小さな羽根は、どうやら観客を、2人を見守る恋のキューピッドに変えてしまったようだ。

初ミュージカルの渡辺「総選挙と同じくらいの緊張感があります」

初日会見では、アメリ役の渡辺麻友、ニノ役の太田基裕、そして演出の児玉明子が登壇。初日を迎えた今の気持ちを、渡辺が「緊張と不安とドキドキと楽しみと、いろんな気持ちが入り交じっている」と初々しくコメント。この時期は古巣のAKB48では選抜総選挙シーズンだが、「全然違う感覚なんですけど、わりと同じくらいの緊張感があります」と、9年連続“神7”入りの偉業を達成した女王でも、初ミュージカルを前にしたプレッシャーは相当な様子。「正直に言うと、不安のほうが大きい」と控えめに語りつつ、「自分自身が楽しむということもすごく大事だと思うので、その気持ちを忘れずに精一杯挑みたいと思います」と前を向いた。

太田は「お客様に『アメリ』という作品の世界観を楽しんでいただきたい」と堂々とした口調。演出の児玉も、渡辺に対して「本当に成長したなと思います。一公演一公演重ねるごとにもっと成長できると思うので、その成長ぶりが見どころです」と太鼓判。頼もしい仲間たちに囲まれた渡辺は「心が温かく幸せな気持ちになれる作品ですので、ぜひみなさま劇場に来てご覧になってください」と笑顔で締め括った。

ミュージカル『アメリ』は6月3日まで天王洲 銀河劇場にて上演。その後、6月7日から10日まで森ノ宮ピロティホールにて大阪公演が上演される。甘酸っぱくて爽やかなロマンチックラブストーリー、あなたも一緒に2人の恋を応援して欲しい。

ミュージカル『アメリ』

東京公演:2018年5月18日(金)〜6月3日(日)天王洲 銀河劇場
大阪公演:2018年6月7日(木)〜6月10日(日)森ノ宮ピロティホール

STORY
想像力は豊かだが、周囲とのコミュニケーションが苦手な少女・アメリ(渡辺麻友)の一番の遊び場は “妄想の世界”。22歳となり、モンマルトルのカフェで働いている今でも、周りの人々を観察しては日々想像力を膨らませて楽しんでいた。しかし、ある出来事をきっかけに、他人を幸せにすることに喜びを見出し、彼女なりの方法でいろいろな人を幸せにしていくものの、自分の幸せにはまったくの無頓着だった。ところが、スピード写真のボックスに残された他人の証明写真を収集している不思議な青年・ニノ(太田基裕)に出会い、恋に落ちる。ところが、自分の気持ちをなかなか素直に打ち明けることができず……。

原作:『アメリ』(ジャン=ピエール・ジュネとギヨーム・ローランによる映画に基づく)
脚本:クレイグ・ルーカス
音楽:ダニエル・メッセ
歌詞:ネイサン・タイセン&ダニエル・メッセ
翻訳・訳詞:滋井津宇
演出:児玉明子

出演:
渡辺麻友
太田基裕 植本純米 勝矢 伊藤明賢 石井一彰 山岸門人 皆本麻帆  野口かおる 叶 英奈(Wキャスト) 藤巻杏慈(Wキャスト) 明星真由美 池田有希子 藤木 孝

©ミュージカル『アメリ』製作委員会 2018

オフィシャルサイト
公式Twitter(@musical_amelie)