山口洋のSeize the Day/今を生きる  vol. 37

Column

MY LIFE IS MY MESSAGE 2018/You've got a friend

MY LIFE IS MY MESSAGE 2018/You've got a friend

6月29日に開かれた7回目となる“MY LIFE IS MY MESSAGE”。
ガンジーの言葉が普遍の光を放ち続けるように
キャロル・キングの音楽が時代を超えて歌い継がれるように
いま届けたいメッセージがある。
忘れられない、忘れたくない、忘れてはいけない。
7年が経った、いまだからこそ。

メイン写真 / Mariko Miura

MY LIFE IS MY MESSAGEライブレポート記事はこちら
山口洋、仲井戸麗市、矢井田瞳、大宮エリー 「いったいなにができるだろう、ともだちとして」その問い掛けの先に宿る祈りと光、響き合う4つの魂

山口洋、仲井戸麗市、矢井田瞳、大宮エリー 「いったいなにができるだろう、ともだちとして」その問い掛けの先に宿る祈りと光、響き合う4つの魂

2018.07.10


今年も“MY LIFE IS MY MESSAGE”の季節がやってくる。東日本大震災をきっかけに、音楽を通じて、街の復興に取り組んできたプロジェクト。今年で7年目になる。

微力だからこそ、微力だとは言いたくない。

「MY LIFE IS MY MESSAGE」。それはガンジーが遺してくれた言葉。読んで字の如し。敬愛する作家、宮内勝典さんの著作のなかに見つけた。周囲は略して「マイライフ」と呼ぶけれど、僕がそうしたことはない。その言葉を「全体で」発するたび、言葉が持つほんとうの意味に身が引き締まるからだ。僕のLIFEは果たしてMESSAGEとなっているだろうか、と。

風化や忘却。忘れていくことは、人が癒えていくためのプロセスでもある。だから、続けていくことは難しい。それでも「明日があるのは当たり前じゃなかったんだ」と身が凍る想いをしたあの日のことを忘れたくない。未来に対して無責任でいたくない。僕が関東で使った電気のせいで、故郷を汚染され、住む場所を奪われ、未だ家に帰れない人たちがたくさんいる現実を忘れて生きていたくはない。

だから、年が明けると、毎年一人で福島を訪ねる。彼の地の人たちと過剰に酒を酌み交わしたりする。確かな復興……。僕が目にしたことをここで語る資格は僕にはない。

「いったいなにができるだろう? ともだちとして」。

毎月毎月、北海道から沖縄まで。最近はアイルランドってのもあったけれど。ずっと忘れることなく気持ちを託し続けてくれる市井の人たち。ライヴ会場で匿名で僕らに託してくれる人たち。エトセトラ、エトセトラ。そのコンパッションが還流する方法を探すのが僕らの役目だと思って、この7年間を過ごしてきた。

誹謗中傷や信じられないようなことも確かに経験したけれど、音楽は一度も僕らを裏切らなかった。そしてある種の人間にとって、音楽はライフラインそのものだった。

忘れられないことをいくつか。

2年前に熊本地震が起きたとき。それまでずっと気持ちを注がれてきた福島の人たちが、熊本を応援したいと言ってくれたこと。嬉しかった。

もうひとつ。僕は神戸にあるサッカースタジアムに呼ばれた。21年前、チームが発足した日に、阪神淡路大震災に遭ってしまったヴィッセル神戸。そして東日本大震災を経験したベカルタ仙台との試合前。僕は熊本へと届くように大観衆の前で「満月の夕」を歌うことを依頼された。

歌い終えて、スタジアムを去ろうとしたとき。スタンドの両サポーターから自然に巻き起こった「ク・マ・モ・ト」コール。愛と想いは循環することを教えられた。きっと、この世界と人は、まだ信じるに値するのだ。

この連載の24回目に僕はこう書いた。(連載#24より抜粋)

「いったいなにができるだろう? ともだちとして」。

忘れられない一節。CHABOさんとはじめて一緒に旅をさせてもらった“MY LIFE IS MY MESSAGE TOUR”でのこと。CHABOさんはある曲をカヴァーして、サビを日本語でこう歌ってくれた。すっとこころに入ってきて、離れなくなる。この一節は今や、僕の行動原理でもある。

Photo by Mariko Miura

世間の風に振り回されて、どうしていいのかわからなくなったとき。この一節を口ずさんでみる。僕は我にかえり、自分を取りもどす。いつだってそんな人間でありたいと思っていたはずだ、と。たいせつなことはいつもシンプルで、難しい。けれど、人の落下を止められるのは愛だけなんだと、その一節はいつも僕に教えてくれる。

今年のテーマ「You’ve got a friend」。キャロル・キングが70の齢を超えて、その曲をハイドパークの大観衆の前で歌っている。人々はそれぞれにこの歌を口ずさむ。美しい光景。ほぼ50年前にリリースされたこの歌は、世界のあちこちを旅して、今や受け取った人の数だけ、無数の思いやりのストーリーを描いている。

「いったいなにができるだろう? ともだちとして」。

色褪せることのない、不変で不偏で普遍のテーマ。

今年はこの歌を素晴らしい志をもったミュージシャン全員で演奏してみる。きっとこの歌は誰かのこころを目指してまた旅を始めるだろう。そこでどんな風景を描いて、どんな物語になっていくのか。愉しみにしている。

Seize the day. 感謝を込めて、今を生きる。


キャロル・キング:1942年ニューヨーク生まれ。1960年代に作詞家で夫だったジェリー・ゴフィンとソングライターチームを組み、“ゴフィン&キング”としてリトル・エヴァ「ロコモーション」やシュレルズ「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロウ?」、アレサ・フランクリン「ナチュラル・ウーマン」などのヒット曲を次々に生み出す。1970年にはアルバム『ライター』でソロ・デビュー。1971年に発表された『つづれおり』が世界的にヒットし、女性シンガーソングライターとして不動の地位を築く。

ALBUM『つづれおり / Tapestry』(完全生産限定盤)

2017年9月27日発売
SICP-10120 ¥4,200(税別)

「You’ve got a friend」を含む、キャロル・キングの不朽の名盤『つづれおり』(1971年発表)。7インチ紙ジャケ&SACDマルチ・ハイブリッド盤でも発売されている。本作は、302週間全米チャートにランクインし、グラミー賞最優秀アルバム賞、最優秀女性ボーカル・パフォーマンス賞、ベスト・シングル賞、ベスト・ソング賞を受賞。売上は2,500万枚を超え、25年間にわたり女性アーティストのベストセラー・アルバム記録を維持している。

ALBUM『つづれおり:ライヴ・イン・ハイド・パーク / Tapestry:Live in Hyde Park』

2017年9月27日発売
SICP-31074~31075 ¥4,200(税別)

2016年7月3日、65,000人以上もの熱狂的なオーディエンスを集めてロンドンのハイド・パークで行われた『つづれおり』45周年を記念したコンサートの模様を収録。伝説とされる1973年のセントラル・パーク公演以来の大規模なコンサートで、キャロル・キングにとって1989年以来初の英国公演となったと同時に、『つづれおり』を初めて全曲披露するステージとなった。フル編成のバンドを率い、『つづれおり』オリジナル盤に参加したギタリスト、ダニー・“クーチ”・コーチマーがメンバーとして名を連ねているのも圧巻。自身のお気に入りの楽曲も数曲披露されている。CD&DVDで発売。

著者プロフィール:山口洋(HEATWAVE)

1963年福岡県生まれ。1979年にHEATWAVEを結成。1990年、アルバム『柱』でメジャー・デビュー。1995年発表のアルバム『1995』には、阪神・淡路大震災後に作られた「満月の夕」が収録され、多くのミュージシャン、幅広い世代に現在も歌い継がれている。アイルランドの重鎮、ドーナル・ラニー、元モット・ザ・フープルのモーガン・フィッシャーら海外のミュージシャンとの親交も厚い。2018年4月から池畑潤二(Drums)、細海魚(Keyboard)と新生HEATWAVEとしての活動を開始した。6月29日には仲井戸“CHABO”麗市、矢井田瞳らと “MY LIFE IS MY MESSAGE 2018 You’ve Got A Friend”を東京・下北沢GARDENで開催した。7月13日には藤井一彦(THE GROOVERS)と“OUR SONGS 2018”として共演する。リスナーからのリクエストで構成されるソロ・アコースティック・ツアー“YOUR SONGS 2018”も後半戦に入り、9月の公演も決定。8月11日には“MY LIFE IS MY MESSAGE”として、山口洋、仲井戸麗市、細海魚、大宮エリーで“RISING SUN ROCK FESTIVAL 2018 in EZO”に出演。2017年12月22日渋谷duo MUSIC EXCHANGEのライヴを収録した『OFFICIAL BOOTLEG #005 171222』が好評発売中。

オフィシャルサイト

ライブ情報

山口洋×藤井一彦(THE GROOVERS)OUR SONGS 2018
7月13日(金)吉祥寺 STAR PINE’S CAFE
詳細はこちら

山口洋 SOLO TOUR “YOUR SONGS 2018”
7月27日(金)熊本 ぺいあのPLUS
7月29日(日)福岡 ROOMS
9月2日(日)長野ネオンホール
9月4日(火)金沢メロメロポッチ
9月6日(木)奈良Beverly Hills
9月8日(土)岩国himaar
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RISING SUN ROCK FESTIVAL 2018 in EZO
8月11日(土)石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ
MY LIFE IS MY MESSAGE―山口洋、仲井戸麗市、細海魚、大宮エリー―として出演
詳細はこちら

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