Interview

神谷浩史! 小野大輔!! 山寺宏一!!! キャストも“神”なアニメ『斉木楠雄のΨ難』がついに最終回。大人アニメとしても楽しめる、その魅力を語る

神谷浩史! 小野大輔!! 山寺宏一!!! キャストも“神”なアニメ『斉木楠雄のΨ難』がついに最終回。大人アニメとしても楽しめる、その魅力を語る

自分の力がバレないように、目立つことを避けて生きる万能な超能力高校生・斉木楠雄と、超個性的な同級生たちとのドタバタ学園ギャグを描く『斉木楠雄のΨ難』(原作:麻生周一/集英社「週刊少年ジャンプ」連載)。アニメ第1期は2016年7月から12月まで放送、第2期が今年1月からスタートして6月でいよいよ最終回を迎える。豪華キャスト陣の見事な演技とスピーディーなギャグの応酬で大人気を博している本作の監督は、『劇場版アキハバラ電脳組』や『デ・ジ・キャラット』シリーズ、『魁!!クロマティ高校』『ぷちえう゛ぁ』などでも知られる桜井弘明。その桜井監督に、シリーズを振り返っての想いとアニメ『斉木楠雄のΨ難』の魅力、未視聴の方に向けたおすすめ回について語ってもらった。

取材・文 / 阿部美香 構成 / 菊地真由


監督が「麻生周一さんは天才!」と思う“キャラクター設定”が魅力

アニメ『斉木楠雄のΨ難』第2期までを振り返って、監督はこの作品の一番の魅力をどこに感じていますか?

やはりキャラクター設定の良さですよね。ひとりひとりの面白さだけでなく、キャラクター同士の関係性や役割がいい感じにプラスアルファに作用していて、「麻生周一さんは天才!」といつも思うんですよ。このシリーズはアニメの構成も変わっていて、1話4分間を5本まとめて30分番組にするという、じつに変則的なもの。わずか4分間で1話を完結させられるのは、キャラクターに相当な力がないとできないですね。

たしか第1期の第1クールが、朝『おはスタ』(テレビ東京系 月~金 あさ7時05分~)内で毎日1話ずつが流れ、1週間分5本をまとめたものを深夜アニメとして放送する、画期的な放送形態でした。

そうなんですよ。まず、小中学生への浸透率がすごくて。その上、深夜帯でも大人のアニメファンの方に観ていただける。制作は本当に大変でしたけど、素晴らしい試みでしたね。『おはスタ』は子ども向けの番組なので、多少は原作をマイルドにしたんですが、ちょっと大人っぽい表現も原作の良さなので、そこは残しつつ。いわゆる“うっふ~ん♪”なヤツは、「うちの子がアニメを楽しみにしてます!」というお父さんには、ちょっと申し訳ないと思っていましたが、微妙な空気になった場合は、家庭内でうまく話し合って解決してくださいと(笑)

原作が4コマ漫画なら想像がつきますが、ストーリーのある話を1話4分に納めるというのが、そもそも大変ですよね。

そうですね。長い話はなんとか工夫して2話、3話に分割したり。第2期だと「斉木楠雄の遭難」の回(第6χ~第7χ)は結局、週をまたいでしまいましたけど(苦笑)。そういう長めの話は、原作でもキャラクターが総出演するおいしい話なので、こっちも頑張ってしまいますよね。結果、第2期も日和らずに(笑)、同じく1話4分×5本で行くことになりました。1話4分という尺は、スピード感が勝負なので声優さんの負担も相当あるんですが、どのキャラクターも振り切った面白さがあるので、演じがいも感じていただけているんじゃないかな。

あえての当て演出も! 絶妙なテンポと間で“笑い”を表現

アニメ化に際して桜井監督が最もこだわったことはなんでしたか?

まずは原作に忠実であることですね。世界観が違って別物になってしまっては、もともとの読者が離れてしまいますから、僕が監督を引き受けたときも、原作を隅まで読み込んで、キャラクターを頭に叩き込みました。

とはいえ、アニメとしての面白さを出すために、あえて原作にない演出を入れたところもあります。例えば、第1期の照橋(心美)さんの初登場シーンは、原作にはない、照橋さんが日傘を持って振り向く演出を付けました。なぜそうしたかというと……照橋さん役の茅野愛衣さんが、日傘を差してスタジオに来たことがあったから。とてもお似合いで可愛らしかったので、反映しました(笑)

演劇やドラマで、脚本を役者に“当て書き”するというのはよく聞きますが、アニメにも“当て演出”があるんですね(笑)。そんな『斉木楠雄のΨ難』は、非常に面白いギャグアニメ。桜井監督はこれまで、たくさんのギャグやコメディアニメを手がけられていますが、喜怒哀楽の中でも“笑い”の表現が一番難しいとよく聞きます。アニメで“笑い”を表現するキモは、何だと考えますか?

それはやはり、テンポだと思いますね。テンポと間、そのタイミングが大事だなと。僕がこの業界に入ったのは1984年なんですが、当時のギャグアニメは僕からすると、けっこうダルいなぁと思うことが多かったんですね。なので、「このくらいまでなら、もっと弾けてていいんじゃないかな?」という演出をつけるようになり、90年代に入って『赤ずきんチャチャ』で、一緒に演出をやっていた大地丙太郎さんや佐藤竜雄さんたちと、「そっちがこう来るなら、こっちはもっとこうしてやろう!」と切磋琢磨することに繋がったんですよ。

『赤ずきんチャチャ』での桜井さん、大地さん、佐藤さんの演出は、「90年代以降のギャグアニメを変えた」と言われていますね。そのノウハウが『斉木楠雄のΨ難』にも存分に活かされていると思いますが、『斉木楠雄のΨ難』ではとくに、楠雄の畳みかけるツッコミが、作品のハイスピードなテンポ感を担っているように思えます。

そうそう、ツッコミの間はとても大事ですね。どのくらい空けるのか、どのくらい食い込むのかが。だって、友達同士が話をしていたら、相手が喋り終わる前から話し始めちゃうのが普通じゃないですか? でも大抵のアニメは、前の人が話し終わって、短くてもコンマ2秒くらいは次の会話と間が空いてしまう。そうなると僕なんかは、「そこ、つまめ!」と思ってしまうんです(笑)

しかも、実際のお喋りというのは、半分くらいはどうでもいいことを話してる。カッコいい台詞、いい台詞、話の要点だけが連続するわけがないんです。それをちゃんと再現することが、「日常を描く」ことになる。その意味でも『斉木楠雄のΨ難』は素晴らしい「日常」漫画だと思いますし、僕もしっかり「日常」アニメとして描きたかったですね。

今まで聞いた中で一番速い「ストロベリーバニラシェイク」

たしかに、『斉木楠雄のΨ難』は、台詞かぶりが異常に多いですね。しかもメインのキャラクターが話をしている間、その後ろで他のキャラが関係ない話をずっとしている裏芝居が、また面白くて。

そう、そもそも原作が雑談の嵐ですからね(笑)。それを1話4分に納めるには、裏でも会話を進めなくてはならないんですね。尺の都合で、どうしても会話を切り詰めなければならないときは、もう苦渋の決断です。非常に複雑な作りになっていますね、このアニメは。だから音響監督の明田川仁さんも大変ですし、編集するエンジニア、ミキサーの方々がとにかく大変なんですよ。ステレオで音声を左右に振って、ヘッドホンで聴いて「よしよし、聞き取れるぞ」と(笑)

キャストさんの苦労も偲ばれます(笑)

そう、そこはね……本当にごめんなさいと(笑)。なかでも女性キャストの皆さんの早口言葉は、本当にすごいです。照橋(心美)役の茅野愛衣さんはもちろん、梨歩田(依舞)役のM・A・Oさんなども、「よくそんな速さで言えるね」と。照橋さんの「ストロベリーバニラシェイク」は、僕が今まで聞いた中で一番速い。しかもテストから一度も噛まないんですから、すごいですよ。

男性キャスト陣も、毎回、大熱演ですし。

そうなんです。燃堂力役の小野大輔くんには、「『斉木楠雄のΨ難』をやっているせいで、他の作品でも台詞を速く読み過ぎてしまい、キャラの口パクが余って困る」と怒られました(笑)

でも、皆さん「これしかない間に、台詞を入れるんだ!」と速さに苦労しながらも、行ごとにしっかり“芝居”が入っているのがすごいんですよ。例えば、楠雄は淡々と話すけど、時々感情を出します。でも、どこでどう感情を出して欲しいか、一切こちらからは言わず、すべて神谷(浩史)くん任せなんですよ。

他のキャラも、全員が主役級の役者さんなので、演技指導もほぼしません。ただ……楠雄のお父さん、斉木國春役の岩田(光央)さんが勢いでセリフを変えてしまった時だけは、「すみません、台本通りに言ってください」ということがあるかな(笑)。そういう自由なところも、じつに國春なんですけどね(笑)。みなさんの声と芝居が、それぞれのキャラクターをさらに深めてくれていますね。

1 2 >