Interview

今年度も話題作が数多くノミネートされているアカデミー賞。 果たしてどの作品が、誰が受賞するのか!?

今年度も話題作が数多くノミネートされているアカデミー賞。 果たしてどの作品が、誰が受賞するのか!?

今年度も話題作が数多くノミネートされているアカデミー賞。
果たしてどの作品が、誰が受賞するのか!?混戦模様となった今年度の候補を4人の映画評論家がズバリ予想します!


『レヴェナント』は映像的にはすばらしいけど、
ドラマの迫力につながるかというとそうでもない

清藤秀人 今年は“白すぎるオスカー”も話題でしたが、ここでは本来の賞レースの面白さを語りたいですよね。ということで、作品賞あたりから予想していきましょう。

細谷美香 混戦ですね。

清藤 確かに。ひと月前は『レヴェナント:蘇えりし者』と『マッドマックス 怒りのデス・ロード』だったけど。

細谷 『マッドマックス』は監督賞で獲れそうな気が。

よしひろまさみち うん、ジョージ・ミラーへの功労賞でいいと思う。

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』 一部エリアにてリバイバル上映中 ブルーレイ&DVDセット:3990円+税
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
一部エリアにてリバイバル上映中
ブルーレイ&DVD セット:3990円+税
©2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED

清藤 今、最新の賞レースの予想っていうのは『レヴェナント』に。

よしひろ 『マネー・ショート 華麗なる大逆転』。

細谷 それに『スポットライト 世紀のスクープ』。

清藤 渡辺さんどうですか、この三つ巴予想は?

渡辺祥子 わたし、今年のオスカーは作品がみんな粒ぞろいで8作ノミネートがあって、そのうちの監督賞が絡んでいないのが5作。その5作を比べてみると、どれが獲ってもおかしくはない出来映えなのよね。そういう時って、必ず監督賞と作品賞が割れるんですよ。私自身の予想は『スポットライト』。

よしひろ わたしもー!

細谷 わたしも。理由としては、脚本賞にノミネートされていない作品賞の受賞って、オスカーでは稀じゃないですか。

清藤 『タイタニック』以来ないんだよね。今年はそれが新しいムーヴメントに逆になるんじゃないかな?って思っていて、だから僕は『レヴェナント』が作品賞を獲って、ジョージ・ミラーに監督賞が行くか、もしくは『レヴェナント』がダブル受賞じゃないかと思ってるんですよ。というのは、『マネー・ショート』も『スポットライト』もすごくいいんだけど、『レヴェナント』の圧倒的な血とサヴァイヴァルの興奮と対峙した時に、クオリティ重視の作品として対抗すると若干弱いかなっていう感じがあって。

よしひろ 『レヴェナント』が全然当たってない作品なら、まだ可能性があったと思うけど、全米1位にもなったじゃないですか。それに長い(笑)。

細谷 すごい眠い時に見に行ったけど大丈夫でした(笑)。

清藤 でしょー!

渡辺 あの映画の寒さで眠れる人はいない(笑)。

よしひろ 凍死だよ、凍死。

清藤 クマに殺されかけて土葬されて、熊の中の臓物で温めるんだよ、身体を。あんなおもしろい映画ないじゃないですか。

『レヴェナント:蘇えりし者』  4月22日より全国ロードショー  配給:20世紀フォックス映画

『レヴェナント:蘇えりし者』
4月22日より全国ロードショー
配給:20世紀フォックス映画
©2016 Twentieth Century Fox

細谷 逆に言えば、そこまでしないとレオはオスカー取れないってことなんですよ。

渡辺 『レヴェナント』に関して絶対獲れるとしたら、撮影賞。

よしひろ もう当確!全米撮影監督協会賞も制しましたよね。

細谷 エマニュエル・ルベツキは『ゼロ・グラビティ』、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』に続いてのノミネートなので、3年連続3回目の受賞になるか。

渡辺 映像的にはすばらしい。でも、それがドラマの迫力につながるかっていうと、そうでもない。すごい衝撃シーンの連打だけども、ドラマとしてはそこまで行ってない。物語の作り方が下手だからあんなに長くなっちゃってると思う。

清藤 そうですか?けっこう面白かったけどな。凝縮されてましたけど。

よしひろ エキセントリックなシーンがすごく多くてそこばっかり思い出すんだけど、じゃあストーリーがどうかっていったら『マッドマックス』のほうがよくできてるのよ。

細谷 確かに人にどこがオススメって聞かれても、「熊と戦うレオがすごい!」とか言っちゃいそう。

よしひろ うん、それしか言えないんだもん(笑)。

渡辺 だってクマに打たれて、ダメになっちゃっての話でしょ。それだけしかないじゃん。だから、無理よ。

清藤 熊の映像すごいじゃないですか。

渡辺 だから映像はすごいって言ってるじゃない。

清藤 ルベツキって、今回遊んでますよね。『バードマン』は一筆書きのようなカメラワークだったけど、今回はクマの息がレンズを曇らせたり、血がレンズに染まったりとか、かなりチャレンジングなことをやってるんですよね。『スポットライト』はすごくタイムリーな映画にはなっていますが、あのアンサンブルはどうですか?

よしひろ すばらしいアンサンブルじゃございませんか!アンサンブル賞がほしいくらい。

細谷 全員が助演でありながら主演みたいな。

『スポットライト 世紀のスクープ』  4月15日より全国ロードショー  配給:ロングライド

『スポットライト 世紀のスクープ』
4月15日より全国ロードショー
配給:ロングライド
Photo by Kerry Hayes ©2015 SPOTLIGHT FILM, LLC

渡辺 でも、ああいうふうなアンサンブルの作品は作品賞には行きそうだけど、個人の賞にはなかなか結びつかないのよね。だからマーク・ラファロの助演男優賞は難しいと思う。

よしひろ かわいそうですけどね。

清藤 カトリック神父の性的虐待っていうところはスキャンダラスなんだけど、そこからだんだんメディアの良心に行くじゃないですか。アメリカ人ってなるほど非を認める国なんだなっていうところで、メディアは叩いてるんだけど着地点はけっこうコンサバなのかなっていう気もするよね。

細谷 その地味さが好きでしたね。一軒一軒回って過去の掲載紙を調べてって、どれだけ地味な映画なんだと思って。

よしひろ でも地味なのにさ、妙に興奮した(笑)。

細谷 そう、地味の積み重ねに感動しました。

渡辺 アメリカ人の正義を求める気持ちとか、とってもよく出来てるっていうふうに思うのね。『大統領の陰謀』(’76年公開)みたいにジャーナリズムの正義というのは、賞に値するのよね。だから、強いかな。

アカデミー賞は最大公約数的な選出なので、
選ばれた作品が最も愛されているとは限らない

『マネー・ショート 華麗なる大逆転』  3月4日より全国ロードショー  配給:東和ピクチャーズ

『マネー・ショート 華麗なる大逆転』
3月4日より全国ロードショー
配給:東和ピクチャーズ
©2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

清藤 『マネー・ショート』は全部わかりました?

よしひろ せっかく説明まで入れてくれる金融用語も、意味が全然わかりませんでした。

細谷 私もですが、経済の知識がなくても楽しめると思いますよ。

渡辺 私も本読んだけどわからない。でもサブプライム・ローンとリーマンショックの2つがわかってれば、もうOKじゃない?

清藤 PGA(アメリカ製作者組合賞)獲ったのは意外でしたよね。

よしひろ 2番手3番手がもしかしたら上がってくる可能性がある投票方式になってるから、オスカーは。もしかすると、もしかする。

清藤 投票者は全8作品の順位を決めて投票しないといけないからね。最大公約数的な選出なので、2位、3位、4位、5位くらいに入った作品が結果的に作品賞獲っちゃうこともある。そうやって選ばれた作品が最も愛されているとは限らない。

渡辺 キネマ旬報のベスト10とまったく一緒。2番目3番目あたりが1位になっちゃうの。

清藤 そうすると、やはり『マネー・ショート』の作品賞はなきにしもあらずですよね。

よしひろ でも『マネー・ショート』はあげたくないんだよね、正直。

細谷 なぜ?

よしひろ だって凹むじゃん、あの映画。

細谷 わかる。資本主義社会に生きるのが嫌になって、死にたくなる(笑)。

清藤 誰かが儲けたっていうなら、まだわかるけど。

よしひろ だって私たち世の中の99%にいるから、ギャンブラーのエサにされて滅び行くんですよ……。1%には入れない……。

渡辺 いいじゃない、人の話なんだから(笑)。

清藤 『オデッセイ』とかは?大ヒットですよ、今。

細谷 私は大好きですけど。科学映画ですよね。

清藤 で、エンタテインメントになっている。ノミネート作の中では『マッドマックス』に匹敵する娯楽映画かもね。

よしひろ 娯楽作すぎてオスカーはムリそうだけど。

細谷 ジョージ・ミラーがいなければ、リドリー・スコットに監督賞を功労賞的にあげる感じもあったかもしれないですけど。

よしひろ いや、もうちょっと今年はジョージ・ミラーにあげるべきでしょ。

清藤 スピーチが長すぎてダメらしいですよ。

細谷 それで切られちゃう(笑)?

清藤 ゴールデン・グローブ賞でみんな飽きたって言ってるから。

渡辺 だってゴールデン・グローブ賞の時、コメディかって笑ってたよね。

『オデッセイ』  上映中  配給:20世紀フォックス映画

『オデッセイ』
上映中
配給:20世紀フォックス映画
©2015 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.

『ブルックリン』  7月より全国ロードショー  配給:20世紀フォックス映画

『ブルックリン』
7月より全国ロードショー
配給:20世紀フォックス映画
©2015 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.

清藤 『ブルックリン』はどうですか?僕はけっこう好きなんですけど。

よしひろ すごい好きだった。超良かった。大好き。大好きだけど……

渡辺 普通の映画だよね。

よしひろ そう。

渡辺 際立ったものは別にないって感じ。それでもね、シアーシャ・ローナンがすごくいい。

細谷 少女の成長の物語ですよね。

清藤 すごく新天地だよね。

よしひろ 細谷さんのツボばっかりだよね。少女の成長物語って。『ゴーストワールド』大好きでしょ?

渡辺 私も大好き!

細谷 そこじゃないから(笑)。

清藤 そう、そこじゃない(笑)。さっき渡辺さんとも話してたんですけど、やっぱりアメリカがこういうふうにできたって話じゃないですか。移民がみんながんばって、それぞれ大好きな国と板挟みになりつつも、新天地を目指すっていう話。だからこれもけっこうアメリカ万歳に近い。そういう意味ではオスカーフレンドリーな作品ではあるけども。

よしひろ いや、地味すぎる。

『ルーム』  4月8日より全国ロードショー  配給:GAGA

『ルーム』
4月8日より全国ロードショー
配給:GAGA
©Element Pictures/Room Productions Inc/Channel Four Television Corporation 2015

細谷 『ルーム』も地味ですけど、良かったですよ。

よしひろ 『ルーム』はブリー・ラーソンに主演女優賞が行きそうだろうから、作品ではあげないでしょう。

清藤 監督賞を語っちゃう?ついでに。

よしひろ ジョージ・ミラーですよね。

渡辺 ジョージ・ミラーでしょ。

細谷 鉄板。

清藤 じゃあ、作品賞が『レヴェナント』か『スポットライト』。監督賞はジョージ・ミラーの予想で。

細谷 決まりですね。

渡辺 でも、『マッドマックス』がひとつ気に入らないのは、シャーリーズ・セロンが主演女優賞にノミネートされていないこと。あれだけがんばってたのにあげていいよね?

よしひろ そう、私もそう思う。

清藤 シャーリーズ・セロンのあの一言ひと言のパワーはすごかったよね。

細谷 惚れましたよ、ほんとに。

清藤 流れで主演女優賞にいくと、『ルーム』のブリー・ラーソンが有望。まだ26歳なんですよね。

よしひろ なんかさ、ジェニファー・ローレンスが出て来た時に似てない?

渡辺 似てる、すごい。

よしひろ 本当は共演の男の子、ジェイコブ・トレンブレイのほうがすごかったけどね。

細谷 だから親子賞があれば、あげたいんですよ!

清藤 特に前半の部屋の中でのあの少年が屈折しないようにお母さんがいろんなファンタジーを語ってあげるじゃないですか、あのシーンがすごい。

細谷 そう、すごい!それに虐げられている状況なので一概にこういうことは言えないんですけど、母と子のすごい短い蜜月時間をこういう環境を借りて描いているっていうのですごく広がりがあるんですよね。だから、監禁という題材なのにすごい希望があって、少年の目線で世界を知っていくっていうのが良くて、だから2人に賞をあげたい。

渡辺 本当はそうよね。私あの天窓から空が見えて、季節がわかるでしょ。あれがすごく良かった。ああいう天窓の使い方をしている監督ってかしこいと思った。

清藤 後半で母親が過去のトラウマから脱却できない中、息子がどんどん成長していくのがおもしろかった。

渡辺 あそこで終わって良かった。外に出てからまた人生が続いていくっていう作り方がとてもいいと思う。

清藤 ブリー・ラーソンは主演女優賞ほぼ決定のような感じなんですけども……。

渡辺 『さざなみ』でのシャーロット・ランプリングも忘れちゃいけない。

『さざなみ』  4月9日より全国ロードショー  配給:彩プロ

『さざなみ』
4月9日より全国ロードショー
配給:彩プロ
©The Bureau Film Company Limited, Channel Four Television Corporation and The British Film Institute 2014

清藤 一時、僕の感覚だとスランプもありましたが、ここ数年はすごくいい。フランソワ・オゾンの『スイミング・プール』(’03年公開)でみごとに再起してから。

渡辺 息が詰まる、息苦しいほどの濃やかな演技よね。一方で『キャロル』のケイト・ブランシェットは濃やかじゃない。

清藤 『キャロル』では朝飯前的な感じがなきにしもあらず。彼女だったらこれくらいできますよ。

よしひろ そうね。いつでもできます!みたいな。

渡辺 シャーロット・ランプリングは、やっぱり一世一代の名演って感じ。

清藤 『キャロル』はテレーズ(ルーニー・マーラ)の目線じゃないですか。それだけ観る人によってはある意味複雑な役だったから、ケイトは朝飯前だったかもしれないけど、意外と演じづらかったんじゃないかなっていう気がしないでもない。

よしひろ ケイトはうまいんだけど、ちょっとかぶるのが『ブルージャスミン』(’13年公開)の時の役とかぶる。奔放な上流階級のマダムっていうところが。似たような役であげすぎっていうのもどうなのかなっていう感じもする。

『キャロル』  上映中  配給:ファントム・フィルム

『キャロル』
上映中
配給:ファントム・フィルム
©NUMBER 9 FILMS (CAROL) LIMITED / CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2014 ALL RIGHTS RESERVED.

『JOY』  '16年公開予定  配給:20世紀フォックス映画

『JOY』
’16年公開予定
配給:20世紀フォックス映画
©2015 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.

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