Interview

リリー・フランキー、映画『万引き家族』で”父子”役を演じた城 桧吏を称賛。「目にものすごい説得力がある」

リリー・フランキー、映画『万引き家族』で”父子”役を演じた城 桧吏を称賛。「目にものすごい説得力がある」

祝・パルムドール=カンヌ国際映画祭最高賞受賞! 国境や人種、文化を越えて観る人の琴線に触れた是枝裕和監督の『万引き家族』が、最高のタイミングで日本で封切られる。常に家族を見つめ、その機微を描いてきた是枝監督の真骨頂でありながら、貧困や格差といった現代社会の問題を絶妙に絡め、あらためて「家族とは?」と世に問う、極めてエッジの効いた作品でもあるのが特徴だ。

1回目は、“姉妹”を演じた安藤サクラと松岡茉優のインタビューをお届けしたが、今回は、“父子”を演じたリリー・フランキーと城 桧吏(じょう・かいり)が登場。是枝組での様子や監督の演出、2人の微笑ましい関係性などを、そのやりとりから浮き彫りにする。

文 / 平田真人 撮影 / 斎藤大嗣

実は”家族”そろって海水浴へ行くシーンはロケハン。
「俺なんて、下(半身)が透けちゃってる」(リリー)

是枝作品は4作目ですが、是枝監督から何か注文はありましたか?

リリー 4回目とはいえ、こんなに長く出たのは初めてで。『そして父になる』(’13)の撮影時間よりも今回は長かったので、いろいろと考えることもありました。是枝さんからは、撮影に入る前に「でくの坊のお父さんでいてください」と言われたので、ずーっとバカなまんまのお父さんでいました。それは祥太の目線で物事が動いていっているからなんですね。最初は、2人で遊んでいるように万引きをしているんですけど、どんどん子供は罪悪感を抱き始めたり、お父さんを見る目が「この人、悪い人なんじゃないのかな、バカなんじゃないのかな」と成長していく過程を描くために、お父さんは成長しない方がいいんだろう、と。  

城くんはオーディションで選ばれたということですけど、どんな様子でした?

 オーディションは、会場に行ってから、何か…(実技を)やる時に、「何々を言ってください」って、その場で台本を言うことになって、やってみたっていう感じでした。

そして、まずは夏に海水浴のシーンを撮ったと聞いています。

リリー さっきの取材で知ったんですけど、実は是枝さん、ロケハンのつもりで海に行ってたって。(城に)俺ら、あの時ロケハンに連れてかれてたみたいよ(笑)。

 はい(笑)。

リリー しかも、俺なんて下(半身)が透けちゃってるから、尻の割れ目とかまる見えなんですよね。汚い『海街diary』を観ているような気持ちになっちゃって(笑)。

 アハハハ(笑)。

(笑)。ロケハンで撮ったシーンが本編でも使われていた、と。

リリー 俺らもロケハンについていくということになった時点で、台本はまだ完全にできあがってなかったんですけど、海水浴のシーンの台本はできていたんです。それまでに顔合わせはしていたんですけど、いきなり仲の良い家族としてみんなで海へ遊びに行って、家族の感触を探りながら。今回、家族の中で起きている問題──お金のことだったり教育のこともそうですし、家族それぞれの”性”もちゃんととらえているんですよね。祥太の場合は思春期の性、俺らは夫婦間の性だし、茉優ちゃんの演じた役は性というものを仕事にしている、といったように。(城に)考えてみたら、あのシーンから始まったっていうのは、大変だったよね?

 そうですね。

城くんは夏の海で初めてリリーさんと一緒にお芝居をして、どんなことを感じました?

 すごく楽しかったです。リリーさんも優しかったです(照笑)。

リリー けどさ、あのシーンはアフレコが大変だったよなぁ。裸だからマイクをつけてないし、引きの画も多かったから、キャーキャー言っているのをスタジオで再現するのが難しかったし、恥ずかしくて。

ご苦労が忍ばれます…。で、冬場に本格的な撮影が始まったわけですが、どのシーンから撮っていったか覚えていらっしゃいますか?

リリー ほぼ順撮りだったんですよ。なので、スーパーで祥太と万引きをするシーンから入って。なぁ?

 (ハキハキと)はい!

リリー 祥太が撮影の合間にスーパーから無断でお菓子持って来ちゃったりしてな。

 してないです(笑)。

リリー 冗談だよ(笑)。完全な順撮りではなかったんですけど、ほぼ台本の流れに沿って撮っていたような覚えがあります。確か是枝さんは毎回、そういう感じだったと思いますけど。子どもたちはやっぱり順撮りの方がやりやすいんじゃないかな、と。もちろん俺らもそうですし。何より、実際にシーンを撮ってみて、「あ、ここはこうなるんだ」と人物が動いてくるに従って、是枝さんはセリフや設定を随時変えていくので、基本的に順撮りの方が合っているんでしょうね。

城くんは是枝監督から「こんなふうにやってみようか?」という感じだったんですか?

 特に何か言われたというわけじゃなかったです。台本ももらっていなかったので、何をすればいいのか、わからないまま現場に行ってました。

リリー 自分が出ているシーンのことは記憶があるって言うんですけど、ほかの人たちが自分の出ていないシーンで何をしているのか、まったく見当がつかないでしょうから。

「“映画の神様”が味方してくれた」(リリー) 雪だるまを作るシーンや夕立の中走るシーンは自然の恵み。

ちなみに、お互いにどんな印象を抱いたのでしょうか?

リリー 最初に会った時、この家族の子にしてはずいぶん顔のきれいな男の子を選んだな、と思ったんです。でも、お芝居をしてみると、「あぁ、なるほど。是枝さんが選んだ理由がわかるな」と。すごく素直なんですよ。たぶん、同い年の子たちよりもまだ”子ども”なんですね。だから、映画の冒頭で俺と一緒に万引きをするシーンでの祥太が、すごくいいんです。それでいて、お芝居をしていく中で、どんどん祥太としての自我がめざめていった時に、この子が疑問を持っている目だったり、物思いをしている時の目が、ものすごく説得力を持ってるんです。今回は本当に、(ゆき役の佐々木)みゆもそうですけど、ちびっ子2人が素晴らしかったですね。俺なんて完全に”動物”に囲まれているような感じで、女優陣が強烈でしたから、何だろうな、サーカス団のピエロみたいでしたね(笑)。真面目な話、どんどん芝居を重ねていくうちに、どんどん桧吏が祥太になっていって。後半の方は特に素晴らしかったですね。設定も祥太の方が大人、という感じになっていましたから、俺に対する目が冷たいんですよ。

 僕は一緒に演技できて…とにかく面白かったです。

リリー 俺がお年玉40万円あげた話とかした方がいいんじゃないの?

 もらってないです(笑)。でも、僕が好きな辛い味のお菓子をいっぱい買ってくれました。

リリー エピソードが小さいなぁ。なんだよ、「カラムーチョを買ってもらって、うれしかった」って(笑)。

 好きなんです、カラムーチョ。

リリー 「何か食べたいか?」って聞いたら、「辛いものが好きで、カラムーチョが食べたい」って言うんですよ。そしたら、商店街で売っていたものでね。

 はい、ほかにもいっぱい、いろいろなお菓子とかをクリスマスの辺りに…お菓子のツリーみたいにして、みんなで一緒に食べたりして、すごく優しくていい人だなぁと思いました(笑)。

リリー 俺が、そのクリスマスに祥太にあげたお菓子の靴の底に金の延べ板が入っていた話とか、しないとダメじゃないか。

 そんなの入ってなかったです(笑)。

ワハハ(笑)。2人でいる時は、どんな話をしていたんですか?

 う~ん…。

リリー どんな話してたかなぁ。1日中、俺に触られまくっていた、ということはあるんですけどね。とにかく寒いからやたらとスキンシップをしていたっていう…。

そうなんですね。個人的な感想になりますが、2人で雪だるまをつくるシーンがすごく印象的でした。

リリー あぁ…あれは寒かったなぁ。しかも、あのシーンは元々台本になくて、「明日、雪が降るらしい」という予報を受けて、是枝さんが雪のシーンを撮りたいと急きょ追加したんです。俺、実はあそこで失敗したなと思っていることがあるんですよ。治が部屋の外でタバコを吸っていて、「祥太、雪が降ってるよ」って言うんですけど、治みたいな人間が自分の家の外でタバコを吸うという瞬間、灰皿を持っているのは不自然だったんじゃないか、と。いつも外でタバコを吸っている人のように見えるのがよくないな、と思ったんです。治だったら、そういうことを気にせず吸ってそうじゃないですか。(と、城に向かって)そういう時は言わなくちゃ。「リリーさん、灰皿を持ってない方がリアルですよ」って。

 アハハ(笑)。

城くんはあのシーンで、どんなことを思いました?

 やっぱり、すごく寒かったです。

リリー 何せ、手がすごく冷たいんですよ。で、祥太の雪だるまを見たら、めちゃくちゃデカくて。やっぱり子どもってスゲエなって。「冷たい」よりも「面白い」の方が勝っちゃうんですよね(笑)。しかも、監督がカットを掛けないから、延々とつくるはめになって…。

 僕はすごく楽しかったです。

リリー でも、急きょ差し込んだシーンでしたけど、その後の翌日にバス停へ祥太を送っていくシーンも連動して撮ったので、「雪が残っていなかったら画がつながらないけど、大丈夫かな」なんて思っていたら、いい感じに雪が残っていて。そこから続いていくシーンもまだ雪があったから…何か映画の神様が味方してくれたのかなって。にしても、「東京でこんなに雪が降るか」ってくらい、降ったなぁ?

 はい。

ところで、城くんは一緒にお芝居をする前から、リリーさんのことを知っていましたか?

 あ、はい。

リリー 本当に? 知らなかっただろ~?

 え~、知ってましたよ。

リリー 知ってる? 『三度目の殺人』(’17)に出ている俺、見た?

 え、いませんでしたよね(笑)。

リリー そのとおり(笑)。

リリーさんの出ている作品は、何を観ていました?

 えーと…。あ、『そして父になる』がテレビで放送されてて、それを観たら、リリーさんが映っていました。

リリー 俺はアレだよ、貧乏な方のお父さんだよ?

 はい、そうでした(笑)。

リリー そうか、俺と福山(雅治)くんの違いをちゃんとわかってるんだな(笑)。

じゃあ、『そして父になる』のお父さんのイメージがあった?

 それはなかったですけど…。

リリー でも、是枝さんの中では、あのお父さんのリメイクみたいなイメージだったみたいですね。ただ、俺自身は演じていて、あのお父さんと治がダブらなくて。『そして父になる』のお父さんは何だかんだ言って包容力のある人でしたけど、治はただのどうしようもない人だから(笑)。あ、ちょっと思い出したんですけど、夕立が降ってくるシーンがあるじゃないですか。治と信代(安藤サクラ)の夫婦は家にいて、子どもたちは外へセミ捕りに行っているという。で、家に帰ってくる時に、祥太が何かすごくデリカシーのないナイスな台詞を入れたんですよ。急いで俺らが服を着ている時、みゆは普通に「セミがね」みたいなことを言っていたんですけど、祥太は「何してたの?」って言うんですよね。あれ、監督から「言え」って言われた?

 「そんな感じのことを言ってください」って言われました。

リリー お前がデリカシーのないことを言うから、安藤さんがピタリと動けなくなっちゃったんだから(笑)。

あのシーンは生々しくて、城くんには刺激が強かったかも知れないですね。

リリー そうなんですよ。でも、思春期の子どもが”気づく”感じがすごく出ていましたよね。

城くんとしては、そのみゆちゃんと夕立の中を走って帰ってくるところが大変だったのでは?

 う~ん、あそこは…どうだったかな…。

リリー 映画をちゃんと見直してごらん。どうかと思うくらい雨が降ってるから(笑)。

 あ、本当に急に降ってきたんですよ、雨が。あれはリアルな雨なんです。

リリー え、あれ”雨ふらし”じゃないの?

 はい、あれは本当の夕立なんです。

リリー そうなんだ? 俺さ、「雨、降らせすぎじゃない?」なんて思って見てたんだよ。ずいぶん奥の方までちゃんと降らせてるなぁ、なんて。そう考えると、今回は雨と雪が映画の味方をしてくれたんだなぁ。しかも晴れてほしい時は、ちゃんと晴れたし。雨で撮影が延びたっていうことがなかったんですよ。

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