Interview

藤田恵名「言えないことは歌の中」から、むきだしになる“歌”。「全裸も表現のひとつ」と胸を張る彼女の葛藤、覚悟、すべてをさらけ出すインタビュー

藤田恵名「言えないことは歌の中」から、むきだしになる“歌”。「全裸も表現のひとつ」と胸を張る彼女の葛藤、覚悟、すべてをさらけ出すインタビュー

「今一番“脱げる”シンガーソングライター」というキャッチフレーズで世間を賑わせている藤田恵名が、ニューシングル「言えないことは歌の中」をリリースした。 2016年8月発表のミニアルバム『EVIL IDOL SONG』、昨年8月にリリースしたメジャー1stアルバム『強めの心臓』に続き、本作のジャケットでもヌードを披露。ビキニ姿でギターを弾くライヴパフォーマンスも含め、過激なビジュアルにばかり目がいきがちだが、それらはあくまでも表現の手段であって、目的ではない。グラビア、女優、バラエティと多方面で活躍する彼女の本質にあるのは、間違いなく“歌”である。「言えないことは歌の中」に隠した彼女の、歌に対する想いを聞いた。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 関信行

自分にとって居心地のいい場所って、もしかしたら一瞬

前作『強めの心臓』はかなり話題になりましたね。その後、何か変化はありました?

『強めの心臓』のジャケットがいろんな方の目に留まったことがきっかけで、仕事の幅も増えましたし、スケジュール帳が仕事でいっぱいになるようになりました(笑)。それまでは仕事がない時期とか、スケジュール帳に近所のファミリーマートがオープンすることとかを書いていたりしてたんですよ(笑)。そういう時期もあったので、今、仕事でスケジュール帳が埋まるってありがたいなと思ってます。

充実した日々を送ってるんですね。

おかげさまで。嬉しいです。ライヴの集客も以前よりも増えたんですけど、あまりうぬぼれたくないので、いつこれがなくなるかわからないっていう危機感も増えました。

上り調子なのに不安も増しているのはどうしてでしょう。

そもそもあまり物事に期待していないからだと思う(笑)。誰かがやってくれるとか、人に頼りきっての活動ではなかったし、いつプツッと切れるかわからない状態だったので、いつも最悪を想定しているんです。もしそうなったらそうなったで仕方がないっていう感覚と隣り合わせですね、いつも。

前作のインタビューでは第4形態に入ったとおっしゃっていました。「ガールズバンドでドラムを叩いていた1期、親が死んでバラードを歌いたかった2期、ひとり遊園地シンガーソングライターの3期を経て、ギターが弾けるようになった第4期だ」って。

人前で歌うことは10歳くらいから始めたので、もう17年くらいになっちゃうんですけど(笑)、自分でも面白いなって思いますね。今は第5期かな……?(笑)今回のミュージックビデオでは血をいっぱい出すんです。その前も青い血を出したり、さらにその前は粘土になったりしていて。私、爽やかポップスを聴いて育ってきたんですけど(笑)、キングレコードさんのおかげで、苦手だったことややったことのないことをどんどん克服できるような環境に置いていただいているので、どうなるかわからないのが面白いなって思ってます。

予測不能な活動を楽しめてます?

そうですね。次は私、どうなるんだろうっていう気持ちはありますね。もともとは、ホラーとかスプラッターとか大嫌いなのに(笑)、今はアウトプットする側にいるっていう。ファンの人に、私、ホラー女優って言われているらしいんですよ(笑)。まあ、それはそれでいいことなのかなって。好きなことだけできたらつまらないだろうし、知らない世界を知れているので、爽やかポップスから逆に飛び越えられて良かったなって、今となっては思いますね。

藤田さんはなんでもできるからいろいろやらせたくなるんじゃないですかね。歌、ダンス、ドラム、ギター、ラップ、女優、グラビア、バラエティと……。

いや、本当に器用貧乏なだけだと自分では思っていて。何かを極められたことがひとつもないっていううしろめたさもすごくあるんですよ。でも、歌だけはずっと歌っている。そのほかは、できるっていうか、たまたまやれただけ、みたいな感覚なので。

音楽面では、アルバム以降、次はどんなものを出したいって思ってました?

まず前回、メジャーでアルバムを出せて、もうメジャーから出すことはないだろうなって思ってたんですね(笑)。だから、今回のリリースが決まって、まだメジャーというくくりの中で自分は戦えるんだって思って嬉しかったです。そのうえで、シングルって表題曲とされるものが勝負で、アルバムとは違って何曲も聴いて評価してもらえるものではないから。そういう意味ではプレッシャーはすごくありましたけど、曲が出来上がってみて、この曲なら大丈夫って思えたので。今の自分の感性みたいなものをギュッと凝縮して一番美味しい部分を持ってこれたと思うので、自信作にはなったかなと思います。

表題曲「言えないことは歌の中」はアップテンポのロックチューンになっていますが、この曲で藤田さんが訴えかけたかったことってなんでしょう。

「言えないことは歌の中」って言ってるけど、かと言って、言えないことを書いてるわけでもなく。というか、もっと突っ込んだことを本当は書いていたんですよ。「ああ、あの子早く老けないかな」とか(笑)。でも、この前のアルバムで結構突っ込んだことを書いていたら、キングさんが倫理委員会みたいなところと戦ってくれた話とかを聞いて(笑)、メジャーで出すことを改めて意識して。だから、最初は思ってることをワーッてしたためて、そのあとで「これちょっと言いすぎだよね」っていうところを削って、自分の中で腑に落ちるところを探す作業をしました。サビで「運命には動じない」って言ってるんですけど、何が起ころうとも、それが君の人生だって思うっていうか。すごい落ち込むこととか、なんでダメなんだろうとか思ったとて、それは私がしてきたおこないだから何が降りかかろうとて、そういうもんだと思うしかないっていうこと。あと、人といても、人じゃなくて物とか住んでる場所とかも、居心地の良さって一瞬だよなって(笑)。

「ちょうどいいなんて一瞬だ」って歌ってますね。

聴いた人の捉え方で全然いいと思うんですけど、自分にとって居心地のいい場所とか環境って、もしかしたら一瞬だよなっていう。だから、そこにとどまったりすることは意味がないんじゃないかって。

第5形態に入るくらい変化してきた藤田さんが言うと説得力がありますね。その中でも、ずっと変わらずにあった“歌”とはご自身にとってどんなものですか?

歌うこと……難しいのに楽しいですね。それこそ、私は最初、MISIAさんや絢香さんのような歌い上げる系の歌手になりたかったんですけど、この曲を歌い上げろって言われたら全然違う気がしていて。雑に歌う難しさっていうか、雑に歌うからこそ心の叫びとか葛藤が見えるんじゃないかなとも思っていて。でも、雑に歌いながらも、感情が見えながらも、技術的には音程はなるべくはずさない。歌はもう本当に果てしないですね。いつも難しいな楽しいなと思っているんで。

この曲のレコーディングはどうでしたか。聴き手としては、雑というよりは(笑)、ヒリヒリした痛みのようなものを受け取ってますが。

ライヴを想定して歌いました。でも、ライヴみたいにかき鳴らして動いて歌えるわけじゃないから、レコーディング自体がすごく苦手なんですよ。直立不動で歌わなきゃいけないっていう。ただ、雑というか、ライヴで歌ってる自分を想像しながら、粗削りというか、きちんとしようっていうよりは、どうこの歌詞を訴えかければいいんだろうかって思いながら歌いましたね。

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