Interview

小松準弥&松村龍之介。同い歳の若き役者ふたりがつかこうへいの“魂”を受け継ぐ──つかこうへい生誕70年記念特別公演「『新・幕末純情伝』FAKE NEWS」

小松準弥&松村龍之介。同い歳の若き役者ふたりがつかこうへいの“魂”を受け継ぐ──つかこうへい生誕70年記念特別公演「『新・幕末純情伝』FAKE NEWS」

1989年に初演され幾度となく変化を遂げてきた、劇作・演出家の故つかこうへいの代表作『幕末純情伝』。本作が装いも新たに「『新・幕末純情伝』FAKE NEWS」として7月7日より上演される。もちろん、場所はつかこうへいに縁の深い紀伊國屋ホールだ。そしてそんな舞台に出演する土方歳三 役の小松準弥と、岡田以蔵 役の松村龍之介にインタビューを敢行。つかこうへいの“魂”を受け継ぐ若き役者たちの今作にかける熱意を感じてほしい。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 岩田えり


つかこうへいの舞台は役者だったら誰もが憧れる

まず2010年にお亡くなりになられた、日本を代表する劇作・演出家のつかこうへいさんの作品に出演される感想を聞かせてください。

小松準弥 つかこうへいさんの舞台は、役者なら誰もが出演することに憧れると思いますし、僕もいつかと目標のひとつにしていました。だから、決まったときはとても嬉しかったです。『熱海殺人事件 NEW GENERATION』(2017年)、『熱海殺人事件 CROSS OVER 45』(2018年)を拝見したときに、舞台からすごいエネルギーを感じ、僕があの舞台にいたら、「果たして演技できるのか、食らいついていけるのか」という不安さえ生まれたほどです。それでも、不安以上に楽しみが大きいですね。『NEW GENERATION』は、付き合いの長い多和田秀弥くん、『CROSS OVER 45』はNON STYLEの石田 明さんが、熊田留吉刑事を演じていましたが、同じ役でもまったく演技が違ったので、今回僕にしかできない土方歳三を目指して演じたいと思います。

小松準弥

松村龍之介 とても歴史のある作品で、まずお声がけいただいて、ありがたい気持ちと、自分がどれだけできるのかという楽しみが強くなりました。つかさんがご存命のときに舞台を経験された、久保田 創さんや大石敦士さんとご一緒できるので、つかさんに“ご縁がある”と感じています。

松村龍之介

つかさんの作品といえば、紀伊國屋ホールですね。

小松 まさに、僕のつかさんのイメージは、紀伊國屋ホールなんです。つかさんの作品で紀伊國屋ホールに立つことは、なかなかできないことだと思うので、その喜びをしっかり噛み締めたいです。まだ稽古途中ですが、今の段階でさえ、体力的につらいし、演技の悩みもありますが、2017年、2018年の『熱海殺人事件』にも出演された、坂本龍馬 役の味方良介さんにお話を伺ったら、つかさんの作品を紀伊國屋ホールで上演しているときは「つかさんに背中を押してもらっているような、全身からパワーがみなぎってくる」とおっしゃっていました。命を削って倒れてもいいぐらいの気持ちで演じますが、つかさんに支えてもらっているという喜びを劇場で味わえると思うと嬉しいですし、心強いですね。

松村 僕は、紀伊國屋ホールに立つのは初めてなので楽しみです。当然、歴史ある劇場でありつつ、つかさんと長い年月の繋がりがある。そんな大きな歴史の流れのなかで、自分がそこに立つ役者としての意義を感じながら演じたいです。ずっと立ちたかった劇場ですし、1ヵ月近く立てるのは役者冥利に尽きますね。

つかこうへいの脚本はカッコイイ

北原里英さんが演じる沖田総司は女性で、しかも男性として育てられたという設定が秀逸です。脚本の面白さはありますか。

小松 2016年の坂本龍馬 役が石田 明さんと沖田総司 役が松井玲奈さんの映像を拝見したのですが、そのときに感じたものと、『新・幕末純情伝』の脚本を読んだイメージはまったく違って、もちろん根本は一緒ですが、時代の変化のなかでの脚本の違った良さや、卑屈な土方のセリフがよりリアルに感じられました。ただ、どちらも“人間そのもの”が描かれています。そこが魅力ですし、つかさんがお亡くなりになられても、演劇ファンがつかさんから離れないのは、人間の本質をきちんと描かれているからだと思います。それは稽古をしていくなかで生々しく感じたので、人間くさいところをしっかり出していきたいです。

松村 脚本はカッコいいですね。言葉の響き、人に対するへりくだった言い方、伝えたい気持ちに肉付けされる言葉、すべてが刺激的で読んでいてワクワクします。今回の脚本は、歴史ある作品を踏襲しつつ、新しいことに挑戦する戦いの連続で出来上がったもので、今作ならではの変化を遂げているので、きっと面白いと思っていただけますよ。

つかさんの演出は、口頭の打ち合わせで芝居をまとめる“口立て”といった手法が有名ですね。今回の演出はいかがですか。

松村 “口立て”のように、その場でセリフを当てていくことがありますし、例えば前作の台本も使いながら、つかさんのことをよく存じ上げている、プロデューサーの岡村俊一さんと演出の河毛俊作さんがディスカッションをしながら作ったりもします。演出家は決してワンマンではなく、共同制作に近いかもしれないですね。

小松 脚本を読みながら演じて、みんなで話し合って、新しいセリフを入れたり、逆に省いたりしながら、「こう演じてみよう」と河毛さんからアドバイスをもらい、演じ方はどんどん変わっていきます。これまで、僕はまず脚本があって、役を作り上げたうえで演じていましたが、今回はその場で脚本が変わり、そこから感じることや空気感で演じる空間が生まれていくので、味わったことのない不思議な気持ちです。たぶん、みんなで作っていっているからだよね?

松村 そうだね。役者、旧台本、岡村さん、みなさんと一緒に話し合いながら作っているからこそだと思う。

土方歳三はダメ男!? 岡田以蔵は愛すべきバカ!?

小松さんは土方歳三、松村さんは岡田以蔵を演じます。役どころを聞かせてください。

小松 土方は新撰組の副長ですが、『新・幕末純情伝』に出てくる人間の中で、お客様が一番共感しやすいと思っています。それは人間の“コンプレックス”や“欲”、“嫉妬”がキャラクターに詰まっているからです。龍馬のように、「新しい時代にいくぜよ」とストーンと幕末を走っていきたいけれど、土方は颯爽と走れないもどかしい気持ちを抱いている。どうにかして解決したい弱さが土方の中にはたくさんある……つまり簡単にいうとダメ男なんです(笑)。カッコよくないですが、もがいている姿が愛おしく思えるキャラクターです。龍馬とはまったく違う人物なので、その差をしっかり出して、百姓出身の武士魂を見せつけてやりたいな。

松村 岡田以蔵はまっすぐです。頭の中には尊敬している龍馬と愛してしまった沖田しかいない。彼らのやることを後押ししようと奮闘する、“愛こそすべて”の人物です。難しいことは良くも悪くも考えられないので、単純だからこそ、岡田の感情がお客様の心の奥に直に伝わる“愛すべきバカ”なんです。

役作りはどのようにされますか。

小松 沖田総司をみんなが奪い合うお話で、その中でも土方は嫉妬深く、卑屈な人間ですが、お客様からも、北原(里英)さんの総司からも、土方が一番好きだと思ってもらえるようにしたいです。どれだけ総司を愛せるかが重要になってきますし、副長という立ち位置や、土方の生い立ちを深く掘り下げて、土方から滲み出る弱さや強さ、うまくいかないもどかしさ、それ以上に総司への想いを胸に抱いて演じたいです。

松村 ひたすらに役を愛したいです。岡田以蔵を愛すること、坂本龍馬を愛し、総司である北原さんのいいところを見つけていこうと思いながら、初日から稽古をしています。とことん素直になりたいですね。自分の思っていることを相手に100パーセント伝えることは、とても難しいことですが、僕の役はそれを100パーセント出していい役です。ほかのキャラクターは、我慢したり隠したり、騙したりする役ですが、岡田以蔵が感じる“愛”をすべて発しようと、自分が素直に思ったことをセリフとして伝える努力をしています。

小松 真逆だよね。僕は卑屈になろうと思っています。土方はまっすぐではないタイプなので、僕はあえて悪いところをまっすぐ見つけようとしています。

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