SID 15th Anniversary Special マオ Self Liner Notes「歌詞を巡る旅」  vol. 2

Interview

シド 1st Album『憐哀-レンアイ-』〜いまの自分たちを象徴している漢字2文字をアルバムタイトルに〜

シド 1st Album『憐哀-レンアイ-』〜いまの自分たちを象徴している漢字2文字をアルバムタイトルに〜

特集「歌詞を巡る旅」、最初はもちろん1stアルバムの『憐哀-レンアイ-』からスタートします。1stアルバムなので、全体を通して言えることは、歌詞を書き始めたばかりのものだらけということ。まだ全然、歌詞というものを書いたことがなかったんです。シドの前にもバンドをやってたんですけど、そのバンドにいた頃は、基本的に俺は“歌うだけ”って決めてやっていたんで、歌詞はちょっと書いてたぐらいだったんです。だから、このアルバムは本当に俺が人生で書いた歌詞のなかでもまだ何曲目か、というぐらいのものばかりです。
アルバムのタイトルは、憶えやすいことと、いまの自分たちを象徴している漢字2文字ということで『憐哀-レンアイ-』。1stアルバムなので、このバンドはこういうコンセプトでやってるんだというのを伝えるために、まず花が1輪だけポンとあるというジャケットのアートワークで、“このバンドは明るくない。暗そうだぞ”っていうのを伝えて。次に、アルバムタイトルの“憐”という文字でか弱いイメージを、“哀”でせつない哀愁のイメージを表して。で、恋愛をモチーフにした歌が多いので、そこをうまくかけてこのタイトルにしました。

構成・文 / 東條祥恵 撮影 / 今元秀明

最初“哀愁歌謡”というジャンルに向かおうということでやり出した

 01. 紫陽花
(作詞・マオ / 作曲・しんぢ)

歌詞は失恋というか、複雑な恋愛模様を歌った曲。そういうものを、ここら辺から書き出したんですよね。ストレートなラブソングって、当時はほぼほぼ書いてないと思うんです。そこは、歌詞の話をメンバーとしないというところにもつながるんですが、基本的に俺は性格が照れ屋なんで。当時は特に。だから、ストレートなラブソングは恥ずかしくて書けなかった(笑)。そうしたら、自然とせつなかったり寂しかったり、怒り、狂気的なものをテーマにした恋愛ソングばかりになっていったんです。この曲は“僕は濡れたくないからさよならしました”というところが歌詞のキモ。傘は1本しかないから、本来なら悲劇のヒロイン的には、相手に自分の傘を渡して、自分は濡れながら帰るほうが綺麗だと思うんですけど。本当に辛くてキツイのは自ら身を引く立場のこっちなので、そこでわざと悪者を買って出るイメージで俺はそう(濡れたくない=傘を渡さない)したのかな。当時からひねりグセがありましたね。改めて歌詞を読むと(微笑)。

02. 隣人
(作詞・マオ / 作曲・御恵明希)

これは怖いやつですね。この頃は歌詞の方向としてシドをどういう方向性に持っていこうかということも、よく考えたりしてました。ヴィジュアル系ってものに詳しいメンバーではなかったんで、想像なんですけど“これまで幻想的な感じがしてたものは今後もっとリアルになっていきそうだな”ってことを考えて。俺なりの感じで「じゃあ次のヴィジュアル系はこんな感じかな」ということも意識して書きましたね。ライブで“どうか扉を開けて”の部分を、俺が腕を横にスライドさせるアクションをつけて歌っていたら「和式なんですね」って当時すっごい言われて(笑)。本当は向こう側に扉を開けたいんだけど、スライドさせるほうがパフォーマンスとしてカッコいいからそうしてたのに……。手紙とかで、結構ファンの人にも「マオさんの住んでるおうちは横に引く和式タイプなんですね」って書かれて「そんなことないよ」ってずっと思ってました(笑)。ここのアクションは、いまだに“和式”でやってます!!

03. 私は雨
(作詞・マオ / 作曲・しんぢ)

歌詞は、自分の出身地である福岡を舞台に書いてみたいなと思って書き始めましたね。天神とか百道浜という地名が出てくるんですけど、そこは自分にとっては“ド地元”ではなくて。なので、地元のことを歌ってるというよりは、当時の自分の憧れだった場所を都会的なイメージでとらえて歌ってる感じ。都会には、俺が住んでる田舎で繰り広げられる恋愛ドラマじゃないものがいっぱいありそうだなと思ったから、こういう歌詞も書けたんじゃないかな。あとは、歌謡曲をめちゃくちゃ意識して書いた歌詞でもあります。“飲めないお酒”とか“捨てネコ”とか“バーボン”とかあんまり書かないんで(微笑)。それを使って、雨というシチュエーションとバーボンと捨てネコ。これだけで一気に昭和にいける感じができたと思う。シドというバンドは最初“哀愁歌謡”というジャンルに向かおうということでやり出したんですけど。そのコンセプトでどっぷりやるのは、このアルバム1枚で終わっちゃいましたけど(笑)。

04. バーチャル晩餐会
(作詞・マオ / 作曲・しんぢ)

オシャレな曲ですね。これは、いまだから話せることなんだけど。当時、俺はどうしても苦手な人がいて。その人の歌ですね(爆笑)。恋愛とかではストレートに自分を出すのは恥ずかしかったんですけど、こういう感情はバーッとストレートに出せた。ただ、苦手だなとか嫌だなっていう気持ちも、こうやって1曲にすると素敵だなと思いました。ちゃんと気持ちが入ってる怒りって、すごく曲にものっかるし、ライブでもすぐ入り込んで歌えるんですよ。当時苦手だなと思ってたことなんて、時間が経てば忘れていくものなんだけど。この曲を歌った瞬間に気持ちだけはすぐにそこに戻れるっていうのはすごいよね。

05. 青
(歌詞・マオ / 作曲・御恵明希)

せつない系、福岡系の歌詞ですね。「青」というタイトルは最後につけた気がします。タイトルについては、当時の俺はインパクト重視という考えで。とにかくシド で“人気者”になりたい、と。それがすべてだったんです、当時の俺は。そうなるためには、昭和歌謡というコンセプトにしてもタイトルにしても、人の心にひっかからなきゃどうしようもないでしょと思ってました。「青」に関しては、俺がずっとつけたかったタイトルだったんですよ。単純に青っていう言葉が好きだったから。色がタイトルの曲もなかったし。あとは、ちょっと青春じゃないですけど、登場人物が若いんで青い恋かなと思って青にしました。若いと言いながら“罪な女の最後です”とか言ってるところは、ちょっと昭和を意識して。女の人の言葉と“許せますか?”とか“惨めですね”とか語り口調の敬語が、俺のなかで昭和とかフォークのイメージだったんで。フォークとかあんまり詳しく知らないんですけど、いま思うと、そのあんまり知らない距離感がよかったなと。憧れてるんだけどちょっとだけずれてる。その違和感がいいなと思いますね。「青」の歌詞を読み返すと。

“なんだこの世界観は?”って最初から最後まで引っ掛かりまくるような強烈なものがよかった

06. 土曜日の女
(作詞・マオ / 作曲・御恵明希)

この曲はね、“環状八号線”という歌詞が出てくるんです。当時、シドはSakuraさんにレコーディングに立ち会って頂いていて。そのSakuraさんから「カンパチなんだ。なんでカンパチなの?」って言われたのをよく憶えてますね(微笑)。歌詞を読むと、この曲は途中で足りなくなったんだと思います……メロディーが(笑)。本当は1週間全部を書きたかったんだと思うんですよね。“木曜と”と歌ってるところは、歌詞を“木曜「    」”と表記して、謎っぽく見せたほうがカッコいいんじゃないかなと思って「 」にしました。昔から歌詞カードを見て“ここ、なんて歌ってるんだろう?”とか、歌詞カードと違う歌詞を歌ってるものとかが好きだったんで、やってみたかったんですよ。1週間のうち日曜日から金曜日までは奥さんのものなんで、それを待って待ってやっと土曜日だけは会えるという関係なので「土曜日の女」なんですけど。これはかなりせつないです。歌っていても。

07. 必要悪
(作詞・マオ / 作曲・御恵明希)

狂気的な歌詞です。愛しすぎて、自分を追い込んでいく愛。そういうものを表現したかったんだと思います。“魚”とか、“沈んで”とか“溺れて”とか、当時はとにかく色とか情景とかモチーフがすぐに思い浮かぶものじゃないと嫌で。タイトルだけじゃなく、歌詞全部が強烈じゃないとダメだったんですよ。この当時は“なんだこの世界観は?”って最初から最後まで引っ掛かりまくるような強烈なものがよかった。目立ちたかったんですよ、歌詞でも。世の中にこの音楽を残したいなんて、当時は1ミリもなかったと思う。いかに、このシーンのなかでどうやって一歩抜け出そうかと。こうして振り返って見ると、そういう歌詞が多いですね。攻撃的な歌詞は、ロックとかヴィジュアル系特有のものでもあると思うんで。「必要悪」は、そこへの憧れが出てますね。この曲はシドの初ライブでもやりました。お客さんは全然いなかったけど、終わったあとに明希と2人で「これは絶対いけるでしょ!」って確信しましたね。

08. 赤紙シャッフォー
(作詞・マオ / 作曲・御恵明希)

これは方言で歌いたいな、というのがまずあったんですよ。俺、東京に出てきた頃はすごい訛ってたんで、それを歌詞に活かせないかなと思って。あとは、内容的にこれを標準語で歌うとちょっとストレートすぎるなというのもあったから方言にしました。歌詞のテーマは“戦争反対”みたいなものがあったと思います。たまに触れたりしてるテーマではあるんですけど。これは、曲のインパクトとこういう歌詞がぴったりハマったんですよね。この曲も人気ですね。ファンの人からタイトルの“シャッフォー”は「“シャッフル”じゃないの?」ってよく言われました(笑)。そこも、引っ掛かりたかったんですよ。いちいちね(微笑)。

09. 妄想日記
(作詞・マオ / 作曲・しんぢ)

アルバム曲なのに、シドの代表曲になりましたね。歌詞を書いてるときは「すごい題材見つけた」、「ヤバいの書けちゃった」と思いました。「吉開学17歳(無職)」もそうですけど、当時起きた事件にインスパイアされて書いてるんですよね。「妄想日記」に関しては、それプラス、例えばバンドマンを好きだっていってる子がめちゃめちゃストーカーだったらという妄想から書き始めた。ライブハウスに観に行ってて、アーティストと目が合ったってみんな言うじゃないですか? まず、そこから発展していって。目が合っただけで“そんなに見つめないで”って向こうは思ってたかもしれないなとか、ファンレター出しても返事がこないってことに対しては“シャイな人だから”って思ってるのかもしれないなとか。それぐらい燃えるような恋があってもいいかなと。こういう歌詞の世界観だったら。それで、最後にネタ証しとなる“あなたは私の顔も知らないの”でちゃんと落とすという。「知らんのかい! それ、めっちゃ怖いやん」って(微笑)。俺としては “一人きりの部屋二つ並ぶ写真”。ここが歌詞のキモなんです。見逃しがちだけど。俺のイメージだと、ここはバンドマンのアー写とその子の1番のお気に入りの写真を、ツーショットっぽく見えるように並べてるんですよね。俺も恐れ知らずだな、こんな歌詞書いて。でも、結局続編まで作っちゃいましたからね。楽しくて(笑)。

10. お別れの唄
(作詞・マオ / 作曲・しんぢ)

歌謡曲を意識した言葉、女性目線、敬語……当時の黄金比で書いた歌詞ですね(微笑)。“汽車”っていう単語を、昭和のキーワードとして使いたかったんです。あと“レコード”とか“ハンカチーフ”とかもそうだね。古くしようしようと頑張ってる。そういう昭和のキーワードは、いま見返すと面白いですね(微笑)。こういう昭和のキーワードも、自分のすごい少ない情報量のなかから見つけ出して書いていってたから、当時は歌詞を書くのにめちゃくちゃ時間がかかってました。結果、書けるんですけど、そこにたどり着くまでが超キツかったな〜。当時もいまと同じようにAメロから書いてたんだけど。書き終わって読み返すと、なんのこっちゃって感じだったり。物語が途中で終わってたり(笑)。初心者だからそんなのばっかで、何度も書き直してましたね。

11. 空の便箋、空への手紙
(作詞・マオ / 作曲・しんぢ)

歌詞の内容でいうと、好きな人に先立たれてという悲しい恋がまだ忘れられないというもので。こういう“死”というものをテーマにした内容も歌えて、みんなも入り込んでそれを聴いてくれるというのがこのバンドの強みかなと思いますね。最初のアコーディオンの幻想的な感じとか、教会っぽい音が入ってるところで、死をテーマにした内容を思いついて。歌ったら見事にハマりましたね。これは、ライブイベントの最後によくやってました。最後はこの曲で終わって、盛り下げて帰るというのが当時の俺らの必殺技でした(笑)。とにかくお客さんが欲しいから、次の相手を不利にしてでも自分たちの良さ、インパクトを残して帰ろうと思って、イベント全体の盛り上がりとかいっさい考えてなかったですね(笑)。だから、結構めちゃくちゃやってましたよ。俺らは。30分の持ち時間をもらっても3曲しかやらないで帰るとか。MCもなしで、3曲バラード続けてやって帰る、みたいな。この曲はそういうときに必ずやってた1曲。

次回 2nd Album『星の都』編は2018年7月中旬更新予定です。

リリース情報

LIVE DVD / Blu-ray『SID TOUR 2017 「NOMAD」』

2018年7月25日リリース
【初回生産限定盤DVD(DVD+写真集)】
KSBL-6322-6323 ¥6,000+税
【通常盤DVD】
KSBL-6324 ¥5,000+税
【初回生産限定盤Blu-ray(Blu-ray+写真集)】
KSXL-268-269 ¥7,000+税
【通常盤Blu-ray】
KSXL-270 ¥6,000+税

Mini Album『いちばん好きな場所』

2018年8月22日リリース
【初回生産限定盤(CD+DVD)】
KSCL-3076-3077 ¥2,788+税
【通常盤(CD)】
KSCL-3078 ¥1,852+税

ライブ情報

SID 15th Anniversary LIVE HOUSE TOUR

「いちばん好きな場所2018」
http://archive.sid-web.info/15th/

公演スケジュールなどの詳細は公式サイトをご参照ください。

マオ from SID

マオ/福岡県出身。10月23日生まれ。2003年に結成されたロックバンド、シドのヴォーカリスト。
2008年10月「モノクロのキス」でメジャーデビュー。以降、「嘘」「S」「ANNIVERSARY」「螺旋のユメ」など、数多くの映画・アニメテーマ曲でヒットを放つ。2018年バンド結成15周年を迎え、4月にはセレクションベストアルバム『SID Anime Best 2008-2017』をリリース。直後の5月から6月28日まで “SID 15th Anniversary LIVE HOUSE TOUR 2018”と銘打った全国6都市14公演ツアーを無事に完走。さらに8月にはミニアルバムをリリース、9月からは全国31カ所で開催するLIVE HOUSE TOURも発表された。

オフィシャルサイト
http://www.maofromsid.com
http://sid-web.info

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