吉田麻也に学ぶ8つのレジリエンス  vol. 1

Column

「いかに困難を克服し、立ち上がる力を身につけてきたのか」吉田麻也に学ぶ8つのレジリエンス

「いかに困難を克服し、立ち上がる力を身につけてきたのか」吉田麻也に学ぶ8つのレジリエンス

サッカー日本代表不動のセンターバック吉田麻也が自叙伝を刊行した。
その名も、『吉田麻也 レジリエンス――負けない力』(ハーパーコリンズ・ジャパン刊)。
長崎の片田舎に育ったサッカー少年が、世界最高峰リーグでの熾烈なレギュラー争い、怪我、フィジカルや言葉の壁、繰り返される監督の交代を経て、いかに困難を克服し、立ち上がる力を身につけてきたのか――この特集では吉田麻也の知られざる努力、そのレジリエンス(負けない力)を著書から紹介する。


~吉田麻也を構成する8つのレジリエンス~
【弟力】年長者や目上の人と過ごすことで、物怖じしない心が育まれる。
【英語力】ペラペラである必要はない。「ペラ」で勝負すればいい。
【選択力】何を選びどう生きるか、後悔しないよう決めるのは自分だ。
【アジャスト力】変化=フレッシュなリスタート。怖れることはない。
【スルー力】批判は必ず起きるもの。無駄にエネルギーを消費しない。
【反発力】前例は覆すために、固定観念は破るためにある。
【リスペクト力】相手に対する敬意が、自分に対する敬意を呼ぶ。
【バランス力】剛が生きるのは柔があるから。辛い時はいっそ笑おう。


吉田麻也に学ぶ8つのレジリエンス <第1回>

2012年9月15日、北ロンドンのエミレーツ・スタジアム。
夢にまで見たプレミアリーグでのデビュー戦は、イギリスの名門アーセナルのホームスタジアムで突然やってきた。
「浮き足立っていた」とは、あのときの自分のことを言うのだろう。ピッチに立って10分間足らずで、点差は1点から4点へと開いていった。
デビューからわずか7分で、僕はプレミアリーグの容赦ない洗礼を心に刻み込まれることになる。前半35分、相手ストライカーのジェルビーニョにゴールキーパーとの一対一に持ち込まれた時のことだ。敵の背中に軽く手を触れてマークできていたはずが、中盤からボールが出て振り返ってみると、ジェルビーニョの背中はすでに2メートルほど先にあった。絵に描いたように裏を取られ、直接的に失点に絡んでしまったのだ。
一瞬たりとも気を許すことはできない。
集中力を欠けば、その瞬間に致命傷を負わされる。
それは移籍早々に得たからこそ、より意義深い、プレミアリーグの教訓第1弾となった。たしかに、サウサンプトンでのデビュー戦は大敗に終わった。でも、僕は悪夢を見たわけじゃない。夢が叶ったプレミアリーグでの現実を目の当たりにしただけだ。

デビュー戦から5日後に開かれた入団会見では、いっぱしの英語でジョークをかまして、イギリス人記者たちの心を掴んだ(ことになっている)、僕。
しかしホントのところ、オランダ生活を通じて膨らみつつあった英会話へのささやかな自信は、英語の母国に来て見事打ち砕かれることになった。
僕ら日本人が学校で学ぶアメリカ英語と、イギリス人の英語は、まったく別の言葉かと思うくらい違うのだ。
チームバスは「チームコーチ」で、監督のことはみんな「ガッファー」と呼んでいる。親分を意味する昔からの口語らしい。
僕にとって1人目の「ガッファー」となったアドキンスの英語は、強烈な早口で難易度が高かった。今だから白状すると、チームのミーティングでは、監督の話を聞きながらも頭の中は「???」状態。「イエス、イエス、イエス」とはったりで乗り切り、あとから周囲の選手に確認して、ゆっくり簡単に説明してもらったりしていた。
感覚でプレーできる部分のある攻撃陣であれば、「ヘイ!」「パス!」とか叫んで、ボールを要求する程度でもなんとかなるかもしれないが、ディフェンダーは「もう一步、ここのスペースを埋めてくれ」「俺が行くからおまえはカバーしろ」といった指示を、プレーの展開を見ながら言葉で伝えなければならない。体中をアドレナリンが駆け巡っているピッチ上で叫ぶとなると、頭の中で日本語から英語に訳している余裕などない。英語でのコーチングが自然とできるようになるまでには丸1年ほどかかった。
そうしたピッチ上での「生きた英語」が自然になってくると、ちょっと困る点も出てくる。日本代表の試合で、ついつい英語で叫んでしまうこともある。ラインを押し上げたいときに、「上げろ!」のひと言ですむところを、「プッシュ・アップ!」と言っていたりするのだ。われに返るとちょっと恥ずかしい…
もしも代表戦のピッチ上で「?」と写る、吉田麻也の英語指示が聞こえてきたら見逃してやってください。

サッカーの花形は、試合に勝つために不可欠な点を取るフォワード。シーズン中、メディアで月間ベスト・ゴールが選ばれることはあっても、ベスト・タックルやベスト・ブロックのようなカテゴリーは存在しない。
でも、サッカーは個人技と同時に、組織力がモノを言うチームスポーツだ。契約をとってくる花形営業マンが仕事に集中できるのは総務や経理といった縁の下の力持ちがいるからというのと同じで、どのポジションの力も欠かすことができない。

 

ディフェンス──なかでもセンターバックは、90分間のうち89分59秒守り抜いても、たった1秒のミスで致命傷をチームに与えかねないポジションだ。たとえどんなにいい仕事をしてもフォワードの選手ほど注目はされず、失点すれば非難される。それって報われないんじゃない? と訊かれたらそうかもしれない。僕自身は、それも、プロのディフェンダーとしての仕事の一部だと受け止めている。
時には僕のプレーに悔しい思いやいたたまれない思いをすることもあるだろう。それでも変わらず支えてくれる「マヤ・サポーター」のみなさんから、僕は「負けない力」をもらっている。そのみなさんに、僕が見つけたレジリエンスの種を、少しでもここで紹介していけたら幸いだ。
人生という旅の途中で雨に降られたり嵐に巻き込まれたりした時、レジリエンスは前を向いて歩き続ける力になってくれる。
その力はきっと誰にでもあるのだと、本書を通じて気づいてもらうことができたら、僕は本当に嬉しい。

『吉田麻也 レジリエンス――負けない力』(ハーパーコリンズ・ジャパン刊)より抜粋。
Photo by Colin Bell

特集第2回からは、吉田麻也を構成する8つのレジリエンスの中から、成長に不可欠な【弟力】、【選択力】、【反発力】の3つを選んで詳しく紹介する。本特集を通して、不屈のフットボーラー吉田麻也のレジリエンス(負けない力)に触れてほしい。

吉田麻也 レジリエンス――負けない力

吉田麻也(著)
ハーパーコリンズ・ノンフィクション
ハーパーコリンズ・ジャパン

転んだら、起きればいい。
日本人初のキャプテン任命、チームMVP、世界最高峰リーグで結果を出し続ける男。

サッカーの母国で生き抜く“Unbeatable Mind(アンビータブルマインド)”とは――


吉田麻也

1988年8月24日生まれ。長崎県出身。12歳で名古屋グランパスのユースに入団。
2007年プロデビューを果たし、1年目からディフェンスの主軸として活躍する。
2009年、オランダ1部リーグのVVVフェンロへ移籍、同年日本A代表に初招集され、2012年のロンドン五輪ではOA枠で主将としてチームをベスト4へ牽引。
2012年にイングランド・プレミアリーグのサウサンプトンへ移籍、2017年には日本人初となるプレミアリーグ通算100試合出場を達成し、チーム月間MVPにも選出される。189㎝、86㎏。


■公式サイトではファン必見の吉田麻也本人による刊行メッセージ動画が公開されている。

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