Interview

LAID BACK OCEAN 紆余曲折のなか8年を費やして完成させた1stフルアルバム『NEW MOON』の”魔法”とは?

LAID BACK OCEAN 紆余曲折のなか8年を費やして完成させた1stフルアルバム『NEW MOON』の”魔法”とは?

何もかもがライトかつコンパクトに移行しつつあるこの時代をまるで逆行するかのごとく、ずっしりと濃く、そしてとんでもなく熱い音楽がいよいよ世に放たれた。結成から8年、LAID BACK OCEANが満を持してリリースした1stフルアルバム『NEW MOON』がそれだ。全15曲、トータル66分46秒という図抜けたボリューム感は、まんま今の彼らの充実度、意志のタフさを物語っていると言っていい。初期衝動的勢いを孕みながらも、紆余曲折も乗り越えて培ってきたキャリアがあってこそ完成した今作、一筋縄ではいかない楽曲揃いながら、聴けばたちまち引き込まれる求心力の高いこの傑作について、まさに発売日当日にYAFUMI(Vo.)を直撃。2018年6月6日現在の、彼のリアルな心情をお届けする。

取材・文 / 本間夕子
撮影(ライブ) / 尾形隆夫、佐藤祐介、SERINA

“あまのじゃく”ゆえにたまにド直球が投げたくなる瞬間がある

ついに本日、1stフルアルバム『NEW MOON』のリリースを迎えましたが、今の心境はいかがですか。

やっぱりみんなの反応が返ってくると、ちょっと気持ちが違ってきますよね。発売前に取材とかで“このアルバムはどういう作品なんですか?”ってたくさん聞かれるじゃないですか。でも、そこで答えていたものとは、ちょっと認識が変わるというか。実際、どういう気持ちでアルバムを作っていたかっていうのは正直、あんまり覚えてないんですよ。ここに至るまでの期間も長いですし。

結成8年にして初めてのフルアルバムですからね。

なので完成した作品を俯瞰で見つつ“こんなものを作ったんだろうな”って自分でほぼ現実に近い推測をしながら答えてきたわけです。でもファンの方々の反応を見て、よりピュアな部分が思い起こされるというか……こういう想いを届けたいとか、そういう気持ちもそういえばあったなって(笑)。例えば昨日(6月5日)、「明日からの旅」のMVを発表したんですけど、あれも3年ぐらい前からある曲で。もちろん今の自分のリアルな感情に温度感が近いからアルバムに収録したんですけど、そういうものであっても3年も経ってるとよくわからなくなってくるんですよ。

3年ってひと口に言っても1000日以上あるわけですからね。

だから曲が生まれた瞬間のことなんてほぼ覚えてない(笑)。でもMVを観てくれた人の反応を見たりしてると、1000日以上前のことをふと思い出したり。

何を思って作っていたか、とか当時のリアルな感情が甦ってくる。

そうなんです。ただ、僕はけっこう“あまのじゃく”なので、基本的にはそこにある感情をそのまま届けたくないと思ってるんですよ。

でも「明日からの旅」は歌詞もすごくストレートですけど。

“あまのじゃく”ゆえにたまにド直球が投げたくなる瞬間があるんです(笑)。だけど直球を投げたくなってしまった恥ずかしい自分のこと忘れてしまいたい。そんなものは世の中に出るべきでないとさえ思ってしまう。

めっちゃわかってほしいし、めっちゃ愛されたい。

音楽をやること、ステージに立つこと、曲を作り、歌詞を書いて発表すること自体も恥ずかしいことですか、YAFUMIさんにとって。

恥ずかしいですね。自己顕示欲っていうのは恥ずかしいです、俺の中では。自分がこの世界に存在しなければいけないとか、承認されたいってことを一生懸命やってる様を見せるのは恥ずかしい。

だから余計に覚えてないのかもしれないですね。でも、そういうあまのじゃく感はこのアルバムを聴いていてもちょっとわかる気がしました。とにかく一筋縄ではいかない曲ばっかりじゃないですか。歌詞にしても、曲の構成や展開にしても、音の積み方ひとつにしても、簡単にはわからせないというか。そこで思ったんですけど、YAFUMIさんって“わかってほしい”のか“わかられたくない”のか、どっちなのかなって。

めっちゃ、わかってほしいんですよ(←即答/スタッフ大爆笑)。めっちゃわかってほしいし、めっちゃ愛されたい。なのに“わかるよ”って言われると“いやいや、そんな簡単にわかるわけねぇし”って言っちゃう。でも…………愛されたいんです(笑)。

だからこそ、音楽をやらずにいられないのかも。

認めたくないところですけど、きっとそうなんでしょうね。やっぱり音に乗せないとたどり着けないところがある気はするので。

ちょっと漠然とした質問になりますが、YAFUMIさんにとって音楽とはどういうものなんでしょうか。

ドキドキさせなければならないんですよね、僕にとっての音楽って。僕の原体験がそうだったんですよ、初めてロックを聴いたときに“こんなものが世の中にあっていいのか!”って思ったんです。それまでテレビから流れてくる音楽しか聴いたことがなかった少年が。あの衝撃は忘れられない。

テレビで流れるポップミュージックとはまったく違う、こんな音楽があるんだ!と。

だから僕の中では共感してくれるものではないんです、ロックって。どっちかっていうと突き放してくる。突き放しながら、何かを伝えてくるものなんですよ。なので僕も二者択一で言葉を選ぶときは、よりわかりにくいほうを選択したくなっちゃうんです。

どこか社会の中で馴染めない気持ちがあったりする人の感情にたどり着きたい

あの……言葉は悪いですけど、ある意味“聴き手を試す”みたいな気持ちはありますか。

“試す”はちょっと違うな。

なぜ、そう伺ったかというと、このアルバムってけっして取っつきやすいものではないと思うんですよ。収録曲が15曲ってまず多いじゃないですか。トータルタイムも1時間を超えていますし。それによって敬遠してしまうリスナーもいるかもしれない。

たしかに。それもわかる。

さっきも言いましたけど、どの曲も一筋縄ではいかないし、音楽性の幅も広くて、1曲1曲に詰め込まれたものを簡単には読み解かせないというか。私も取材用に音源をいただいてから10日間ぐらいずっと聴いてきて、もちろんすごく好きなんですけど、未だに消化できた気がしないんです。そうした作品を世に放つって、どういった想いのもとなのかを知りたくて。

より細かく(聴き手の)感情にたどり着きたいっていう気持ちはあるのかもしれないですね。“愛”とか“勇気”とか、そういうビッグワード的なものではなく、どこか社会の中で馴染めない気持ちがあったりする人の感情にたどり着きたい。だからといって細かく言葉をかけてその人の感情にアプローチするのではなく、僕が投げたボールの角度の違いから推測してほしいというか。

と言いますと?

“今、こっちに投げたでしょ? 次にこっちに投げたってことは、ここ(そのどちらでもない場所)に何かがあるってことを僕は知ってる可能性があるんだよ”っていうのが、わかる人に届いたらいいなとは思ってるんですよね。だから曲が多いのも試してるわけじゃなく、球数を多くすることによって(たどり着く)確率を上げてるのかもしれないです。

でも、“ここ”が何なのかを言葉で親切に説明するようなことはしたくない。

できればね。そうすると本当にたどり着きたいところにたどり着けなくなっちゃうんですよ。とはいえ、近いところには行けるから、今後はそれもやりたいことではあるんですよ、内角低めのピンポイントな場所にボールを投げる、とか。ただ、今回のアルバムに関しては“こっちにボールを投げました。ということは?”みたいに読み解いてもらえるとうれしいです。それに本来、音楽って説明がいらないものだと思うし。

1stフルアルバムの魔法、みたいなものに自分たちも魅せられた

このアルバムが完成したときはどんな気持ちでした?

“意外と成り立ったな”って(笑)。完成形をあんまり細かく考えて作ってなかったんですよ。もともと楽曲がたくさんあって、そこから精査していく中で、今の自分たちの温度にそぐわないものは自ずと外れていったので、何かしらの枠組みはどこかにあったんでしょうけどね。出来上がってみたら、すごくいいアルバムになったなって。

こういう作品にしたい、とかテーマも設けてなかったんです?

温度の高いアルバム、ライヴにしっかり反映させられるアルバムにしようっていうのはありました。ライヴ映えするとか、ライヴという場で熱が伝わるとか、そういうのも含め。案外、デスクトップ上で完結しちゃいがちなところがあるんですよ、LAID BACK OCEANって。わりと作品主義なので、言葉を突き詰めていくとビートがおざなりになっちゃったり。だから今回は音源の制作期間中もライヴをやらせてくださいって事務所にお願いして、レコーディングと並行してずっとライヴやってましたね。

ちなみに“1stフルアルバム”というものに対して思い入れは……。

ありました。その力を信じたいっていうところもありましたし。1stフルアルバムの魔法、みたいなものに自分たちも魅せられたというか、魔法にかかってしまったというか、そういう感覚も中盤あたりから感じてましたね。“1stフルアルバムだから、こうでなければならない”とか“1stフルアルバムだから、歌詞の1行目でここまでいく!”とか(笑)。結果、それでよかったんだと思います。

「TOILET REVOLUTION」が1曲目っていうのも“1stフルアルバムの魔法”ですかね。かなり思い切ったなと思う一方で、でも、これがLAID BACK OCEANなんだなって腑に落ちる感じもして。

たしかにそうかも。別に俺は1曲目がこれでなくてもよかったんですよ。それこそ「Million」(横浜マラソン2018 PR動画挿入曲)っていう選択肢もあったんですけど、メンバー、マネージャー陣含め、全員が「TOILET REVOLUTION」って(笑)。

「Million」だったら、きっともっとわかりやすかったですよね、より取っつきやすいでしょうし。

うん、いろんな意味で。でもこのバンドはそうじゃないんでしょうね。ホント満場一致でしたもん(笑)、今、思い出したけど。

ずっと宙ぶらりんのまま闘ってきた感じはあるので、少なくとも“2018年6月の僕はこれだ”って言える

今回、ヴォーカリストとしては何を意識して臨まれていましたか。

いろんな声を出してみたいなって。「YSC」のウィスパーもですけど、地声からミックスヴォイスにいく感じとか、歪ませてみたりとか、そういうのは意識しましたね。今回、ミックスをKAZUKI(G.)がやってるっていうのもあって、マイク選びからコンプのかけ方から、かなり細かいところまで調整できたんですよ。歌うことについては最近、TAKUYA∞(UVERworld)ともよく話してますね、“歌ってなんだろう?”“声ってなんだろう?”って。僕らの周りのヴォーカリストたちともよくそういう話をしてて。この時代にロックヴォーカリストってなんなんだろうってことも考えますしね。

YAFUMIさんご自身はどう思われます?

振り切れた存在でありたいなとは思ってます。僕、どこか後ろめたい想いを持ってやってたこともあるんですよ、ロックバンドのヴォーカルというものを。偉そうなことを言うじゃないですか、さも世の中がわかったかのように。でも月〜金で働いている会社員よりロックヴォーカリストのほうがわかってることって果たしてあるのかなって。ろくに社会経験もしてないのに多くの人たちに影響力のある立場になって、生きることや死ぬことを語ったりするけど、本当にオマエのほうが知ってることなんてあるのかって、自問自答してた時期がわりと長くあったんですよね。でも、そうじゃないな、と。社会で揉まれた経験をしたからってホントのことが言えるわけじゃない。ロックバンドのヴォーカルにはロックバンドのヴォーカルとして言う役割があるって気づいてからは心が振り切れるようになりましたね。今はもっと振り切れたところにいける気もしてるし。

そう気づけたきっかけは?

なんでしょうね? ある程度の時間が経って“俺、ロックヴォーカリストに向いてる”って思えるようになったんですよ。なんか向いてるなって(笑)。

ロックヴォーカリストでありたいっていう気持ちがどこかにあったから、とか。

いや、“ありたい”は逆にあんまりないんですよ。むしろロックバンドのヴォーカルってダセぇなって思ってた時期のほうが長くて。ただ、これしかないっていう想いはどこかにはありました。選択の余地がない、やらなければならないっていうのが半分で、その半分の半分くらいは恥ずかしながら自己顕示欲や承認欲求みたいなものに衝き動かされているところもあって。さらにその半分くらいで“何か俺にやるべきことがあるんじゃないか”って思っていたりもして。俺、けっこう長いこと歌詞を書いてますけど、書くことがなくなったことって一回もないんですよ。いつも何かしら書きたい、書かなければならないって思ってるんです。

それはたしかに向いてますね。

だからこそ長いこと経ってようやく“人の前に立って、何かを発してもいいのかも”って思えるようになってきたのかもしれない。そういう意味ではこのタイミングで1stフルアルバムを出せたことに、どこかで“間に合ったな”って気持ちもあるんですよ。自分の音楽人生、嘘をつかなくてもいいこの時期にこのアルバムが出せてよかったです。

これだけ熱量も密度も高い作品を生み出せたことは、かなり自信にもなるのでは。

そうですね。ずっと宙ぶらりんのまま闘ってきた感じはあるので、少なくとも“2018年6月の僕はこれだ”って言えますね。ただ、だからと言って、次の作品が作りやすくなったかっていうと……どうかな(笑)。僕のことなので、また圧倒的な反対側を見たくなる気がします。きっとその繰り返しをやっていくんでしょうね。

ところで今のLAID BACK OCEANのいちばんの武器ってなんでしょうか。

自由度を手の中に収めてることかな。よく言うんですけど、自由って全然関係ない空間にぽつんと浮いてるものではなくて、完全に日常と地続きの中で、日々を更新しながら、距離感を見極めながら手に入れていくものだと思うんですよ。それを今、自分らの手の中に収められていると思えるのはすごく大きい。その自由をもとに、ここからいろいろと攻撃を仕掛けていければ。

『NEW MOON』=新月ですもんね。つまり、ここから始まるわけで。6月10日から“NEW MOON TOUR 2018”もスタートしていますが、どんなツアーになりそうですか。

ここ1~2週間、このアルバムの取材とかキャンペーン期間中は天の邪鬼が発動していて、全然アルバムとは違う曲をやってやろうか、みたいなモードになってたんですよ、実は(笑)。でも、まさに昨日今日とみんなのアルバムへの反応を見て、やっぱり聴いてくれる人たちにはちゃんと届けたいなって思い直しました。

よかった! ぜひ今のその気持ちのまま走り切ってください。

頑張ります(笑)。

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ライブ情報

詳細はオフィシャルサイトにて

オフィシャルサイト
https://laidbackocean.amebaownd.com