Interview

サイダーガールの新しい“夏ソング”はどうして爽やかなスピード感に溢れているのか?

サイダーガールの新しい“夏ソング”はどうして爽やかなスピード感に溢れているのか?

東京と大阪での自主企画イベントが両会場ともソールドアウトとなるなど、好調が続くサイダーガール。今年2枚目のシングルは、バンドの一体感で夏を駆け抜けていくような表題曲「約束」に、カラフルなサウンド・アレンジが楽しめる「リバーシブル」とシンプルな構成のなかに彼らならではのロマンチシズムを凝縮した「カメレオン」という3曲。いつもながら、楽曲それぞれの個性を感じさせながら、そのなかで彼らはいつも自分たちなりの試行錯誤を重ねている。その工夫と挑戦の制作を振り返ってもらうと同時に、いま感じている手応えについて語ってもらった。

取材・文 / 兼田達矢 撮影 / 鈴木圭

「約束」は4人編成のバンドで全部演奏できてしまうアレンジということにこだわりました。

今回の制作はどういうふうに始まったんですか。

Yurin 最初の打ち合わせで、6月は夏のシングルにしようという話になって、それで夏をイメージして、という始まり方だったと思います。

それで、夏のイメージの曲を3人が持ち寄ったんですか。

 今回は、二人が僕に任せてくれるということだったので、僕としてはこれまでのサイダーガールの音楽を踏襲しつつも新しいことができないかなと思って、それでけっこう思考錯誤した作品ですね。

今回は知さんにリード曲を任せようというのは、どういう気持ちだったんですか。

Yurin 最初の打ち合わせのときから夏の曲は知くんに書いてもらおうと思ってましたから。

フジムラ 元々のサイダーガール感というのは知くんの曲から始まったところがあると思ったし、夏と言えばサイダーガールというお客さんの印象もあると思ったんで、となると今回は知くんがやるべきなんじゃないかなと思いました。

知(Gt.)

二人の期待を一身に担う形になったわけですね。

 (笑)、でもそのプレッシャーは大きくて…。二人とも作る曲はどんどん良くなってるなということを実感してたし、バンドとしての曲のクオリティもどんどん上がっていってると思っていたので、いままで通りのものを出して認めてもらえるかどうかちょっと心配だったんです。ただ、いままでのものが自分はすごく好きだから、そういう感じも出したいという思いも自分のなかにはあったので、制作を進めていく上で、けっこう悩むことも多かったですね。

最初に言われた「新しいこと」というのは、どういうものを、どんなバランスで折り込んでいこうと考えたんですか。

 僕としては、4人編成のバンドで全部演奏できてしまうアレンジということにこだわって、その意識が例えばAメロにはすごく生きてるなとは思ってるんです。ハモりもこれまではYurinくんが全部歌ってたのを僕が歌ったり、♪ウォーウォーウォ♪のコーラスもフジムラやドラムのサポートの人が歌ったりして、ライブの再現度ということをすごく意識してやりました。

いちばん最初に知さんが持ってきたデモを聴いたときの、Yurinさんとフジムラさんの印象は?

Yurin 最初から、出来上がってみなさんに聴いてもらっているものとほとんど変わらない感じでしたよ。僕の最初の印象としては、バンド感や夏っぽさをうまくサウンドで出してるなと思ったんです。だから、“これはアレンジャーさんやプロデューサーに入ってもらわなくても自分たちで完結できるな”と思ったし、実際に自分たちが最初に感じた衝動をブラッシュアップしていく形で仕上げた感じですね。

フジムラ 最初に聴いたときに、ギターでリズムを作って進んでいく感じがすごく面白いなと思ったし、その感じは同じギターロックでもこれまでのサイダーガールにはなかったなと思いました。で、どストレートな曲だから、どういうベースを弾いたらいいんだろう?と考えたときに、あまり難しいことはせずに、真っ直ぐ突き抜けていくようなベースがいちばん合うんじゃないかなあ、と。ただ、それだけでもつまらないというか、これまでとは違う自分を出したいなとも思ったので、1カ所だけ2番のところでアルペジオを弾いてるんですよね。そういうふうに、自分にとって新しいこともちゃんと折り込めた曲だと思っています。

歌ってギターも弾いてというのが楽しいと感じてもらえてるとしたら、じつに狙い通り、うまくいってるなと思います。

フジムラさんが言われたように、ギターのリフが楽曲の推進力を担っている作りの曲というのは確かにこれまでなかったですよね。

 “ギターのリフからじゃないと作りたくないな”くらいの気持ちだったんで、まさにあのギターリフからこの曲は生まれたと言っていいと思います。

そのこととも関係があるんじゃないかなと思うんですが、楽曲の構成もAB形式と言えるようなシンプルな形ですが、それは意図したことですか。それとも、結果こうなったという感じですか。

 どちらかと言えば、「結果こうなった」という感じですけど、構成に関しては自分が気持ちいいと感じたら、変に難しいことをしないでそのまま行きたいと思っているので、最初に思い描いていたスケッチ通りにどんどん進めていきました。

さきほどフジムラさんが「どストレートな曲」と言われましたが、曲がまとっているスピード感まで含め、そういう印象になっているのもそのシンプルな構成に負うところが大きいんじゃないですか。

 ストレートな曲だと思ってもらえたら、それはすごくうれしくて、それにストレートの魅力と言えばもうスピード感を上げることしかないと思うので、その意味でもいかに削ぎ落としていけるかということにはこだわっていたし、その上でどんな新しいことを盛り込めるかということを考えていました。

Yurin(Vo:Gt.)

いま言われた「どんな新しいことを盛り込めるか」ということの中心にあったのは冒頭に言われた4人編成のバンド感をこれまで以上に押し出すということだと思いますが、そのことと曲のスピード感を落とさないということの両立のための工夫としてはどういうことを意識していたんですか。

Yurin 僕の担当で言えば、いままではギターをただジャカジャカ弾きながら歌うというまとまった感覚だったんですけど、この曲は演奏と歌が分かれているというか、歌メロの裏にギターを弾くところがあったり、サビ前にブリッジみたいな感じで演奏だけになるところがあったりして、それが楽しいと言うか…。そういう言い方がいいかどうかわからないですけど、ギターとボーカルの両方をやってるという感覚がこれまで以上にあるので、そのおかげで曲全体の印象としてもよりバンド感が出てることになったのかなという気はしますね。

 僕はいつもリードギターを弾きながらハーモニーもやってるんですけど、それがけっこう楽しくて、ライブのなかでもそれがリードギターである意味につながってるような気がしてて。だから、自分のなかではそのことにすごくやり甲斐を感じてるんですね。そういうふうに、歌って、ギターも弾いてというのが楽しいと感じてもらえてるとしたら、じつに狙い通りというか、うまくいってるなと、いま聞いててすごく思いました。

今回はわりと曲に寄せて歌った感じが強いかもしれないと思います。

今回のレコーディングの現場の進め方やみなさんの取り組み方には、これまでと何か違いはありましたか。

 これまでよりもテイク選びを自分たちでジャッジしないといけない部分が増えて、これまでだったらリズム隊が録ってるのをお菓子食べながら聴いてたりしたんですけど(笑)、今回はずっとしっかり聴いてて、例えばドラムとベースの絡み方がうまくいってないと思ったら言ったり、ボーカルに関しても歌詞の内容に沿った歌い方のニュアンスを以前よりもちゃんと伝えられるようになってきたかなという気はしています。

Yurinさん自身は、ボーカル録音に関して、以前と比べて何か変化は感じていますか。

Yurin 他人が書いた曲を歌う場合に、その作った人の意図をいかに汲むかということは毎回意識しているんですけど、今回はストレートな曲だし、バンド感を大切にしたいということだったので、僕の変なクセやニュアンスが出たりしないようにして、それよりも青臭い感じが出るように意識してるところはありました。親しい人間からは「歌い方がちょっと変わったね」と言われたんですけど、意識したことによって狙った感じになってたらいいなとは思ってるんですよね。

Yurinさんの歌い方というか、「何も意識しないで歌ったらこうなります」という歌い方ではなくて、「約束」という曲がいちばんいい感じに聞こえる歌い方という方向に傾きの強い歌い方になっているということでしょうか。

Yurin そうですね。今回はわりと曲に寄せて歌った感じが強いかもしれないと思います。僕はちょっと気だるげに歌うのがクセというか、そういう感じになることが多いんですけど、この曲は気だる過ぎたら良くないなとは思ったんです。「約束」の主人公というのはちゃんと芯を持ってる人のように感じたので、だからいつもの感じとはちょっと違う感じにはなってると思いますね。

フジムラ 最近は、レコーディングではギターのパートは全部、知くんが弾くようになって、だからYurinくんはレコーディングで歌に集中できる時間がより増えたんじゃないかなと思うんですよね。

カップリングの話も聞かせてください。「リバーシブル」は、どういう時期にどんなふうに作った曲ですか。

 これは「パレット」という前回のシングルと同じ時期に作った曲で、プロデューサーも「パレット」と同じ方で、「いろんな音を入れてみようよ」というタイプだったので、「約束」とは対照的にいろんな音を入れるという方向に特化した曲だなと思って仕上げました。そういう方向だったからこそ3代目サイダーガールの声が入ってたり、いろんなことを試して遊べた曲かなと思います。

「カメレオン」はどういうふうに生まれた曲ですか。

フジムラ これも「パレット」と同じ時期というか、そのカップリングの「ハロー・ミュージック」と同じ頃に作ったんですけど、この曲を作ったきっかけは「君の名は」という映画をお正月にテレビでやってたのを見て、すごい感動しちゃったんです。それで、夏をテーマにしたシングルだし、映画の影響もあって、最初は花火や夏祭りをテーマに作ろうとしてたんですけど、途中で自分が何を伝えたいのかわからなくなってきちゃったんです。それで方向転換して、その時点で自分がいちばん言いたいことを曲にしようと思って。それで、その頃いちばん悩んでいたのがすぐ人の意見に流されてしまう自分の弱さということで、その嫌いな自分を歌った曲ですね。曲自体も、自分一人でちょっと悩みに入ってたんで知くんに聴かせたら、「オレがアレンジしていい?」と言ってくれて、知くんが手を加えたものからいろいろ削いでいって、アレンジ的にも音数的にもすごくシンプルな曲になりました。そういうシンプルな作りでどれだけ聴かせられるかというところに挑戦した曲になったと思います。

知さんが最初のデモを聴いて、アレンジしてみようかなと思ったのはどういう気持ちだったんですか。

 “このままじゃもったいないな”みたいな感じはあって、それはいままでのフジムラが作った曲とあまり変わっていないんじゃないかと思ったからなんですよ。でも、僕のエッセンスを足すことでフジムラがやりたいこれまでとは違う世界ができるんじゃないかなと思ったんで。

でも、出来上がりは「約束」以上にシンプルな成り立ちの曲ですよね。だから、出来上がりはシンプルだけど、そこに至るまでにすごくいろんなものを削いでいった、そういう意味で贅沢なプロセスを経た曲なんじゃないですか。

 構成についてはスタジオでホワイトボードに書いて、みんなで議論してるなかで「長いね」という話になって、それでまたフジムラが泣きそうになるという場面もあったんですけど…(笑)。

フジムラ(Ba.)

“せっかくのいいメロディなのに”みたいな?

フジムラ (笑)、でも聴いてて飽きられる前に終わりたいという気持ちはすごくあって、みんなに聴かせると「長すぎる」という反応だったで、それで削っていく方向で考えていったんです。まあ、それもカメレオンと言えばカメレオンなんですけど…(笑)。でも、そういうやりとりがあったおかげで、こういう歌詞が書けたんだろうなという気がしています。

“CIDER LABO”は、「自分たちはもっと上にいけるんだぞ」というものを観せられるようなライブにしたいなと思っています。

そのカメレオン的な特質というのは、フジムラさん個人の悩みというだけでなく、それぞれにカラーを持った3人のソングライターがいるサイダーガールというバンドの個性としても言えることなのかなと思うんです。それは決してネガティブな個性ではないと思うんですが、ただその一方でサイダーガール感という言葉で説明される、ひとつ筋の通った個性というものもつねに意識されていますよね。今回のような3曲を仕上げたいま時点でのサイダーガール感ということについてはどんなふうに感じていますか。

 この3人がいいと思ったものがサイダーガールなのかなという気がしてて、いろんなタイプの曲を作っても、それでも3人それぞれに“これだけはやりたくない”ということがあると思うんです。僕自身はそういうポイントがあるからこそ自分が目指しているところになんとかして着地させようとしてるし、それは2人も同じだと思うので、そういうふうに考えていくと3人がいいと思ったものがサイダーガール、ということになるんじゃないかなと思いますね。

フジムラ 「メランコリー」という曲の話ですけど、ああいうふうにシンセがガンガン鳴ってて4つ打ちの曲を僕らはそれまでやったことがなかったから、最初にオケが出来上がったときにちょっと心配になった場面もあったんです。でも、その曲をリード曲として出したときに、リスナーのなかにも「サイダーガールっぽくない」という反応はほとんどなくて、僕らとしてはびっくりしたと同時に、“これはサイダーガールっぽくないな”というものはほとんどないなというふうにも思いましたね。

なるほど。最後に、東京と大阪で間もなく開催されるサイダーガールの自主企画イベント“CIDER LABO”に向けての意気込みを聞かせてください。

 メジャー・デビューしてほぼ1年になるんですけど、その1年の間に経験できた新しいこととその前にインディーズでやってきたことを凝縮して、いまのサイダーガールを見せたいと思っています。僕たちしかできないということもどんどん出てきていると思うので、そういうものをブラッシュアップして届けられるライブにしたいですね。

フジムラ 会場に来てくれたお客さんを満足させるのはもちろん当たり前なんですけど、それに加えて“自分たちはもっと上にいけるんだぞ”というものを観せられるようなライブにしたいなと思っています。

Yurin 結成して4年目ですけど、この1年の間にも新しいことにいろいろ挑戦したし、ここまでのサイダーガールの総集編だと思っているので、「やれることがこれだけ広がったんだよ」ということ、それに「こういうライブができるようになったんだよ」ということをステージからしっかり伝えられたらいいなと思っています。

期待しています。ありがとうございました。

その他のサイダーガールの作品はこちらへ

ライブ情報

“CIDER LABO Vol.5-赤坂ノ陣-”
6月23日(土)東京・マイナビBLITZ赤坂

“CIDER LABO Vol.6-大阪ノ陣-”
7月1日(日)大阪・梅田バナナホール

*両日ともソールドアウト

サイダーガール

知(Gt.)、Yurin(Vo/Gt.)、フジムラ(Ba.)。
シュワシュワとはじける炭酸の泡は爽快感、その泡はあっという間に消えてなくなってしまう儚さ。そしてどんな色にも自在に変化していく。そんな“炭酸系サウンド”を目指し、2014年5月、動画サイトを中心に活動していたYurin(Vo&Gt)、VOCALOIDを使用して音楽活動していた知(Gt)、フジムラ(B)で結成。2014年7月26日、下北沢CLUB251にて初ライブを敢行。チケットは即日完売した。2015年6月、1st ミニアルバム『サイダーのしくみ』をライブ会場限定でリリース。インターネットを含むメディアでは一切顔を出さず、ライブ会場でのみ本人たちの姿を目撃できるということと、“炭酸系”サウンドが相まって話題となり2016年2月、タワーレコード限定発売の2nd Mini Album『サイダーの街まで』がスマッシュヒット。初の全国ツアー”サイダーガール TOUR 2016 サイダーのゆくえ-君の街まで-“を成功させた。夏には、続々と大型フェス、イベントへの出演、10月11月には2ヵ月連続ミニアルバムをリリース、初のワンマン・ライブ@代官山UNITを含む東名阪ツアーは全公演ソールドアウトとなった。そして初ライブからちょうど3年後の2017年7月26日にユニバーサルJよりメジャー・デビュー。秋には初のフルアルバムとなる『SODA POP FANCLUB 1』をリリース。全国ツアー“サイダーガールTOUR 2017-2018 サイダーのゆくえ-JUMP ON THE BAND WAGON-”は全国各地でSOLD OUTを記録。2018年3月には2ndシングル「パレット」を発売するなど、ますます勢いがとまらない。

オフィシャルサイトhttp://cidergirl.jp

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