Interview

安藤サクラ×松岡茉優、カンヌで栄冠に輝いた話題作『万引き家族』の現場を語る

安藤サクラ×松岡茉優、カンヌで栄冠に輝いた話題作『万引き家族』の現場を語る

祝・パルムドール=カンヌ国際映画祭最高賞受賞! 国境や人種、文化を越えて観る人の琴線に触れた是枝裕和監督の映画『万引き家族』が、最高のタイミングで日本で封切られる。常に家族を見つめ、その機微を描いてきた是枝の作品の真骨頂でありながら、貧困や格差といった現代社会の問題を絶妙に絡め、あらためて「家族とは?」と世に問う、極めてエッジの効いた作品でもあるのが特徴だ。

この話題作でメインキャストを務めた2組の対談を、2回にわたって紹介していく。1回目は”姉妹”を演じた安藤サクラと松岡茉優が登場。初めて組んだ是枝監督や共演者たちの印象、そして家族というテーマについて語らってもらった。

文 / 平田真人 撮影 / 斎藤大嗣

セット外と同じようにカメラ前でも役者が呼吸しやすい。それこそが、是枝組の現場の空気感。

まずは、率直に撮影を振り返っていただけますか?

松岡 是枝監督が10年も構想をあたためていたということもありますし、いろんな変化を経て、この作品ができあがったんだなということを、あらためて実感しています。撮影中、それも当日の朝になって新しい台本が差し込まれるということが、たくさんあったので、1つの台本に向き合っているという感覚よりも、日々のシーンごとに…子どもたちが本当に生き生きと自由に存在してくれたこともあって、そのリアルな空気を混ぜながら、撮影に臨んでいたという感覚でした。もっと言うと、カットごとに是枝監督から「ここ、ちょっとこういうの(=芝居)増やしてもらっていいですか?」ということもあったんですけど、それはすごく新鮮な体験でした。

安藤さんは、この作品を撮る前に偶然、是枝監督と会ったことがきっかけでキャスティングされたとのことですが…?

安藤 現場でよく冗談で私が言っていたんです。「私とすれ違ったから(キャスティングを)思いついたんじゃないですか?」って。それに対して是枝さんは「いやいや」と言っていたんですけど、プレス向けの資料を読んでいたら「偶然会ったから」と書いてあったという(笑)。でも、まさか本当に是枝組に呼んでいただけるとは思ってもいなかったです。最近ですと、『海街diary』(15)の印象が強いから、私みたいなタイプは呼ばれないんじゃないか、と。

是枝監督とご一緒してみて、さまざまな感触を得たと思いますが、その辺りについてはいかがでしょう?

松岡 私は是枝さんの作品が大好きで、いつか自分も出たいということを夢見ていましたし、目標にもしていたので、今回こういった機会をいただけて、すごくうれしかったです。そして何よりもやっぱり、このメンバーで『万引き家族』をできたこと、一時でも家族になれたことが、とても幸せな体験だったな、という思いが大きいです。でも一方で、うまく言えないんですけど、撮影が終わった後というか、できあがった作品を観て、「本当は撮っていた時、是枝さんは私をどう思っていたんだろう?」といったようなことを、いろいろと考えたのもまた、正直なところです。

安藤 それ、すごくわかります。現場ではすごく優しいですし、すごく思いやりがありますし、あれだけ人を思うことができるからこそ、こういう作品が撮れるんだなと思うんですけど。だからこそ、監督の本音を知ったら、怖さも感じると思うんですよね。ただ、緊張はしないんですよ。是枝組の現場のカメラ前というのが、自分たち演者がすごく呼吸しやすい場なんです。セットの外とカメラの前とで空間が全然変化しないので、呼吸がしやすいまま、その場所にいられます。そういうチームと現場づくりを一貫してずっと続けていらっしゃることに対して、敬意を抱きました。

それは”家族”が住んでいた家が、実在する住居だったからということもありますか?

松岡 そうですね、ただロケで実際の住居もお借りしましたが、子どもたちのお芝居をじっくり撮るということもあって、ロケだけではなくスタジオにもお家をつくっているんです。そのセットが、例えが合っているかわからないんですけど、”どこでもドア”を開けたような感覚があって。先にロケを撮ってからセットでの撮影だったので、ロケで見ていた景色がそのままスタジオに再現されていて、最初はただただビックリしました。セットに入ってきたはずなのに「あれ、あの家がある!」と思ったくらいに精巧なセットと小道具の配置の再現率というか。そう錯覚するくらい、本当に巧みなセットでした。

撮影そのものは、どのくらいの期間だったのでしょうか?

松岡 1ヶ月ちょっとですね。夏のシーンも冬のシーンも、実際は寒い中で撮っていました。

夏のシーンでは、本当にうだるような暑さが画面から伝わってくる感じがあって。

松岡 そこは照明の藤井(勇)さんのお仕事の賜物でもあると思います。私がご一緒するのは3回目になるんですけど、暑い感じが出ていたなと、シーンを見てあらためて感じました。また、装飾部の方々も衣装を汚すのはきっと大変だったと思いますし、メイク部さんもどこまで汗をかかせるか…人によっては汗のかき方が違うので、そういうこともふくめて、全員がこの作品を素敵なものにしようという思いで現場に臨んでいたと思います。

みんなで海水浴に行くシーンも冬の撮影だったんですか?

松岡 あのシーンだけは夏に先に撮っていました。

ということは、海水浴のシーンを撮った夏から半年くらい経ってから本撮影で子役の2人に再会したというわけですね。

松岡 そうです。(ゆり役の佐々木)みゆちゃんは永久歯に生え替わる時期だったので、よく歯が抜けていたなぁと。そのことを思い出しました。

安藤 祥太(城桧吏)は再会した時、シュッとしたなぁって。また、こうした取材の場で会うと、どんどん顔が少年から大人になっている感じがします。

松岡 この間、アフレコで会ったんですけど、城くんに会釈されました。照れくさかったのか、「チワッす」って。あ、もうそんな感じの年ごろなんだなって思いました(笑)。

それはそれで微笑ましいですね(笑)。本質的には主人公と言えるかもしれない2人に対して、現場ではどのような印象を抱きましたか?

安藤 本当に「こんなに素直な子がいるんだ」と思うくらい、とても素直でかわいい”ヤツら”でした(笑)。

松岡 私も子役出身で、ちょうど2人くらいの時から仕事を始めているぶん、羨ましかったです。この時期に是枝さんと出会って、作品に出られたということが。お芝居やお仕事に対して、おそらく歪まずに育っていくんだろうなと思うと、なお──。

なるほど。そして、この作品において欠かすことのできないリリー・フランキーさんと樹木希林さんについても語っていただければと思います。あの家の中にともにいたからこそ感じられた凄味や存在感があったのではないかと想像しますが、いかがでしょうか?

松岡 今回の役者陣は、組み合わせによって空気が変わるなぁと撮影中から感じていましたが、中でも治(リリー)さんと初枝さん(樹木)の空気感というのが、私の中では一番ガラッと変わった気がしているんです。ほかの人たちとの組み合わせで2対2になるのとは、全然違った空気が流れるんです。なので、後ろにほかの誰かがいたりしても、治さんとおばあちゃん(=初枝)が2人で話しているシーンがすごく印象に残っています。

安藤 希林さんとのお芝居では、呼吸というか…息づかいを感じるのが楽しかったです。お芝居をされていても、そこに初枝さんが生きているのを実感できた、と言いますか。でも、いや…だからか、希林さんとの2人のシーンは私、何テイクも重ねてしまって。やっぱり知らず知らず緊張が出ていたんだろうなと思います。リリーさんとは、特に意識して夫婦という関係を築いているつもりはなかったんです。最初は、2人の男女の関係というのが、そこまでないのかなと。でも、ともに時間を過ごしていく中で、だんだんと見えるようになってきて。なので、撮影中に新しく2人のカットが増えたりもしました。それもリリーさんが治として自然とそこにいてくださったからであって、とてもありがたかったです。欲を言うと、もう少しこの夫婦を演じていたいなと思いました。

松岡さんとリリーさん、つまり亜紀と治が家の中に2人きりで会話するシーンの距離感も、妙にリアルだった印象があります。

松岡 あのシーンは結構テイクを重ねました。元々、台本にはあったんですけど、いろいろとカタチを変えて撮ったり。ボツになったテイクでは、もっと距離が近かったりもして。全然、雰囲気が違っていたテイクもありました。結果的に、あの微妙な距離感になったんですけど、撮影当日まで是枝監督はいろいろと考えていらっしゃったように記憶しています。

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