Interview

パノラマパナマタウン 東京ワンマンライヴの熱狂直後に放たれる新曲「$UJI」。岩渕想太が、“数字”で整理される社会に投げかける疑問とは?

パノラマパナマタウン 東京ワンマンライヴの熱狂直後に放たれる新曲「$UJI」。岩渕想太が、“数字”で整理される社会に投げかける疑問とは?

「一(いち)」の数字だけで違うものになってしまう

タイトルを「$UJI」という表記にしたのは?

お金から逃れるというテーマが自分の中にずっとあって。「SHINKAICHI」(注:インディーズデビューアルバムのタイトル曲)のミュージックビデオが、お金を持っているけど使わないみたいなものなんですけど、やっぱり自分自身が商品になりたくないとか、自分自身を売りたくないとか、お金のことばっかり考えて曲を作りたくない、ライヴしたくない気持ちっていうのがすごくあって。だから、数字って、ただの数字でもあるけど、お金という意味合いが自分の中で強いから、そのダブルミーニング的なところで「$UJI」にしました。

今、自分が囚われているものに対して肉薄しているんだね。

だけど、これはあらゆる人が歌ってきたテーマだとも思うから。

でも、このやり方は新しいと思うよ。

だから、どこが自分らしさになるのかなというのはすごく意識しました。

「$UJI」の歌詞で尖っているのは、「いかれっぱなし」と「測らせてたまるかい」っていうフレーズだと感じた。この表現は、岩渕くん独特だと思う。「測る」ということは、誰かの基準にはめられるということだからね。

それは、今まで生きてきて感じてきた違和感というか、ずっと気持ち悪かったところですね。通知表とか、成績とか。あと、マイナンバーが家に送られてきたときに怖さを感じたんです。恐ろしいなあと思って。人間って喜怒哀楽もあるし、ひとりひとりの生活もあるし、本来はぐちゃぐちゃで多種多様なものなのに、あんなに整理された番号に置き換えられるということが気持ち悪い。子供の頃、出席番号も気持ち悪かったんですよ。「3番の人」って呼ばれることに。でも、そうしないと整理できないものがあるっていうこともわかっていて。ただ、その“数字”というものを気にする人って意外と多いなと……「点数がナンボだから大学は無理」とか「英語できないから海外に行けない」とか。それって実は些細なことだと思うんですよ。誰かが決めた誰かの定規の話なのに、そこばかり肥大化して自由に動けていない人って多いだろうなあと思って。もしかしたら、僕もそうなのかもしれない。音楽をやっているうえで、数字のことを気にしすぎて自由に動けてないのかもしれない。だから歌詞の最後に「才能」って書いたんです。そんな数字の中に閉じ込められてしまった才能を、みんなが発散できるような社会にしていきたい……って言ったら教科書っぽいけど(笑)、数字に囚われてしまっている人たちの背中を押したいと思った。そういう人たちの気持ちを代弁しての「測らせてたまるかい」っていう言葉なんです。

「命は一(いち)じゃない」っていう歌詞があるけど、これはどういう意味?

マインナンバーって、「一(いち)」ずらすだけで、違う人になっちゃうじゃないですか? 住所も「一(いち)」ずらすだけで、違う人の住所になってしまう。そういうことじゃないだろうと思うので。さっき話したみたいに、こんだけ矛盾を抱えたぐちゃぐちゃしたものが、そんな「一(いち)」の数字だけで違うものになってしまうのかって思うし、そんな簡単なことではないだろうと。歌詞にも書きましたけど、「お前の代わりなんかいくらでもいる」とか「お前なんか駒の一つにしかすぎない」って言う人もいるし、それを真に受けてしまう人もいると思うんだけど、絶対にそうじゃない。誰かの尺度という狭い世界の中ではそうかもしれないけど、そこを飛び出したらそんなことはなくて、ただの「一(いち)」ではないと思うんです。

たしかに「一(いち)」ずらすだけで違うものになるって怖いことだよね。

漠然と整理してくる社会と、整理されたくない命がずっと自分の中にあるから、そこがモロに出た歌詞だなと思います。

熱狂を僕らがどれだけ広げられるか

さっきのお店や映画の話もそうだけど、数字で評価したり整理したりすることが急に増えているよね。

本来、数字で測られなかったものが、すべて数字で測られている時代だなと思います。古びた定食屋さんの味なんか、何点とか数字になっていなかったし、できなかったものだっただろうし。もっと言ったら、友達の数でさえ、フォロワー数とかLINEで数が出ちゃうじゃないですか。そういうことを考えると、これまで数字とは無縁だったものまで、やたら測られている時代だと思いますよね。そういえば最近、僕、食べログ「1.6」のぼったくりバーみたいないところに行ったんですけど(笑)。まったくそんなこと調べもせずにお店に入ったら、ぼったくられて、帰って調べたてみたら「1.6」だったんです。けど、その店主が面白い人で、その人とこれだけ話ができたら、別にそのくらいの金額を払ってもいいなと思ったんですよね。もし事前にこの数字を見ていたら、おそらく行ってない、巡り会えなかったものだったから。面白かったです。

あははは。この歌の最後で「そっからはアドリブ あとはまかした」って歌ってるね。歌詞カードには書いてないけど。

全部を指示する歌詞、「こうして、こうして、こうしてください。こっちが正解なんです」っていう歌詞で終わるのは、それこそ数字的だなと思って。そこから余白をどれだけ残すかというのが僕らの役割だと思うし、バンドの曲ってそういうものじゃないかと。疑問符を打って、あとはどうしていくのかをあなたが決めてください、ここに疑問を感じてもらえたら、それでOKっていうものだと思うので。だから、余白を残したいという意味で、ああいう終わり方にしました。

岩渕くんにとって楽しい“数字”って何?

矛盾してるかもしれないけど、例えば、ライヴの動員が増えていくとか、CDが売れるようになっていくというのは、わかりやすく前進している感じがありますよね。何が尺度かわからないし、何が正解かわからないという感覚がずっとあるけど、それがあると、進んでいるというか、届いている感覚があるから。

ただの“数字”なんだけどね。個人的に好きな数字はないの?

それはないですね。数字に対して感情がないかもしれない。言葉ってあったかかったり温度みたいなものが見えるんですけど、数字ってすごく冷たいもの、無感情に見えるんですよ。いつも自分の電話番号とか生年月日とかを書くときに気持ち悪さを感じるんです、これが自分を表わすものなのかと。これは余談ですけど、僕、文系なんですが、数学が一番得意なんですよね、好きなんですよ。

それはなんで?(笑)

完全に割り切れるから。パズルだと思っているので、その気持ち良さだと思います。

最近、ライヴはどう?

最近、自分の中でライヴも変わってきていて。やるべきこと、自分らにしかできないことがわかってきました。ここのところライヴのテーマとして“熱狂中毒”って掲げているんですけど、自分がライヴでやることは、どんだけすごい熱狂を作れるかだと思っていて。毎日同じことが繰り返されていく日常とか、機械的なやりとりが続いていることに飽き飽きした人が足を運ぶ場所、それがライヴだと思うので。そんなことは忘れて、自分が誰だかも忘れるような熱狂というものって、すごいパワーがあると思うから、そういう熱狂を僕らがどれだけ広げられるかだなと思うんです。

それは自分たちも含めて?

そうですね。お客さんもだし、自分たちもそうなりたい。だからライヴ自体、“熱狂”をテーマにすごく良くなってると思うので、夏フェスもいろんなところに出ていくので、楽しみにしていて欲しいです。

ありがとうございました!

フォトギャラリー

One Man Tour『CORE HEAT ADDICTION TOUR』

6月17日(日)神戸 VARIT.

パノラマパナマタウン

岩渕想太(vocal, guitar)、浪越康平(guitar)、田野明彦(bass)、田村夢希(drums)。
2013年、神戸大学の軽音楽部で集まり、結成。2015年に〈RO69JACK〉、〈MASH FIGHT〉でグランプリを獲得。2016年3月に初の全国流通盤となる『SHINKAICHI』をリリース。2017年には2月にAge Factory、PELICAN FANCLUBとの同世代全国ツアー〈GREAT TRIANGLE TOUR 2017〉、4月にはメンバー全員の大学卒業を機に上京、活動の拠点を神戸から東京へと移し、初のワンマンツアー〈リバティー vs. リバティー〉を開催。6月に3rdミニアルバム『Hello Chaos!!!!』を発表し、キャリア最大規模のワンマンツアーを開催した。2018年1月にアルバム『PANORAMADDICTION』にてメジャーデビュー。
オフィシャルサイト

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