Interview

大原櫻子の弾ける夏。「元気ピーポー」と言う等身大の姿に新しい表情ものぞかせる遊び心も満載のアルバム『Enjoy』

大原櫻子の弾ける夏。「元気ピーポー」と言う等身大の姿に新しい表情ものぞかせる遊び心も満載のアルバム『Enjoy』

大原櫻子が前作『V(ビバ)』から2年ぶりとなる3枚目のアルバム『Enjoy』をリリースした。秦 基博が作詞・作曲した7thシングル「マイ フェイバリット ジュエル」や水野良樹(いきものがかり)作詞・作曲の8thシングル「さよなら」などの4枚のシングルを収録した本作には、いしわたり淳治(exスーパーカー)や多保孝一(ex Superfly)、高橋久美子(ex チャットモンチー)や小名川高弘(ex CHARCOAL FILTER)、Sally#Cinnamon(ex Heavenstamp)、いであやかなど、豪華アーティスト、作家陣が参加。これまで以上にバラエティに富んだ内容ながらも、タイトルどおりに“音楽を楽しむ”という姿勢そのものが軸となり、メッセージとなった、非常にトータル感のある作品となっている。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 中原幸

「もう! これだけでいい!」って(笑)

3枚目のアルバムが完成しました。

1枚目、2枚目を経て、自分の見られ方がわかったり、自分のやりたいことを経験させてもらってから出せるアルバムなので、今の私が素直に、正直にギュッと詰められた一枚になったなと思っています。

2枚目となる前作は20歳を超えて、少し大人っぽさを意識した作品になっていました。本作の制作前はどんな作品にしたいと考えていました?

夏に出すアルバムなので、ちょっと気分を変えて、久々にちょっと弾けるというか、明るい、無邪気なテイストにしたいなと思っていました。「頑張ったっていいんじゃない」(14)とか「真夏の太陽」(15)とか、CDを出し始めたときにみんなに「明るい」とか「元気」とよく言われて。それが私のイメージなんだろうと思いますし、私、根本的にそういう人なので(笑)。

明るく元気なサクちゃんという見られ方は間違ってない?

はい! 間違ってないです。基本、元気ピーポーなので(笑)。だから、逆に前作では“大人っぽさ”をイメージして作ったんですけど、久々にそういう感じも出したいなと思って。

前作『V』以降の2年間で、『わたしは真悟』、『リトル・ヴォイス』、『FUN HOME ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』と3作のミュージカルに出演しています。歌とお芝居のあるミュージカル・舞台を経験して、ソロアーティストとしての制作には何か影響がありましたか?

ありますね。今年に入って舞台が一発目のお仕事だったんですけど、『ファン・ホーム』の最中にキャストと掛け合っていた言葉が、“Enjoy”なんです。本番前に「今日も頑張りましょう。Enjoy!」って。とりあえず“芝居を楽しもう”っていうのを合言葉のように言っていたんですけど、舞台が終わってからも“Enjoy”という言葉を日常で使っていたので、もしかして、私にとって今年のテーマなのかなとか思って、アルバムのタイトルも『Enjoy』にしました。それに、歌い方も……私の場合、だいたいツアーは1日1回公演で、3日に1回とかなんですけど、舞台は毎日なので、ノドを壊さないような発声を心がけるようになって。それは、自分のライヴでも活かされていたりしますし、音楽と芝居がすごく支え合っているなっていうか、いい相乗効果があるなと感じていますね。

お芝居がきっかけで付けたタイトルだったんですね。

そうですね。『ファン・ホーム』はお芝居もそうですけど、人間的に成長できた現場だったなと思っていて。自分でも気づかない恥ずかしさを演出家さんにぶち破ってもらった感じがあったんです。すごく自由になりましたし、お芝居の中でも遊び心が大事なんだなっていうことを改めて知って。“Enjoy”というものを、そのお芝居で学びました。 “Enjoy”といっても、明るいだけじゃなく、ほっとしたり、癒されたり、いろいろな要素があるなと思っていて。だからアルバムでは、“Enjoy”をテーマに、私の多面性というか、新しい面も見せたいなと思っていました。

ここまでのお話の中で“今の私”と“新しい私”という2つのキーワードが出てきたかなと思います。まず、アルバムの中で、“今の私”を象徴する曲というと?

すごくふざけた回答になっちゃうんですけど、「いとしのギーモ」ですね(笑)。これは、私のことを歌っちゃってるので。

この「ギーモ」というのは?

……砂肝です(笑)。「憧れは自由が丘」というのは、自由が丘に砂肝だけが出てくるお店があると聞いて。で、「一回浮気してしまった」というのは、「ナンコツ」のことです(笑)。軟骨も大好きだけど、やっぱり君のことが好き、ほかはいらないんだっていう歌。くだらないことしか描いてないです(笑)。

今回、アルバム曲で作詞に参加したの、この曲だけですよね。

あはは! ホントだ(笑)。『Enjoy』というタイトルが決まって、曲順とかをいろいろ考えているときに、せっかくだったら、遊び心というか、くだらない曲も入れたいよねという感じで、ギーモが生まれました。

歌詞にある「高3の夏」の出会いっていうのは?

もともと焼き鳥が好きだったんですけど、渋谷の焼き鳥屋さん「鳥竹」に行ったときに「コリコリしてるものが好きで、軟骨が一番好き」って言ったら、「たぶん、砂肝も好きだよ」って言われて。「何それ?」って食べてみたら、「もう! これだけでいい!」ってなってしまいました(笑)。

「朝起きてすぐでも君が欲しくなる」とも歌ってますね。

はい。朝ごはんとしても日常的に食べていますね。スーパーの鳥肉コーナーの一番上の端っこに置いてあって見逃しがちなんですけど(笑)。青白っぽくて赤いのがポイント。買ってきて、半分に切ってグリルで焼いて、塩コショウで食べます。朝からひとりで、ワンパック食べちゃうんですよね〜(笑)。

(笑)22歳の女子っぽくないですね。でも、パッと聴きは砂肝とはわからないかも。

でも、サビで「SNGM」とは言っちゃってますけどね(笑)。本当は1番で終わるくらい、もっとくだらない曲にしたかったんです。でも、小名川さんに渡した私のメモが大量すぎて。小名川さんも楽しんでやってくださったので、結果とてもいいラブソングになっちゃいました。

では、“新しい私”の面を出した曲というと?

MVで踊らせてもらった「ツキアカリ」かな。もともとダンスが好きで、やっていたんですけど、踊れる楽曲は“Enjoy”という言葉にもぴったりだなと思って。今まではダンス曲に挑戦していなかったので、この曲で新しい面が見せられるんじゃないかなとも思いますね。

作詞がいであやかさん、編曲を三浦大知さんとかもやっているUTAさんが手がけた、R&B系のダンスポップになっていますね。

可愛いメロディだけど、歌詞が切なくて。でも、踊りが入ることでかっこいい見え方になる。いろんな要素が詰まっている曲だなと思いますね。いであやかさんは、ハイチオールCのCMソング「雲の向こう」がすごく好きでよく聴いていたので、ご一緒できて嬉しかったです。歌詞は、4月にリリースした「泣きたいくらい」(作詞に参加)で、恋が実りたての初々しいカップルの心情というか、一番楽しいって感じているときを歌っていて。「ツキアカリ」でも、可愛らしい女性の心を描きたいなっていうイメージがあったんですけど、前回が恋をしている曲だったので、恋愛をしている中での微妙な関係というか、もやもやする時期を歌いたいなと思って。

「泣きたいくらい」の2人のその後ってこと?

自分の中ではそうなんですけど、なんとなく繋がっていますよね。「私、今、好きなのかな?」っていう、好きだからこそ生まれる感情を軸にしたラブソング。私の周りの友達にも多いんですよ。彼氏がいる子に「最近、どうなの?」と聞くと、「普通」って返ってくる。こっちは、“普通”って聞いたら「大丈夫かな?」って心配しちゃうけど、その“普通”が幸せなんだけど、普通ではちょっとつまらなそうな感じをリアルに描いていただけたかなと思っています。

MVでは踊ってるんですよね。

サビの部分で踊るんですけど、「なんだろ、この感情」というもやもやした情熱をダンスで表現しました。踊ることが好きなので、すごく楽しかったです。歌だけじゃなくて、踊りにも感情を込めることができました。リップシンクだけじゃなく肉体で表現することで、より伝わるのかなって思いました。切なさと愛を全身で表現している感じ。パジャマで踊ったりもしているので、新しさを感じてもらえると思います。

1 2 >