Interview

THE ORAL CIGARETTESのバンドの深化。愛をもってさらに強くなる──『Kisses and Kills』の創作過程に見る4人の熱さ

THE ORAL CIGARETTESのバンドの深化。愛をもってさらに強くなる──『Kisses and Kills』の創作過程に見る4人の熱さ

THE ORAL CIGARETTESの4枚目となるアルバム『Kisses and Kills』が完成。これまで以上に“攻める”楽曲を多く収録し、リアルな歌詞とともにバンドの方向性がより明確になった。さらに、多彩でありながら起爆力を持った楽曲たちはライヴ映えするものばかり。9月から始まるライヴハウスツアー、12月からのアリーナツアーも楽しみになる一枚だ。

取材・文 / 岡本明 撮影 / 関信行

ぬるま湯に浸らずに、熱いお湯にぶっ込んでくれた

今回のアルバム『Kisses and Kills』は早いうちから取りかかっていたんですか?

山中拓也 12月中旬ぐらいから作り始めました。

こんなアルバムにしたいという想いは?

山中 ツアーが終わってフェスに出ていくなかで、決まりきったものを取っ払っていこうというテンションが俺たちの中にあって。ライヴも、今までだったら決まりごとがあったけれど、そういうのはナシに、より自由にそのときの空気で判断してやろうという意識が生まれたんです。それが年末のフェスのあたりで。そういう意識で鳴らす音楽とはどんなものなんだんだろう?という想いがアルバムに繋がっています。

山中拓也(vocal, guitar)

自由にやりたいことをやればいいモノができるという自信の表れというか?

山中 自信の表れというか、やっぱりお客さんが俺たちをここまで持ってきてくれたという強い思いがあって、今、フェスでトリをやらせてもらったり、メインステージで戦っていくなかで、俺たちがここからまた頭ひとつ抜けるにはどうしたらいいんだろう?って考える。そのときに、具体的な行動とかじゃなくて、俺たちがその音楽でより輝ける瞬間をお客さんに見てもらうことが一番なんだろうなということに思いいたって。だから、原点に戻って、自分たちの音楽を自分たちが愛することが必要じゃないかというところに戻ってきた感じです。

それは大きな発見ですよね。自分たちが好きなことを突き詰めれば、自分たちが輝ける?

山中 そうですね、ここからのフェーズはそういうことなんだろうなって思います。

そういう流れはバンド全体で感じますか?

あきらかにあきら そうですね。拓也自身、お客さんからもらうパワーとか期待感をどんどん超えていきたいとか、自分たちがマンネリ化しないよう、長く音楽をやれるようにということを考える人なので、曲作りのときからそういう考え方にいたったのかなと思います。僕自身はあまり危機感を持っていなかったので、拓也がそう言って引っ張ってくれることに感謝しています。今は順調で、メンバーのバランスもいい感じだと思っていたけれど、そこでぬるま湯に浸らずに、熱いお湯にぶっ込んでくれたので、助かったなと思います。

あきらかにあきら(bass, chorus)

熱湯だったんですね?

あきら 熱かったです(笑)。しかも、過去の曲よりデモの精度が高かったり、誰にも気を遣わず本当にやりたい音楽を作ろうとしているのが曲の中から感じられたんです。世界観とか歌詞も含めて、デモの段階からこれまでと全然違っていた。新しい挑戦もあって、ギターが入ってない状態でシンセを入れてたり、今でにないアプローチだったりもしたので、俺も頑張らないとって尻を叩かれました。

鈴木重伸 武道館が終わってから、次は何をしなきゃいけないんだろうって思っていて。でも、そうやって迷うことで自分たちの首を絞めていたんですよね。それに気づけたのが昨年末ぐらいで。そこからは切り替えて、自分たちが楽しむことがまず大事で、自分たちが光り輝くことが正解だって思えるようになりました。このアルバムでまたさらに一歩先へ進めた気がするし、オーラルはどういうものだって提示をしていくなかで、現在とその先を示してくれた曲たちだなって思います。

鈴木重伸(guitar)

デモを聴いた段階からこれは違うと思いました?

鈴木 違いましたし、楽しんで僕自身もできました。こういう楽曲に対してどう返せばいいのかというキャッチボールが今回、ちゃんとできたかな、と。

中西雅哉 拓也って、曲を作ったり、ライヴをしていくなかでのバランス感覚が良くて。今までの作品も、オーラルらしさと新しい一面を見せるということに対して、そのときの一番いいバランスを考えて作っているんですね。それが、オーラルらしさを確立しているのを感じていて。今回はそのバランスが今までより、“攻め”の部分の比重が多くなったかな。守るという部分をなくしたわけじゃなくて、攻めながらも守る。それは、オーラルとしての土台が固まったからこそ、攻められるフィールドも広がったということなのかなと思います。挑戦しつつ、もっとやりたいっていう想いはありつつも、ヘンにバランスを取ろうとしていたものを取っ払えたのかな。

中西雅哉(drums)

たしかに、攻めの方向に傾いているし、曲の個性も強いですね?

山中 今回、12月中旬から作っていたと言いましたけど、実は1月中旬までいいデモができなくて、もう諦めようぐらいのテンションだったんです。全然、曲が生まれないし、生まれてもボツばかりで。やりたいことは明確にあったんですけど、それがまとまってない状態で曲作りに入っていたんですよね。それである日、曲作りをやめて寝ようとしたときに、いっぱい降ってきたんです。「これがやりたい!」って。それを頭の中でしっかり整理して、布団の中で考えつつ、その夜にもう一回起きて、雅哉に連絡して、そこから今回のアルバムに入っている楽曲たちのデモ作りが始まったんです。

それは一晩の出来事だったんですか?

山中 そうなんです、自分でも何でそうなったのかわからないですけど。それまで気が張りすぎていたんだと思うんです。ツアーが終わってすぐ曲作りという空気に持っていってしまって、頭の中で整理できないまま、やりたいことが漠然と詰まっていて。それが1ヵ月悩むことで、どんどん整理されて、一回休んだタイミングで降ってきたんだと思うんです。今までこんなにいっぺんに降ってきたことはないですけど、今回は特別な感じでしたね。

夜中に突然相談されても困りますよね?

中西 (笑)、でも、全然できない期間もずっと一緒に作業をしていたので、僕も制作期間というモチベーションではいました。拓也のイメージができてこないと、なかなか次のステップに行けないという立ち位置だったので、僕は僕でいろんな音楽を聴いてインプットしている状態だったんですけど。その夜はメシを食い終わった直後だったんですけど、突然、拓也に呼ばれて(笑)。全然、大変だとは思わなかったですけどね。

そこからは好調だったんですか?

山中 好調でした。頭の中にストックがあって、それをひとつずつ繋げて形にしていく。途中で「これ何の曲作ってたっけ?」というぐらい好調でした(笑)。

そのときに、攻めている曲が多いなという感触はありました?

山中 振りきってましたね。今までだったら、これでいいのかなって思って迷っていた曲でも、今回はそういうことを気にしないでやれてる実感はありました。自分はモノを作るということに対してコンプレックスがあったんですよ。全部出しきれてない自分とか、そういうことが評価にもつながったりするので気にしたり。でも、今回は周りの人たちを驚かせたかったし、メンバーにもう一回ギアを入れるためでもあったんです。だから、これはこれでいいって、振りきった感じです。

イメージが固まってからはレコーディングも早かったですか?

山中 でも、ずっとアイデアを出していて、休む暇はなかったです。レコーディング中でも「これどう?」っていう会話が飛び交っていて、最終的な音を詰めていった感じで。今までだったら、ギリギリまで「これどう?」をやってる感じはなかったから。

現場でも変化して?

山中 現場で思いついたアイデアを入れている曲もあります。より自由に、より自分たちの音楽を楽しむというところが制作の段階から現れていました。

あきら 今までやったことのないことが多くて、どれが正解なんだろうって思うことが多かったですね。より色を濃くするのも正解だし、自分たちのカラーを残すのも間違いではないし。そのなかで今回はみんな、曲においてどれぐらい偏らせるか、どれぐらいバランスを取るかって……例えば、雅哉がバランスをとって大人しめにするから、他の楽器で派手にしようとか、そういう駆け引きは最後まで話し合っていました。より歌を聴かせるために入り方を変えるとか、そういう細かいところまで考えましたし、「これとこれはどっちがいい?」とかメンバーによく聞いてましたね。結果、「どれが正解やったっけ?」って(笑)、復習が大変でしたけど。それぐらい夢中で、音楽に向き合えたと思います。

印象に残っている曲というと?

あきら 「What you want」ですね。正解が何パターンもあって。サビのドラム録りの段階から、雅哉のドラムをみんなでモニターしつつ、リズムの細かいところを決めました。ドラム大変そうでしたね。

中西 僕が印象に残っているのは「PSYCHOPATH」。作っているときは拓也のイメージで直感的に作っていたんですけど、レコーディングで再現するときに、頭がおかしくなりそうで(笑)。セクションごとにドラムパターンが変わっていくので、身体で覚えていかないといけない。「もぉ、これ何なん?」って(笑)だんだんおかしくなりそうで。この曲は、マジでカオスでした。拓也からこのリズムがいいって言ってもらうんですけど、僕は今までドラマーとしてのセオリーに正す部分があって。でも今回は、拓也のイメージを具現化するために、セオリーのリズムに沿っていない、僕からは出ないパターンのほうがオモロいなって思っていて。でも、形にしていざ叩くとなると、「マジか!?」って。宿題、後回しにしたくなる感じでした(笑)。

ライヴはどうするんですか?

中西 レコーディングが終わってドラムの師匠から「このパターンはこっちのパターンのここを抜いただけやから」って冷静に教えてもらって。そうしたら、今まで頭で叩いていたのが身体で自然に叩けるようになりました。そういうディスカッションは毎回あるんですけど、頼もしいです。でも、すごく楽しい、新しい発見があるので。

鈴木 僕は「容姿端麗な嘘」ですかね。大変というか、楽しんでいたら大変な数のギターを入れてしまった感じですね(笑)。もともと入れる予定のギターの数も結構な本数だったのに、さらにレコーディングのときに「ここにカッティングが入っているほうが」とか試してみたり、音色もいっぱい試しながら弾きました。昔ほど堅苦しく考えずにできましたね。頭に浮かんだものをとりあえずやってみようって思えるようになりました。

山中 僕も「What you want」は印象に残っていますね。洋楽のテイストを入れたくて、サウンドから作っていったんですけど。それに加えて日本人だからできる日本人の良さを追求していったので、そこが苦労しました。あと、「リブロックアート」は、最初まったく入れる気がなくて。でも、あきらが「絶対入れたほうがいい」って言って。「そんなに言うんだったら」ということで入れてみたら、思っていた以上にかっこよくなりました。意外でしたね。主観的に作っているときと、客観的に聴いたときの違いってこういうことなのかって勉強になったし、メンバーにもバランス感覚が自然と生まれているのが、自分的に嬉しかったです。

なぜ、はずしたくないと?

あきら わがままを言いましたけど(笑)、アルバムを全体的に見たら、あったほうがいいなと思って。もう一曲候補があって、どれをはずすかということだったんですけど、僕の中では「リブロックアート」があるのとないのとでは違っていて。今回はシンセに寄ってる曲もあるし、ディープな世界観の曲もあるので、ちょっとバンド感というかメンバー4人で体当たりして進んでいるような曲があると、人間味が増すアルバムになるなと思って。それを言ったら、「わかるかも」って賛同を得て、入れようということになりました。

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