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【レビュー】“ロボットアニメの域を超えた青春群像劇”─アニメ『ダーリン・イン・ザ・フランキス』 目が離せない「コドモたち」の関係性

【レビュー】“ロボットアニメの域を超えた青春群像劇”─アニメ『ダーリン・イン・ザ・フランキス』  目が離せない「コドモたち」の関係性

正体不明の巨大生物・叫竜(きょりゅう)から人類を救うため、巨大ロボット兵器「フランクス」に乗って戦う少年少女のドラマを描くTVアニメ『ダーリン・イン・ザ・フランキス』(以下『ダリフラ』)。こう前置きすると、ありがちなロボットアニメのような印象を受けるかもしれない。しかし、『ダリフラ』を観た視聴者ならば、もう理解しているだろう。本作がロボットアニメの域を超えた別物であることを。

物語が後半へと差しかかる今、改めて本作の注目すべきキャラクターの関係性に迫りながら、それぞれの心情を読み解いていきたい。

文 / 福西輝明


受け手によって見方が変わる。一言では語れない複雑なドラマと心理描写

制作スタジオ・TRIGGERとA-1 Picturesが手掛けるオリジナルロボットアニメーションである本作。フランクスと叫竜、TRIGGERが得意とするバトルシーンは、ロボットアニメとしての派手さ、ケレン味にあふれている。その上で『ダリフラ』において目が離せないのが、10人の少年少女が織りなす人間ドラマだ(こちらはA-1 Picturesが得意とする部分と言える)。

彼らは男女でパートナーを組んでフランクスに乗り込む。しかし、あくまでもフランクスで戦うために組んでいるのであって、必ずしもお互いが愛情や友情で繋がっているわけではない。主人公であるヒロとヒロインのゼロツーは、それぞれがお互いを強く想い合っている。だが、ゴローのパートナーであるイチゴは、ゴローから告白されたのにヒロへの秘めたる想いを捨てきれなかったり、フトシのパートナーだったココロが、フランクスとのコネクト値(フランクスを操るための適応値)が低下したミツルのため、自分がパートナーに志願するなど、人間関係は話数を追うごとに変化し続けている。

こうした人間模様の裏には、一言では語りつくせない各人の心情が隠されている。たとえば、ココロがミツルのパートナーに志願したのも、単に彼女が優しい性格だから、というだけではなさそうだ。フランクスに乗れなくなったミツルが除隊処分されるのを食い止めたかったからなのか、ミツルのために何かすることで、自分の存在意義を確立したかったからなのか。はたまた、ココロ自身気づかないうちにミツルに惹かれていたのか……。彼女の心情を測るヒントはいくつも転がっているが、どれが正解なのかはわからない。作中では各人の心情に対する説明は明確にはされていないが、だからこそ受け手によっていくつもの解釈が生まれる。物語面の謎だけでなく、それぞれの心情に思いを馳せ、考察しがいがあるところも本作の大きな魅力だと言える。

やっと出会えた運命の少女・ゼロツーへの思い

かつて、無個性なコードナンバーで呼ばれていたコドモたちに「名前」をつけることを思いつくなど、行動力にあふれたヒロは、パラサイト(フランクスのパイロット)候補の中でも飛び抜けた才能を持った存在だった。そんな彼は、ある時期をきっかけに以前のような快活さを失い、フランクスとのコネクト値も大幅に低下。フランクスに乗って戦うことがパラサイトの存在意義だというのに、それすら果たせなくなった彼は自分の居場所を失いかけていた。だが、ゼロツーと出会ったことですべてが変わった。ゼロツーと一緒ならば再びフランクスに乗れる。かつて他のコドモたちから羨望の眼差しで見られていた頃のように、パラサイトとして大活躍できる。

たしかに、「ゼロツーとは3回以上、一緒に乗れない」と言われるほど、身体には負担が掛かる。だが、どれだけ自分の命が削られようとヒロは頓着しなかった。たとえ戦いの中で力尽きても、彼にとっては“何もできない、何者でもない自分”に戻ることの方がずっと恐ろしかったからだろう。ヒロにとってゼロツーは、自分の存在意義を確立するのに、必要不可欠なパートナーだったと言える。

だが、やがてヒロの心境に変化が見え始めた。明確な恋愛感情の知識などないのに、ゼロツーに想いを傾け始めたのだ。ゼロツーのことをもっと知りたい。そして、自分のことをもっと知ってもらいたい。それは、「好意」のもっとも根元的な形。「パートナーはお互いのことをよく知らないといけない」という理性的な前置きはあったかもしれないが、それでもヒロはゼロツーに強く惹かれる自分を止められなかった。

じつは、2人は幼い頃に一度出会っており、2人でコドモたちの居住区・ミストルティンの外へ脱走したことがあった。その記憶はオトナたちに捕まった際に操作されてしまったのだが(これがきっかけで、ミツルとの約束を忘れ、フランクスとのコネクト値も下がり始めた)、ゼロツーとフランクスに搭乗した際に心が深く繋がった影響で、失われた記憶が復活。ゼロツーと幼い頃に出会い、自分が名前を付けた「絵本を持った女の子」であることを思い出し、彼女への想いは確固たるものになった。

もはや、ゼロツーが何者だろうと関係ない。命尽きるまで彼女と添い遂げる。ゼロツーとフランクスに同乗することで「竜化」が進み、ツノが生え始めているというのにまったく頓着していないところからも、ヒロの決意と覚悟が見て取れる。物語序盤では、ゼロツーの方からグイグイ迫られて困惑していたヒロ。しかし、物語が進むうちに、逆に自分からゼロツーの心に寄り添い始め、ついには叫竜になりかけていたゼロツーを力業で立ち直らせた。主役を張るのにふさわしい、熱い男気を見せてくれたと言えるだろう。

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