Interview

Saucy Dog 前作で注目を集めた3人組は、この1年の成長を新作でどんなふうに表現したのか?

Saucy Dog 前作で注目を集めた3人組は、この1年の成長を新作でどんなふうに表現したのか?

「いつか」という曲のMVが動画再生サイトで注目を集め、その曲を収めて昨年5月にリリースした初めてのミニアルバム『カントリーロード』もロングセラーを記録。それ以前から、圧倒的な数のライブをこなしてきた積み重ねがこの1年で一気に実を結び始めた話題の3人組だ。新作『サラダデイズ』は、ボーカル石原慎也の手になる歌詞とメロディ、そして彼の声というオリジナルな魅力に加えて、サウンドのバラエティ感やバンドとしての一体感がさらに増し、この1年間の成長を確認できる内容に仕上がっている。
ここでは、現体制の3人が揃う過程で意識されていたことがどんなふうにバンドの今につながっているのか、そして新作の手応えをどんなふうに感じているのか、3人にじっくりと語ってもらった。

取材・文 / 兼田達矢 撮影 / 高木博史

こういう音楽をやりたいということは特になくて、自分たちのなかから出てきた曲を形にするということだったと思います。

バンドを始める時には、どんなことを思い描いて始めたんですか。

石原 こういうふうになっていこうみたいなことを明確に話したことは当初あまりなくて…。最初4人で始めて、それが3人になって、やがて一人になって、でも僕自身は活動を止めたくなかったので、それで同じ専門学校に通ってて彼の弾くベースラインが好きだった和貴に電話して「一緒にバンドしない?」という話をして、僕から誘いました。当時、和貴がやってた音楽は僕がやってたのとはまったく違う音楽だったんですけど、それがまた面白いかなという気持ちもあったので。

石原 慎也 (Vo : Gt)

誘われた秋澤さんは、どんなふうに思いましたか。

秋澤 じつはその前にも一度誘われたことがあったんです。だけど、そのときには自分のやってたバンドがあって無理だったんですけど、2回目に誘われたときには自分のバンドも行き詰まってて、それでもどうにかしてがんばりたいと思って一人で練習してた時期だったんで、まずうれしかったですよね。ただ、やってる音楽のジャンルが違うし、どうしようかな?と思う瞬間もあったんですけど、でも一緒にやったらきっとうまくいくという確信はなぜかあったんですよね。

一緒にやることになって、実際にやる音楽の内容は、全く違うタイプの音楽をやっていた秋澤さんが、石原さんがやっていた音楽に寄り添う形になったわけですよね。

秋澤 そういうことになりますね。だから、最初はすごく戸惑いがあって、例えば8ビートでBPMが120という曲で単純にビートを刻むということができなかったんです。

石原 できなかったねえ、そう言えば。

秋澤 そういうことをやったことがなかったんで。それでけっこう悩んだんで、それまで指で弾いてたのをピックで弾くことを提案したこともあったんです。だけど、「いや、指で弾いてほしい」ということで、確かに指で弾いたほうがいろんなフレーズが弾きやすいし、そもそも僕を誘ってくれた理由も「僕のフレーズが好き」ということだったわけだから、そこはもうけっこう四苦八苦しましたけど、やるしかないという感じでした。

秋澤 和貴 (Ba)

石原さんからすれば、J-ROCKの基本的なパターンもやってほしいし、秋澤さん独特のフレーズもほしいし、ということだったわけですね。

石原 これをやってほしいとか、そういうことを思ってたわけじゃなくて、ただ一緒にバンドをやりたいなということだけで…。何かを要求するということはその当時はなかったですけど、敢えて言えば「こういう音楽を聴いてみてほしい」という話はしたと思います。J-POPを聴いてほしい、みたいな。僕も、和貴がやってたようなUKロックを聴くようになったし、そういう相乗効果はあったと思いますね。

何かを要求するということはなかったにしても、何かやりたい音楽のイメージがあって、それを実現するために一緒に考えるというような気持ちの流れだったんでしょうか。

石原 こういう音楽をやりたいということは特になくて、自分たちのなかから出てきた曲を形にするということだったと思います。

せとさんは、最初はサポートという形で加わって、しばらくしてから正式メンバーになるわけですが、サポートから正式メンバーになるときは、何かきっかけのようなことはあったんですか。

せと ウ〜ン…、メンバーになるときよりも最初にサポートで始めるときに…、サポートという形で始まったのは“女子が入っていいのか?”という気持ちはあったんです。

石原 ああ、確かにそういうところはあったね。最初はメンバーがみんな男だったからね。

せと その頃のSaucy Dogのファンは女の子が中心だったから、そういうバンドに女子が入るのはどうなのかな?という葛藤というか、不安もあって最初はサポートという形で始まったんです。でも、それでしばらくやってて、自然とメンバーということになりましたね。まず1枚目の会場限定版のシングルを出して、次のEPを作ってツアーをまわろうというときにはもうそういう話になってました。

せとゆいか (Dr)

そのときに、せとさん自身のなかで何か決心するというか、気持ちの部分でそれまでと何か違う、線が引かれたようなことはなかったですか。

せと 私は前のバンドが解散するときに、このSaucy Dogのメンバーが抜けてしまって、誘われたのはちょうどいいタイミングだったんですけど、そのときに他にもいくつか誘われたんです。でも、やるならSaucy Dogだなという意識は私のなかにはっきりあったんですよね。

それは、どういうところに惹かれていたんですか。

せと サポートをやる前から彼が作る曲がすごく好きで、ライブを見ることもあったんですが、すごくいいボーカルだなと思ってましたから。

単純に、石原さんの曲と歌が好きだったということなんですね。

せと そうですね。それに私は元々、歌詞とメロディがいい音楽を好きになるんですけど、彼の詞には面白いなと思うものがいっぱいあったんですよね。

この1年の間には「音源を聴いて、初めてライブに来ました」という人もたくさんいて、それも本当にありがたいなと思いました。

ちなみに、この3人が揃ったタイミングで心機一転というか、バンド名を変えるというような話はなかったんですか。

秋澤 一瞬ありましたね。

石原 そうだっけ?

せと ツアーがスタートする前に「変える?」みたいな話は出たよ。

秋澤 でも、慎也が「Saucy Dogで行きたい」という話で。

やはり、石原さんのなかにはこだわりがあったんですね。

石原 こだわりというか、Saucy Dogというバンドを守りたいという気持ちははっきりあって、それでいつの間にか2年が経ちました。

その「Saucy Dogというバンドを守りたいという気持ち」はどうして生まれたんでしょう?

石原 それは、昔のメンバーのことを嫌いじゃないし、その彼らと一緒に作り上げてきたのがSaucy Dogだから、だから僕の苗字みたいな感じですね。僕のサインも、それ自体がもうSaucy Dogになってるんですよ。それも何度か変えようと思ったことがあるんですけど、結局変えてないですね。

昨年5月に初めてのミニアルバム『カントリーロード』をリリースして、それからまたツアーを行いましたが、音源をリリースしてのツアーというのはそれ以前と何か違う感触はありましたか。

石原 まず僕ら自身がファンとしていろんなアーティストのCDを買っていたわけですけど、そのCDを僕らが出せるということにすごく大きなロマンを感じていて、だからやっと自分たちのCDが出せたなっていう。タワレコに自分たちのCDが並んでるっていう、そのことが本当にうれしかったんですよね。ただ、全国流通の音源を出すことが初めてだったので、どんな反応があるか正直不安もあったんですけど、試聴して、それでその場で買ってくれた人もたくさんいたみたいで、そういう人たちの声を聞くと本当に出して良かったなと思ったし、それにこの1年の間には「音源を聴いて、初めてライブに来ました」という人もたくさんいて、それも本当にありがたいなと思いました。

秋澤 出した頃はそんなに実感がなかったし、自分たちが作ったCDがお店に置かれてるということについては今でもあまり実感がないんですけど、それでも時間が経つなかでライブの反応はだんだん違ってきたような気がしますね。

せと 全国流通のCDを出したことで、私たちのことを知ってもらうルートがひとつ増えたという実感はすごくあって、先に音源で予習してくれて、それでライブで一緒に楽しんもらえるというか、音楽を共有できてる感じがより強くなってて、それはすごく素敵なことだなあと思っています。

前作では書けなかったことが、経験を積んで、いろいろ勉強させてもらって、心境も変わって、書けるようになってきました。

さて、今回のアルバムの話ですが、作り始める前にあらかじめ話したり、何か考えていたことはありますか。

石原 今の自分たちが出せる最大限のものをレコーディングしようということだったと思いますね。

曲は、アルバムならアルバムという目標を目がけて作ることが多いですか。それとも、普段から時間があればどんどん作っていくんですか。

石原 基本的には予定が定まったところで作ろうと思って作ることが多いんですけど、それでも言葉に関しては“この言葉、面白いな”とか“歌詞に使えるな”と思ったことは常日頃から書きためています。

曲作りは、いちばん基本的なパターンとしてはどういう進め方ですか。

石原 僕がギターで歌ったものを持って行って、それに肉づけしていってもらう形が多いですね。

ということは、歌詞とメロディという骨格は出来上がった段階で二人に聴かせるんですね。

石原 最近は、そこが完全に出来上がっていない段階で聴かせることのほうが多いかもしれないですね。例えばギターのリフだけ持って行って、そこで曲全体の雰囲気をみんなで決めて、それを家に持ち帰って歌をつけさせてもらうというようなパターンも増えてます。

その変化には何か理由があるんですか。

石原 単純に歌詞と曲が出来上がらない場合ということが多いですけど…。

他のバンドの話になりますが、曲作りを担当している人がわざと全部作り上げてしまうことをしないで、バンドで作る部分を増やしたほうがいろんな曲ができて面白いから、ということもあるみたいですが。

石原 じつは僕もそういう理由なんです(笑)。

せと (笑)、違うでしょ。

秋澤 (笑)、でも自然とそういうふうになってきてるところもあると思うんです。

石原 僕が意図しているところではない部分でそうなってるというか、最近は僕が物理的に忙しいということもあるので、結果的にそういう部分が増えているということはあるかもしれないですね。

逆に、秋澤さんとせとさんから見て、石原さんが持ってくるものに以前と比べて何か変化を感じることはありますか。

秋澤 1枚目はみんなで作ったとは言ってもやっぱり慎也のストーリーという彼の色合いが強いと思うんですけど、今回は前作以上に全員で作った感が強くて、すごくいろんな音楽の要素が入った内容になってると思いますね。

せと 聴いたらすぐわかることではあるんですけど、恋愛の曲が減ったんですよね。恋愛の曲って、共感してもらいやすいし、歌詞も書きやすいということがあると思うんですけど、それ以外のことを書きたい気持ちがこの1年で出てきたのかなということは思いました。

石原 おっしゃる通りですね。

それは、恋愛に関することで書くことがなくなったということではなくて?

石原 それもあります(笑)。最近、恋愛をしてないんですよ! でも恋愛してなかったら恋愛の曲は書けないかと言えば、そんなことはないはずだから、これは言い訳になるんですけど、でも恋愛のこと以上に伝えたいことが増えたというのは本当にその通りなんです。自分たちのバンドの良さをもっと知ってほしいし、僕たちはこういうバンドなんだよということをもっと知ってほしいから今回はバンドについて書いた曲が2曲入ってるんですよね。それから、今回のリード曲になっている「真昼の月」は、自分たちの大切な人をちゃんと大切にしてあげられるうちにもっと一緒にいてあげてほしいという思いで書いた曲です。前作ではできなかったというか、書けなかったことが、経験を積んで、いろいろ勉強させてもらって、心境も変わって、書けるようになってきましたね。

以前は、自分のバンドのことや自分自身のことは書くのは難しかったですか。

石原 そうですね。自分をみつめ直すということがあまりできなかったので、歌詞を書くときに自分の私生活に踏み込んだりはしなかったんですけど、いちばん大きかったのはウチの祖母が去年亡くなったんですね。そこで自分の心境にも変化があって、大切な人のそばにいてあげたいという気持ちは必ずしも恋愛ではないということを伝えたいと思ったし、その頃はしっかりやりきれていないところもあったので“こんなグダグダしてるヒマはない! 前に進んでいかないといけない!”と思って曲を作っていきました。

今の時点ではそういうふうにはなりきれていないと思うので、もっと自分自身で光ることができるような人間になりたいですね。

石原さんの内面に立ち入るような話になりますが、例えば「真昼の月」はタイトルにもあるし、「コンタクトケース」という曲では彼女がいなくなった最後の夜は月が明るくてまあるい夜として記憶されていたりします。“月”というものにシンパシーが強いということはありますか。

石原 僕は…、太陽みたいな存在になりたいと思っていて…。月は太陽がないと輝かないじゃないですか。だから、僕は月が好きなんですけど、でもそういう月をなぜ歌詞に書くんだろう?というのは、あまり考えたことがなかったですね。

「曇りのち」という曲の主人公は、夜が明けて太陽の光が強くなってくると見えなくなる弱い光の星と同じような存在だと自分のことを思っているわけですが、石原さん自身は光を放つ側の太陽になりたいと思っているんですね。

石原 そうですね。誰かを照らす人になりたいとは思ってます。でも今の時点では、そういうふうにはなりきれていないと思うので、もっと自分自身で光ることができるような人間になりたいですね。僕は、私生活でもすごくだらしない生活をしていた人間なんですけど、ステージに立つ人間というのは見てくれる人を元気づけたり照らしたりする側にいるわけだから、どういう生活をしてる人間なのかということはステージにも表れると思うんです。だから、自分自身を変えていかないといけないと思って、それで私生活から変えていこうと思っています。

秋澤さんとせとさんは今回のレコーディングを振り返って、何か印象に残っていることはありますか。

秋澤 自分のなかで、前作とは違う部分も出したいけど、変わらない自分らしさも出さないといけないなという気持ちがあって、それでかなり苦労しました。「コンタクトケース」はレコーディングの当日にベースラインが決まったし、「バンドワゴンに乗って」なんかレコーディングしてる最中にできたラインを弾いてますから。

せと 私のなかでは歌詞とメロディをちゃんと大事にした上でどこまで遊べるかというのがテーマというか意識しているところなんですけど、今回はただいろんなフレーズを入れるというのではなくて、ちゃんと歌に寄り添っていろんなことがやれたかなと思うんですね。例えば「メトロノウム」はサビのビートで電車が通る感じをイメージしてたり、途中で踏切をイメージしてちょっとリムを入れたりとか、そういうふうに曲の内容により踏み込んで、面白いものになったんじゃないかなあという気はしています。

そういうアルバムを携えて、またツアーに出かけることになります。リリース直後にワンマン・ツアーがあり、秋には対バン・ツアーが決定していますが、そのツアーに向けての意気込みを最後に聞かせてください。

秋澤 ワンマン・ライブもこれまでやったことがなかったので、すごく緊張しています。でも、そこで得たことを対バン・ツアーに活かしたいですね。

せと 初めてのワンマンですから、準備できることは全部やって臨みたいですけど、その上でツアーの初日からファイナルまでの間に成長していくそのストーリーを来てくれるみんなと一緒に作っていけたらいいなと思っています。

石原 対バン・ライブだと、対バンを見て少なからず刺激をもらって、それでライブに挑むみたいな部分も大きいんですけど、ワンマンはそういうことがないわけだから、自分たちだけでどれだけ自分たちを奮い立たせられるのか?というのが僕のなかにはあるし、長尺で曲数ももちろん多いんですけど、いろんな不安に勝ちたいですね。気持ちの強さを持てるようになれればいいなと思っています。そういう成長した自分たちで、2マン・ツアーに挑んでいきたいですね。

期待しています。ありがとうございました。

その他のSaucy Dogの作品はこちらへ

ライブ情報

全国ワンマン・ツアー「one-one tour 2018」

5月25日(金)東京・渋谷TSUTAYA O-Crest
5月27日(日)宮城・仙台LIVE HOUSE enn 3rd
6月15日(金) 香川・高松TOONICE
6月16日(土) 広島・広島BACK BEAT
6月17日(日) 福岡・福岡Queblick
6月24日(日) 北海道・札幌SOUND CRUE
6月29日(金) 愛知・名古屋ell.FITS ALL
6月30日(土) 新潟・新潟RIVERST
7月4日(水) 大阪・心斎橋JANUS
7月5日(木) 大阪・心斎橋JANUS
7月11日(水) 東京・渋谷WWW

「ワンダフルツアー2018」 *対バンあり

10月1日(月) 東京・恵比寿リキッドルーム
10月2日(火) 群馬・高崎FLEEZ
10月4日(木) 新潟・新潟GOLDEN PIGS RED
10月5日(金) 長野・松本ALECX
10月12 日(金) 京都・京都MUSE
10月13日(土) 兵庫・神戸VARIT
10月14日(日) 静岡・静岡UMBER
10月17日(水) 宮城・仙台MACANA
10月18日(木) 福島・郡山#9
10月22日(月) 香川・高松DIME
10月23日(火) 岡山・岡山IMAGE
10月25日(木) 広島・広島セカンドクラッチ
10月26日(金) 福岡・福岡BEAT STATION
10月28日(日) 熊本・熊本Django
10月29日(月) 山口・周南RISE

Saucy Dog

石原慎也(Vo / Gt)、秋澤和貴(Ba)、せとゆいか(Dr)
2013年、西日本各地出身のメンバーが大阪で結成した、3ピース・ギターロック・バンド。メンバーチェンジを経て2016年度MASH A&RのオーディションでGP受賞。代表曲「いつか」のMVは再生回数260万回を突破、収録ミニアルバム『カントリーロード』はロングセールス中。昨年の年末フェス出演や2018年の“スペシャ列伝ツアー”にも抜擢されるなど、2018年期待の新人バンド。Vo石原の「言葉・メロディ・声」の3要素が最大の魅力で、Vo石原のもつ声はもちろん、誰しものハートの琴線に触れる言葉とメロディはback numberやRADWIMPSに並ぶポテンシャルを感じさせる。5月23日には2ndミニアルバム『サラダデイズ』が発売される。

オフィシャルサイトhttp://saucydog.jp

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