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今さら野暮?とはわかっているけれど…ガチレビュー『ポプテピピックALL TIME BEST』 “悪ふざけ”の3カ月を、詰め込みすぎの123曲で総括!

今さら野暮?とはわかっているけれど…ガチレビュー『ポプテピピックALL TIME BEST』 “悪ふざけ”の3カ月を、詰め込みすぎの123曲で総括!

1クールにわたってキャスティングからスタッフワークまでありとあらゆる点で、全力の“大人の悪ふざけ(※褒め言葉)”を貫き通した『ポプテピピック』。放送終了直後にリリースされた、作中で使用された楽曲すべてを収録した(全123曲・3枚組)アルバム『ポプテピピック ALL TIME BEST』はスマッシュヒットを記録。単なる高い盛り上がりにとどまらず、本作への音楽面からの評価の高さもうかがわせることとなった。本稿では、その音楽から感じ取れる魅力を、改めてお届けさせていただきたい。野暮だとはわかっていながらも。

文 / 須永兼次


簡単に世界観の跳躍する作品に、ピタリとハマる劇伴には称賛しかない

『ポプテピピック ALL TIME BEST』はDisc1が劇伴集、Disc2がボーカル曲、Disc3がボーカル曲のインストとボーナストラック、といった構成の3枚組のアルバム。その順に沿って、まずは劇伴についての話からさせていただきたい。

そもそも大前提として語っておきたいのは、パロディを一旦抜きにしても、劇伴として非常にバラエティ豊かな充実した1枚に仕上がっているということだ。これほどまでに15分という放送枠内で世界観があっちへこっちへと飛びまくる作品なのにもかかわらず、その楽曲はそのいずれの世界にもピタリとハマる。アニメ自体のサイズ感もあり1トラックあたりの長さこそ短いのだが、逆にその分どの曲においても即座に視聴者を掴まなければならないという難しさも存在したはず。それを、ポップでかわいらしい「ポプテピクッキング」から、OPテーマ「POP TEAM EPIC」の間奏部分のリミックス「エイサイハラマスコイ踊り」まで、あらゆるジャンルのサウンドを網羅し77通りの最適解を見事に用意してくれた吟(BUSTED ROSE)へは、どんな賞賛の言葉を並べても足りないだろう。

それを単なる“良作”から、作品全体の世界観をさらに押し上げる“秀作”へとさらに高めたのが、3トラック目の「あんた、名は。」である。第1話序盤のシーンで流れたどう聴いても“あの曲”のオマージュにしか感じられないこの曲は、流れた際には単純に秀逸なパロディであった。しかし最終話のAパートのED、蒼井翔太に導かれて時空を旅するシーンでここが壮大な伏線であったことが判明。その重大な要素をより深く印象づける役割を果たした「あんた、名は。」は、物語の始まりと結びとの両方にとっての非常に重要な22秒を形作っていたのだ。

そのいわゆる“パロディもの”は、寄せ方が非常に大胆でニヤリとするものばかり。某ドキュメント番組のパロディ「ザ・ドキュメント」での、元ネタのテーマ曲をモロに思わせる「ピピPのテーマ」や、「飯田橋の昇竜 〜復讐のピピ〜」での任侠モノの王道BGMを連想させる「ポプ死す」に、往年のサスペンス枠のアイキャッチっぽい「銀座ホステス探偵」など、非常に元ネタが明快なものが多数存在していた。また、作中目立ったゲームパロディに対しても、いずれも雰囲気の面から非常に秀逸なものが多く、アクションゲーム風の画面をバックにした「ザ・エンド」ではファンファーレから始まる点やスチールパンのような音色が某国民的アクションゲームを、ドラムから始まりシリアスなシンセサイザーのリードが流れる「批判は何も生まれない」では、戦闘画面からパロディした人気ロボットモノSLGシリーズをそれぞれ連想させてくれるなど、レトロゲームをイメージした画面によくマッチするアラサー以上歓喜の仕上がりをみせてくれた。

ちなみに劇伴の中で1トラック目に置かれているのは、吟が唯一関わっていないであろう「キングレコードの勘違い」。これは昨夏、放送延期告知のために走らせた街宣車から流されていたレア音源だ。この収録が許されるのも『ポプテピピック』らしいとも思ったのだが、思い返せば『ポプテピピック』の公式音源として始めて公に流れたものはこのアナウンス(※エイプリルフール企画でのPVはあくまでも『星色ガールドロップ』OP)。そういった意味で、“ALL TIME BEST”を名乗る上ではこのトラックも忘れてはならないもののひとつなのである。

関係性の強いふたりで歌われなければなかった「POPPY PAPPY DAY」

さて、Disc2以降収録のボーカル曲だが、ポプ子とピピ美のキャスティングは本編同様どれもこれも卑怯。クールの前後半で男女1ペアずつ、計4ペア・8人がEDテーマを担当してきたのだが、それも単に「オールスター感ある組み合わせでひと盛り上がり」するだけのものにとどまっていない。その根拠は、EDテーマ「POPPY PAPPY DAY」である。TVサイズではサビのみのオンエアだったこの曲。しっかり用意されたフルコーラスには、ポプ子とピピ美の関係性や、最終回でオープンになった伏線への種明かしのようなものが(それも存外キュートに)描かれていたから。だからこれはポッと連れてきたコンビではなく、実際性が深くうかがえるペアに歌われないと、ダメなのだ。

また一方でサウンドに目を移すと、きらめく星空のようなキュートなピアノとグロッケンの音色からイントロがスタート。このTV未オンエアの部分は、頭サビ歌い出しの「星キラキラ」というワードに直結するものではあるのだが、実にストレートにキュート。それはまるで、エイプリルフールや1話冒頭でフェイクとして用いられ、次回予告(だけ)が連綿と紡がれていった『星色ガールドロップ』と繋がっているようで、短いながらも非常に印象深い一節だった。加えてフルサイズでは、遊び終わってしまったあとの夕暮れ感であったり、お祭りが終わってしまったあとの寂寥感のようなものがより強く感じられ、放送後の視聴者の心境とリンクするような楽曲となっていたようにも思う。

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