Interview

アカデミー賞の中継はお祭りのようなものなので、みんなで楽しむという空気は大切にしたいです

アカデミー賞の中継はお祭りのようなものなので、みんなで楽しむという空気は大切にしたいです

2月29日にWOWOWで放送される『生中継!第88回アカデミー賞授賞式』。昨年に続いて、その案内役を務める高島彩のインタビュー。ちょっと意外な映画の趣味など、個人的な映画体験の話も飛び出すなど、1年に1度の映画の祭典を、いちファンとしても楽しみにしている、そんな気持ちが自然に伝わってきた。主婦であり母でもあり、日々多忙を極める中で、この時期はノミネート作品の鑑賞にもかなりの時間を割かなくてはいけない。けれど、「仕事にかこつけて、映画を観に行けるのも楽しみなんです」と笑う。自らを、熱心な映画ファンではないと評するが、そんな彼女だからこそ、多くの視聴者に気持ちを寄せて案内役ができるのではないか、とも思った。

『ルーム』は子役のジェイコブ・トレンブレイもノミネートされて欲しかったですね

作品賞8本のノミネートのラインナップをご覧になっての印象をお聞かせ下さい。ノミネート作品の中でご覧になっているものがあれば、感想などもお願いします。

そうですね。ラインナップを見るとわりと男性目線のものが多いのかな、という印象はあります。やっぱり『マッドマックス 怒りのデスロード』が10部門にノミネートされたのは、意外というか。アカデミー賞でも、このような娯楽作品が評価されることがあるんだなぁ、と。過去の『マッドマックス』を観たことがないので、あまり詳しいことは語れないんですけれど(苦笑)。でも今回拝見して、映像に迫力があって圧倒されましたし、作品賞はわからないですけれど、撮影賞や編集賞の可能性はあるのかな、と思いました。

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
(c)2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED

あと『ルーム』を拝見しました。すごいですよね、低予算映画であれだけ惹き付けられるなんて。予算は関係ないとは言え、どこまでできるかの挑戦でもあると思いますし。ああいう“監禁もの”──なんてジャンルにしてはいけないんでしょうけれど(苦笑)── は、逮捕劇、救出劇で終わりになることが多いけれど、『ルーム』は、その後のお話、親子の成長がドラマとして巧みに描かれています。子供が初めて木々や空を見ているシーンとか、出会うものすべてが初めてな様子。今まで偽りのものだと思っていた世界が本当にあって、驚きや発見、時には恐怖も感じながら現実を生きていく。この映画のストーリーとは違うけれど、私の娘もそうやって初めてのものに触れて、ドキドキしながら成長しているんだな、と思いました。私たちは、当たり前のように教えたり説明したりしていますけれど、子供にとっては、大きなチャレンジなんですよね。と、自分の日常に重ねて思ったりしました。(主演の)ブリー・ラーソンが素晴らしかったです。でも、本当は子役の男の子(ジェイコブ・トレンブレイ)もノミネートされてほしかったです。その分も含めて、主演女優賞のブリーには期待しています。

アカデミー賞の中継はお祭りのようなものなので、みんなで楽しむという空気は大切にしたいです

ライヴで入ってくる映像を伝える番組ということで気をつけていることは、ありますか?

生放送なので何が起こるかわからないというのは、この番組に限ったことではないのですが……。もちろんスタジオの中に入るまでには作品を観るなど準備もしますが、中に入ったらどうなるかわからないし、こうなるかなと予想していた受賞がされないこともありますし。レッド・カーペットでも取れると思っていたインタビューが取れなくて、予想外の方のインタビューが取れたりとか、インタビューを取っている後ろを大物がすり抜けて行ったりとか(笑)、すべてが想定通りにはいかない楽しさがあると思うので、そこは一緒になって楽しんじゃおうと思っています。あまり決め込まずに。自由に。最後だけ時間が守れればいいかな、と(笑)。お祭りなので、スタジオも楽しいですし、みんなで楽しむという空気は大切にしたいと思っています。

『ルーム』

『ルーム』
(c)Element Pictures/Room Productions Inc/Channel Four Television Corporation 2015

テレビの向こうで観ている視聴者の方に楽しんでもらうためには、どのようにアカデミー賞を伝えていけばいいとお考えですか?

私もこの番組に携わるまでは、年に1回、今年はどんな映画があるのかな?という判断基準にしている程度だったんですね。『めざましテレビ』でも紹介はさせていただいていたんですけれど。映画の情報、エンタテインメントの情報というだけで見ていました。でも番組に携わるようになると、賞レースの部分だけではなくて、レッド・カーペットの華やかさだったり、発表の合間のエンタテインメント、『レ・ミゼラブル』のキャストでパフォーマンスを披露したり、賞だけではなく“ ショウ(Show)”という意味でもクオリティが高いんだな、ということがわかりました。初心者の頃は、レッド・カーペットで誰のドレスが素敵かな、なんていうことも楽しみました。レディ・ガガとジュリー・アンドリュースがステージで共演するなんて思ってもみなかったですし、「まさか、でも、こんなものが観れてしまうんだ。お得!」みたいな部分からでも、楽しんでいただければと思います。もちろん、賞の行方も、ですけれど。

今年もジョン・カビラさんと一緒にMCをされますが、おふたりでやることの意気込みをお願いします。

カビラさんだと、すべてが安心なので。情報通ですし、困った時に『ね、カビラさん』と言えば『そうだね』って全部受け止めて、僕がいるぞ、という頼れる兄貴のような存在感で包んでくれるので。そういう前提に立っていると私も安心して臨めますし、安心できれば、町山(智浩)さんが暴走しても大丈夫(笑)。でも、暴走を見るのも楽しいですよね(笑)!昔は私も、暴走する人を止めなければ!と思っていたのですがるのが、年を重ねたせいか最近は、暴走を見ているのも楽しいな、と思うようになりました。ギリギリのところ、これ以上はまずいな、というところまでいきそうになったら、止める努力はすると思いますけれど(笑)。生放送ならではの暴走の楽しさ、みたいなものは、視聴者の方にも突っ込んで楽しんでいただければと思います。斎藤(工)さんもいらっしゃいますしね。ちょっとイケメンの空気をスタジオに入れつつ、町山さんの通らしい、そんなことどこで知ったの?という情報を入れつつ……。

『レウ?ェナント:蘇えりし者』

『レヴェナント:蘇えりし者』
(c)2016 Twentieth Century Fox

主演男優賞で注目されている俳優さんはいますか?

ディカプリオがスピーチで喜びの表情を見せながら、何を言うかを受賞前提で考えています(笑)

誰もが(レオナルド・)ディカプリオに獲らせてあげたいと思っているんじゃないでしょうか(笑)?それに、あれだけの体当たり演技を見せられたら推さずにはいられません。そういう意味では、ディカプリオがスピーチで喜びの表情を見せながら、どんなことを言うのかな、って、受賞前提で考えています(笑)。粋なことを言ってほしいですね。『リリーのすべて』のエディ・レッドメインもすばらしかったです。時折見せるリリーの微笑みに胸を締め付けられました。難しい役を切なくまっすぐに演じていて圧倒的でした。こちらも推したいのですが2年連続の受賞はないのかな、とも思うので予想は難しいですね。

主演女優賞についてもお聞かせください。

観ているのは『ルーム』と『キャロル』だけなのですが、やはりブリー・ラーソンですね。天窓からしか光が入らない部屋に監禁されている女性の、籠った感じ、表情も、話し方も熱演していたと思います。でも、ケイト・ブランシェットも良かったので……私、全然そういう趣味ないんですけれど、ケイトだったら、という気になっちゃいました(笑)。女性同士の恋愛の映画という感じがしなくて、私も恋をしちゃいそうなドキドキ感があって、自分にも重ね合わせられる部分がありました。ブランシェットの神々しいまでの凛とした姿と対照的に、ルーニー・マーラーのかわいらしさ、天から落ちて来たような透明感と瑞々しさと、そんな彼女が少しずつ強くなっていく変化も含めて、ふたりのやりとりは本当にすばらしかったです。だからケイトも推したいところですけれど、一昨年、『ブルージャスミン』で獲っていますよね。だから新しい人に獲ってほしいというのはあります。ジェニファー・ローレンスが獲った時みたいに。私は、そんなに映画に詳しいわけではないので、ここで賞を獲った人を、これから先もずっと応援していける役者さんが増えたな、という気持ちで見るようになるんです。

『キャロル』

『キャロル』
(c)NUMBER 9 FILMS (CAROL) LIMITED / CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2014 ALL RIGHTS RESERVED.

普段、ご家族やご夫婦で映画を観られることはあるのですか?

もともと映画は好きなんですけれど、子供が出来てからはなかなか映画館には行けなくなりました。子供連れで行けるママ’s デイみたいなのはたまに行きますけれど。明るい照明の中でアニメを観たり、ですね。でも私、意外とダークなものが好きなんです。子供にはあまり観せられないような(笑)。サスペンスや、胸が苦しくなって逃げ出したい、みたいな切迫感のあるものが好きなんです。だから、この時期は、“仕事だから観なくてはいけない”という理由づけがありますから、子供を母に預けて観に行くことができるんです。アカデミー賞に携わることができて、そういう楽しみも実は私にはあります。仕事にかこつけて映画が観られる、という(笑)。

これまでご覧になった作品の中で、大きな影響を受けたり、特に感動が深かったものを教えてください。

例えば、小学生の頃に観た『チョコレート工場の秘密』ですね。『チャーリーとチョコレート工場』の基になっている昔の作品です。映画の世界の奇妙さとおもしろさと、見ちゃいけないものを見てしまったようなドキドキがあって、でも全体的にはお菓子の世界の楽しいお話で。でも、これが私の好きな映画のジャンルを決めているようなところがあります。少しダークで、教訓があって、ムーディで、ドロっとしたものが含まれているような。そういう映画が好きになったきっかけはこの作品だったかもしれません。

『きみに読む物語』の湖に飛び込むシーン
あれは一度やってみたいんです(笑)!

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あと大好きな映画としては『ソフィーの選択』ですね。大好きで何度も観たいと言うよりは、一度観たら忘れられない映画です。母が「好きだ」って言っていたのをなんとなく覚えていてDVDを借りて観たんです。ホロコーストのような歴史の暗い部分を映画の世界で学ばせてもらうというか。教科書を読んでも文字だけでしか学べなかったものが、映画では登場人物の感情と共に知ることができて、こんなに悲惨な思いをする人がいてはいけない、と思えるようになる。映像にある強さが忘れられません。子供にも、いつか観てほしいと思っています。

『きみに読む物語』は、何回も観たいタイプの大好きな映画です。「こんな風に愛されたい!」って思います(笑)。一生、一目惚れから最後を看取るまで愛され続ける。愛される女性も素敵ですし、愛する男性の一途さも好きです。これを観た時、「こんなふうに恋がしたい」と思ったんです。湖のほとりのすごく奇麗なシーンがいっぱい出てきますよね。真っ赤な空に湖が輝いているシーンとか。木にブランコをつけて湖にチャポン!って飛び込むシーンがあるんですけど、あれは一度やってみたいんです(笑)! 私、もう37歳なんですけど……(苦笑)、あんなはしゃぎ方をしてみたい。我を忘れて恋をすることに盛り上がりながら水に飛び込んでしまうようなときめきを持ちたいなぁと思います。

インタビュー・文/赤尾美香

高島彩

東京都出身。’01年にフジテレビジョンに入社、同局のアナウンサーとして『めざましテレビ』や『新春かくし芸大会』などの司会を担当した。’10年の退社後はフリーとなり、『FNS歌謡祭』や『世界行ってみたらホントはこんなトコだった!?』『平成教育委員会』『池上彰緊急スペシャル』『全力教室』などに出演。