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日本の隠れた逸材が、アカデミー賞をきっかけに逆輸入的に国内で注目されるきっかけになる

日本の隠れた逸材が、アカデミー賞をきっかけに逆輸入的に国内で注目されるきっかけになる

 普段は愛国心なんてないくせに、ともすれば忌避感さえ覚えるぐらいなのに、海外賞レースで日本人が活躍すると妙に嬉しく誇らしくなってしまうのが人情ってもの。アカデミー賞でももちろん、然り。

 アカデミー賞の日本人受賞者と聞いてパッと名前が浮かぶのはやっぱりこの人、“世界のクロサワ”こと黒澤明だろう。1951年に『羅生門』が名誉賞(現・外国語映画賞)を受賞し、当時国内では高い評価を得られなかった同作の受賞で黒澤明は国際的に注目される存在となった。その後も1980年の『影武者』など、黒澤作品は外国語映画賞のノミネートや受賞をたびたび果たしている。ちなみに外国語映画賞の部門は掘り出し物や通好みの作品が多く、メインの作品賞よりも注目している映画ファンも少なからずいる賞だ。2008年に滝田洋二郎監督の『おくりびと』が同賞を見ごとに受賞して注目されたことも記憶に新しい。

 ただ、外国語映画賞は本家アメリカから見て外国語映画に向けられた部門だからして、サイドの賞というイメージは否めないが、黒澤明は主要5部門である監督賞にも1985年に『乱』でノミネートを受けている。さすが“世界のクロサワ”だ。

 この『乱』では、ワダ・エミが衣装デザイン賞でオスカーを手にしたことも当時話題となった。しかし、『乱』は「リア王」を翻案した絢爛豪華な時代劇であり、エキゾチック・ジャパンな雰囲気がアメリカで受けが良かったためかもしれない。その点、『ドラキュラ』で1992年に衣装デザイン賞を獲得した石岡瑛子は、本家アメリカの土俵で勝利したわけだから、日本人として胸がすく度合いがさらに高いだろう。石岡瑛子は亡くなった後、2012年に『白雪姫と鏡の女王』で再び同賞にノミネートもされている。

 日本人が海外で勝負できるもの、しかもエキゾチック・ジャパンを武器にせずに、というと昨今になって頭角を表した、というか今やもう定番であるアニメーションだろう。アカデミー賞では、2002年にディズニーアニメを差し置いて『千と千尋の神隠し』が長編アニメーション賞に輝いたことを皮切りに、宮崎駿作品は2005年に『ハウルの動く城』、2013年に『風立ちぬ』も同賞にノミネート。さらに、宮崎駿は1990年の黒澤明に続いて国内では2人目のアカデミー名誉賞を2014年に与えられている。

 アニメで言うと、王道の宮崎駿作品よりも個人的には短編アニメーション賞を2008年に受賞した加藤久仁生の『つみきのいえ』や、2002年同賞ノミネートの山村浩二の『頭山』のほうが興味深い。国内ではなかなか日の目を見ないが、海外で認められると俄然スポットが当てられ、我々はとたんに日本人として鼻高々になる。日本にはまだまだ隠れた逸材がいるんですよ、と。逆輸入されるまで知らなかったわけなのだけど。

文 / 入江奈々