Interview

坂東巳之助&中村隼人=ナルト&サスケ。出会うべくして出会った“運命”の2人、その絆の強さを見せる新作歌舞伎『NARUTO-ナルト-』

坂東巳之助&中村隼人=ナルト&サスケ。出会うべくして出会った“運命”の2人、その絆の強さを見せる新作歌舞伎『NARUTO-ナルト-』

8月の新橋演舞場の新作歌舞伎は、『NARUTO-ナルト-』。原作は、国内累計発行部数約1億4,000万部、海外では9,500万部以上を誇る『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載されていた全72巻の壮大な人気漫画。そして今回、『NARUTO-ナルト-』と歌舞伎の融合に一役買うのが、『ガラスの仮面』『嵐が丘』などつねに話題作を提供し続ける作・演出家のG2。さらに、楽曲提供に和楽器バンドを迎え、主役のうずまきナルト役に坂東巳之助、うちはサスケ役に中村隼人にて8月4日(土)より上演される。
エンタメステーションでは、上演に先駆けて、製作発表記者会見直後に坂東巳之助と中村隼人にインタビュー。演じる役柄同様、ライバルでもあり友でもある2人に、今作にかける並々ならぬ熱い想いを聞いた。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 岩田えり

ナルトとサスケは対照的なタイプ

原作の『NARUTO-ナルト-』は、『週刊少年ジャンプ』(集英社)で、長期に渡って連載された人気漫画です。まず、原作の感想を聞かせてください。

坂東巳之助 今回、ナルト役をやらせていただくにあたり、改めて漫画を読み返したんです。一貫しているのは、ナルトとサスケ、2人の“物語”なのだという部分が、つねにどんな展開の中にあっても根底にあるのだということ。キャラクターひとりひとりの行動原理がきちんと明確にあって、描かれていない部分の人生をも見えてくる、深い描写が大きな魅力のひとつだと思います。

坂東巳之助

中村隼人 ナルトとサスケが小さい頃から共に切磋琢磨して成長し、忍術学校のクラスメイトや先生たちに、いろいろな影響を受け、また影響を与えて、周りも成長していく様子が、わかりやすく伝わってくるのが魅力です。敵として登場した人物さえ仲間になり、共通の敵を倒していくことに、強烈なカタルシスがありますし、まさに少年漫画の王道だと思います。

中村隼人

うずまきナルトとうちはサスケのキャラクターに、どのような印象や魅力を感じていますか。

巳之助 ナルトもサスケも、それぞれに違う孤独を感じて生きています。ナルトは明るくて周りを巻き込んでいく人物でありながら、ただ明るいだけではなくて、自らの出生や、周囲の環境に起因する様々な困難を抱えたうえで人格を形成していきますよね。最初は落ちこぼれだったが故に努力を重ねて、だんだん周りに認められる存在になるという過程があります。最終的には、自分の中に封印されているものの正体もわかったうえで、自分の力で掴み取った“強さ”や、周りの人間から認められて得た“絆”で、ブレずに最後までナルトらしくいる。いろいろなことに振り回されながらも、芯がブレないのはナルトの魅力だと思います。

隼人 サスケは、実の兄のイタチに一族と両親を殺されて復讐心に燃え上がります。心に身悶えんばかりの深い闇があり、同じような境遇のナルトに同情しながらも、いつでも明るい性格でいる彼を見て、自分が悲しく思えたりもする。製作発表では「コミックス全巻を用いて舞台にする」とG2さんがおっしゃったので、サスケの闇の部分をくっきりと立たせないと、舞台が引き立たないと思っています。しっかりと役に向き合っていきたいですね。ナルトは周りの出来事に首を突っ込んで、失敗しながら、周りに影響を受けながら成長していくタイプ。サスケは周りに影響を与えていく人物だと思います。しかも、お兄さんを倒すという目的、大きな野望を持っていて、歌舞伎でいう敵役の“色悪(いろあく)”、あるいは一国を転覆させて我がものにしようとする“国崩し”でもあるんです。

市川猿之助と片岡愛之助の強大なボスキャラに立ち向かいたい

原作のキャラクターとご自身を照らし合わせて、原作のどのキャラクターに共感できますか。

巳之助 いつも「めんどくせーな」とずっと思っている点で奈良シカマル(笑)。

隼人 僕は見た目と違いますが、小太りの秋道チョウジですね。優しくて思いやりがあるし、肉体は強いけれど、精神的に弱い部分もあるから、共通する部分が多いです。

製作発表記者会見で隼人さんは、『NARUTO-ナルト-』は歌舞伎に向いているとおっしゃっていましたね。

隼人 ナルトの師匠である自来也は、“ツケ”の音と共に登場したり、仙人モードの際には目の縁を化粧で塗る“隈取り”をしている姿に見えます。原作の岸本先生は、とても上手に歌舞伎を取り入れていらっしゃる。時代背景やどこの国かはわからないですが、サスケの衣裳の色の使い方も歌舞伎というより、日本の伝統的な要素をふんだんに採用していますね。

かつては、うちは一族の長であり、世界征服を企む悪のうちはマダラを市川猿之助さんと片岡愛之助さんが交互に演じます。

巳之助 マダラのビジュアルは、兄さんお2人とも意識してお化粧をしてくださって、大きな「マダラ」になっています。特殊能力をまとったいわゆる仙人モードの “六道仙人”のマダラですよね。まさに最強のボスキャラ。愛之助の兄さんは目元にアイメイクを入れてらっしゃるし、猿之助の兄さんは地色に緑をまとって、まるでチャクラが漏れ出して半透明の存在、内面から強いエネルギーが漏れ出しています。発光して幽霊のような存在を、生身の人間でやってくださったビジュアルですよね。原作ファンの方もきっと嬉しいでしょうし、歌舞伎らしい豪華さもあって、これが最終的に僕らの前に立ちはだかると思うと、しっかりやらなくちゃと思います。

隼人 マダラは、サスケとナルトの物語の要になる存在です。性格が両極端の2人が協力しないと倒せないような強大な力を持つ設定。兄さん2人は、誰が見てもラスボス感があるし、マダラにはぴったりの配役ですよね。猿之助兄さん、愛之助兄さんとも、ひとりで新橋演舞場や歌舞伎座の客席を埋めてしまう力がある方なので、僕らも力を合わせて臨んでいきたいです。

原作を知っている人も歌舞伎を知らない人も

漫画を歌舞伎にするときに気をつけて演じようと思っていることはありますか。

巳之助 漫画と歌舞伎は、相性がいい部分もありますが、気をつけなければいけないことは、歌舞伎に寄せるバランスですよね。例えば『ワンピース』であればダンスがありましたが、歌舞伎でも漫画でもないそういった要素を取り入れるときに、原作を崩してはいけない部分と、崩していく部分とのバランスをどう処理していくかが大事だと思います。原作は72巻ありますが、全部が表現できるわけではないので、『NARUTO-ナルト-』として受け入れてくれる人にも、原作を知らない人にも伝わるように、今回の舞台化に際して必要ないものを切ることも大切だと思うんです。

隼人 僕もそう思います。漫画の場合は、口癖や仕草で、個性が強烈に出ている。それらを上手に使いつつ、原作ファンにも納得していただけるようにしたい。このキャラクターをこんな風に演じられたら嫌だろうなというのは潰し、舞台化に際して辻褄が合わないところは思い切って捨て、物語を上手に回収できたらいいですよね。原作では、すべてのエピソードを通して2人の人格を形成していきますが、巳之助兄さんがおっしゃったように、歌舞伎ではすべてができるわけではありませんから、削ぎ落とす作業が大事になりますし、『ワンピース』のように、オリジナルで肉付けする部分もあるかもしれませんが、あくまでも原作のいいところは削いでしまわないようにしたいです。

歌舞伎として上演する『ワンピース』と『NARUTO-ナルト-』では、お客様の層は異なると思いますか。

巳之助 客席の反応も含め、『ワンピース』であれば、“宙乗り”や、本物の水を使った“本水(ほんみず)”、大道具や小道具を使ってお客様の意表をつく“外連(ケレン)”という演出が使われました。歌舞伎では江戸時代から使われてきた手法が、現代の歌舞伎に縁がなかったお客様にとっては、新しく映ったのかなと。そこから、歌舞伎に強く興味を持ってくださるきっかけになったんだと思います。今回の『NARUTO-ナルト-』も、歌舞伎に縁のなかった方が観てくださることで、歌舞伎そのものに興味を持ってくださる機会になれば嬉しいですね。また、原作を知らない方にも「ONE PIECE」や「NARUTO-ナルト-」に興味を持っていただくということを大切にしたいと思っています。『ワンピース』では、歌舞伎も原作の「ONE PIECE」も知らないという人が多く観劇してくれたのを感じますので、今回も最後にはそうなればいいなと思います。

隼人 たしかに『ワンピース』は、コスプレをされる方もいらっしゃったし、普段の歌舞伎とは客層が違うところもあったかもしれませんが、巳之助兄さんがおっしゃったように、『NARUTO-ナルト-』もそうなる可能性が大いにあります。僕らは、原作を知らない歌舞伎ファンにも来ていただいて、さらに自分たちの努力で歌舞伎を知らない人をも取り込んで、新しい歌舞伎として後世に伝えていきたいです。

歌舞伎界では奇跡の2人組

お2人の印象はいかがですか。

隼人 歌舞伎は、座組が明確に分かれているので、澤瀉屋の猿之助兄さんのところの方がいれば、高麗屋の(松本)幸四郎兄さん、中村屋の(中村)勘九郎兄さんもいらっしゃる。たくさん座組があるので、同じ舞台に出るのは、なかなかないことなんです。実際に、巳之助兄さんとは屋号が違いますし、座組が違うので、歌舞伎界では結構遠い存在です。それでも、いろいろなご縁があって、中学生の頃から共演できて。これは奇跡に近いことなんです(笑)。サスケがナルトの一番の友達のように、実際に巳之助兄さんは身近な先輩で、一番頼りにしています。普通の歌舞伎俳優同士には、あまりない特別な関係です。

巳之助 (隼人さんと)共演の機会が多いのは事実ですね。父や僕が固定された座組ではなかったので、父について出ているといろんな座組のいろんな方々と、ご一緒する機会が多かったです。家同士でも一緒になったりならなかったりするなかで、隼人くんは、ここ最近一番一緒にいる時間が長いので、お互いこういう人間だとわかっているのが大きいですね。ものをつくっていく作業で、彼と演じるのはスムーズなんじゃないかと思います。

隼人 もうひとつ言えることは、歌舞伎界で巳之助兄さんと4歳違うのは大きなことなんですね。例えば、義経の家来で四天王という4人組がいて、年功序列で巳之助兄さんが一番上だとすると、後輩は3人しか演じられないから、僕の入る余地がなかなかない。だからどうしても疎遠になってしまうんです。それでも、巳之助兄さんは同じ舞台に立てば、どんな役のときでも喋りかけてくれるし、プライベートでご飯に連れて行ってもくれる。そこで後輩だから言い出しにくいことでも聞いてくださる。ダメ出しもしっかりしてくださるし、今回も楽しみですね。

巳之助 G2さんは、具体的な演出をされる方なので、あまり心配していません。結果的には、僕のナルトと隼人くんのサスケと3人でつくっていくことになると思います。今回はG2さんがご自身で脚本も書かれるので、頭の中に絵があるでしょうし、まずそこに近づくことが必要だと思うし、僕はそこに近づけていくことが限りなく正解に近いであろうという点で、G2さんを信頼しています。脚本の目指す方向に向かって3人で話し合っていきたいですね。

師匠がいるから今の自分がいる

ナルトには自来也、サスケには自来也のライバルである大蛇丸という師匠がいますが、歌舞伎でも師匠の存在が重要ですね。

巳之助 歌舞伎の世界では、遮るものなくすべてを伝えてくれる師匠というのはやはり父親になると思います。歌舞伎役者はみんなそうです。ナルトは父親がいないので、イルカ先生やカカシ先生や自来也を、師匠であり、時に父親として慕っていく部分があるのを見ると、父親がいるということはありがたいなと思います。最初の“螺旋丸”という技の修行で、ナルトは自来也に父親の部分も求めて甘えたいけど、そうはさせてくれないというところがあります。僕らは父親に甘えられる部分は甘えられましたし、師匠として厳しく教えてもらったものはちゃんと残っています。父親のいないナルトに比べたら幸せでありつつも、親子で師匠・弟子という関係も特殊かなと思うので、ナルトにおける師匠・弟子という関係はうらやましいですね。

隼人 ナルトと違うのは、サスケは師匠を尊敬しているというより、どちらかといえば、利用したいという思惑がある。だから、歌舞伎にはそういった師弟関係はないかもしれません(笑)。ナルトは、歌舞伎と同じように師匠を尊敬している。僕は、伝統的な考え方や歌舞伎役者としての意思を受け継ぐのが、師弟関係の正しいあり方だと思っています。僕自身も父から様々なものを受け継ぎ、そして中村吉右衛門のおじ様が師匠になってくださった。だから、歌舞伎界と『NARUTO-ナルト-』の世界観は共通しているんです。誰かに何かを教えてもらって成長して、そこから新しい自分に気づいて、また下の世代の役者に、上の世代の魂を受け継いでいく。

役者として“そこにいる”こと

そうして、いろいろなものを受け継いできたお2人ですが、芝居で大切にしていることはありますか。

巳之助 舞台の上にいる瞬間は、巳之助ではなく役どころとして観られるのが一番の理想ですね。そうありたいと常々思っています。うずまきナルトだったら、「ナルト」だと思われること。その結果、巳之助が良かったねと言われるのは、幕が閉まったあとでいいんです。舞台が終わって送られる拍手や歓声は、僕よりも、ナルトに対するものであって欲しい。そう思わせられるような芝居をするのが理想です。

隼人 役者として“そこにいる”ことも大事ですね。『NARUTO-ナルト-』であれば、まずは、その一部になることです。歌舞伎は、演目よりも役者を観にいくというケースが多いので、“個”が全面に立つことがありますが、サスケが板の上にいて、『NARUTO-ナルト-』のひとつのピースになれれば嬉しいです。

2人でつくり上げる奇跡の舞台

それでは、最後に意気込みをお願いいたします。

巳之助 歌舞伎好きな方や原作の「NARUTO-ナルト-」を好きな方、どちらも知らない方も、楽しんでいただけるような舞台にしたいと思っています。

隼人 今しかできない奇跡の舞台を作り上げるので、歌舞伎を知らない方も、そうでない方も、気軽に劇場に足をお運びください。

新作歌舞伎『NARUTO-ナルト-』

東京公演:2018年8月4日(土)~8月27日(月)新橋演舞場
<チケット一般発売>2018年6月23日(土)AM10:00~

STORY
落ちこぼれ忍者・うずまきナルト(坂東巳之助)は忍術学校を卒業し、うちはサスケ(中村隼人)、春野サクラ(中村梅丸)と共に、はたけカカシ(嘉島典俊)のもと任務を遂行していく。ナルトはサスケをライバル視しながらも友情も感じていたが、サスケは一族全員が兄・うちはイタチ(市瀬秀和)により殺されるという暗い過去を抱えていた。
ナルトたちは数々の試練に立ち向かい、自来也(市川猿弥)、綱手(市川笑也)との出会い、大蛇丸(市川笑三郎)との争いを経て、成長していく。そして、世界を揺るがす強大な敵・うちはマダラ(市川猿之助・片岡愛之助)を倒すため、ナルトたちの戦いが今、始まる──。

原作:岸本斉史
脚本・演出:G2
楽曲提供:和楽器バンド

出演:
うずまきナルト 役:坂東巳之助
うちはサスケ 役:中村隼人
綱手 役:市川笑也
大蛇丸 役:市川笑三郎
春野サクラ 役:中村梅丸
うちはイタチ 役:市瀬秀和
はたけカカシ 役:嘉島典俊
自来也 役:市川猿弥
うちはマダラ 役:市川猿之助(交互出演)
うちはマダラ 役:片岡愛之助(交互出演)

オフィシャルサイト
公式Twitter(@narutokabuki)

坂東巳之助(ばんどう・みのすけ)

1989年9月16日生まれ、東京都出身。屋号は大和屋。1995年、歌舞伎座にて『壽靱猿』の小猿、『蘭平物狂』の繁蔵で、二代目坂東巳之助を名乗り初舞台。主な出演作に【舞台】スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』、『ラヴ・レターズ』【映画】『東京喰種』、『桜田門外ノ変』、『清須会議』【テレビ】『椿山課長の七日間』、『仮面ライダーオーズ/OOO(オーズ)』などがある。

Profile

中村隼人(なかむら・はやと)

1993年11月30日生まれ、東京都出身。屋号は萬屋。2002年、歌舞伎座『寺子屋』の松王丸一子小太郎で初代中村隼人を名乗り初舞台。主な出演作に【舞台】スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』、『義経千本桜 鳥居前』【テレビ】『せいせいするほど、愛してる』、『メンズキッチン』【CM】『揖保乃糸』【書籍】『FIRST PHOTO BOOK「HAYATO」』などがある。

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公式instagram

関連書籍:コミック「NARUTOーナルトー」
関連音楽:和楽器バンド