LIVE SHUTTLE  vol. 265

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福山雅治 円熟味とスケール感を共存させた“最新の福山雅治”を魅せたツアーファイナルをレポートする

福山雅治 円熟味とスケール感を共存させた“最新の福山雅治”を魅せたツアーファイナルをレポートする

FUKUYAMA MASAHARU DOME LIVE 2018 –暗闇の中で飛べ-
2018年5月27日 東京ドーム

福山雅治のドームライブ「FUKUYAMA MASAHARU DOME LIVE 2018 -暗闇の中で飛べ-」のファイナル公演が5月27日、東京ドームで開催された。昨年12月に行われた『福山☆冬の大感謝祭 其の十七』(7公演)、今年1月から4月末まで行われた約3年ぶりの全国アリーナツアー『WE’RE BROS. TOUR 2018』(11ヶ所26公演)、5月19日、20日の京セラドーム大阪公演を経て辿り着いた今回の東京ドーム公演。約6ヶ月におよぶライブのファイナルとなったこの日のライブで福山は、円熟味とスケール感を共存させた“最新の福山雅治”を体現してみせた。

17時を少し過ぎた頃、ついにライブがスタート。ハイハットのリズムに合わせて手拍子が起き、メインステージ上部のライトが点滅するなか、福山雅治がバンジョーを持って登場。観客に向けて右手を上げると、そのまま花道へ。センターステージに到着した福山の「ワン、ツー、スリー、フォー!」というカウントから始まったオープニングナンバーは「幸福論」。“生きてくためのメニューには/いくばくかの幸福感って/人にはやっぱり必要なんです”と歌い出した瞬間に大型ビジョンに顔のアップが映され、大きな歓声が巻き起こる。ストリングス、ホーンセクションも加わったバンドは、福山のライブでは最多人数となる16名編成。さらに赤、緑、青のレーザーライトが飛び交うなかでインストナンバー「vs.2013〜知覚と快楽の螺旋〜」(激しいビートに合わせて観客がタオルを回しまくる)を披露した後、「それがすべてさ」へ。ハンドマイクを持ってメインステージに戻り、観客に向かって手を振り、笑顔を投げかける福山。積極的なコミュニケーションによって、ドーム全体の一体感がグッと増していく。

「ついにファイナルですよ、東京ドーム! 去年の感謝祭から半年、ずっとライブをやってきましたが、いよいよファイナルです。今日は圧倒的ドーム感、圧倒的ファイナル感でみなさんと一つになりたいと思います。僕のライブ史上最大、全16名の分厚いサウンドでお届けします!」というMCを挟んで演奏されたのは、‘94年のヒット曲「IT’S ONLY LOVE」。

イントロが始まった瞬間、客席のなかに笑顔と涙が広がる。原曲よりもややテンポを落とし、ゆったりとした雰囲気のバンドサウンドのなかで一つ一つの言葉を手渡すように歌う福山の姿も印象的。懐かしさを味わうだけではなく、年齢とキャリアを重ねた福山が現在のスタイルで24年前の代表曲をじっくりと描き出す。「IT’S ONLY LOVE」で示したスタンスは、この日のライブ全体に貫かれていたと思う。

バグパイプを想起させるホーンセクションから始まり、バンジョー、アコギなどを取り入れたサウンドが響き渡った「jazzとHepburnと君と」(←片想いをテーマにした曲なのだが、最後の“君がね、好き“はバッチリとカメラ目線。役者である)、ラテン、スパニッシュのテイストを色濃く反映させたアレンジとともに男の哀愁、色気を濃密に含んだ歌が広がった「漂流せよ」からは、現在の彼の音楽的モードがしっかりと感じられた。昨年リリースしたシングル「聖域」におけるガットギター、バンジョーを活かしたアレンジもそうだが、いまの福山の興味はオーガニックなサウンドに向いているのかもしれない。

センターステージに移動した福山は、地上33メートルに浮かぶ巨大バルーンについて話はじめる。「ドームの真ん中に浮かんでいるこのバルーン、最終日でやっと名前がやっと決まりました」という前フリとともに発表された名前は“徹子さん”。「黒柳さーん! ましゃでーす!」と呼びかけると客席から大きな笑いが起きた。(前日の公演に黒柳徹子が来て、「あれ、私の玉ネギみたいね」と言ったのだとか)福山の説明によると、このバルーンはタンクローリ1台分のヘリウムガスで2.9トンの照明機材を吊るしているという。「じつにおもしろい」とドラマ「ガリレオ」のセリフで客席を沸かした後、この前代未聞のステージセットを採用した理由を明かした。

「通常照明とか機材を吊ると“グランドサポート”という補強するための柱が必要になるんですが、そうするとたくさんの死角が生まれてしまいます。せっかく来ていただいたのに“ひょっこり”(柱を避けてステージを観るポーズ)しなくちゃいけなくなりますから」

確かにこの日のステージは、まったく視線が遮られることなく、どの席からも常に福山の姿が見えるように設計されていた。オーディエンスのニーズに応えた、まさにプロの仕事だ。

冬に開催されたアリーナツアーでは春を先取りした“春歌コーナー”が用意されていたが、今回のドームツアーでは夏を先取りした“夏歌コーナー”が設けられていた。重厚なストリングス、“スペイシーな郷愁感”と呼びたくなるシンセによるイントロから一転、華やかなホーンセクションを軸にした解放的なサウンドへ移行した「虹」。少年期の夏休みの思い出を叙情豊かに描き出すフォーキーなナンバー「蜜柑色の夏休み」)(ステージの床に線路の映像を映し出す演出も楽曲の世界観を際立たせていた)、“許されない恋”をテーマにした切なくも美しいバラード「あの夏も海も空も」と夏の情景を想起させる楽曲を次々と披露。さらに福山自身の過去の写真——初めてギターを買った思い出、夏の家族旅行など——とともに、故郷・長崎で経験した夏は常に“当たり前の日常がある幸せ”を実感する日々だったことが映し出される。“平成最後の、夏がくる”という文字とともに始まったのは「クスノキ」。被爆したクスノキをモチーフにしたこの曲を福山は、豊かな表現力とともに歌い上げる。クラシカルなストリングス、重厚なバンドアンサンブルも素晴らしいが、中心にあるのはアコギと歌だ。続いてドラマ「トットちゃん!」主題歌として制作された「トモエ学園」、祖母に対する思いを込めた「道標」。自由に生きること、そして、命が受け継がれることの意味がじんわりと伝わってくる。深い思いを込めた“夏歌コーナー”は、ドーム全体を大きな感動で包み込んだ。

この後のMCでは、2001年に行われた初めての東京ドーム公演を振り返った。

「2001年のドームに来たって方、いらっしゃいます?(手を上げるファンに向けて)ありがとうございます。あれから17年、お互いに元気で、こうやってお会いできて良かったんです。あの頃は若気の至りで演奏にも落ち着きがなくて。でも、今はあの頃の私と違うんです。センターステージのど真ん中で、ギター1本であなたに歌を届けられるんです。成長した17年後の自分をぜひ目撃してほしい」

そんな言葉に導かれたのは「友よ」のアコースティック・バージョン。2001年の東京ドーム公演の1曲目に歌った楽曲によって、会場に心地よい一体感が生まれる。さらに軽快なピアノのフレーズから始まった代表曲「HELLO」。ジャケットを抜いた福山は「一つになりましょう! 圧倒的ドーム感で飛ばしていきますよ!」と観客を煽りまくる。

ドームツアーのタイトルになった新曲「暗闇の中で飛べ」を壮大なサウンドとともに響かせると、ライブは後半戦へ。小倉博和(G)、今剛(G)という凄腕ギタリストとギター・バトルを繰り広げたハードロック・テイストのインスト「Humbucker vs. Single-Coil」、ホーンセクションを軸にしたファンキーなグルーヴ、ポップスターという存在をシニカル描いた歌詞がひとつになった新曲「Pop star」、映画「名探偵コナン ゼロの執行人」主題歌として話題を集めているラテンフレイバーのナンバー「零 -ZERO-」。「新曲でも、この圧倒的な一体感。ありがとうございます!」という福山自身もめちゃくちゃ気持ち良さそうだ。

「久々の応援歌です!」という言葉に導かれたのは、ドラマ「正義のセ」主題歌「失敗学」。バンジョーを取り入れたサウンド、オーガニックな手触りのメロディ、“人は必ず失敗する。大事なのは、失敗から何を学べるかだ”というメッセージを込めた歌が共存するこの曲が披露されるのは、今回のドームツアーが初めてだ。

「聖域」で匂い立つような色気を振りまいた後は、「明日の☆SHOW」へ。大らかなメロディラインと前向きなメッセージがひとつなり、観客の心と身体をしっかりと揺らす。そして本編の最後は「Dear」。ブルーを基調としたライトのなかで福山は“遠い場所にいる大切な人に対する感情”を丁寧に表現する。真摯な思いに溢れたその歌は、観客一人一人の胸にしっかりと刻まれたはずだ。

アンコールの1曲目は「顔が筋肉痛になるくらい、笑顔になろうじゃありませんか!」と「その笑顔が見たい」。“いちばん新しい自分がいちばん誇れる自分でありたい”という意志を含んだ歌詞は、現在の福山自身の在り方と重なって見えた。続いては「Peach!!」。軽やかな演奏によってパーティ的な華やかさが広がるなか、福山の後ろ姿がビジョンに映し出されると、そこにはTバックを履いたお尻のカタチをしたパッドが。さらにTバックのヒモを福山がめくると、毎年恒例の年末ライブ「冬の大感謝祭」開催の告知が。爆笑と拍手が巻き起こり、会場はさらなる興奮に包まれた。

「アリーナツアー、ドームライブ、完走おめでとう! ましゃと想いはいつもひとつ」と書かれた横断幕を見て、「本当にありがとうございます」と感謝の気持ちを述べた福山。「ツアーをまわってきて、その日しかない、一期一会のライブを目指してきました。2018年上半期の大団円、一緒に歌いましょう! でっかい歌声を届けてもらいますよ、いいですか?!」と客席に語りかけ、アコギの弾き語りで「少年」を披露。冒頭から大きな合唱が生まれ、素晴らしいクライマックスへとつながっていった。

ひとりステージに残った福山は「アリーナツアー、ドームライブ、無事に終えることができました。決められたスケジュールで終わるのは、当たり前なようで、じつは当たり前じゃない。こうやって当たり前にやれるのは大切なことなんだということを今回のツアーのテーマにさせてもらって、それを実感することができました。ありがとうございます」とコメント。会場からは温かい拍手が巻き起こった。

約半年間に及ぶツアーのなかで、アーティストとしての充実ぶりを証明した福山雅治。この先の活動への期待がさらに高まる“圧倒的な”ライブだった。

文 / 森朋之

FUKUYAMA MASAHARU DOME LIVE 2018 -暗闇の中で飛べ-
2018年5月27日 東京ドーム

セットリスト
01. 幸福論
02. vs.2013 ~知覚と快楽の螺旋~
03. それがすべてさ
04. IT’S ONLY LOVE
05. jazzとHepburnと君と
06. 漂流せよ
07. 虹
08. 蜜柑色の夏休み
09. あの夏も 海も 空も
10. クスノキ
11. トモエ学園
12. 道標
13. 友よ
14. HELLO
15. 暗闇の中で飛べ
16. Humbucker vs. Single-Coil
17. Pop star
18. 零 -ZERO-
19. 失敗学
20. 聖域
21. 明日の☆SHOW
22. Dear
<アンコール>
23. その笑顔が見たい
24. Peach!!
<ダブルアンコール>
25. 少年

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