Interview

パノラマパナマタウン 東京ワンマンライヴの熱狂直後に放たれる新曲「$UJI」。岩渕想太が、“数字”で整理される社会に投げかける疑問とは?

パノラマパナマタウン 東京ワンマンライヴの熱狂直後に放たれる新曲「$UJI」。岩渕想太が、“数字”で整理される社会に投げかける疑問とは?

今年1月にアルバム『PANORAMADDICTION』でメジャーデビューした、パノラマパナマタウン。雰囲気に流されず、しかし独特の雰囲気を醸し出す注目のバンドである。バラバラの出身地から神戸大学に集まった4人は、覚悟を決めて上京し、メジャーに打って出た。リスナーに非常に近い感覚を持ち、だがステージから発信することの“特別さ”を見失わない。特にボーカル&ギターの岩渕想太の書くリリックは、鋭い問題意識と毒を含みつつ、情けない自分を全面的にさらけ出す。岩渕はバンドシーン屈指のソングライターだ。
その岩渕想太に、最新配信曲「$UJI」について聞いてみた。

取材・文 / 平山雄一 撮影 / 関信行

数字でしか話せていないなというところに嫌気がさした

新曲「$UJI」は、『PANORAMADDICTION』をリリースしたあとに作ったの?

そうです。リリースしてからですね。新曲を作りたいなと思って作業をし始めたんですけど、僕は最初にテーマやモチーフがあって曲を作るんですよ。「ほっといてくれ!」っていう言葉があって「フカンショウ」っていう曲が出来たように。

今回の「$UJI」は、どんなモチーフがあったのかな?

『PANORAMADDICTION』を出したあと、自分が家族や友達と話すときに、数字の話ばかりしちゃっていることに気づいたんです。例えば「アルバムはどんな感じだったの?」って聞かれて「何枚売れて……」って答えたり、「この間のツアーには何人来て」とか。そういう数字的なことから話し始めてしまう自分がすごくイヤになった時期があって。「なんでこんなヤツになってしまったんだろう?」と(苦笑)。どうしても数字が気になっちゃう自分がイヤだったんですよ。そういう人になりたくないからバントをやっているのに、「音楽をやっていてもなんで数字だらけなんだよ?」って。なので“数字”っていうテーマが浮かんで、そこから考えていきました。

メジャーになると、そういう時期は誰にも訪れるものなんだろうね。でもそれを歌にするのが岩渕くんらしい(笑)。

チケットを売るために、何人動員するために、CD何枚売るためにとか、そういうことが頭を占領した時期……って、今もそうなんですけど、そういうことにいっさい左右されずに曲を作りたいなと思うんです。だけど、反面どこかで数字がどうしても切り離せなくて。完全に社会とか数字を切り離した自分を保つのは難しいなとも思って。その“半々みたいな気持ち”でこの曲を作りましたね。 

メンバーともそういう話をしたりするの?

この曲の場合は、先に歌詞をバーッと書いて、メロディも一緒に出てきたので、それを聴かせたんです。そのときはほかにもデモ曲があったんですけど、メンバーも「『$UJI』の歌詞が一番いいね」って言ってて。やっぱり通じるところというか、同じことを考えているんだなと思いました。

そうか、全員、数字が気になってた(笑)。

ドラムの(田村)夢希は、心に刺さるっていうタイプではなくて、「いい歌詞だと思うよ。なぜなら〜」という感じなんですけど(笑)、「自分たちの世界と、聴いてくれる人の世界の接点に、うまくなる歌詞だからいい」って。

きっちり分析してるな(笑)。

(笑)。たぶん、僕が一番数字を気にしちゃってるかもしれない。責任もあるし、どうしても考えちゃう。本当はすごくイヤなんですけどね。映画とかゴハンの話をしてるときも「その映画の評価は何点だ」とか「その店の評価は何点だ」とか言われると、イヤなんですよ。とはいえ、自分も同じことをやっていたなと(苦笑)。自分の作品や業績を語るとき、数字でしか話せていないなというところに嫌気がさしましたね。

一点突破。本当に思ってることを吐き出したほうが、刺さる

『PANORAMADDICTION』を出してしばらく経つけど、今、自分にとってどんなアルバムなのかな?

自分でもいいアルバムだったなと思うし、いろんなジャンルでいい曲が揃っている。バラードがあって、グランジがあって、ヒップホップがあって、いろんなもののいいところがたくさん詰まっているアルバムになったと思っているんです。その一方で、守っちゃった部分、いい子ちゃんし過ぎたなってところも感じていて。

うまくまとめようとしてた?

いや、まとめようとはしてなくて。でもメジャーの1枚目だからというのはあったのかもしれない。無意識だったけど、メジャーの1枚目を作るという感覚がどこかにあった。歯止めの効かないものを作るというよりは、自分でも理解できる、いいものを作ろうというのがあったと思います。ただ、その中でも「フカンショウ」は自分のドロドロした部分とか、整理しきれない部分がダダ漏れた曲だった。だからこそ、アルバムのリード曲になったし、あの曲を推したんです。そこで、「ホントに強い想いというのは人に刺さるんだな」と思ったんですよ。

結果を出せたと?

そこに共感してくれる人がいっぱいいたんですよね。「私も、ほっといてくれって思う」って。そう思ったときに、考えることも大事だけど、小さくまとめるよりも、もっとさらけ出すというか、本当に思っていることは何だろう、自分が熱くなれる部分ってどこだろうということを突き詰めて探して、一点突破する。その気持ちを吐き出したほうが、聴く人に刺さるなと思えて。しかも自分らの表現としても、自分らにしかできないものになるなと思ったんです。それはアルバムを出してから思ったことかもしれない。

そういう曲を書いているときに、数字を気にしている自分がいたらイヤになるよね?

でも今、自分が思っていることは数字で、嘘はつけないと思った。そのときの自分のリアルだったんですよ。かといって、数字を完全に切り離して「俺は数字に関係ない芸術家です」と言うこともできない。だから、歌詞と曲にそれをすべて詰め込もうと思いました。

そこまではっきりしてたら、「$UJI」はわりと短期間で出来たの?

歌詞は2、3回書き直したんですけど、自分の心の底から出てきたものが大きいですね。歌詞も曲も。

ちなみにほかのデモはどんな感じだったの?

ほかの曲は、もうちょっと作ろうと思って作った感じですね。想い先行というよりは、みんなに届く曲を作ろうということに重きを置いていた。わりと考えて作っちゃってる感じはありましたね。

“4つ打ちロック”にしようかとか?(笑)

そこは考えていないです(笑)。刺さるメロディとは何か、刺さる言葉とは何かというところですね。「ほっといてくれ!」くらいに絶対刺さる言葉を考えようとして、いろいろアイデアもあったんですけど、単に「数字!」って叫んでるのが一番強かった。だから、これが最も強い想いで、今自分が思っていることなんだというのが、たくさん曲を作ってわかったことでした。

メロディの感じが変わった気がしたな。

メロディはスッと出てきた、デモのまんまです。「これだろ!」って感じで。

音の数が減ってるとも感じた。

『PANORAMADDICTION』を作った頃から、やたらめったら詰め込まなくなりましたね。自分の中にあるものを、こう使って、こう使ってみたいな作り方をするようになりました。

知らない何かを足していくのではなく?

うん。それもスタジオでいろいろやって出たものの中で、一番いいもので曲を作っていく。いい素材を合わせていくというか。

その意味で、今回はギターが頑張ってる!

浪越(康平)はギターソロも相当考えていましたから。サビがエモーショナルだったり、ラストには感情的な部分があるので、そこに勝つソロを考えようとしていました。

でも、楽しそうに聴こえたな。

実際、楽しそうでしたよ。「ここでアーム(注:音程を変えるバー)を使ったから、今度はワウ(注:文字どおり“ワウワウ”という音色に変えるマシン)かな」とかって(笑)。

1 2 >