Interview

藤原さくら 新章の幕開け。EP「green」に広がる、彼女にしか表現できない音楽世界。そこには、この1年の彼女自身の物語も紡がれていた──

藤原さくら 新章の幕開け。EP「green」に広がる、彼女にしか表現できない音楽世界。そこには、この1年の彼女自身の物語も紡がれていた──

藤原さくらが2ndアルバム『PLAY』以来、実に1年ぶりとなる6曲入りのEP「green」をリリースする。
フジテレビ系月9ドラマ『ラヴソング』で共演した福山雅治による提供曲やスピッツのカバーをはじめ、SPECIAL OTHERSやOvall、APOGEEの永野 亮をプロデュースに迎え、SOIL&“PIMP”SESSIONSの秋田ゴールドマンやH ZETT Mなどのミュージシャンも参加していた前作『PLAY』から一転。劇場版アニメ『コードギアス 反逆のルルーシュⅡ 叛道』の主題歌「The Moon」を含む今作では、全曲の作詞・作曲を彼女自身が手がけ、トータルプロデュースをOvallのメンバーで、ライヴのサポートも務めているマルチプレイヤーmabanuaに一任。参加ミュージシャンもジャズトランペッターの類家心平とDJ Mitsu the Beats(GAGLE)のみで、ほぼ2人の音だけで構築された、藤原さくらの新章の幕開けを告げる作品となっている。
メジャーデビューから丸3年。ドラマ出演で知名度はアップし、アルバムのセールスも好調。数多くのフェスにも呼ばれるようになった今、改めて、彼女が“歌いたいこと”とはなんなのか。自分自身と向き合って紡いだという“歌の言葉”について掘り下げて聞いた。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 冨田望

自分が音楽で何をしていきたいのかっていうことに向き合った1年

EP「green」は、アルバム『PLAY』からは1年ぶりのリリースになります。

その間に、上白石萌音ちゃんに楽曲(「きみに」を作曲)を提供したり、椎名林檎さんのトリビュートに参加したり、らこちゃん(大原櫻子)とレオちゃん(家入レオ)との「恋のはじまり」があったり、自分でも曲を作り続けてはいたので、気づいたら、こんなに経っていたという感じでしたね。でも、『PLAY』が、福山さんとスピッツさんの曲が入りつつ、自分が演技をやって感じたことを歌ったアルバムだったので、「次はどうしよう?」って思ったときに、自分の中で抱えていたものを全部完結させて、また新しく何か、自分で作りたいなと思って始まったEPなんです。

演技(PLAY)と演奏(PLAY)が共存した2ndアルバム『PLAY』まででひと区切りという意識ですか?

そうですね。そこで、ひと区切りついたなと思ったので、自分が音楽で何をしていきたいのかっていうことに向き合った1年でした。

そのひと区切りまでを藤原さくらの第1章とすると、どんな期間でした?

すごく刺激的でした。それまでは、自分がいる世界がすべてだと思っていたけど、全然そんなことはなかったんだなって、教えてもらえたような期間だったと思います。チャートで何位だとかも気にしたことがなかったし、テレビに出るということも経験したことで、結構、厳しい世界だぞって改めて感じました(笑)。それは、ミュージシャンだけじゃなく、きっと俳優さんやお笑い芸人さんでも感じていることだと思うけど。良くも悪くも、誰かに求められないと必要のない存在というか……誰かひとりを救えるっていうことも素晴らしいことだと思うんですけど、いろんな人に聴いてもらってナンボの世界だなって感じたんですよ。だからこそ、キャッチーなものというか……みんなにわかりづらい、難解なものにはしたくないなと思っていましたね。

もっとマニアックでコアな音楽だけがやりたいとは思わなかった?

そうはならなかったんですよ。何が正しいのかはよくわからないままですけど、そこで出会った人たちがすごくたくさんいて。例えば、ドラマで出会ったスタッフの人だったり、役者さんだったり、普通に生活していたら出会えなかった人たちとたくさん出会う機会がありました。ファンのみなさんもそうですね。「ドラマがなかったら、さくらちゃんのこと知れなかった」とか「もっと前から知りたかった」って言ってくれる人がたくさんいて。しかも、演技だけじゃなく、人の曲を全然違うアレンジでカバーしてみたり、『ポンキッキーズ』のメンバーとして歌ってみたり、今までの自分だったら絶対にしないだろうっていうことにもいろいろチャレンジしてきたからこそ、出会えたたくさんの人がいて。その出会いによって、いろんな感情も芽生えたので、やらなきゃよかったということはひとつもなかったし、出会えた人たちのことを大切にしたいなと思ったんです。それをないがしろにして、自分がやりたい音楽……もちろん、自分がやりたい音楽をやっているんですけど……。

(笑)EPも半分は英語曲ですし。

そうなんですよね。ただ、例えば私がジャズ好きだとして、すごく濃いジャズなアルバムを出しても万人に受け入れられないだろうなっていうことはわかっていて。そこで、藤原さくらにしかできないものってなんだろう?っていうのをすごく考えたんです。

答えは出ました?

わかった気はしたんですけど、わかったうえで、これもどんどん変わっていくものだなとも思ったんです。でも、今やりたいことは、このEPに出せたかなと思います。変わっていくことは全然悪いことではないと思うけど、そのときに自分がやりたいこと、絶対に曲げたくないこともあるから、それをちゃんとわかってないといけない。やりたいことは変わっていくけど、きっと自分の軸は変わらないなって感じています。

その流れで1曲目の「Dance」についてお伺いしたいんですが。

“踊ろうよ”っていう曲なんですけど、最初に曲を作るときから、あんまり深いことは言わなくていいと思っていて。イメージ的には初期のビートルズというか。簡単な英語で、とにかく踊ろうっていう曲を作りたいなと思ったんです。それと、去年夏フェスとかにいろいろ出させてもらったなかで、みんなで盛り上がれる曲が欲しいなと思っていたので。すごく大切な、盛り上がれる曲になっていると思います。

この曲の中に「わたしが本当に歌いたい事ってなんだろう」という問いかけがありますよね。

ただ“歌おう、踊ろう”っていう曲ではあるんですけど、作っていくなかで、“本当にやりたいことってなんなんだろうな”って感じていたので。自分がやりたいことっていうのは、尊敬しているポール・マッカートニーさんみたいに、いろんな音楽を自分の体でちゃんと消化して、ポップに昇華するってこと。そして、世界中の人を喜ばせてあげられるエンターテナーでいること。そこはすごく大事だなと思っているし、自分の中で軸になっていくところだと思っています。まだ自分に足りないところもすごくわかっているなかで、今、みんなが自分に何を求めているのかを把握していたいなって思いましたし、キャッチーでありながらも、藤原さくらだなってちゃんと思ってもらえるものを目指したいと思っています。

そのバランスが難しいですよね。自分らしさとみんなが求めることの。

難しいですよね。ひとりよがりでもダメだし、みんなの意見を聞きまくってもダメだし。すごく難しいことをしようとしているなとも思うんですけど……自分がポップだと思っているものが、世間からしたらそれほどポップではないという説もあるので(笑)、そう考えているだけでもちょうどいいのかなって思いますね。

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