Interview

中川晃教&入野自由らが銀河鉄道“999号”で観客を未来の旅に連れていく──舞台『銀河鉄道999』~GALAXY OPERA~

中川晃教&入野自由らが銀河鉄道“999号”で観客を未来の旅に連れていく──舞台『銀河鉄道999』~GALAXY OPERA~

松本零士によって描かれた原作漫画『銀河鉄道999』は、1977年から連載が開始されて以来、現在でも老若男女問わず多くの人に愛されている。そんな原作をもとにした、新作ミュージカル『銀河鉄道999』~GALAXY OPERA~が、6月23日から明治座で上演される。今回は、主人公・星野鉄郎 役の中川晃教と大山トチロー 役の入野自由にインタビュー。彼らが紡ぐ言葉に、後世に語り継がれる舞台を作ろうとする熱意を感じて欲しい。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 岩田えり


『銀河鉄道999』の旅はまだ続いている

原作の『銀河鉄道999』は、連載が始まって以来、40年近く経ちますが、世代を問わず数多くのファンがいます。どうしてここまで多くのファンを魅了し続けていると思いますか。

中川晃教 僕は35歳なので、アニメはリアルタイムで観られず、子供時代に育った宮城県では再放送もたまたまなかったんですね。それでも、舞台の出演のオファーをいただいて、実際に映画を観たり、資料を読むと、テーマは哲学的で深いなと今でも感動できるんです。松本零士先生は、先生が生きてきた時間と共に、今も鉄郎たち『銀河鉄道999』(以下「999」)のお話を描き続けていらっしゃるそうです。現在でも物語が続いているから、どんな人でも自分の人生と重ね合わせられるのが魅力ですね。思わず物語に引き込まれて、深く考えさせられる内容だからだと思います。

中川晃教

入野自由 アッキー(中川晃教の愛称)さんがおっしゃっていたように、哲学的なテーマを題材にして、「人生とは、命とは、永遠とは」という答えを、松本先生自身もキャラクターと一緒に探していく。そして、製作発表会のときに「まだ旅は続いている」とおっしゃったことに集約されていると思います。終わりのない旅を続けながら、どの方もワクワクして答えを探し続けられる、そんな作品だからこそ、愛されるんだと思います。

入野自由

原作・総監修の松本零士さんからどのようなお声がけがありましたか。

入野 先生は「オリジナルだと思って“自由”に演じてください」とおっしゃいましたね。

中川 みゆ(入野自由の名前)そのものでいいって聞こえる(笑)。松本先生とはラジオの番組や、チラシのビジュアル撮影で数回会っているのですが、ひとたび話し始めると止まらない。80歳になられて冷静な方かと思いきや、会えば会うたびに熱い人だと感じます。おそらく、北九州の久留米市で育ったのが大きい要因だと思います。先日も、「999」の宣伝で北九州を訪れたのですが、九州の方はみなさん熱くて、それが松本先生の心に宿る熱さだと感じました。人としても素敵です。

中川さんの演じる星野鉄郎と入野さんが演じる大山トチローの役どころを教えてください。

中川 鉄郎はスラムで育っています。そして、つねに目に見えないものと戦わされている。しかし、朝がきて太陽が昇るように、過酷な現実の世界で、憧れの象徴であるキャプテン・ハーロックになりたいという願いや、永遠の命を与えてくれる星へ行きたいという強い願望が芽生えてくる。その願望と、大好きな母親を機械伯爵に殺され、仇を取りたい、2つの思いを胸に「銀河鉄道999号」という列車に乗り込む。そして、ミステリアスな謎の美女メーテルと宇宙を旅して行く途中で、鉄郎の心が徐々に変化していく。永遠の体、つまり機械の体なのですが、それはいったい何だろう? 永遠とはどういったものなのか? 人を思いやることや限りある命とは? と、鉄郎の中にアイデンティティが芽生えながら、しかも旅を通して出会ってきた人たちを魅了するという役どころです。

入野 松本先生は、「トチローは自分自身である」とおっしゃっていますので、今作でも、先生自身が投影されているキャラクターです。例えば、先生も鉄郎を描きながら迷うこともあると思います。その先生の迷いを、鉄郎の迷いを、トチローが導く役割を果たしています。

お客様の心に焼きつく場所まで稽古をしたい

ここまでの稽古はいかがですか。

入野 原作はありますが、あくまでオリジナルの作品ですから、最初はイメージを役者同士で共有するのがとても難しかったです。つまり、“宇宙”や“銀河”といった世界は壮大すぎて、どこを切り取ってイメージすればいいのかわからないんです。なので、手探りをしながら、本当に新しいものを作ろうと時間と手間をかけながらもがいています。ただ、そこから逃げないで、ラクな方向にいかないように負荷をかけて、面白いものにしたいと心がけて稽古をしています。

中川 とても楽しいですよ(笑)。演出の児玉(明子)さんと、映像演出のムーチョ村松さんの2人がどうやって「999」の世界を作っていこうとしているのか、稽古をしていけばいくほどわかっていきます。銀河の世界が舞台上にどういうふうに生まれていくのか、役者として鉄郎として、どうやってこの物語をお客様にお届けできるのか考えながら稽古をしていますね。『銀河鉄道999』は、鉄郎と出会った人たちも旅を始めていく物語でもあります。メーテル役で「ハルカトミユキ」のボーカルのハルカさん、機械伯爵の染谷俊之さん、トチローと謎の男の2役を演じる入野自由くん、エメラルダス役の凰稀かなめさん、ハーロック役の平方元基さんたち、たくさんのキャストが、鉄郎から何を感じとって舞台で表現してくれるのか楽しみです。僕もこんなに素晴らしい舞台は、そうそう経験したことがないので、鉄郎の役をいただいたときに“運命”を感じました。スタッフ・キャスト、すべての人たちが、この作品に関わって良かったと思えるよう努力している熱い稽古場を全力で生きたいし、それが本番で花開いた瞬間に、お客様の心に僕たちのメッセージが焼きつく、そんな場所というか領域に行くまで稽古をしたいですね。

稽古中のエピソードはありますか。

入野 アッキーさんと同じ格好をするんです。昨日、初めて同じマントを着て、帽子を被りました。僕とアッキーさんも、鉄郎とトチローも、背丈はそれほど変わらないですし、体型が似ているので面白かったですね。

中川 2人の役どころがリンクするのが“ミソ”なので、ビジュアルもそっくりですから、お客さまは楽しみにしていてください。車掌役のお宮の松さんは、出てくるだけで笑いが起きるし、アンタレス役で劇団「ゴツプロ!」主宰の塚原大助さんはギャップが面白いです。とても強い役なのに、稽古場では、結婚についてや面白話をして場を和ませてくれています。

もうカンパニーは出来上がっていますね。今作は、キャストだけではなく、スタッフも話題になっています。まず、脚本の坪田 文さんの印象はいかがですか。

中川 坪田さんとは付き合いが長くて。彼女が主宰する劇団「空間ゼリー」の作品を観て以来ですね。僕も出演したラジオドラマで、南沢奈央さん主演の『想い彩り』(2012年)では、お客さんを招いて生放送という実験的な舞台をやっていらして、いつもチャレンジングな現場を作っていらっしゃると思いますし、脚本家として彼女の持っている筆の力に独特なものを感じて感心しています。歳も近く、ご飯を食べに行ったり、お昼過ぎぐらいからお茶を飲んで、あれこれとお話して夜中に帰るという、僕の青春の時期とリンクする方です。「999」の稽古初日に話していたけど、「今回はすごく苦しんだ」と、作家が初日に言うのを聞いたことがある?

入野 珍しいですね。

中川 脚本を書くのにとても苦しんだと正直におっしゃってくれて、自分の命をかけて作品と向き合っていると感じられる作家ですね。

入野 『銀河鉄道999』は、現在も続く物語ですから、松本先生自身も描いている途中に新しいアイデアを思いついて、同じタイトルだけれども、設定が違ったりする。坪田さんも1冊の脚本にするために、どこを精査して、どこを切り取っていくのか、いろいろな要望がある中で、大変だったんだと思います。

作詞は、ご自身でも演出や俳優私塾をされている石丸さち子さんですね。

入野 初めてご一緒させていただくのですが、「999」は大好きだとおっしゃっていました。銀河鉄道だからこそ使える“宇宙”や“銀河”といった言葉は、日常の世界では大きくなりすぎて、イメージが湧きづらいけれど、『銀河鉄道999』の世界だからこそ紡げる楽しさがあるとおっしゃっていました。そんな言葉がふんだんに使われているので、どう自分に落とし込んで歌にするのか、それは今回のポイントだと思います。

中川 僕も石丸さんとは初めてちゃんと現場で向き合うのですが、以前、蜷川幸雄さんが演出されたガルシア・マルケス原作の『エレンディラ』(2007年)でご一緒したんです。マイケル・ナイマンが音楽を担当し、舞台に砂漠を作った大作でした。そのとき、蜷川さんの演出助手として、また俳優として出会っているんです。石丸さんが脚本や演出をされたミュージカル『Color of Life』(2016年)も観ましたが、言葉にみなぎる力があります。僕も歌を歌って歌詞に向き合っている人間ですし、作詞というジャンルで言葉と真摯に向き合っているパワーに共感します。坪田さんも含め、この大作をどうやって消化して書き始めるのか。そこに向き合うにはとてもエネルギーが必要だと感じる舞台ですから、言葉の感覚や感性を含めて、石丸さんが歌詞に関わってくれたのは大きいですね。今作は演劇史や日本のエンタメ史でも、ターニングポイントになるかもしれません。作家と作詞家と演出家と、俳優の僕たちのピースがかっちりはまって歌ったときに、奇跡の瞬間が生まれたと思いましたから。

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