Interview

“あしたのジョー・力石編”構想から、まさかの近未来SF設定に…!『メガロボクス』プロデューサーが明かす“今もっともカッコいい”アニメ誕生の裏側

“あしたのジョー・力石編”構想から、まさかの近未来SF設定に…!『メガロボクス』プロデューサーが明かす“今もっともカッコいい”アニメ誕生の裏側

伝説のボクシング漫画『あしたのジョー』連載開始50周年の節目に、完全新作アニメとしてスタートし話題となっている『メガロボクス』。近未来を舞台とした、全く新しい「ジョー」がどのようにして産まれたのか、その誕生の物語を本作プロデューサーが熱く語ってくれた。

取材・文 / 山下達也(ジアスワークス)


2018年春クールにひしめくTVアニメの中で、海外も含む目の肥えたアニメファンから熱烈に支持されている作品がある。それが、近未来を舞台にした『メガロボクス』という作品だ。

実はこの作品、タイトルからは分からないが、『あしたのジョー』の連載開始50周年企画としての顔を持っている。発表当初こそ「未来が舞台なんてジョーじゃねぇよ!」なんて声も聞こえてきたが、放送が始まってみると、第1話で多くの視聴者がノックアウト。「ジョー」を感じさせる無頼の青年が、隻眼のトレーナー「おっさん」と“あしたのために”もがき、抗う姿にあっと言う間に魅了されてしまった。昭和40~50年代のアニメを思わせる、荒っぽい、ゴツゴツとした映像の雰囲気もむしろ新しさを感じさせる。

その最終回を目前に、どのようにしてこの作品が生まれたのか、なぜ本作が多くのファンに受け入れられたのかを仕掛け人に聞いてみた。答えてくれたのは、本作品を制作したトムス・エンタテインメント(アニメ史に残る大傑作『あしたのジョー2』を制作した東京ムービー新社の現在の社名)の藤吉美那子プロデューサー。彼女にとって、本作はプロデューサーとしての初リングだとのことだ。

“『あしたのジョー』力石編”構想が『メガロボクス』に至るまで

まずは『メガロボクス』という作品の成り立ちについて教えてください。

『メガロボクス』の企画が立ち上がったのは今から4年以上前のことです。2018年に漫画『あしたのジョー』が連載開始50周年を迎えるので、そこに向けて、講談社とトムス・エンタテインメントで何かをやろうということになりました。

その時点でもう、近未来を舞台にしたSF作品となることは決まっていたんですか?

いいえ。そのときは、2002年に弊社で制作し、WOWOWで放送した『巨人の星』のスピンオフ作品(『巨人の星【特別篇】 猛虎 花形満』)のような、ライバルにスポットライトを当てた別視点の物語を考えていました。具体的には、(『あしたのジョー』矢吹丈のライバルである)力石徹を主人公にした物語を新たに作ることができないか、と。

力石が主人公というのは面白そうですね!

それで、過去に携わった『LUPIN the Third -峰不二子という女-』(2012年)という作品でプロップデザインを担当していただいた森山洋さん(『メガロボクス』で監督デビュー)、脚本家の真辺克彦さんにお声がけして、お知恵を拝借することにしました。皆が『あしたのジョー』の大ファンでしたから、原作にないスピンオフ作品を作ることが「蛇足」ではないのかというところから徹底的に議論をし、どうすれば50周年記念作品にふさわしいものとなるかを模索し続けました。

でも、結論から言うと「力石編」にはなりませんでしたよね。それはなぜですか?

ああでもない、こうでもないと2年くらい話し合い続けたのですが、どうしても「これだ!」というところにたどり着けなかったんです。そして、これはもうダメだろうという結論が出たところで、正直、疲れ果ててしまって……(苦笑)。それでも諦めるわけにはいかず、半年ほど新たな切り口案を模索していた中、ある日、森山さんから新しいアイデアが提案されました。

それが『メガロボクス』につながっていくきっかけになったんですね。

それまで我々が「力石編」として出し合ってきたアイデアや、その中で描きたいこと、『あしたのジョー』が持っている“芯”の部分は、時代を問わずに語れる普遍的なものだと思うので、たとえ時代や舞台設定が変わったとしても表現できるのではないか、例えば「近未来編」というのはどうだろう? という提案でした。

作品名に“あしたのジョー”が付かなかった理由

『あしたのジョー』が持っている“芯”の部分とはどういうものでしょうか。

森山さんがよく言っていたのが、「自分は“憧れられる主人公”が好きだ。この物語の主人公も“共感”ではなく、“憧れられる主人公”として描きたい」ということでした。最近のアニメ作品には、物語が始まる時点で既に「特別なもの」を持っている主人公が多いのですが、この作品は、『あしたのジョー』のように、ゼロから成り上がっていく“個”の物語にしたいのだと。

なるほど。ただ、芯の部分はともかく、舞台を近未来にすることで『あしたのジョー』とは表面上、全く別の作品になってしまいますよね。そこに対して抵抗はなかったんですか?

確かに、今にして思うとぶっ飛んだ提案だったのですが(笑)。当時は考えが行き詰まっていたこともありますし、それまでの経緯からスタッフ間に確実な信頼関係が築かれていましたので、「いけるんじゃないか」って特に抵抗なく思ってしまたんですよね。

また、そのタイミングで森山さんが描いてくださった絵(下図参照)にものすごい説得力があって……。現在の『メガロボクス』とは少し異なるものなんですが、傷だらけのサイボーグの腕だけが描かれているというもので、すごくかっこよかったんです。そして、そこからは極めてスムーズに話が進んでいきました。

作品初期のイメージボード。

ちなみに、この方向転換に対する周囲の反応はいかがでしたか……?

上司はもちろん、原案作品サイドの皆さんも、これまでの話し合いの経緯はご存じでしたので、うさんくさい連中が、原案作品を軽視して近未来編をやりたいと言い出したわけではない……とは理解してくださっていました。なにより、森山さんの絵の存在が大きかったですね。我々のやりたいことをしっかり伝える助けになってくれました。

『メガロボクス』というタイトルにはどういった想いが込められているのですか?

『メガロボクス』というタイトルは監督の発案です。まだ企画が固まる前から、ぼやっとですが、「○○○ボクス」というタイトルにしたいということをおっしゃっていました。その後、コンセプトアートの段階で自ら仮のロゴを起こしてイメージを膨らませるということをやっていく中で、いつの間にか『メガロボクス』というタイトルが共通言語として、皆の中に刻み込まれていったという流れですね。

プロデューサーという立場から“あしたのジョー”というビッグネームを作品名に組み込みたいという気持ちはなかったんですか?

もちろん、そういうスケベ心がなかったわけではありません(笑)。タイトルロゴの上には「『あしたのジョー』連載開始50周年企画」と入れさせてもらっていますし。ただ、作品として『あしたのジョー』をそのままなぞるようなものにはなっていませんし、ゆくゆくは独立した作品としても認知されてほしいという気持ちもありましたから、タイトルを『メガロボクス』とすることには異論はありませんでした。

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