Interview

福田雄一監督&佐藤二朗が太賀を絶賛。映画『50回目のファーストキス』に“光”を与える存在

福田雄一監督&佐藤二朗が太賀を絶賛。映画『50回目のファーストキス』に“光”を与える存在

映画『銀魂』『斉木楠雄のΨ難』などのコメディーの奇才・福田雄一監督が手掛けた、初めてのラブ・ストーリー映画『50回目のファーストキス』が6月1日(金)から全国公開される。大ヒット作になったテレビ東京系の深夜ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズのスタッフとキャストが主に集結し、2005年に日本で公開されたハリウッド映画『50回目のファースト・キス』を、山田孝之と長澤まさみの共演でリメイク。ハワイで天文学を研究しながらツアーガイドの仕事をするプレイボーイの青年・大輔(山田)と、記憶が一晩でリセットされてしまう短期記憶障害を持つ女性・瑠衣(長澤)の笑えて泣けるラブ・ストーリーだ。

本作で、ヒロインの父親と弟を演じて、映画に笑いと涙を添えているのが福田作品常連の佐藤二朗と、映画『海を駆ける』など出演作が目白押しの太賀だ。「二朗さんに太賀君を組み合わせた自分を褒めたい」と大満足の福田監督、そして佐藤と太賀が、撮影秘話などについてたっぷり語ってくれた。

文 / 上村恭子 撮影 / 斎藤大嗣


ハリウッド版の明るさを「僕がやるからには、さらに面白いものに昇華させたいと思った」(福田)

佐藤さんは福田監督作品の常連ですが、監督が初めてラブ・ストーリーを撮ると聞いたとき、どう思いましたか?

佐藤 周りが思うほど、そんなに意外とは思わなかったです。これまでも、監督が手掛けた舞台『THE 39 STEPS』(アルフレッド・ヒッチコック監督の映画『三十九夜』を原作とした舞台)の中で、サスペンス・コメディーだけど、シリアスな演出もありましたし、監督なりの泣ける作品を撮るだろうという予感はありました。

福田監督は、「勇者ヨシヒコ」シリーズなどの福田組常連の役者さんたちの芝居から、改めてすごさを感じる場面も多かったのではないでしょうか?

福田 期待以上の芝居でしたよ、みんな。ビックリしました。セリフ通りにやって、大丈夫なんだと(笑)。

佐藤 おい、何言ってるんだ? こっちは役者だ(笑)。

太賀さんは、福田組に本格的に参加するのは初めてですが、いかがでしたか?

太賀 めちゃくちゃ現場の空気とチーム感が良くて、のびやかにやらせていただきました。居心地がとっても良かったです。「純愛もの」という福田監督の初めてのテーマ、新たなフェーズ(局面)に初参加できたことがうれしかったです。

佐藤 ん? フェーズ? フェーズ?

太賀 (笑)。常連の役者やスタッフさんの中に入るので、実は、最初はすごく緊張していました。

福田 えっ? あんなにヌルヌルの空気の福田組なのに?

佐藤 まあ福田は監督というより、ユルキャラだからね。

福田 監督という名のユルキャラ(笑)。

太賀 やっぱり福田組ということで、緊張するんですよ、コメディーのハードルが高いですから。気合十分で入りました。

福田 僕は前から太賀君に出てもらいたいと思っていて、一番にスケジュールを押さえてもらいました。太賀君との出会いは、“史上最低の『情熱大陸』”と言われた(笑)、菅田(将暉)君を撮ったとき。そのとき、しゃぶしゃぶ食べながら「ウマッ!……ウマッ!……ウマッ!」しか言わなかったんです(笑)。受け答えの仕方に意外性があって、絶対、コメディーをやったら面白いと思っていました。

太賀 ありがとうございます。最初のシーンで監督が笑ってくれたのが、本当にうれしかったです。登場シーンで鍛えながらスパゲティーを食べるシーンがあるんですが、テスト段階で(ダンベル持ちながら)「アーッ!」っていうせりふに気合が入り過ぎて喉がつぶれちゃって(笑)。監督が笑ってくれるから何度も何度も叫んで、声がガスガスになっちゃいました。その後、声が枯れ気味だったのが、役者として反省点です(笑)。

佐藤 ずいぶん早い段階で、枯らしてたんだね(笑)。

監督は初めてのラブ・ストーリーを手掛けるにあたり、どんなことにこだわりましたか?

福田 まず、ハリウッド版を観たときに、重いテーマなのに前向きで明るい印象があったので、そこを受け継いでいかなればならないと思いました。特に大事にしたこだわりは、悲壮感がないというところです。難病ものを笑いにしていいのかという感情もありますが、原作の明るいテイストを大事にしたかったんです。そして、僕がやるからには、悲壮感のなさに加えてさらに面白いものに昇華させたいと思いました。

佐藤太賀 うんうん(大きくうなずく)。

福田監督に役のキャラクター設定をガラリと変えさせた太賀の芝居とは?

お二人が演じた父親と弟は、瑠衣に病気と悟られまい、傷つけまいと必死でした。家族を守ろうとする姿が温かかったですが、監督がお二人の組み合わせで良かったなあと思った点はどこでしょうか?

福田 クランクインから、本当に二人でよかったと思いました。大輔に抱き着く慎太郎を見て、お父さんが「離れなさい」って言うんですが、その後、二朗さんがアドリブで「正面来なさい」と言って、太賀君をバシッってビンタしたんですよ。そのアドリブ自体は、まあまあよくあるパターンで、僕の想定内だったんです。ところが、ビンタされた後の太賀君の顔が、俺的にはやばかったんです(笑)。ビンタされたのに、何事もなかったような普通の表情なんですよ(笑)。それがバカ過ぎて!

太賀 (爆笑)。

佐藤 ふつうは、バンッと叩くと、「イテッ」って芝居になるじゃないですか。でも、まったく動じていなかったんです(笑)。

太賀 実は、我慢していました(笑)。

福田 いやあ、本当にそれが面白くて! 「弟はバカな子なのかな?」っていうニュアンスにしか見えなかった(笑)。それを見て「俺が書いたのコイツじゃなかった!」と思って、一瞬にして、自分が書いてきたキャラクターの構造をブワーッって変えられました。

どう変わっていったのでしょうか?

福田 最初は、バカなことをやっているお父さんにダメ出しするような、常識のある子だったんです。瑠衣を笑わせようとピコ太郎のモノマネで「パイナッポーペーン」ってやっている父親に、「お父さん、パイナップルにペンを刺すの、良くないよ」って言うような子。なのに、父親のバカに全部のっかっちゃう。「おまえは300回くらい見ても、なんで笑うの?」ってお父さんが言って、「だって面白いじゃん」って全部肯定するような子に変えて、現場でどんどんセリフを足していったんです。

太賀さんは、演技プランの変更など、大変だったのでは?

太賀 今思うと、「ああ、そうか~」という感じで、自然に自分の中で納得してやっていましたね。

福田 台本になくてもどんどんセリフを出したくなっていくんですよ。慎太郎はゲイで大輔が好きなんですが、大輔のことをやたら褒めたり、「胸毛くれよ」「腋毛でもいいよ」とか言わせてみたり。そのたびにビンタしましょうかってなって。毎回毎回ビンタされるんですが、された顔を一回もしないんですよ(笑)。

太賀 毎回我慢するのに必死でしたよ(笑)。

福田 慎太郎は、辛い話に笑える幸せを与えてくれているんです。最初に二朗さんがビンタしてくれてよかったなあ。それで、太賀君があの顔をしてくれて本当によかった!

1 2 >