Interview

映画『空飛ぶタイヤ』で、小さな勇気を出す男を演じた中村蒼。 池井戸潤作品の魅力と、役者としての”現在地”を語る。

映画『空飛ぶタイヤ』で、小さな勇気を出す男を演じた中村蒼。 池井戸潤作品の魅力と、役者としての”現在地”を語る。

いかに役を作品に馴染ませるかを考えつつ、なるべくフラットにいたいなと思って、現場に立つようにしている。

主演作品も多々ある中村さんですが、今回のように出演シーンが限られた中で何ができるのか、といったことを考えたりもするのでしょうか?

どの作品、どんな役であっても、自分のお芝居や役柄が多くの人の印象に残ったらいいな、という思いは正直あります。でも、かといって変に爪痕を残そうとして変化球的な表現をしたい、という欲はなくて。というか、変化球的なお芝居が得意じゃないんですけれど…。いただいた役と誠実に向き合って、まっとうすることができれば、きっと作品をご覧になっている方には何かを届けられると信じているので、どちらかというと、いかに役を作品に馴染ませるかを考えていますね。なので、なるべくフラットにいたいなと思って、現場に立つようにしています。

心身ともにニュートラルな状態で現場に臨む、と。

そうですね。大きな壁と向き合って闘うキャラクターもいれば、その人を支える周りのキャラクターもいたり、同じ志を持ってともに闘おうとするキャラクターもいるわけじゃないですか。闘い方も人ぞれぞれというか。僕自身、ふだんは先頭を切って何か行動を起こすというタイプじゃないので、どうすれば自分よりも闘い方がうまい人の力になれるかを考えると思うんです。今回演じた杉本はたまたま自分に近いというか、シンパシーを覚える”闘い方”をする人だったので、共感と理解をしながらお芝居をしていたんですけど、役が違っていたら、取り組み方もまた違っていたはずであって。ただ、杉本はすごく親近感のあるキャラクターだったので、ひときわ感情移入して演じたところがあったのも確かです。

その杉本の小さな勇気と揺るがない正義感が、やがて大きなうねりを生み出していく…というカタルシスも池井戸作品の妙味だと思いますが、中村さんは池井戸作品の何に魅了されたのでしょう?

さっきもお話しましたけれど、さまざまな立場の人がそれぞれのやり方で行動を起こしていく中で、人間模様が描かれていくところです。「自分だったら、彼のようにするかもしれない」と肩入れしながら、物語に入っていけるのはすごく魅力的だなと思います。「ああ、わかるなぁ」とか「そうそう、あるある」と腑に落ちるじゃないですか、池井戸さんの作品って。小さき者が大きな者たちに対して泥臭く挑んでいって、何度叩かれても進んでいく姿というのは、やっぱり心を打たれますよね。自分たちがふだん考えていること、思っていることを代弁してくれている作品が池井戸さんの小説には多い気がしますし、だからこそ多くの人の共感を呼ぶんじゃないのかなと思います。

しかも社会派でありながらエンターテインメントでもあるという。

映画や漫画、ドラマもそうですけど、突き詰めると娯楽作品だと僕は思っているので、観た後に心地よさや清々しさが残る方が、自分としては好みだったりします。もちろん見ごたえのある社会派の作品も好きですけど、間口を狭めてしまう可能性もあることを考えると、エンターテインメント性が加わることによって、より多くの人が物語の中に入り込みやすくなるだろうし、浸ってもらえるのかな、と。そこを踏まえると、一見「社会派」と「エンターテインメント」という相反するように思えるジャンルが融合することは、すごく理にかなっているんじゃないかなと思いました。

自分が何者なのかわからなくなる時もあるけど、結局は好きでこの仕事をしているから幸せです。

そして、中村さんご自身も20代後半になり、キャリアも13年になりますが、お芝居そのものに対するとらえ方はどのように変化してきたのでしょうか?

誤解を恐れずに言うと、「仕事」という感じです(笑)。もちろん、自分ではない誰かを演じられることだったり、自分が出演した作品を観たことがきっかけで何かが変わったという人がいることに対する喜びはあるんですけど、それこそ『空飛ぶタイヤ』のテーマじゃないですけど、僕は僕で守るもののために仕事をしている、という意識もあるんですよね。だから、「お芝居とは…!」みたいな感じに、深く思い詰めるということが、僕の中ではそんなにないんです。でも、観てくださる方のことは、物語の中に引き込みたいという気持ちもあって。うん、何でしょうね…言いたいことはたくさんあるんですけど、なかなかうまく言葉にできなくて──。

よく「役作りはどうしましたか?」という質問を受けると思いますが、はたして役はつくるものなのか、あるいはご自身の中から出てくるものを具現するものなのか、はたまたいろいろな要素から取り込んでいくものなのか…アプローチはさまざまだと思うんですが、中村さんはどういった感じでしょう?

僕はわりと自分の中にあるものを出していくタイプだと思います。「もし自分だったら〜」という仮定から、役に近づいていくというか。その方が、自分がしてきた経験や考えが投影されて、僕が演じる意味も見いだせるので、そこは毎回大切にしていますね。ただ、変わった仕事だなと思います、役者業って。正直、「いったい何をやってるんだろう?」と思ったこともありますよ、お芝居をしていて(笑)。「なんで、こんなに緊張しているんだろう、こんなに毎日緊張して心を削っていくくらいなら、ほかの仕事をした方がいいんじゃないか」と思ったりもしたし、自分が何者なのかわからなくなる時もありますけど、結局は好きでやっているんですよね、この仕事を。だから…幸せです。

誰もが好きなことを職業にできるわけじゃありませんしね。

もっと若い時は「お芝居とは何か?」みたいなことを考えようとしていたんですけど、人間としても役者としても経験を積んだことで、いい意味でライトになれました。「これが自分の仕事なんだ、だからやるんだ」って、ある意味開き直ったら、逆に気持ちが楽になりましたから。もしくは、そう思える余裕のようなものが少し出てきたのかもしれないですね。

原作者・池井戸 潤さんのインタビューはこちら
池井戸潤作品で初めて映画化となった『空飛ぶタイヤ』。 著者が語る「物語が生まれるまでのプロセス」とは

池井戸潤作品で初めて映画化となった『空飛ぶタイヤ』。 著者が語る「物語が生まれるまでのプロセス」とは

2018.06.13

中村 蒼

1991年、福岡県生まれ。2006年に舞台『田園に死す』で俳優デビュー後、映画『恋空』(07)、主演映画『東京難民』(14)、TVドラマ『無痛〜診える眼〜』(15/CX)、『せいせいするほど、愛してる』(16/TBS)映画HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY』『ポンチョに夜明けの風はらませて』(17)など話題作に出演。2018年は本作のほか、ドラマ『命売ります』(BSジャパン)、ふたり舞台『悪人』に出演し、活躍の場を広げている。

オフィシャルサイト
http://www.lespros.co.jp/talent/artists/aoi_nakamura/

オフィシャルブログ
https://ameblo.jp/aoinakamura-lespros/

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応募期間

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6月14日(木)~6月21日(木)23:59

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映画『空飛ぶタイヤ』

6月15日(金)全国公開

【STORY】
よく晴れた日の午後。
1台のトレーラーが起こした事故により、1人の主婦が亡くなった。事故を起こした運送会社の社長・赤松徳郎は警察で信じられないことを聞く。 突然タイヤが外れた、と。
整備不良を疑われ、世間やマスコミからバッシングをされる毎日の中、彼は車両の構造そのものに欠陥があるのではないかと気づき、製造元のホープ自動車へ再調査を要求する。
ホープ自動車カスタマー戦略課課長・沢田悠太は、赤松の要求を疎ましく思いながらも、真実を突き止めるために、また同じ頃、ホープ銀行の本店営業本部・井崎一亮は、グループ会社であるホープ自動車の経営計画に疑問を抱き、独自の調査をそれぞれ開始していく。突き止めた先にあった真実は大企業の“リコール隠し”――。過去にも行われていたそれは、二度とあってはならないことだった。
果たしてそれは事故なのか事件なのか。男たちは大企業にどう立ち向かっていくのかー正義とはなにか、守るべきものはなにか。

原作:池井戸 潤『空飛ぶタイヤ』(講談社文庫、実業之日本社文庫)
監督:本木克英
脚本:林 民夫
出演:長瀬智也、ディーン・フジオカ、高橋一生、深田恭子、岸部一徳、笹野高史、寺脇康文、小池栄子、阿部顕嵐(Love-tune/ジャニーズJr.)、ムロツヨシ、中村 蒼ほか
音楽:安川午朗
配給:松竹
©2018「空飛ぶタイヤ」製作委員会

オフィシャルサイト
http://soratobu-movie.jp/

原作コミック

空飛ぶタイヤ 上下合本版

池井戸 潤
講談社

走行中の大型トレーラーが脱輪し、はずれたタイヤが歩道を歩く若い母親と子を直撃した。トレーラーの製造元ホープ自動車は、トレーラーを所有する赤松運送の整備不良が原因と主張するが、社長の赤松は到底納得できない。独自に真相に迫ろうとする赤松を阻む、大企業の論理に。会社の経営は混迷を極め、家族からも孤立し、絶望のどん底に堕ちた赤松に、週刊誌記者・榎本が驚愕の事実をもたらす。

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