Interview

「実写化は最難関」と言われたギャグ漫画『珍遊記』の 主人公に挑んだ松山ケンイチ

「実写化は最難関」と言われたギャグ漫画『珍遊記』の 主人公に挑んだ松山ケンイチ

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漫☆画太郎のギャグ漫画『珍遊記〜太郎とゆかいな仲間たち〜』を実写映画化した映画『珍遊記』で主人公の山田太郎を演じた、松山ケンイチ。漫画原作の実写化モノの演技で定評がある松山だが「画太郎作品の中でも実写化は最難関」とも言われていた本作。その作品に、坊主頭にほぼ全裸姿で挑み、時にコミカルに、時にアクションを交えながら、太郎役を演じてみせた。

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(c)漫☆画太郎/集英社・「珍遊記」製作委員会

他の漫画には見られない、原作の持つ独特なパワー

原作実写映画で振り切った演技をみせてくれる、あの松山ケンイチが帰ってきた!という感じがしました。山田太郎役を引き受けた理由は何だったのでしょうか。

画太郎さんのファンですし、監督の(山田)雄大さんと仕事がしたかったからです。逆に「なんで僕だったの?」っていう感じは少しありました。原作を見ると山田太郎って、もっと子どもみたいな感じじゃないですか。子どもが演じてもいいくらいですよね。だから監督に聞いてみたんです。そうしたら「やらなさそうな奴がやるから、面白いんじゃないの」って言ってくださって、「そうか」って、ふっきれました。でもやっぱり、めちゃくちゃな原作ですから映画として成立するのかなと思いましたけど、監督とは以前に短編の仕事をさせていただいて、作る世界観がすごく面白くて。現場は結構大変なんですけど、もう一度今度は長編映画を一緒にやってみたいなという思いが勝ちました。

原作は読んでいましたか?

子どもの頃に初めて本屋で立ち読みして爆笑して座り込んでしまったということがすごく印象に残っています。なんだろう、絵がばっちいというか、新品の単行本なのに、読んだ後に手を洗いたくなくなる感じがあるんです(笑)。それって他の漫画家さんにはないもので、そこまで人を不快にさせるのに笑ってしまうパワーがものすごいなって思っていました。クセになるっていうか、見たくないのに、少し時間を置いたら、また見たくなるというか……。その頃は、まさか自分が将来、山田太郎を演じることになるとは思ってもみませんでした。

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撮影前に準備されたことは?

監督からは、「だらしない体型にしてほしい」と言われました。「男らしい感じは絶対にやめてほしい」って、はっきり言われました。そのためにお腹を出すように、結構食べるようにはしましたね。撮影中は意識して腹に力を入れて膨らませるようにしたり。監督の中では映画『七人の侍』の三船敏郎さんが演じた菊千代に近いイメージがあったようです。その野性的な感じをもとに、僕は僕で「千原せいじさんみたいな感じがいいんじゃないかな」と思っていたので、その二人を掛け合わせて、監督と一緒にキャラクターを作っていった感じですね。

たしかに歩き方が千原せいじさんっぽかったです。

参考にさせていただきました。歩き方が、なんかこう、敵がいない感じ。僕にとっての山田太郎は、やっぱり人間の常識外で生きていられる強さを持っている人。山田太郎って僕は人間だと思っているんですけど、常識をはみ出るってパワーがいるし、いろんな要素が必要になってくると思うんですよ。そのあたりの原作のパワーは、監督がうまく映画に取り入れているなって思いました。

温水洋一に圧倒された圧巻のアクションシーン

今回は笑いを取りに行こうというスタンスで挑んだ部分もあったのでしょうか。

キャラはある程度固めて、決め打ちしましたね。でも基本的に笑いの部分は、狙うと硬くなっちゃう気がして。もちろんそういう面白さもあると思いますが。そこは監督と現場で引いたり押したりで作っていきました。でもいまこうやって自分を見てみると(チラシを手に取る)すごく不自然な感じもしちゃいますけどね……。

でもあの画の中では成立していたと思いました。

本当ですか? 結構不自然じゃないかと……。というのも、みんな周りの役者さんがかなり作り込んでいて、すごかったんです。笹野さんのばばあ役なんて、脱いだら本当にべろんって出てくるんじゃないかって思うくらい(笑)だったし、もちろんそこは撮れなかったみたいですけど。その中でも、中村泰造(温水洋一)だけは、そのまんまという感じでした。圧倒されました。

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(c)漫☆画太郎/集英社・「珍遊記」製作委員会

松山さんと温水さんの対決シーンはアクションを含めて、目を見張りました。

「温水さん、あんなに動けるんだ!」って、びっくりしました。実際にめちゃくちゃすごいんですよ。撮影前は、どこかで自分が(そのシーンを)引っ張っていかないといけないと思っていたし、でも温水さんにケガをさせちゃいけないと思ったりもしていたんですけど、むしろこっちが翻弄させられるくらいで。「どうして温水さん、あんなに動けるんですか? すごくないですか?」と聞いても、「いやいやいや、全然できなくてさ」なんて飄々としている感じなんですけど、完全に中村泰造でした。 「おそろしいアクション俳優がここに居た!」と思わされましたね。

 

ほぼまっ裸になるのは、抵抗はなかったですか?

逆に「そろそろ裸になりたいな」っていうのがあったんですよ(笑)。映画『ノルウェイの森』では裸になるシーンをたくさん撮ったんですけど、その時は「カメラの前で裸になるのはキツいな」って思っていたんです。でもしばらく経って「最近全然裸になってないな」、「いまやったらどんな風になるんだろう」って思っていた時にいただいた話が、この作品だったんです。

同じ裸でも、まったく違う作風の作品ですね(笑)

同じことばかりやっていてもダメだと思うので、よかったです。もちろん、またラブストーリーもやってみたいですけどね。

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子どもと一緒に観られる実写版『珍遊記』へ

ファンも多い原作の実写化。主人公を演じることにプレッシャーはありませんでしたか?

そこは僕だけじゃなく、みんなすんなり乗り越えていたと思います。(映画で)できることできないことを、はっきり明確に決めて挑んでる感じでした。原作ではおなじみの何回同じこと繰り返しているんだろうっていうようなギャグもやらないし、そういった原作の持ち味をあえて省いた上で、この登場人物たちを映画で描こうとしていたので。原作ファンの方たちが見たら、「原作はめちゃくちゃやっているのに、映画は比較的整理整頓されている」と思うかもしれません。でも子どもにも観てほしいし、監督はあえてそういうバランスを取ったんだと思います。

撮影は大変だったと思いますが、現場の雰囲気は良かったんだろうなと思いました。

スケジュールがタイトでしたけど、すごく楽しかったですよ。大変だったことと言えば、ロケ地はハチが多くて。アシナガバチの巣が近いところにあって、(倉科)カナちゃんの衣装にくっつくんですよ。でもカナちゃんは全然平気で強いんです。ハチに話しかけちゃったりして。僕もそういうタイプなんで、「こっちが怖がらないでいれば仲良くできるだろう」と思って普通にしていましたけど、でも、たけし役のアイアム野田さんは、服を着ているのに、ずーっと怖がっていました(笑)

倉科さんは新境地を見せてくれましたよね。

やっぱり今回一番大変だったのはカナちゃんだったかもしれないと思っていて。特殊メイクも、実はカナちゃんが一番大変で2時間もかかるんです。その上であの衣装と下駄を履いて……という相当制約がある中で、最後までクオリティを保って演じてくれたなって、すごくありがたかったです。玄奘に通じる頼もしさを感じました。無垢で可愛らしいのに、あそこまで下品な台詞で演技を見せてくれて、ギャグセンスがあるなあと思ったし、本当に、「新境地」ですよね。

あのエンディングを見ると、もしかしたら続編もありうるのではないかと思いましたが……。

それはカナちゃん次第だなと思っていて。カナちゃんがOKしてくれるのかどうかにかかっていますね(笑)

取材・文 / 鈴木沓子 撮影 / 田里弐裸衣

松山ケンイチ

俳優。1985年3月5日生まれ、青森県出身。ホリプロ男性オーディショングランプリ受賞。『デスノート』、『デスノート the Last name』(ともに06年)のL役で人気を博す。そのほか映画『デトロイト・メタル・シティ』(08年)、『カムイ外伝』(09年)、『ノルウェイの森』(10年)、『GANTZ』シリーズ(11年)、『春を背負って』(14年)、『天の茶助』(15年)、『の・うなもの、のようなもの』(16年)、また公開待機作に『怒り』(2016年9月)、『聖の青春』(2016年秋)。テレビ出演作に、NHK大河ドラマ『平清盛』(12年)、『ど根性ガエル』(15年)ほか。

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