Interview

夏帆は瑛太演じる”元少年A”にどう向き合ったのか。念願だった瀬々敬久監督と組んだ衝撃の話題作『友罪』の見どころを語る

夏帆は瑛太演じる”元少年A”にどう向き合ったのか。念願だった瀬々敬久監督と組んだ衝撃の話題作『友罪』の見どころを語る

映画『64ーロクヨンー』(16)で人間の内部に宿る本質をえぐり出し、観る者に問いを突きつけた瀬々敬久監督が、またも凄まじい一作を撮り上げた。題材は、ミステリー小説の気鋭・薬丸 岳のベストセラー『友罪』。業を背負ったがゆえ、過去を封印して生きようとする人間たちの中に浮上する、かつて世を震撼させた”元少年A”の影。真の贖罪とは何か、人に心を許すことは愚行なのか…さまざまな疑問符を投げかける。

生田斗真と瑛太をはじめとする豪華なキャストも話題の本作で、忌まわしき過去に苛まれる女性・藤沢美代子を演じた夏帆に、瀬々監督との仕事や撮影時の逸話を聞いた。

文 / 平田真人 撮影 / 斎藤大嗣

瀬々監督の作品に対するまっすぐな姿勢が、見ごたえのある映画を生むのだと思う。

これまでも名だたる監督さんと仕事をされてきた夏帆さんですが、瀬々敬久監督と組むのは初めてだったそうですね。伝え聞くところによると、瀬々監督は非常に感情表現が豊かな方だと伺っています。

周りから瀬々組の評判を聞いていたこともあって、瀬々さんはご一緒してみたい監督の1人でした。なので、今回の『友罪』のお話はとてもうれしかったです。実際、現場に入ってみると、周りの方がおっしゃるようにすごくアツい方でいらっしゃって(笑)。作品に対する思いを、現場でもひしひしと感じましたし、ものすごく難しい題材ですが、誰よりも真摯に作品に向き合っていらっしゃって。『友罪』のスタッフとキャストも、瀬々さんのためにがんばろう、という思いで撮影に臨んでいる気がしました。そう思わせてくださる監督の作品は、見応えのあるものが多いように私は感じています。

それは、なぜなんでしょうか?

誰よりもまっすぐに作品と向き合って、妥協することなくぶつかっていくことによって、自ずと質が高まっていくからではないかな、と。実際に私も瀬々組に参加して、それを感じました。

それほどにまっすぐでいらっしゃるということは、演出時の言葉や身振りも熱っぽいんですか?

そうですね、勢いがありますし、距離感がグッと近くなるんです。また、ことあるごとに「とにかく、限界を超えてくれ」ということを今回おっしゃっていて、その言葉がすごく強く印象に残ってます。私としては、「限界を超えるって、どういうことことだろう?」ということを、ずっと考えていたんですけど、それぐらい突き抜けるというか、衝動的なものを求めていらっしゃったのかなと。撮影から時間をおいて、ある程度消化できた今は、そんなふうに感じています。

「限界を超えろ」が、キーワードだったわけですね。

はい。たぶん、ですけど…小さくまとまるのではなくて、自分の内側からブワッと出るものを求めていらっしゃったと思っていて。とはいえ、たやすくできることでもなかったりするので、瀬々さんの熱意に応えたいという思いで現場に立っていたことは、よく覚えています。

なるほど。今回、夏帆さんが演じられた美代子は、自分の過去を隠しながら生きている人物でしたが、どのように作品の中で存在させようと考えていらっしゃったのでしょうか?

映画の中で美代子がどのように映るかという見え方に関しては、特に意識はしませんでした。ただ、美代子の気持ち──人様の目に触れたくないと言いますか…なるべく目立たずに生活していきたいという気持ちは、大事にしていました。

瑛太さんはすごい役者さんだなとあらためて実感した。鈴木そのものにしか感じられなかった。

人目を恐れて生きてきた美代子の閉ざされた心に、染みこむような存在として現れるのが瑛太さんの扮した鈴木で、瑛太さんとのお芝居が非常に大きなものになったのではないかと思われます。

瑛太さんとも今回の作品で初めてご一緒したんですけど、現場に入る前から共演することがすごく楽しみだったんです。実際にお芝居をしてみて、あらためて瑛太さんはすごい役者さんだなと実感しました。

今回の鈴木という役は、特に”無”から狂気への振り幅がすごく大きかったように見えたので、ご一緒した夏帆さんも何かしらのインスパイアを受けたのではないか、と想像しますが…。

そうですね、瑛太さんのお芝居を受けて、私も返していくという感じだったので、少なからず、意識していないところでも影響を受けていたところがたくさんあったと思います。

具体的に言語化するのは、ちょっと難しい感じでしょうか?

う~ん、何て言ったらいいんだろう…瑛太さんが役として現場にいらっしゃったというか、鈴木そのものにしか感じられなかったんです。なので、そんなに難しいことを考えずに、単純に鈴木と接するという気持ちで、美代子として向き合っていました。そういった辺りは、ちょっと理屈じゃないところもあったりするんですけど。

お芝居を離れたところで、瑛太さんと何かお話をしたり、コミュニケーションをとるといったことはありましたか?

それが、お芝居以外ではほとんどお話をしなかったんです。お互い、現場に役として立った時に、鈴木と美代子として見ていたという感覚でした。

夏帆さんとしては、そのように純粋に芝居に没入した中で構築される関係性があれば、演じるには充分という考え方ですか?

それは作品や役によると思います。お芝居を離れたところでも密なコミュニケーションをとることが大事になる場合もありますし、それが邪魔になる場合もあります。今回の場合は、美代子と鈴木自体が言葉をかわしてコミュニケーションをとるタイプではなかったので、そんなに頻繁に会話をする必要もないのかなと、とらえていました。

なるほど。非常に重たいテーマの作品ではありますが、1人の女性として夏帆さんはどのように『友罪』をご覧になったのでしょうか?

”元・少年A”という特殊な存在をめぐる話ですけど、登場人物がそれぞれ取り返しの付かないことをしてしまった過去を背負いながらも、生きていかなければいけない中でもがいている姿に、さまざまな思いを抱かされました。自分自身と直接照らし合わせるということはないまでも、深く考えさせられたと言いますか──。日々過ごす中で、いろいろな人と出会い、いろいろなことが起こって、時の流れとともに忘れていってしまいますけど、それでも忘れちゃいけないことってあるよねと、この作品に関わって気づかされたところがあります。そういった…何かを考えるきっかけになるような作品なんじゃないかなと、思います。

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