黒川文雄のエンタメ異人伝  vol. 17

Interview

ミクシィ代表・木村こうき氏(下)『モンスト』誕生!そのブレイクの真相

ミクシィ代表・木村こうき氏(下)『モンスト』誕生!そのブレイクの真相

いずれ人は死ぬんだと、だから今後悔しないようにという気持ち

ホントに昔から変わらないですよね。いつお会いしてもすごいフラットだし、フェアだし。

木村 ありがとうございます。

ポジションが上がると、たまにコロっと変わる人もいますからね。でも、木村さんはいつお会いしても変わっていないんで、もともとのお人柄なんだろうなって思うんですよね。

木村 元来、そんなに強い人間でもないと思っていまして。判断に迷ったときには、いずれ人は死ぬんだと、だから今後悔しないようにというのを、自分の判断の最優先事項にしています。やっぱりユーザーサプライズファースト(注10)、ユーザーの驚きっていうのが最優先で、そこをいつも見失わないように、何が本質なのかっていうのを常に見ていく。そのために、明日死ぬかもしれないんだぞ、だから後悔しないようにと自分で自分に言い聞かせています。

注10:代表取締役メッセージに詳しく表記
https://career.xflag.com/message/

素晴らしいですね。

木村 そうでもしないと、信念を貫けないタイプなので。

そうですか? 信念を貫かれているように思いますけどね。信念を貫きつつ、ご自身のやりたいことを実現させるために邁進していると感じます。今後に関してはどうでしょう。近年は持てる会社しかゲームに投資もできないといいますか、かつての中小や個人が奇跡的なコンテンツを生み出すような時代ではなくなってきていると思うんですよね。

それこそミクシィさんとかLINEさんとかDeNAさんのような大きい会社しか、新しいコンテンツやサービスを生み出せない時代になっている。当然、投資額も大きくなるし、ユーザーが求めるハードルも高くなっていると思います。そうした中で、もしかしたらスポーツやウェルネスもその一環で、いろいろなものを総合されようとしているのかもしれませんけど、ミクシィさんの新しいコンテンツというのは、どのようなものになるのでしょうか。

木村 いわゆるスマホゲームみたいなカテゴリーでくくると、確かに競合環境っていうのは厳しくなっていると思います。ただ、それはいわゆる質だけで戦おうとした場合ですよね。私たちはみんなでワイワイ盛り上がる、そういうコミュニケーションを届けるんだという観点に立ってやっているので、そんなに開発費をかけなくても新しいコミュニケーションは生みだせると思っていますね。

なるほど。

木村 コミュニケーションのニーズっていうのは、そうそうなくならないと思うので。逆に、ニーズがなくなったら人類はどうなるんだろうとも思いますし(笑)。

ハハハハ、確かにそれはないですよね。なるほど、なるほど。

木村 だから、ゲームだけではなく。スポーツなんかも、みんなでワイワイ盛り上がれる要素だと思っていますし。海外のスポーツ市場と比べると、日本はものすごく小さいんですよね。アメリカなんか約50兆円(注11)とかいっているのに、日本だと5兆円みたいな。

注11:日本貿易振興機構(ジェトロ)サービス産業部米国スポーツ市場・産業動向調査資料より

もっと拡張できそうですよね。

木村 そうですね。ビジネスモデルの転換とかいうのは、まだ全然できていないですが、経済がきちんと回っていくことによってスポーツ自体が潤っていって、もっと面白いものに変わっていけると思っています。

なるほど。今はどちらかというとリアルスポーツを支援されていますけど、eスポーツに関しては何かお考えはありますか? もちろん、『モンスト』は『モンスト』でやられているとは思うんですけど。

ミクシィとしてのeスポーツへの取り組みの意義

木村 今のeスポーツ市場に関しては、ちょっと慎重に捉えているところがあります。やっぱり1対1で戦うというものがけっこう多いような気がしているんですね。僕らがやるとしたら、ホントに友達と一緒にチームを組んで、ひとりが1キャラを操作してみたいな。チームeスポーツというか、みんなで集まる言い訳みたいなものになれるようなサービスであれば、私たちが事業として取り扱う意義があるのかなって思っています。やっぱり、オンラインで知らない人とチームになるのと、実際の友達やチームメイトと一緒にやるというのは、体験としては似ているようで大きく違うと思うんですよね。

やっぱりバーベキュー(注12)が基本ですか? 人生はそこで出会い、楽しく食べて、歌い、翌日みんなとまた頑張るみたいな感じでしょうか。

注12:バーベキューに関してはこちらの公式サイトに詳細を記載
https://xflag.com/aboutus/

木村 そうですね。僕がさみしがり屋っていうのもあるかもしれないですけど。そんなに友達が多いほうではないんですけど、ひとりで黙々と何かをやるタイプでもなくてですね。常に周りに人がいてほしいなと。

今のお立場になると、良くも悪くもですが、いろんな人がいっぱい来るんじゃないですか。

木村 そんなに寄ってくる印象はないですけどね。

木村さんはそういうお人柄だから変に寄せ付けないし、どんな人か見分けられているのかもしれないですね。いや、今日はありがとうございました。ますますのご発展、期待しています。

木村 はい、こちらこそありがとうございました。

取材後記

今回の取材は5月中旬に実施され、次期・代表取締役に内定して初めて対応するロングインタビューということだった。すでに経済紙などに木村氏の経営抱負や課題などが露出しているのだが、木村氏の本質に迫ったものではなかったように思う。経営者になって変わるものは必然としてあるだろう。しかし、木村氏が考えるコミュニケーションやエンタテインメントの方向性はおそらく変わることはないだろう。新生ミクシィ、また数年後、改めて木村氏の実績を検証するときがくる。おそらく、その時も木村氏のスタンスは変わることはないだろう。これからのミクシィの歴史の生き証人としてさらなる活躍を期待したい。

撮影 / 北岡一浩 取材協力 / 仁志睦

著者プロフィール:黒川文雄【インタビュー取材】

くろかわ・ふみお
1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDEにてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japan(現LINE・NHN PlayArt)にてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。アドバイザー・顧問。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。株式会社ジェミニエンタテインメント代表。DMMオンラインサロンにて「オンラインサロン黒川塾」を展開中。
黒川塾主宰。ゲームコンテンツ、映像コンテンツなどプロデュース作多数。

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