LIVE SHUTTLE  vol. 270

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How do you feel now? 安室奈美恵ラストツアーで感じた“唯一無二のLIVE STYLE” 〜ファンによるファン向けのライブ考察〜

How do you feel now? 安室奈美恵ラストツアーで感じた“唯一無二のLIVE STYLE” 〜ファンによるファン向けのライブ考察〜

namie amuro Final Tour 2018 ~Finally~
2018年6月3日 東京ドーム

2018年9月16日をもって引退する安室奈美恵が、6月3日に東京ドームでライブツアー「namie amuro Final Tour 2018 ~Finally~」の最終公演を開催した。このツアーで彼女は、国内17公演の約75万人、アジア6公演の約5万人の計約80万人を動員しソロアーティスト史上最多動員数を樹立。記録面でもパフォーマンス面でも“有終の美”を飾った。ライブの内容はすでに各メディアで報じられており、当サイトでも速報レポートを公開しているので、ここでは、物心ついた頃から彼女のファンでファンクラブ「fan space」の現会員でもある筆者の視点から今回のライブを考察する。

文 / 鳴田麻未

まずセットリストを見てもらいたい。今回披露したのは、270万票以上のファン投票上位の中から選ばれたナンバーと、最新曲6曲で構成された全30曲。公演時間は約2時間半。最終日はダンサーたちと惜別のハグや、ファンへのMCを含め、約2時間45分行われた。

<セットリスト>
01. Hero
02. Hide & Seek
03. Do Me More
04. Mint
05. Baby Don’t Cry
06. GIRL TALK
07. NEW LOOK
08. WHAT A FEELING
09. Showtime
10. Just You and I
11. Break It
12. Say the word
13. Love Story
14. SWEET 19 BLUES
15. TRY ME 〜私を信じて〜
16. 太陽のSEASON
17. You’re my sunshine
18. Get Myself Back
19. a walk in the park
20. Don’t wanna cry
21. NEVER END
22. CAN YOU CELEBRATE?
23. Body Feels EXIT
24. Chase the Chance
25. Fighter
26. In Two
27. Do It For Love
– encore –
E01. Hope
E02. Finally
E03. How do you feel now?

これを、演出や衣装を考慮して各シークエンスに区切ってみた。

01. Hero
02. Hide & Seek
<衣装替え>
03. Do Me More
04. Mint
<映像・衣装替え>
05. Baby Don’t Cry
06. GIRL TALK
07. NEW LOOK
08. WHAT A FEELING
<女性ダンサー紹介・衣装替え>
09. Showtime
10. Just You and I
11. Break It
12. Say the word
13. Love Story
14. SWEET 19 BLUES
<映像・衣装替え>
15. TRY ME 〜私を信じて〜
16. 太陽のSEASON
17. You’re my sunshine
18. Get Myself Back
19. a walk in the park
20. Don’t wanna cry
21. NEVER END
<衣装替え>
22. CAN YOU CELEBRATE?
<映像・衣装替え>
23. Body Feels EXIT
24. Chase the Chance
<男性ダンサー紹介>
25. Fighter
26. In Two
27. Do It For Love
– encore -<衣装替え>
E01. Hope
E02. Finally
E03. How do you feel now?

ツアーに参加した人や安室のファンならば、急に各セクションの色が浮かび上がってくるかもしれない。ライブのセットリストは本人が中心になって考えているだろうから、ファンによって選ばれた楽曲群だろうと、それをどのように配置して見せるかで彼女の意思や現在のフィジカル状態が汲み取れる。具体的に言えば、ラストに近年の曲を固めて最新モードで締めくくったことや、本編後半に激しく踊るナンバーを連投する「Body Feels EXIT」以降の流れは、彼女の“LIVE STYLE”をまさしく象徴していたと思う。

順を追っていくと、ライブの冒頭は、メインステージ上空にある聖火台に聖火を灯すかのような演出の「Hero」だった。

2020年がひと足早くやってきたような演出や、勇気や希望を与える歌詞に、すでに客席からすすり泣きの声が。大サビからはフラッグを持ったダンサーたちが行進して登場し、気持ちよさそうに歌声を響かせる安室の姿が、早くも序盤のハイライトとなった。後に気づいたのだが、ショート丈のナポレオンジャケットにチュールスカートという、この時の衣装や髪型は、昨年の紅白出演時の赤バージョンだ。ツアー前最後に見た姿とツアー最初のスタイリングをリンク(しかも紅と白)させてくるなんて粋だなあ。

そこから「Hide & Seek」「Do Me More」「Mint」の3曲は、特にライブ映えする、ファンに人気の高いダンスチューン。「Hide & Seek」は7年ぶりに首位を獲得したアルバム「PLAY」のリード曲、「Do Me More」は本格的復権と言われたベストアルバム「BEST FICTION」のリード曲であり、安室史に欠かせない重要なナンバーだ。「Hide & Seek」はポリスハットを被って「PLAY」ツアーやMVをリバイバルし、「Do Me More」も大サビに突入する直前の<だってここはSpecial Dreamin’ World>を歌った瞬間、ステージ全体がネオンライトで縁取られドリーミーな世界に包まれた。彼女のライブは基本的に過去を振り返ることやお涙ちょうだい的な演出はほとんどないが、そのぶん、観客が自由に思い出を呼び起こせる余白がある。私は「Do Me More」の、あのフックラインできらびやかな世界がブワッと広がる恍惚感がたまらなく好きだったし、今回は「Mint」で見せた、花道上のしなやかなウォーキングも無敵そうな表情も、安室のライブで味わう醍醐味だった。

次のセクションは、ピンクのワンショルダーミニワンピ+黒のスタッズコルセットというファッションで、「Baby Don’t Cry」「GIRL TALK」「NEW LOOK」「WHAT A FEELING」といったガーリーな楽曲が中心。客席にマイクを向けて「Baby Don’t Cry」のコール&レスポンスを煽ったり、「GIRL TALK」でおなじみのカップルダンスを繰り広げたり、安室はキュートな魅力を振りまいてライブ定番曲たちを届けていく。「WHAT A FEELING」に<Mama said 踊りなさい いつでも最後のステージかのように>というフレーズがあるのだが、まったく他人事には聞けないなと思っていたら、なんとこの一瞬、ニヤリといたずらな笑みを浮かべていた。照れなのかランナーズハイなのかエンタテイナー的なのか、真意の程は定かではないが、この状況下で意表を突いた表情を見せてくれる彼女の“らしさ”に驚嘆した。

続いては、女性ダンサーを従えてアッパーに盛り上がった「Showtime」、反対に1人きりで熱唱した「Just You and I」、ハートウォーミングなムードもつかの間、攻撃的な「Break It」、発表時から振付をほとんど変えずに歌い続けてきた本人作詞の「Say the word」、屈指の人気バラード「Love Story」。このあたりは本人が万全の生歌とダンスを届けられるように考慮してか、ダンスナンバーとスローナンバーをほぼ交互に織り交ぜていた。

2度目のインタールードを挟んで、暗転したドーム内に放射状のレーザーと懐かしのビート音が放たれ、空気が変わった。「TRY ME 〜私を信じて〜」「太陽のSEASON」からなるユーロビートゾーンだ。20周年ドームツアーでも昨年の沖縄ライブでも、やはり初期のユーロビート曲は鉄板の盛り上がり! 次の「You’re my sunshine」でも観客が「Yo!」と合いの手を入れながら、安室とダンサーは激しく踊り熱気は増していく。後の「Don’t wanna cry」や「NEVER END」も含め、小室哲哉プロデュース期の曲はキーが高くカロリーを激しく消費するのに、まったく肩で息をしていないのはさすがだ。

安室奈美恵が「アスリートのようだ」と言われる所以は、引き締まった肉体、ビジュアルやパフォーマンスのクオリティを保つプロ意識、MCのないストイックなライブ構成など、いくつかある。

逆に言えば、メッセージ性の強いコンサートをやるタイプではない。特に今回は「完全にファンへのプレゼント」という意味合いもあるだろうから、こちらも開催してくれただけでありがたいと思っているが、前回のドームツアーや昨年の沖縄ライブでも披露された有名曲も多い。けれど、それらの単調になりかねないポイントをすべて凌駕するのが「安室奈美恵」の歌とダンス。彼女の存在がライブの最も大きなエレメンツとして機能している。徹底した資本(フィジカル)主義のライブを長年成立させているのがすごい。だから安室奈美恵は「アスリートのよう」なのだ。

この日のライブも、孤高のレベルに達したアスリートのラストランを見ているようだった。この日は、必要以上に力んで歌うことをしていなかったように思う。むしろ努めて冷静に、その日できるベストのステージをやり抜こうとしているように見えた。その姿勢はラストという状況に関わらずいつものツアーと変わらなくて、私は好きなマンガ「きみはペット」の中にある1つのセリフを思い出した。

「ふつう人間は勝ってると慢心するし、ひどく負けるとくさって仕事は雑になる。でも一流の選手は常に淡々とベストを尽くすものだよ」

こういうことができているから、安室奈美恵は多くの人の憧れで居続けてるんじゃないか。

まあライブ構成がシンプルなのは、本人の志向も大きいだろう。6月4日に放送された「ニュースウォッチ9」のインタビューでは、「自分に合っているものは何か、自分に必要なものは何か、必要でないものは何か、引き算していった結果、究極コンサートだけになった」とライブ活動に特化していった理由を語り、ライブの内容についても「とにかくなんの説明もいらず、ただただ楽しかったねって言えるステージを私は作りたかった」と説明している。

ライブの内容からだいぶそれてしまったが、本編ラストスパートは前半につづった通り、彼女のライブシリーズ“LIVE STYLE”を貫いたような近年のナンバー続き。「Do It For Love」で「騒げ東京ー!!」とシャウトして5万2000人を発奮させ、セットで「25 THANK YOU I♡FAN!」とメッセージを打ち出した。この「25 THANK YOU I♡FAN!」はアンコールの3曲でも灯り続けていて、ツアーグッズの数々にも同じロゴが採用されたことから、今ツアーで安室がファンに伝えたかった最大にして唯一のメッセージだとうかがえる。ファンサイドが伝えたかったのもひとえに同じく「25 THANK YOU I♡NAMIE!」ではないだろうか。1曲1曲噛み締めるように聴き入る人、踊って声を上げて最後のライブを楽しむ人、コスプレして全身で安室愛をアピールする人、何度も「安室ちゃんありがとうー!」と呼びかける人、涙を拭うタオルが顔から離せない人……さまざまなファンを内包するドームだったが、最後は隠しきれないさみしさと、それを上回る温かさで満ちていた。

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