ZARDデビュー25周年記念特集【THE POP STANDARD】  vol. 4

Interview

永遠のスタンダードを見事に体現した坂井泉水の情熱と希望。そして彼女が「負けなかった」真実とは?

永遠のスタンダードを見事に体現した坂井泉水の情熱と希望。そして彼女が「負けなかった」真実とは?

全国ツアーのときは、船上ライブから5年。出てきた声を聴いたときに、さらに上の境地に行かれたと思いました

そして、5年経ちまして、今度は全国ツアーをやることになりました。こちらもバンマスは大賀さんが。

大賀 はい、やらせていただきました。

5年後に再度またリハーサル。ツアーなので、今度はもっと時間をかけたんですよね。

大賀 そうですね、いろいろやりました。

そのときの坂井さんの歌唱っていうのは、遥かに上達していたとか、スキルアップしていたという印象はお持ちになられました?

大賀 ありました、はい。やっぱり自分もそうなんですけど、ミュージシャンって、家で100回練習するより1回のライブのほうが格段にレベルアップできるというか。坂井さんも同じで、99年に船上ライブをされたからか。まあ、もともと素晴らしいシンガーでしたけど、さらに上の境地に行かれたのかなという印象は歌声を聴いたときにすごく感じました。

1st全国ツアーをすることによって、坂井さんご本人もいろいろ思うところがあったと思うんですけども、バンマスである大賀さんに坂井さんのほうから「こんなことをしてほしい」「こういうミュージシャンを集めてほしい」とか、そういうリクエストはあったんですか?

大賀 リクエスト自体はなかったですね。ミュージシャンに関しては、あのとき18人ぐらいでステージを構成したと記憶していますが、ギターだけでもエレキギターが3本とか、アコースティックギターが2本とか。ZARDって実はCDには色々な楽器や音が入っているんですけど、それをできるだけ全部生で再現したいっていう話があったので、もう、全員でそのパートパートの振り分けを徹底してやって、全部の音を細かいところまで……僕もトラックを細かいところまで全部聴いて、全員に「ここをこうしてほしい」と譜面を新たに書いたりして進めました。長戸プロデューサーからもとにかくしっかり再現したいって言われていましたので。あと、何曲かを弾き語り風にやって欲しいという話も出たので、『もっと近くで君の横顔見ていたい』という、僕のアコースティックギターと坂井さんのボーカルだけでやった曲もあったんですけど、あれに関しては何故か、フレッシュさを保ちたかったのか、実は事前には一回もリハーサルをせず、本番日のサウンド・チェックでちょっと確かめただけでやったんですよ。もう、あのときの僕の緊張感は半端じゃなかったです。音源全てを再現したいっていうのは一番のテーマにあったんですけど、『もっと近くで~』は全くのフリーなので、曲の尺から言えば4小節目が終わってすぐ5小節目で歌が来るところを、坂井さんが敢えて長く溜めてみたりとか、言葉を使ってコミュニケーションしたっていうより音でコミュニケーションしながら、ライブも回数を重ねるたびにどんどん進化していったのではないかと思います。

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僕はパシフィコ横浜と国際フォーラムを見せていただいたんですけど、『明日を夢見て』でも、坂井さんの歌から始まって、すごく声が伸びていますよね。

大賀 それはもう、はい。

あれも、ライブを重ねるごとに坂井さんの歌がどんどん。

大賀 はい、完成度が高くなったというか。

で、そこに大賀さんのアコギとシンクロするじゃないですか。あれ、すごい素敵な雰囲気で。

大賀 僕はひたすら緊張していましたけど(苦笑)。

そうですか?

大賀 坂井さんと目線を合わせながらやっていたんですけど、そのときに、僕も一応バンマスなので、気持ちよく歌える状況を作らないと思って、何とか笑顔を作ったりしていたつもりなんですけど、手はブルブル震えていました。

最終日の日本武道館に至るまで長いツアーを全国でやられましたよね。当然最初は坂井さんも緊張していただろうし、声も初期のライブではそんなに出なかったと思うんですけど、どんどんどんどん変わっていったっていうのはバンマスとしては?

大賀 すごい実感しています。

それはどの辺ぐらいから?

大賀 1回目に大阪のフェスティバルホールからツアーが始まって、仙台のときに、本人の体調が良くないと聞いて最悪の場合、少しの間バンドで間を持たせることも考えていてほしいみたいな話があったので、大丈夫かなと思っていたんですけど、本番で坂井さんはとても透き通って真っ直ぐ抜けるような声になって、それがすごい衝撃だったのを覚えています。だからやっぱり、あの辺りから変わっていったのではないかな、と思います。

なるほど。ツアーに当たって、曲によってアレンジもかなり変えられてますよね。

大賀 弾き語り風のところはそうですね。

メディアのほうから見させていただくと、まあセット上の問題もあるんですけど、坂井さんほとんど動かない(笑)。

大賀 あはは! はい。

例えば、大賀さんがサポートをされているB’zの稲葉(浩志)さんがステージを縦横無尽に走り回ったりするようなことは一切されない。センターに仁王立ちですよね。

大賀 どかんと、はい、いらっしゃいましたね(笑)。まあ、バンドの人数も多くスペースがなかったですし。

あと、MCが極めて少ない。

大賀 ああ、そうですね! 1ヶ所2ヶ所ぐらいですかね。

そうですね。だからかなり画期的な感じが(笑)。レアと言うと失礼かもしれないですけど、音楽性の高い稀有なライブだというふうに評価させていただいたんですけど、坂井さんのアーティスト性を、バンマスをやるにあたってどう引き立てる、どこを中心に、っていうことは考えられたんですか?

大賀 当時すごく思っていたのは、素晴らしい声の持ち主で、あと、歌詞もすごくたくさんの人が感動されていると感じていたので、来て頂いている皆さんが感動して、ライブでも歌詞が全部聴き取れるようなライブになったらいいなぁというのを一番思いながらやっていましたね。

確かに、ホントにライブで言葉が伝わってくる、といって、バンドの音量が少ないわけでもなく、あのバランスは絶妙だと感じました。

大賀 むちゃくちゃこだわりました。バンドメンバーにも、それこそ「この曲のときはこのレベル、この曲のときはこのレベルにしてほしい」とか、普段感覚だけでやるような部分も全部目盛りの数値を出してやってもらったりとか。鍵盤にしても、タッチでもちろん目盛りは変わるんですけど、一定の決まったレベルの、「この曲のときはここにしてほしい」とか、結構そういうところまで細かくみんなでやりましたね。

ということは、コンサート全体の音像の良さのキープと、坂井泉水さんの言葉を両立させるというところ。

大賀 そうです、はい。そういうのを確かにすごく意識してやりました。

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ZARDのライブに関してはちょっと80年代後期的なサウンド作りを目指していたかもしれない

ホールでもやられましたし、パシフィコ横浜、国際フォーラムは、収容人数は大きいですけど、ある意味で特殊なホールですよね、そして、武道館。会場のスタイルがかなり違ったツアーだったじゃないですか。スタジアムをずーっとやるとか、アリーナ・ツアーをやるのではない。だからセット作りも、音響も大変だったと思うんですけど、その辺りはどう苦労されたんですか?

大賀 ZARDでは僕が弾かせてもらっているラインはひとつの音でちょっと長めに伸ばす、ロングトーン系のフレーズが多かったんですけど、やっぱりアンプってその環境、場所で、サスティーンが伸びたり伸びなかったりっていうのが、ものすごく変わっちゃうので、とにかく会場に着いたら必ず一番最初にやっていたのがギターのサスティーンが伸びる、フィードバックする場所をつねに探して、足元にガムテープでバッテン着けて(笑)。必ずそのフレーズのときにはそこに行くとか、会場によって変えていましたね。あとピアノもリバーブが天然ですごくかかるところと、デッドなところがあるので、そういうのも会場入りしてから……特にピアノのコード感は一番大事にしていたので、会場によってピアノの残響系とかをかなりいじってもらったのは覚えいてます。

っていう大賀さんの努力に対して、坂井泉水さんは、ちゃんと反応して、パフォーマンスを?

大賀 はい、やってくださっていたと信じております(汗)。

なるほど。ちょっと話は変わりますけど、倉木麻衣さん、B’zで稲葉(浩志)さん。稲葉さんは男性ですけど、倉木さんは女性で、ボーカリストによって大賀さんの弾き方っていうのは何かあるんですか? 弾き分けみたいなっていうのは。

大賀 あー、どうなんでしょう……何かたぶんやっているとは思うんですけど、あまり深く自分の中で「こうだからこうしよう」とは考えていないかもしれないですね。なんかフィーリングで。

無意識のうちに。

大賀 無意識に「こうしよう」とか、その場で「ちょっとこういうふうにしよう」とかはかなりありますけど、そうですね……何か特別にこうしよう、個人的にこうしよう、みたいなのは、あまりないかもしれないです。むしろジャンルとか。ロックだったらロックで70年代風の音にしたほうが合うとか、80年代風にしたほうが合うとかは最初に決めてやりますけど。ZARDに関しては、そういう意味では、ちょっと80年代後期的なサウンド作りを目指して作っていたかもしれないです。80年代後期に流行っていたような音というか、何て言ったら良いんでしょうか、80年代前半の「マーシャル限界までひずませたけどこれ以上はひずまない」っていうよりかは、エフェクターもここ入れてひずむぐらいの感じというか、そういうのは作ってやっていましたけど。

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