LIVE SHUTTLE  vol. 262

Report

小田和正、全国ツアー2018『ENCORE!!』 最速レポート(最後に“楽屋での立ち話”付)

小田和正、全国ツアー2018『ENCORE!!』 最速レポート(最後に“楽屋での立ち話”付)

「ぜひこの地から」という、強い想いでスタートさせた初日・熊本公演のことは、すでにメディアで伝えられている。これからお読み頂くのは、静岡エコパ・アリーナの2日目、5月13日の模様である。

今回、ツアー・タイトルは『ENCORE!!』だが、その内容は、2016年の『君住む街へ』の再演というわけではなかった。ツアー直前の5月2日に、4曲入りシングルがリリースされたことも大きい。これらの曲を、一切やらない、という手はないだろうし、さらに全体の組み方も、2年前とは違うものだった。

掛川駅に降り立つと、外は土砂降りだった。小田のライブと雨といえば、多くの記憶が残っている。しかしそれも、やがてあがるのは「たしかなこと」。そして会場内へ。PAからリンダ・ロンシュタットの70年代の名曲が流れている。

恒例となっているオープニングVTRは、今回、出色の出来だ。そもそもは、いざ開演へと、客席の心拍数を高めていくためのものだが、ファンタスティックにイマジネーション豊かに、その役割を果たすものだった。もう、この時点で既に、最初の感動を味わった。
メンバーが登場してくる。歓声が沸き起こる。小田の姿が認められると、いっそう大きくなる。ここでお断りしておく。まだツアーも序盤である。具体的な演出や曲順などには触れず、書かせていただくことにする。
ただ、オープニングが『会いに行く』であったことは、既に報じられているので書かせて頂く。そもそもこの歌、小田が「ツアーをする」ことの行動原理を伝えるものでもある。例えば歌詞の一節の、“その笑顔に会うために”。会場に花道を設置したり、時に客席に乱入したりするのは、みんなの笑顔を、より近くで感じるためだ。集まった観客達は、早くも柔らかな笑顔となり、曲に揺れていた。

バンドの演奏は、1曲目から手探りな雰囲気を微塵も感じさせない堂々たる鳴りっぷりだ。以前、何度も書いたことだが、小田のバンドはストリングスを含め、有機的なひとつの生き物のように表情豊かである。小田のライブの最初のほうでメンバー紹介していたので、このレポートでも紹介しておく。

木村万作(ドラム)
栗尾直樹(キーボード)
稲葉政裕(ギター)
有賀啓雄(ベース)
金原千恵子(ファースト・バイオリン)
吉田翔平(セカンド・バイオリン)
徳高真奈美(ヴィオラ)
堀沢真己(チェロ)
※ただし、本静岡公演のみ、チェロは結城貴弘が担当

途中、MCのなかで興味深かったのは、『たしかなこと』を歌った時だった。「改めて、自分のCDを聴き直した」という。長く歌い続けていると、また、この作品のように、他のアーティストも好んで取り上げるものの場合、世の中には多種多様な『たしかなこと』が存在する。
小田自身も長く歌ううちに、譜割りなどがオリジナル音源と違ってきていることへの自覚があったらしく、なので聴き直してみたという。そして歌う前にこう言った。「今日は“正調”でお届けします」。
聞こえてきたその歌は、草書というより楷書の感覚ということだろうか。でも、小田がこの歌を書き上げたとき、メロディも言葉も吟味に吟味を重ね、削ぎ落としに削ぎ落としたからこそ抽出された、まさに生きてる実感として嘘偽りない『たしかなこと』が、より原色に近いものとして届けられた気がした。

この日は母の日だった。小田はMCのなかで、そのことにも触れた。母が好きだったという『夏の終り』を少しだけ口ずさみ、さらに、これも好きだったと、ある歌を披露する。我々は、小田の母のことを直接知らない。でも、「この曲が好きだったのなら、こんな人なのでは」と、想いを馳せることならできる。

新曲は、『会いに行く』以外にも、『この道を』、『小さな風景』、『坂道を上って』と、すべて演奏された。やや意外だったのは、通常なら“この曲はドラマ〇〇の主題歌で”といった、新曲ゆえの説明がなされそうなところ、特になく、さらに新曲とも告げず演奏されたことだ。でも、お馴染みの曲に挟まれた曲順でも、これらはごく自然に一定の存在感とともに溶け込んでいた。

手を抜かずリハーサルを積んだツアーゆえのことと言ってしまえばそれまでだろうが、生で初めて聴いた『この道を』と『小さな風景』は、歌詞の一字一句がより彫りの深いものとして届き、さらにこの作品が好きになった。イントロのギターから実にドラマチックな『坂道を上って』は、終盤へ向かって拓けていく構成が、生演奏だと余計、音圧が心地良い。これら新曲たちの充実が、より一層、セットリストを盤石にした。

小田のライブといえば、プログラムの中盤あたりに、「ご当地紀行」がある。ここ静岡編は、列車での移動も含むもので、まさに“紀行”という感覚であった。石段を駆け上がるシーンもある(最新シングルのジャケットもそんな写真だ)。もし、なぜ上がるのかを問うたら、「そこに石段があるから」と、高名な登山家のような答を小田はするのかもしれない…、などと思いつつ見ていたら、途中で部活中の地元の女子生徒と遭遇したのだが、彼女達は登山部であった。
大井川鐵道のSLに乗車した際には、座席でぽつりと、「父親のことを想い出す」と呟く。人の記憶は面白いもので、ふとしたことで扉が開く。でも、別のシーンで登場する、小学校の頃に遠足で来たはずの場所が、わざわざ訪ねてみたら記憶違いのようだった、というのも、それはそれで興味深かった。

さて、冒頭でも前回のツアーとはセットリストの組み方が違うと書いたが、前回はオールタイム・ベスト『あの日 あの時』に準じたものであり、オフコース時代とソロになってからを、それぞれコーナーにまとめた部分もあった。それにくらべ、今回はランダムだ。セットリストに関しては、この程度の表現に止めておく。

一番肝心なことを忘れるところだった。小田の歌声は、終始、素晴らしかった。ついつい「70歳には思えない」と書いてしまいそうだが、じゃあいったい、その“声年齢”は何歳なのかと問われても困る。比類無き。そうとしか言えない。張りがあり、印象としては“高く”聞こえる。
“いつまで小田和正はツアーをやるのだろう”と、ざわざわしていたのは「さよならは 言わない」の頃だ。もちろんあれは、曲のタイトルへの世間の反応でもあったけど、あれからほぼ10年経った。なにやら別次元の出来事であるかのように、今、小田の歌声は澄み切り、力強いのである。どんどん滑らかさを増し、ライブは終盤へと、衰えることなく突入していく。しかも考えてみたら、今日は静岡公演2日目なのである。

もちろんこの日もアンコールはあった。すでに20数曲が披露されていて、これだけで充分、納得出来るボリュームであるのだが、毎回、アンコールも充実しているのが小田のツアーの定石で、この日も期待を裏切られることはなかった。そういえば、“まだこの曲、やってねんじゃねぇ?”と、どこかの方言を真似るかのような喋り方で笑いもとりつつ、みんなが聴きたかった、あの名曲を披露する場面も。

最初のほうのMCで、小田は初めて自分のコンサートを見に来た人は、どれくらい居るのかと前日客席に訊ねたら、ことのほか多かったことに驚いたと語っていたが、間違いなく、初めての人にも楽しめる内容だったろう。じっくり聴いて浸れる歌、体を動かしてノレる歌、そして、小田と一緒にうたえる歌…。これらがバランスよく含まれたメニューなのである。
2年前のツアーの時は新しい曲を作って必ず戻ってくると言ったが、さすがにその約束は、もう出来ないのかも、と、そんなことを話していた。とはいえ悲観的なトーンは微塵もない。約束という言葉の代わりに選んだのは、笑顔が伴った「これからは流れに任せつつ」という表現だった。

終演直後、楽屋を訪ねると、何十曲も熱唱して疲労困憊、とは真逆の、けろりとした表情の小田がいた。

歌声が“高い”印象に聞こえたんですよ。

小田 シャープしてたってこと?

いや、音程じゃなくて…

小田 “響き”がね。なんかね、前回より出るんだ。後半のほうが出るし。ただ、声は出るんだけど、その分、体は疲れちゃうんだ。これは未知の疲れだな。

そんな自分とも“付き合っていく”というか。

小田 そういうことだろうね。

アンコールの時に、“まだこの曲、やってねんじゃねぇ?”みたいに、どっかの方言みたいな喋り方して笑いをとってましたよね? あれはどこの方言だったんですか?

小田 あれ? “栗尾弁”だよ

バンド・メンバーへの親愛の情が溢れ出る、そんなオチも聞けたところで、楽屋を出て、帰路についた。さっきは土砂降りだったけど、雨はすっかりあがっていた。

取材・文 / 小貫信昭 撮影 / 菊地英二

ライブ情報

明治安田生命 Presents
KAZUMASA ODA TOUR 2018
ENCORE!!

5/4(金・祝)/5(土) グランメッセ熊本
5/12(土)13(日) 静岡エコパアリーナ
5/19(土)20(日) 函館アリーナ
5/26(土)27(日) ビックパレットふくしま
6/5(火)6(水) 神戸・ワールド記念ホール
6/13(水)14(木) 名古屋・日本ガイシホール
6/20(水)21(木) 大阪城ホール
6/26(火)27(水) さいたまスーパーアリーナ
7/3(火)4(水) 横浜アリーナ
7/14(土)15(日) 宜野湾海浜公園屋外劇場
7/21(土)22(日) 松江市総合体育館
7/28(土)29(日) さぬき市野外音楽広場テアトロン
8/8(水)9(木) 武蔵野の森総合スポーツプラザ・メインアリーナ
8/18(土)19(日) いしかわ総合スポーツセンター
8/28(火)29(水) 日本武道館
9/6(木)7(金) 盛岡タカヤアリーナ
9/12(木)13(水) 大阪城ホール
9/22(土)23(日) マリンメッセ福岡
9/29(土)30(日) 朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター
10/5(金)6(土)宮城セキスイハイムスーパーアリーナ
10/12(金)13(土)真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
10/18(木)19(金)広島グリーンアリーナ
10/24(水)25(木)名古屋・日本ガイシホール
10/30(火)31(水)横浜アリーナ

TOUR2018特設サイトはこちら

小田 和正 (おだ かずまさ)

1947年9月20日生 神奈川県横浜市出身
東北大学工学部、早稲田大学理工学部建築科修士課程卒業

1969年オフコース結成。
翌70年、プロとして音楽活動を開始、「愛を止めないで」「さよなら」「言葉にできない」などのヒット曲を発表。82年には日本武道館連続10日間公演を実施。日本の音楽シーンに様々な記録を残しつつ、89年2月、東京ドーム公演を最後にオフコース解散。
その後、プロデュース活動を経てソロとしてアーティスト活動を再開。
91年に発表したシングル「ラブ・ストーリーは突然に」は270万枚を超える大ヒット作となった。
映画やテレビ特番などの映像監督としても活躍し、これまでに「いつか どこかで」(92年)、「緑の街」(98年)の2本の映画監督作品を発表している。
2001年からは毎年12月に「クリスマスの約束」(TBS)と題した音楽特番を放映し好評を博している。
2002年に発表したベストアルバム「自己ベスト」は、出荷数300万枚を越え、発売から足掛け11年で500週のランクイン(=TOP300入り)を果たす史上初の快挙を成し遂げている。
2011年4月20日、オリジナル・アルバム『どーも』発表。業界紙オリコンにてチャート1位を獲得。
2016年4月20日、オールタイムベスト「あの日 あの時」を発表。アルバム1位を獲得し最年⻑記録を更新した。
2018年、40万人動員全国アリーナ古希ツアー「KAZUMASA ODA TOUR2018」(全国21会場 48公演)の開催が決定しており、古希を迎え今も尚制作、ライブとますます精力的に活動を続けている。

オフィシャルサイト
http://www.fareastcafe.co.jp

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