Interview

TVアニメ『BEATLESS』この“得体のしれない気持ち悪さ”の正体は何か? 水島精二監督が絶大な信頼をよせる音作りの匠・NARASAKIインタビュー

TVアニメ『BEATLESS』この“得体のしれない気持ち悪さ”の正体は何か? 水島精二監督が絶大な信頼をよせる音作りの匠・NARASAKIインタビュー

人類を凌駕する知能を持った超高度AIが存在する近未来、hIE(Humanoid Interface Elements)と呼ばれる人型ロボットと人間が共存する社会を舞台に〈ヒト〉と〈モノ〉のボーイ・ミーツ・ガールを描いたTVアニメ『BEATLESS』。水島精二監督が指揮を執る本作において、kz(livetune)と共同で劇伴を担当しているのが、劇場アニメ『楽園追放 -Expelled from Paradise-』(2014年)をはじめ多くの水島監督作品で音楽を制作してきたNARASAKIだ。物語が佳境を迎えるなか、彼に本作のサントラについて話を聞いた。

取材・文 / 北野創

水島監督とやるときは、いつもより一歩踏み出した作家性を出せればと

NARASAKIさんが『BEATLESS』の劇伴に携わることになった経緯を教えてください。

これはどこかで機会があれば言おうと思ってたんですけど、水島さんからひと言目に言われたのは「牛尾(憲輔)が忙しそうだからやってくれない?」だったんですよ(笑)。で、今回はkzくんも参加してるんですけど、彼はEDM系の曲をやるから、僕はいわゆる劇伴的な曲をやるということになって。最初はテクノみたいな近未来感っぽい感じと、歪んだギターのメタルっぽい要素を入れた劇伴にしたいというお話で、水島さんはラムシュタイン(ドイツ出身のインダストリアル・バンド)みたいなイメージとも言ってましたね。

NARASAKIさんと水島監督はこれまでにも多くの作品でご一緒されてますが、ご自身の音楽と監督の作品との相性についてどのようにお考えですか?

『はなまる幼稚園』(2010年)はほんわかとした感じで、マイナーな曲調はほとんどなかったし、次の『UN-GO』(2011年)はミステリー作品なのでどちらかというと暗い曲調のものが多くて、本当に作品による感じですね。ただ、僕が劇伴に携わるときは基本、作品に寄せて曲を作って、そこに自分の持ち味が活きていけばと思ってるんですけど、水島監督とやるときはいつもより一歩踏み出した作家性を出せればというのがあって。劇伴作家に徹するというよりは、引っかかりのあるものが出来ればいいなと思ってやってます。

今作に関しては、監督から具体的にどんなオーダーがありましたか。

実際にどんな音楽、みたいな話はなくて。いちばん最初の打ち合わせのときに説明されたのは、主役の遠藤アラトの考え方とか立ち位置みたいなものでしたね。性善説というか、AIに対しても人間的に接してしまうような性格が物語のキーワードになってることとか。基本は監督が考えてくれた音楽メニューに沿って曲を作っていきました。

NARASAKIさんが『BEATLESS』という作品自体に受けた印象は?

最初にお話を聞いたときは『エクス・マキナ』(2015年)という海外の映画を思い出したんですよ。AIの女性と人間のお話なんですけど、それと遠からず近からずというか。

たしかに〈人間に似せて作られたAIとの共生〉という部分は『エクス・マキナ』と共通します。そういったAIというテーマ性は、今回の劇伴を作るにあたって影響しましたか?

〈人間らしさと無機質〉というのは音を作りながら考えてましたね。AIのキャラに対してつける曲はどれぐらい無機質であればいいのかとか、打ち込みをどの程度の割り合いにするかとか。最初の方にアンビエントの曲を作ったんですけど、透明感のあるような、無機質であり、ちょっと掴みようのない感じというイメージが、そういう曲を作る要因になりましたね。冷たくてちょっと怖いものというか。

そのほかに『BEATLESS』の世界観を表現するにあたって心がけたことはありますか?

機械らしいビートを多くして、あまりグルーヴィーじゃなくてカッチリしたノリがいいかなと思って。インダストリアルでドッカンドッカンしてる感じというか(笑)。

演出としては成り立ち辛いアンビエントを入れていくことが、作風として活きていく

サントラにはkzさんの楽曲を含め60曲以上が収録されてますが、どれぐらいの期間をかけて作られたのでしょうか。

大体2か月くらいで作ったんですけど、オファーをもらったタイミングがわりと時間的にギリギリだったので、これは分担したほうがいいだろうということで、相方のWATCHMANとコジマミノリにも手伝ってもらって。自分はわりと打ち込みのモードだったので、WATCHMANにはフルオケタイプの戦闘曲をいくつか作ってもらいました。メニューにはアクションの曲が多かったんですけど、打ち込みはkzくんも僕もやってるから、バリエーションを増やすために(WATCHMANには)そっち方面の曲をお願いしようかなと思って。

コジマさんにはどんなタイプの曲を?

彼女にお願いするときはいつもゴシックな雰囲気の曲を担当してもらうことが多いんですけど、今回出てくるスノウドロップというhIEが得体のしれないロリっぽい子で、ダークファンタジー的な要素の曲が合いそうだったので、その子のテーマ曲(「Weiβ kindlich」)を考えてもらったんです。あとはピアノとかパイプオルガンの鍵盤系の曲ですかね。

それぞれの得意分野となる楽曲を分担しながら作っていかれたんですね。

もちろん僕からもいろいろ注文はしましたけど。あと、サントラにはWATCHMANが作った曲もたくさん入ってるんですけど、それは全メニューが出揃った段階で彼にひと通り見直しをしてもらって、もしBパターンを考えられる曲があれば提出してほしいとお願いしたからなんです。なので、曲名に〈B〉と書かれてるものは、同じメニューのバリエーションとして制作したものですね。

NARASAKIさんの制作された楽曲には、先ほどおっしゃられてたようにアンビエント風の楽曲が多くありますが、特に音色にはこだわられている印象を受けました。

アンビエントは出音でどれだけ陶酔感があるかが重要ですからね。音はハードのシンセの方がキレイだと思って、つまみをいじりながら作り込んでいったんですけど、自分でも満足いくものになりました。

アニメの劇中でも、少し不穏な雰囲気のアンビエント音が日常的なシーンで流れることによって、人間そっくりのAIと共存する社会の怖さみたいなものが伝わってくるように思いました。

そこなんですよね。何もない感じというか。音響監督の方は最初、アンビエントの曲をどう扱っていいかわからないとおっしゃってたんです。そういう音は演出としてすごく成り立ち辛いんですよね。でも、こういうものを作品の中に入れていくことが、作風として活きていくと考えてたので、そこは使っていってほしいなと思ったんです。

水島監督は、NARASAKIさんの制作された音楽について何か感想をおっしゃってましたか?

うーん……水島さんが書いたメニューと違うイメージのものを提出したら、それはやっぱりダメって言われましたね(笑)。サントラにも入ってる「Fight for what」という曲は、もともと作品全体のテーマ曲のつもりで作ったんですよ。いちばん最初に言われてたメタルと打ち込みのイメージに近づけて、アニメ感もある感じにしたからテーマ的に合うかなと思ったんですけど、水島さんは「これはこれでいいけど違う」ということで。それで新しく作ったのが「Main theme」なんです。

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